※この作品はR-18です。

野良着の隊士・改編   作:いとめ

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20歳③【気持ちの正体】
最後の柱合会議


梅雨も終わり、暑い夏がやってきた。

 

この時期の任務は、非常に汗をかく。

斗和は暑いのが苦手だった。

いくら隊服が寒さ暑さに強いとはいえ、完璧ではない。

寒さは着込めばいいが、暑いのは脱ぐ限界がある。

襦袢で生活したいくらいだがそうもいかない。

斗和は極めて不快な日々を送っていた。

 

河原で槇寿郎に言いたいことを告げて以降、斗和は杏寿郎には会っていない。

会って何か言われるかもしれないと思うと、手合わせを頼むことができずにいた。

 

そうなると家で鍛錬するか、共同鍛錬場に行くしかない。

日替わりで往復している日々だった。

大抵何人か隊士がいるので、稽古を頼まれたりとそれなりに充実していた。

斗和は頻繁に鍛錬場に赴くが、柱は基本的に行くことはない。

そんな見かけないはずの柱がいるので、隊士らは稽古をつけて貰おうと躍起になっていた。

斗和は低姿勢なので、頼みやすいというのもある。

 

土柱様と呼ばれるのにも慣れた斗和だったが、そろそろ柱は退きたいと思っていた。

 

 

 

 

───────

──────

それから間もなくの任務明けのことだった。

 

「柱合会議!昼マデニ向カエッ!」

 

いなくなっていた鴉の令和が、戻って来て告げる。

 

(来た!ついに来た!)

 

前回から半年たっておらず、これは無一郎が柱になったに違いないと思った。

 

斗和は意気揚々と本部まで向かった。

 

 

 

◇

「よう芋柱!」

 

(あ!)

 

門を潜ると同時、斗和の頭上から声がした。

見れば、門の上に音柱の宇髄天元がいた。

 

斗和は呆れたように目を細める。

天元は門が開いているのに、毎回こうして上から入って来るからだ。

いくら屋根伝いに走って来たとしても、門くらい歩いて潜ればいいのにと思った。

 

そしてやはり芋柱と言ったなと、斗和は内心で舌打ちする。

 

「これはこれは派手柱様、こんにちは」

 

「あ!?派手柱?言うじゃねえか芋柱が!」

 

二人は無言で火花を散らしていると、天元が突然吹き出した。

 

「なあ、お前ちょっと前にひょっとこの面着けて任務に出てたろ?すげえ噂になってたぞ」

 

天元は斗和を見て思い出し笑いをしている。

斗和はもしかしたらと思っていた。

やはり噂になっていたのだと確信する。

面をしていたのは一週間かそこらだった。

共同任務は少なかったが、よりによって天元の耳に入ってしまったのは悔しい。

 

からかわれる話題を提供したのだ。

 

「何で面なんてしてたんだよ?」

 

「あの時は大きい吹き出物ができたんですよ。私は顔に傷もあるし、更に吹き出物があったら醜女(しこめ)に磨きがかかるじゃないですか。だから治るまで隠していたんです」

 

本当は槇寿郎から殴られたわけだが、口が裂けても言えるわけがない。

斗和がそう言うと、天元は大きく息を吐いて首を左右に振る。

 

「お前はどんだけ自分を卑下してんだよ!蓬萊、よく聞けよ?そもそも醜女(しこめ)ってのはだな…」

 

「宇髄!蓬萊殿!」

 

天元が言いかけた矢先、門から杏寿郎が現れた。

斗和は思わず心臓がどきりと跳ねる。

 

杏寿郎と会ってしまった。

河原で槇寿郎との一件があり、以来気まずいのだ。

 

「おう煉獄か、相変わらず声でけえな」

 

「うむ。二人で何の話しだ?」

 

「ああそれがよ。蓬萊が少し前にひょっとこの面着けて任務してたんだよ。吹き出物ができたのを隠してたんだと。その理由が醜女(しこめ)に磨きがかかるからだってよ。どう思う?」

 

天元は呆れた表情で斗和を見て、やれやれと首を振る。

斗和は気が気でない。

 

「ちょっと宇髄さん!」

 

「何だよ。お前今そう言ったじゃねえか」

 

「それはそうですけど…」

 

斗和は、口パクで"いいから黙れ"と天元を睨む。

 

(派手柱!どうして煉獄さんに全部言ってしまうの!一番知られたくないのに。しかもどう思うって聞く?答え難いでしょ!)

 

何とかこの話題から逸らそうと、斗和は今日の会議のことを口にしようとした矢先だ。

 

「あのっ、きょ…」

 

「何を言ってるんだ!蓬萊殿は断じて醜女(しこめ)じゃない!美しい!」

 

「!」

 

「!?」

 

杏寿郎が声を張り上げた。

 

(…え?…え…今…?聞き間違い?美しいと聞こえたような。えっ、え…えー!?)

 

斗和は、驚きに口に手を当て息を呑む。

顔が熱く火照り、真っ赤になっているのが分かった。

 

杏寿郎はいつも通りの表情で斗和を見ている。

天元は呆けており、しばし微妙な雰囲気がその場に漂う。

 

するとそこへ義勇が通りががり、斗和を見る。

 

「蓬萊、顔を赤らめると不死川が怒る」

 

そう言い先に行ってしまった。

 

(冨岡さん…いやもう何も言うまい)

 

斗和は、通り過ぎる義勇に白けた目を向けた。

冨岡義勇は言葉足らずに加え、空気も読めない男である。

 

 

 

その後天元は先に行くと言っていなくなり、斗和は杏寿郎と二人きりになった。

 

「冨岡は以前も同じことを言っていたな。蓬萊殿が顔を赤らめると不死川が怒ると。どういうことだ?」

 

杏寿郎は顎に手を遣り首を傾げる。

悩む姿も素敵だなと思う斗和は、真似をして同じく首を傾げた。

義勇の言っていることはよく分からない。

おそらく斗和が初めて参加した柱合会議前に、義勇と会話をして恥ずかしくなり顔が赤くなった。

ちょうどその時、実弥が現れそれを目撃した。

斗和が義勇に対し、頬を染めていると勘違いしたのだ。

あれは"最近は雪山での任務があったか?"と聞き、まだ秋だからない…そう返答された。

それに対し恥をかいたと顔が赤くなったのだ。

ただそれだけの些細なことである。

なぜか義勇は未だに引き合いに出すので、斗和も呆れていた。

 

「私にもよく分かりません…。あの、なんだかすみません。気を遣わせてしまいましたね」

 

斗和は居た堪れなくなり謝るも、杏寿郎はは不思議そうな顔をした。

 

「気を遣ってなどいないぞ。本当のことだ」

 

「え、煉獄さん、あの…」

 

杏寿郎は斗和を見つめ、はっきりと言った。

戸惑う斗和に、杏寿郎が近寄る。

 

「君はなぜ自分を卑下するんだ?」

 

「…本当のことだからです」

 

斗和は、俯きがちに小さな声で呟く。

十三歳で傷を負って七年、幾度となく好奇の目に晒されてきた。

鬼にさえ醜いと何度か言われた。

最初は気にならなかった傷だったが、時が経つにつれ変化していった。

斗和は、ある男と出会ってから自らを醜いと思うようになった。

 

「顔を上げてくれ」

 

その声に斗和は、そっと窺うように顔を上げた。

 

「その傷は鬼と戦いできたものだろう?俺はそれを醜いとは微塵も思わない。君がたくさんの人々を救ってきた証だ。蓬萊殿は強く美しい!」

 

杏寿郎は、しっかりと斗和を見つめた。

それは杏寿郎の本心だ。

斗和は顔に消えない傷を負い、それでも長年鬼を討伐してきた女だ。

本人は謙遜しているが、斗和は強い。

柱となり皆を率いてきたのだ。

同じ隊士としても柱としても、尊敬に値する。

 

そして杏寿郎は、斗和を異性としても見ていた。

仲間以上の感情を斗和に抱いている。

まだ告げるつもりはないが、いずれと思っていた。

 

呆けたままの斗和に、杏寿郎はフッと笑顔になる。

 

「それにしても面を着けて任務に行くとは!蓬萊殿は予想外のことをするんだな!」

 

ハッハッハと笑う杏寿郎を見て、斗和は安堵した。

 

やはり杏寿郎と会うと元気が出ることを実感する。

笑っている姿を見ると、斗和は心が温かくなるのだった。

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