俺は転移した生徒に与えられた部屋の、天蓋付きのベッドで目が覚めた。俺のベッドの横には目が眠たそうにしている姉貴と香織がいた。
俺が目を覚ますと飛びついてきたが俺はそれを身体を仰け反らせることで避ける。そして俺はハジメが奈落へと落ちたことを思い出してしまった。
「あははは…なんで俺はあそこで……なんで……」
俺は意識が暗転した後7日間眠りについていたらしい。心配そうに見る姉貴と白崎がいたが、俺は気にせずに身体を起こしてハジメのところへと行こうとする。
「行かせないわ」
姉貴が訓練用の剣をこちらに向けてきた。病人相手に何しやがると思い、俺はランスロットを思い描いて変身する。
「いや、行かせてもらう。ハジメを助けに行かないといけないんでな」
「ハジメハジメって…前から思っていたけど貴方にとって南雲さんはどういう存在なの?」
「……友達だ、大切な人だ!………そして!」
俺はランドスピナーを展開せずに走り出し、MVSを勢いよく振るう。邪魔する姉貴の持つ剣を切り裂くために。
「恋人だ!!……あ」
俺がそう言い放った途端、俺の意識がまた暗転した。俺が最後に見たのは、「嘘でしょ」と言いたげな2人の顔だった。
俺が起きたところは牢獄だった。俺の目の前には3人ほどの騎士とメルドが立っており、俺が暴れないための処置らしい。ふざけんなと思ったが、これ以上待遇が悪くなるのも避けておきたいので口をつぐんでおく。
「界人、お前も少しは頭を冷やせ。姉に切りかかるなんて正気の沙汰とは俺には思えん」
俺にそう言い残して、メルドはそのまま去っていった。俺の首には俺が変身しても動けないように壁にくっついている枷がある。どんな扱いだと思いながら、俺は一人泣いた。
俺がこの世界に来たのは召喚されたからだ。恋人であるハジメと飯を食ってたらいきなり天之河の足から魔法陣が現れて俺とハジメとその他のクラスメイトを異世界、すなわちこの世界へと飛ばしたのだ。
その後イシュタルとかいうジジイに色々説明され、天之河の鶴の一声で戦争に参加することになっちまった。しかもそれのせいでハジメを失うなんて…!
「クソッタレが…」
俺にとってハジメは命より大切な存在だったんだ。幼少より学びたくもない剣道やら忍術の訓練をさせられ、姉貴である雫に負けたら許さん、門下生にも負けたら許さんと教育されてきた。姉貴は親に優しくされていたが、俺は修行と生活どちらも厳しくされていた。
そんな中、俺は、1人の少女に出会ったんだ。黒髪のなんの特徴もない女の子。だけど何故か心惹かれて…3週間後、俺はその少女と付き合っていた。
修行させてくるとんでも性能な親から逃げてハジメの家に毎日通う。愁さんや菫さんは俺の事を歓迎してくれて、とても嬉しかったし、ハジメは俺に色んなことを教えてくれたんだ。
なのに、俺はハジメのことを見捨ててしまったんだ。見殺しにしてしまった。俺は、ハジメを奈落へと落としたんだ。あそこでハドロンブラスターを使わなきゃ、俺は、俺はァァァァァァァ!!!
「…恋人を助けたくありませんか?」
……後悔している俺の目の前に銀髪のシスターが現れた。シスターは俺にハジメを助けたくないかと聞いてきた。
「え……誰?」
「申し遅れました。私の名はノイント。エヒト様に仕える神の使徒です」
「かみの、しと?俺と同じ…」
「違います。私はあなたがたとはちがい、エヒト様に直接仕えている者です。それで、どうですか?あなたは恋人を助けたいですか?」
ノイントは俺にまたも問いかけてくる。なんでか分からないけど俺の脳に黒い何かが侵食してくるけど、俺はその何かが分からない。でも、そんなの関係ない。ハジメを助けられるなら、俺に何が起ころうと……!
「助けたい、です」
「……わかりました。ではこちらに来てもらいますね」
ノイントは俺に優しく微笑みかけると、どこから出したのか女性が振るうにはデカい大剣で俺の首の枷ごと牢屋を切り伏せた。
「え?」
「少し、寝てもらいましょうか」
何度目か分からない意識の暗転。最後に見えたのは俺の事を愛おしそうに見て俺の顔を撫でるノイントの姿だった。
オルクス大迷宮、真の50階層。奈落に落ち、メンチになったと思われていたハジメは、傍らに金髪の幼女を侍らせて手に銃を持っていた。
「…必ず、界人に会う」
「……そこまで?そこまで会いたい?」
「うん、ユエも会えば分かるよ。界人はかっこいい上に可愛いからさ」
「?」
ユエはハジメがいう界人、という存在の例え方に首を傾げた。矛盾しているからだ。だがハジメの恍惚とした顔を見て、見てみたいと思ってハジメとともに進むのだった。
ハジメは、髪を白髪に変えて、目を赤色に変えて、界人に会うために足を進めていくのだった。
ノイントさん登場です!次でR18展開になります!
ちなみに機人の職業が界人に現れなかったら、界人の職業は忍者でした!