タイトルのポーチュラカの花言葉は「いつも元気」や「無邪気」
つまりそういうことです。そういうことなんです。
一人の少女が、風を切り森の中を疾走している。
カウボーイハットを被り、金髪をたなびかせる少女──那月琉花は、愛用の2丁拳銃を構え標的を追い続けていた。
その視線が捉えているのは、機械じみた外見の蝙蝠。
それはつい先程琉花の視界にたまたま入ったものだったが、一目見たその瞬間に始末しなければならないと、五感がそう訴えていた。
「いっ……けえ!」
引き金を引き、放つ。
琉花の手にしている拳銃は、所謂ただの水鉄砲であるが──彼女の場合に限り、その脅威性は他の全てを圧倒する。
液体の性質変化──即ち、ただの玩具にしか過ぎない水鉄砲がどんな銃弾よりも凶悪な意味合いを持ち、その銃口から蓄積された液体を発射するのだ。
だが──。
「やっぱり、当たらないか……!」
標的の小ささに加え、動きながら撃つという悪条件。
狙いなど定まるはずもなく、放たれた液体はことごとく空を切る。
「ちょこまかと……!」
蓄積していく疲労と焦燥。
放つ攻撃は掠りもしないまま、時だけが刻々と過ぎていく。
あれは、ここで倒しておかなければならない。
本能が叫んでいる。
さもなくば──取り返しのつかない事態を招くと。
「あ────」
そこは森の奥の、行き止まりだった。
行く手を阻むように連なる木々。
琉花の視線が、一本の木に止まる蝙蝠を捉える。
「散々手こずらせてくれたけどね……これで終わりだよ」
琉花が引き金を引くと同時に、銃口から液体が解き放たれた。
回避しようとするそぶりさえ見せず、まともに被弾した蝙蝠が地に落ちる。
「終わったぁ……」
大きく息を吐き出して、その場に座り込む琉花。
両手の銃に蓄積された水を使いきり、体力もほぼ残っていない。
「なんだろあれ……新手のウロボロスかな?」
視線の先には、先程撃墜した機械蝙蝠。
気にはなるが、あとで確認すればいい。
その判断が、命取りだった。
「ん……! ぐっ……!」
背後から、鼻と口に布を押し当てられる。
通常ならば十分に反撃可能であろうが、今の琉花にそんな体力は残されていない。
「ぐっ……! んんっ……!」
残された体力をかき集め、抵抗を試みる。
だが勿論、その程度で拘束が緩むはずもない。
「ん──ぅ……」
視界が歪む。
頭の中にもやがかかったかのように、何も考えられなくなっていく。
手も足も、まるで抵抗を諦めたかのように動かせなくなっている。
「ぅ……」
身体から、全ての力が抜けていく。
瞼がゆっくりと降りていき、琉花の意識はそこで消失した。
「……ぅ……ん」
ぼんやりと、意識が灯る。
瞼をゆっくりと開いていくと、白い天井が視界に入った。
「……ここは?」
見覚えのない場所。
なぜこんな所にと、自らの記憶を探る。
「…………!」
頭にずきりと走る痛み。
──そうだ、あの蝙蝠を破壊した後に誰かが後ろから。
そこまで思い返し、そこで初めて琉花は己の置かれた状況に気が付いた。
「な……! 何、これ……!?」
身体は台に縛り付けられ、四肢が器具で拘束されている。
大きく開かされた手足は自らの意思で動かすことは叶わず、力を込めても金属音が響くだけだ。
更には首にも首輪が嵌められており、その状況がもたらす意味を明瞭に示唆していた。
「よくも……こんなっ……!」
ぎり、と琉花は奥歯を噛み締める。
「誰だか知らないけど……この礼は倍以上にして返してやるからな……!」
自分をこうして拘束するような者の狙いなど、どうせ一つしかない。
ならば、脱出も反撃も容易な話だ。
自分の
「ほう、もう目を覚ましていたか」
扉の開く無機質な音と共に、白衣の男が室内へ足を踏み入れた。
中肉中背で幽鬼のような雰囲気を纏っており、見るからに底知れない不気味さが漂っている。
「……お前が、あたしをここへ?」
琉花の問いに、男は唇の端をつり上げる。
「ああ、そうとも。以前から、お前に目を付けていた……なあ、
自らの名を呼ばれ、琉花は身をすくませた。
自分の名が知られている、それは即ち。
「液体の性質変化、随分と面白い能力を持っているじゃないか。……それに」
男が無遠慮に、拘束されている琉花の顎を持ち上げる。
「お前の現状、この意味は分かるだろう? せいぜい壊れないようにあがいて見せろ」
男の手は琉花の顎を離れ、胸部を覆う上着へと這う。
「動かん方がいいぞ。下手に動かれると、肌に傷がつきかねん」
男の取り出した鋏がゆっくりと、見せつけるように琉花の上着を切り刻んでいく。
「くっ……うう……!」
自らの衣服が眼前で破砕されているのに、何もできない屈辱。
知らない内に裸に剥かれているよりも、より一層の羞恥を煽られる。
「ほう、綺麗なものだな」
上着が全て切り裂かれ、男の眼前に二つの乳房が晒された。
男が素肌に指を這わせるが、その感触がこの上なく気持ち悪い。
「やめてよ、変態」
琉花がそう吐き捨てて男を睨み付けると、男は低くそして愉快げに笑う。
「全く強気なことだ。……だが、それもいつまで持つかな?」
琉花の罵倒などまるで気にも止めず、男は太腿にその指を滑らせた。
ひとしきり身体をなで回し満足したのか、再び鋏を手にかけて。
「下も同じように取り去ってやろう」
そう言いながら、あっという間に下衣を切り裂いてしまった。
「…………っ!」
全裸へと剥かれ、琉花は羞恥に顔を赤らめる。
「いい顔をする。お前のような奴がそんな顔をする機会など、そうはあるまい」
男の言葉に怖気を覚えながら、内心琉花は笑っていた。
「(そうやって今の内にヘラヘラ笑ってろ。あたしの
琉花の能力は、液体の性質変化。
あらゆる液体に有効なこの能力は──無論自らの体液に対しても有効である。
──まずは拘束を解いて、それから。
そう考える琉花の希望を。
「ああ、一つ言っておくが」
男の言葉が。
「
いとも容易く、打ち砕いた。
「え……?」
青ざめる琉花に、男は自らの手に装着された腕輪を見せつける。
「この腕輪は、今お前が身に付けている首輪とセットになっている代物でな。装着者同士で強制的なリンクを行い、腕輪を身に付けた者が、首輪を付けた者の異能を奪う事ができるのさ」
男が大仰に肩を竦めて。
「本当に気付いていなかったのか? 先程から汗をかいているのに何の変化もなかった、この状況に」
言われて初めて気付く。
拘束に変化がなかったのは、自分が能力を使っていないからだとばかり思っていた。
それがまさか、能力そのものが使えなくなっていたなどと──。
「だが、本当の悪夢はここからだ」
追い討ちをかけるように、男が笑う。
男の手にはいつの間にか、液体の詰まった小瓶が握られていた。
「ついさっき説明したな? 今、お前の能力は俺が使えるのだという事を」
理解したくない。
理解をしてはいけない。
それを理解してしまったら、私は。
「自らの能力で、地獄を味わうがいい」
男の手にした小瓶が、青い輝きを放つ。
見かけは何の変化もない液体、ただしその中身が持つ意味合いは先程までとは大きく異なる。
「やだ……! やめてっ……!」
琉花がその四肢を動かそうとするも、無情な金属音が小さく響くだけだ。
その間にも、液体を塗りつけた男の手が琉花の身体へとにじり寄っている。
「あっ──うあぁぁっ!」
男の両手が乳首をつまんだその瞬間、琉花は絶頂に身体を震わせた。
「思った通りいい反応をする。自分の能力でいたぶられる気分はどうだ?」
「う……あ、ぁ……ぁ……!」
男の言葉など、琉花の耳には届いていない。
何しろ、男の指が身体を這うだけで絶頂させられているのだ。
凄まじいスピードを以て思考は千切れていき、ただ流されるままに快感を享受する他にはない。
「そら、見てみろ。自分の身体の有り様を」
男に下を向かされ、自らの痴態を目の当たりにさせられる。
秘部からは絶え間無く愛液が溢れ、ひくひくと物欲しそうに震えていた。
「あ、ぁぅぅ……!」
「まだ触れてすらいないと言うのにな。全く、淫乱な女だ」
男が嘲り、その指を下部へと伸ばした。
「嫌と言うほど味わわせてやろう」
男の指が琉花の膣内へ侵入し、激しく蠢かす。
「うあぁっっ! あっ! あぁぁっ!」
琉花の身体は激しくのけ反り、幾度となく絶頂へ叩き込まれる。
気の狂いそうなほどの快感の奔流。
だがそんな中にあって、意識だけは妙にはっきりとしていた。
「……ま……まさ、か……」
息も絶え絶えに呟く琉花の視線の先は、男の腕輪。
その視線に気付いたのか、男の顔に醜悪な笑みが浮かんだ。
「気付いたか。そう、今俺はお前に強制的なリンクを繋げている。したがって俺の許可がなければ、お前は気絶することさえできん」
琉花の顔から血の気が引く。
その事実のおぞましさに震え、ガチガチと小さく歯が鳴った。
「気絶などされてはもったいないからな。まずはこの小瓶の分を使いきるまで、徹底的にいたぶってやろう」
宣言通り、男の責めは容赦なく続いた。
いくら泣き叫ぼうとも、男が決してその手を緩める事などなく。
自分の能力によって作り出された媚薬をその全身に徹底的に塗り込まれ、琉花の身体はまるで常時発情しているかのように──少し触れられただけでも絶頂するように作り替えられていった。
「ぁ……は……ぁ……」
もう、焦点が定まらない。
何度も気絶するほどの快感を受け、なお狂う事も気絶する事も許されなかった琉花は息も絶え絶えに、懇願するような眼差しを男に向ける。
「ぁ……ぁ……」
「まともに喋る体力さえ無くなったか。……安心しろ。丁度薬が尽きた所だ。ゆっくりと、眠るがいいさ」
男の腕輪が光を放ち、リンクを遮断する。
それとほぼ同時に、琉花の意識はぶつりと途切れたのだった。
「ぅ……! んぅ……!」
全身に走る、おぞましいほどの快感に叩き起こされる。
目を開けば先程と同様の拘束状態──否、口にはボールギャグが嵌められていて発声すらも奪われていた。
「ぅぅ……! ぅ……!」
男は相変わらず、媚薬を手にしては塗りつけている。
今の琉花は、それだけで容易く絶頂に達してしまう。
「やっと起きたか。……いや、永遠に目覚めなかった方が幸せだったかもしれんがな」
男が自分の言葉に冷笑し、すぐ傍らに置かれていた台から被せていた布を取り去る。
「…………!」
視界に入ってきたのは、乱雑に並べられた性具。
抵抗しようにも四肢は動かせず、許しを乞うにも発声が封じられている。
「果たしてお前は、壊れずにいられるかな?」
男がローターを手に取り、スイッチを入れて琉花の乳首へと押し当てた。
「……! ぅ! んぅ!」
琉花が目を見開き、その身体をのけ反らせた。
まるで全身に電撃が走ったかのように、痺れている。
「軽く当てただけで、随分な乱れようだな。こんなもの、軽い準備運動の段階に過ぎないと言うのに」
男が乳首に、クリトリスに、ローターを固定していく。
膣とアナルにはバイブが埋め込まれ、その形相は今にも死刑が決行されんとする死刑囚そのものだ。
「いい格好だな。嬉しいだろう? これから誰も味わったことのない快感が味わえるんだ。存分に楽しんでくるといい」
男の指が、躊躇うことなくスイッチを押し。
琉花の世界は、全てが爆ぜた。
「────!」
呻き声をあげる事さえできない、快感の濁流。
琉花の思考は一瞬にして黒く塗り潰されて、絶望的な程の快感にその身体を跳ね上がらせる。
脳髄が砕け散る。
脳漿が潰されて消えていく。
もう分からない。
ぜんぶ、ぜんぶ。
なにも、かも。
「ぁ……ぁ……」
糸の切れた人形のように、琉花の全身から力が消失する。
閉じていく意識の中で、微かに映る世界は──あまりにも黒すぎて。
無限の奈落に落ちるように、琉花の意識は闇へと消えていった。