夏生→30代後半、中学校の教師。素直で穏やか。髪は栗色、少し長めのひとつ結び。就眠時は横向き寝派。
卯月→20代中盤、喫茶店勤務。正直なデレツン。長くも短くもない黒髪。寝室ではすぐ眼鏡外しちゃう派。
状況説明:
二人は睦まじく同棲中。寝室に移動しての行為。
その他:
・視点変更あり
・エピソード内でのカップリングは固定
■卯月視点
「ええと、潤滑剤とコンドームを……卯月くん、少し待っていてくださいね」
落ち着かない。ベッドの上に腰掛けて待つこの時間すらもどかしい。
夏生さんが戻ってくるまでに少しでも心の準備をしておかなければと深呼吸を繰り返してみるものの、やはりどうしても緊張してしまう。
……ふと、俺を抱く時の夏生さんを思い出す。いつも以上に優しくて、色っぽくて、格好良い彼の姿。熱を帯びた視線に吐息、徐々に余裕を失っていく様、汗ばんだ肢体や上擦った声、垣間見える慈しみ――。
体温がじわりと上がっていく。
早く触れてほしい、抱きしめたい、気持ち良くしてほしい、なってほしい――。
「お待たせしました、卯月くん――……大丈夫ですか?」
戻ってきた夏生さんが心配そうに顔を覗き込んでくる。
「――っ」
思わず緩んでしまった頬を隠すように抱きつけば、優しく背中を撫でてくれる。その掌がとても心地よくて、愛しくて、幸せで……気付けば彼の肩口に額を押し付けてしまっていた。
「ふふ、そんなに寂しかったですか?」
「……いや……別に、俺が勝手に、なんか、その……」
一人で発情してしまって――なんて言うわけにもいかず言葉に詰まっているうちに、ゆっくり体重をかけられていきそのままベッドに沈み込む。
「ぁ――」
――スプリングの軋む音に、覆い被さってくる夏生さんのシルエット。彼の柔らかい吐息が耳をくすぐるだけで、意識がどこかへ飛びそうになる。
「……大丈夫ですよ。寂しい思いをさせた分まで、きみをたくさん愛しますから」
背筋を甘い痺れが駆ける。
我慢できない。今すぐ夏生さんがほしい。
「………………抱いてください。……わがままですけど、ぐちゃぐちゃになるくらい、夏生さんのこと……たくさん欲しい、です」
素面の自分が耳にしたら卒倒してしまいそうなほどに甘ったるい媚びた声色。夏生さんにも気持ち良くなってほしい、と持ちかけておきながら相手に寄りかかるような甘え方をしている自分が我が事ながら情けない。
――しかし彼は呆れることもなく、愛おしそうに目を細めて俺に微笑みかけてくれる。
「ううん、わがままだなんて思いませんよ。
それじゃあ――ズボンと下着、また脱がせてもいいですか?」
返事の代わりに腰を上げれば、ゆっくりと下半身から衣服が引き抜かれていく。
少し冷たい外気に身震いすれば、すかさず夏生さんの手が伸びてきて優しく内腿をさすってくれた。
「ん……」
夏生さんにこうして触れてもらえるなら寒いのも悪くない。……そう思ってしまえるほどにはもう、すっかり心は骨抜きだった。
――持ち上げられた爪先に、彼の唇がそっと触れる。
ちゅ、と小さな音を立てられ、身体が勝手にぴくりと震える。
「ふふ、くすぐったいですか?」
悪戯っぽい微笑みの中にさえ、たしかに滲む慈愛の色。
……胸の鼓動が跳ね上がる。
「大好きです。頭のてっぺんから爪先までぜんぶ、卯月くんのことが……」
甲から足首、ふくらはぎへと舌が滑る。その感触がくすぐったくて、もどかしくて堪らなくて……気付けばシーツを掴んでいた。
――脚をゆっくりと開かれる。
恥ずかしさに耐え切れず目を逸らすと、彼の指先が後孔に触れる。そのままぬるりとローションを塗りつけられる感覚に背筋がぞくりと粟立った。
何度も彼と繋がってきた
「ん、っ……」
二十数年そういう目的で触れることの無かった箇所も、今やすっかり性感帯だ。恋は人を変える、なんてよく言ったものだ――と妙なところで実感しているうちに、夏生さんの指が入り込んでくる。
出し入れを繰り返されるたびに異物感と圧迫感がじんわりとほぐれていき、快感が少しずつ蓄積されていくようだ。
……夏生さんは優しい。俺が嫌な思いをしないようにと、いつもじっくり慣らしてくれる。
残酷なまでに丁寧に、焦れったくなるほどに時間をかけて――。
「あ、あぁ、っ……」
ようやく増えた二本の指が前立腺を掠めた途端、思わず声が漏れてしまう。可愛がるようにしてそっと内側を撫でられれば、甘やかな刺激に身体が震えた。
あくまで目的は『ほぐす』こと――それが分かっているからこそ、切なさが余計に募っていく。
早く奥まで貫かれたい。
夏生さんで満たしてほしい。
……そんな淫らな欲望ばかりが膨れ上がって、どうしようもなくなってくる。
「卯月くん、いい子ですね……もう少しですから、どうかそのまま力を抜いて――」
二本の指がゆっくりと中を押し広げていく。夏生さんを受け入れるための準備がようやく整いつつある――それを認識すればするほど、身体が期待に打ち震えた。
息を吐きながら脱力に努める。にちにちと粘ついた音、夏生さんの息遣い、そして自分の心臓の音。それだけしか聞こえない部屋の中でひたすら彼の愛撫に酔いしれる。
もうじき待ちわびているものがこのなかに訪れる――そう思えば、身体の疼きを抑えられなかった。
「っ、夏生さん……」
「――そうですね、そろそろ」
するりと引き抜かれる感覚に軽く身震いしていれば、唇にキスを落としてくれる。
ほんのり頬を染めながらへにゃりと微笑む夏生さんは、年上であることを忘れそうな程に純真無垢であどけない。
……こちらの頬はきっと彼以上に赤く染まっているのだろう。だって、こんなに顔が熱い。
「待っていてください、すぐ着け終わりますので――……大丈夫ですよ、もう慌てて裏表を間違えたりなんてしませんから。ね?」
冗談めかして笑いながらも手際よくゴムを着けていく様は、互いに重ねた夜の長さを俺に思い起こさせた。
◇
ぴとりと押し当てられる感触にいよいよと唾を飲み込めば、夏生さんが俺の手をそっと握りしめてくれる。……初めて彼のものを受け入れた時も、こんな風に優しく気遣ってくれていたっけ……。
――少し汗ばんだ掌を握り返して見つめれば、それを了解と取ってくれたらしく、ゆっくりと腰が進められる。
徐々に先端が入り込み、指よりも太く硬いそれで内壁を割り開かれていく。少しの苦しさと引き換えに得られる多幸感は何物にも代えがたく、自分の中を夏生さんで満たされるごとに彼への想いが募ってくる。
「っ、……ん、ぅ、…………っ」
夏生さんの熱くて固いそれに擦られてぞくぞくとした快感が走る。奥へ奥へと進んでいくたびはっきりしてくる彼の形――そして質量に頭がおかしくなりそうだ。
散々なまでにしっかりと解され蕩かされた
「…………」
思わず両腕を伸ばす。小さな子供が抱っこをせがむようで恥ずかしくも思うけど、そんなことより彼との距離を少しでも埋めて繋がりを確かなものとしたかった。
「ふふ……いいですよ。たくさんぎゅーってしてください?」
静かに覆い被さってくれた夏生さんの背中に手を回して抱きしめ合う体勢をとる。
密着した分、より深いところまで入り込んでくるのと同時に、彼の匂い、息遣い、身体の形、体温に心音――そのすべてが鮮明に伝わってくる。
「気持ちいい……。卯月くんの肌がぽかぽかしていて……えへへ、僕も落ち着きます」
耳元に響く優しい声音と髪を梳く手付きがくすぐったくも心地良くて、恍惚とした吐息と共に笑みが零れる。
……ああ、本当に好きだ。
「ん……? ……ふふ、嬉しい」
お返しとばかりに彼の頭をゆっくりと何度も撫でる。指通りの良い髪を手櫛で整えるようにしながらそっと首筋に頬を寄せると、シャンプーの香りと仄かな汗の匂いが鼻腔を満たす。
胸に溢れる愛おしさに突き動かされるまま再び彼を抱き締めればくすりと優しく微笑まれ、額や目尻、首筋まで、至る所に口づけられた。
「大好きです、僕の可愛い卯月くん……。
――えへへ、なんてね」
両手で頬を包まれながら、何度も唇を重ねられる。
ちゅっちゅと甘い音が響く、戯れるような愛らしいキス。角度を変え徐々に深まるそれに胸の奥がきゅんとして、夢中で彼を求めてしまう。
舌先が触れ合うたびに、頭の芯がしびれてとける。……本当に夏生さんは俺とひとつになりたいんだと理屈抜きに確信できた。
とろけるような心地良さに思考能力も羞恥も溶かされて、ただひたすら幸せに浸る――。
◇
名残惜しくも唇が離れて夏生さんと見つめ合う。
熱っぽく蕩けた瞳は俺をしっかりと捉えて逃さない。彼の腕に包まれながら、その視線だけで背骨が溶けるような錯覚を覚えた。
「……僕も欲しいです……卯月くんが、もっと……」
――吐息混じりの懇願と共にやんわり腰を揺すぶられる。
切なげに眉を寄せている表情には、普段の柔和さとはどこか違った色香がある。余裕の無さすらいつまでも見惚れてしまいそうなほど艶やかで、自分が今この人に抱かれていることを意識すればそれだけで軽く達してしまいそうだ。
「んっ……すみません、はしたなくて……。卯月くんさえ構わなければ、このまま続けさせてください……」
快感を互いの身体に染み込ませるような緩慢な動作には強い刺激こそ無いけれど、それでも確かな悦びがじんわりと内に広がっていく。
「ぁ……気持ち、ぃ……」
無意識なのか、感じ入った声を零しながら夏生さんの背中が仰反る。そのひどく煽情的な姿、ひときわ大きく感じられる夏生さんの脈動といったら――!
「夏生……さん、……もっと俺でっ、きもちよく、……なって、ください……っ」
脚を絡め引き寄せるようにして密着すると、小さな呻きが聞こえてくる。その声が耳に入るだけで腹の奥底からぞわぞわしてきて、意識が一瞬白く染まった。
「っ、ふふ……駄目ですよ、卯月くん。あんまりイタズラしちゃ……先生、我慢できなくなっちゃいますから、――ね?」
嗜める言葉とは裏腹に愉しげな笑みを口元に浮かべ、そのまま指先で腰をそわそわとなぞってくる。
じんとした感覚が全身へと広がり思わず身体を震わせると、嬉しそうに微笑みながら夏生さんはゆっくりと律動を再開させた。
■夏生視点
卯月くんとの境目が曖昧になっていく――互いの熱でぐずぐずに解け合い混ざり合って、一つになる心地よさに陶酔する。
時折漏れ出る彼の声、荒い呼吸、そして鼓動……心の底から愛おしい。
甘えてくるだけ応えたいし、求められずとも甘やかしたい――けれどなんだかほんの少し、彼に意地悪したくもなる……。こんなにも自分本意な欲望を受け入れてくれる卯月くんの寛容さには、感謝してもしきれない。
「……ふふ。ここが弱いんですよね、卯月くん?」
そっと内壁を押し込んでいく。
彼への愛を刻みこむように、焦らず、じっくりと確実に。
「〜〜〜……っ、ぁ」
背中をゆるく反らしながら、彼が咄嗟に顔を覆う。
「……だめ。卯月くんのかわいいお顔、ちゃんとこちらへ見せてください」
少しだけ強引に、腕を掴んで退かしてしまう。……放っておけば照れ屋な彼はしばらく視線を合わせてくれないだろうから。なにより羞恥に染まった卯月くんの姿はとびきりに愛らしいし。
「…………………………いじわる」
拗ねた口調に、涙で潤んだ上目遣い、赤く火照った顔と耳――胸がきゅんとしてたまらない。
……なるほど、これは『反則』というやつだな。
「んぅ……っ」
思わず首筋に唇を寄せてしまう――小さく震えながらも僕を受け入れてくれる彼のいじらしさに煽られるまま、吸いつくように口づけては離す。
……僕の可愛い卯月くん。誰よりも素敵でいとおしい、世界で一番大切なひと……。
「っ、……ん、〜〜〜……っ」
卯月くんのきれいな肌に花びらが散っていく様は、まるで春の花が咲き乱れているようだ。
ほんのり桜色に染まった肢体がより情欲を掻き立てる――無意識の深い律動が境界をさらにかき混ぜて、絡み合う視線を、舌を、指先を、熱を、すべて融かしてひとつにする。
言葉を介さずとも伝わってくる、互いを想いあう感情の温もり。重ねた
灼けるように熱い体温は、確かな生命を刻む証――ああ、僕は今生きている。きみの中で生きている。きみの中に僕がいる。そう感じられることが嬉しくて仕方ない。
――身体の奥底で脈打つ熱が全身を巡り始める。
何度も名前を呼んでしまう――卯月くんの唇からは意味のない音しか零れない。
もう何も考えられない――思考までもが溶けていく。
貪るみたいに口づけて、打ち付けるように貫いて――互いの限界が近いことを悟り、絶頂へと駆け上がる。
――卯月くんの中がうねる。
搾り取るような締め付けに逆らわず、薄い膜越しに精を放つ。
◇
卯月くんの額に張り付いた髪を指で払いながら、唇に何度かキスを落とす。
余韻の醒めない表情に、呼吸に合わせて収縮する内壁――そそる、という表現がこれほどしっくりと嵌る状況もないだろう。……射精したばかりなのに、また大きくなってしまいそうだ。
「――あ……卯月くんも足りませんか?」
「『も』って、えっと……」
「ふふ、違いました? まだちょっとだけ物足りない、って顔をしていたので」
図星を突かれた、といった様子でみるみる彼の頬が紅潮していく。本当に素直で可愛らしい子だなあ……。
ゆっくりと引き抜いて、下半身に視線をやる――べとべとになった彼のお腹と、白濁をたっぷり溜め込んだコンドームが視界に入る。お互いこれほどまでに興奮し求め合っていたのかと思った途端、ますます愛おしさが込み上げてきた。
「――その前に、少しだけお掃除させてくださいね。よいしょ……」
ベッドサイドからティッシュを手繰り寄せて、卯月くんのおへそを拭う――本当はぜんぶ舐め取りたいけど、実行に移せば「またそんなことして」なんて怒られてしまうだろう。……そんなきみも可愛いのだけど。
「ん、っ……」
達したばかりで敏感になっているらしく、そっと肌を撫でるだけでぞくりと彼の身体が震える。
「ふふ、たくさん出ちゃいましたね」
周りに飛び散った体液も丁寧に拭い取ってから、くすぐるみたいなキスをする。そのまま上へ伝って乳首を吸えば、可愛い声が聞こえてきた。口に含んで舌先で転がせば、さらに高い声を上げてくれる。
音を立てながら口を離す――ぷっくりと膨らんだ卯月くんのそれが唾液で濡れている様はとても艶っぽい。
今度は反対側も。同時にさっきまで可愛がっていた方を指でくるくると撫で回せば、先端をかすめるたびにびくんと腰が跳ね上がる。
「んん……やめ、いたずらはそのくらいで、……っ」
そんなに蕩けきった声色で抗議されてもなあ。……最後に軽く吸いついておしまいにしてあげよう。
「うー……………――つ、次は俺がしますから!
そこ座っててください……動かないでくださいねっ」
「はぁい」
赤面する卯月くんの可愛さにうっかり頬を緩ませれば、起き上がりざまにつんと額をつつかれてしまった。
……「まったくもう」とでも言いたげに反らせた横顔が、愛おしくてたまらない。
■卯月視点
「夏生さん、ゴム替えますね。……あ、その前に水分」
サイドテーブルに置いてあったペットボトルはすっかり結露にまみれていた。
今度の休日に保冷タンブラーでも買っておこうかな、と思いながら口をつける。少しぬるくなった水が喉を通っていく感覚が心地いい。
「……夏生さん、こっち向いて」
――振り向いた夏生さんの唇を奪って、すかさず水を流し込む。
いたずらの仕返しというには喜ばれそうな気がしないでもないけど、少なくとも驚かすことには成功したらしい。きょとんと目を丸くしながら水を飲み込む姿がなんだか妙におかしくて思わず笑みを溢してしまえば、一瞬の間をおいて彼もくすくす笑い出した。
「もう、卯月くんってば……いたずらっ子なんですから。ふふ……」
「夏生さんほどじゃないですけど」
ふたりで額を合わせながらこうして軽口を叩き合っていると、今が行為の途中なことを忘れそうなほど穏やかで幸せな気持ちに包まれていく。ゆったり流れる時間も悪くない、と思えるようになったのは夏生さんのおかげだろう。
……なんとなく、夏生さんが『自慰が苦手』と言っていたのを思い出した。自分も男性である以上"催す"のは仕方無い、しかしいくら快感を伴おうと――むしろ、だからこそ嫌になる、と。
『――でも、卯月くんとするのは好きです。きみとはいくらでも"したい"と思うし、気持ち良いと感じることも……きみとは、嫌に思いません』
「卯月くん?」
「……――ぁ、すいません……ええと、ゴム、そろそろ」
慌てて我に返った俺がいそいそと準備を始めれば、その姿を見つめながら夏生さんが小さく笑う。
「…………夏生さん。俺が今、何考えてたか分かったりします?」
「うーんと……『一緒になれて良かった』、かな」
やっぱりこの人には敵わない。
◇
「夏生さんの、もう少し勃たせたいんですけど――あと、俺も着けておきたいです。……また汚さないように」
「ふふ――じゃあ、しばらく触りあいっこですね?」
「……はい」
夏生さんが「おいで」というように両手を軽く広げてくれたので、そのままゆっくりと身体を寄せてみる。肩口に額を押し当てるようにしながら彼の腕の中に収まってみれば、ふわりと抱きしめられて優しく頭を撫でられた。……悔しいくらいに心地良くて胸の奥が熱くなる。
「えへへ……。卯月くんといられて幸せです、僕も……」
耳元でそんなことを言われてしまったらひとたまりもない。……心臓がばくばく鳴って苦しい。本当に一生かかっても勝てる気がしないな、夏生さんには……。
「……誰かとこうして抱き合って、肌を重ねて、心を通わせる日が来るなんて――ふふ。人生って、何が起こるか本当に分からないものですね」
しみじみと呟きながら、背中をそっとなぞってくる――そんな彼の様子がなんだかいたたまれなくて、ぎゅっと強く抱きしめ返す。
「……これから何が起ころうと、俺はずっと一緒です」
――夏生さんの顔を見上げて、そっと頬を包み込む。
見つめ合う瞳に映っているのは、ただお互いの姿だけ。
「うん……。ありがとう、卯月くん」
幸せそうに微笑む夏生さんの顔が近付いてきたと思った瞬間、唇に柔らかく温かいものが触れる。ちゅっと可愛らしい音を立ててすぐに離れたそれは、一瞬の感触だったはずなのにひどく甘い感覚を残した。
「ん、」
今度は俺の方から、夏生さんの頭を抱えて引き寄せてながら口付ける。何度も角度を変えて、啄むような軽いものを。それから舌先でちろりと舐めて、薄く開いた隙間に滑り込ませて絡めて、吸ったりして。
――キスに夢中になっていれば、いつの間にか互いの手は自然と下肢へと伸びていた。
しなやかな指先と柔らかな唇、そして優しい彼の眼差し。
吐息は静かに熱を帯び、ときめく鼓動は心地良く……胸のうちに溢れてくるのは、夏生さんへの想いだけ。
心から幸せなひと時だと思った。
◇
――どちらからともなくそっと唇を離せば、とろりと糸を引きながら唾液が零れて伝っていく。
「あ、あの………………抱き合ったまま、したい……です」
少し恥ずかしくなりながらも正直に告げる。
「もちろん」と言うように、彼は優しく頷いてくれた。