今回のあらすじ:
ソファに座って書類を確認。一段落ついた頃、卯月くんがココアを作ってきてくれた。隣に座り距離を詰めてきた彼に「もっとくっついてもいいんですよ」と言ったら頬を赤くしながら「大丈夫です」なんて言ってきて……ふふ、かわいいなあ。
───
慌てるような早口に、ほんのり染まった頬に耳――『分かりやすい』卯月くんが好きだ。
照れている時。喜んでいる時に、困っている時、僕を案じて叱ってくれる時……いつでも彼の感情は、心から溢れ出しているように見える。卯月くんはきっと隠そうとしているのだろうけれど、内側からにじむそれはどこまでも素直でまっすぐで……だからこそ自然と心に響くのだろうし、そんな彼が愛おしくてたまらなくもなるのだろう。
「それじゃあ、いただきます」
ひとくち含めば芳しい香りが口いっぱいに広がっていく――優しい甘みを味わいながらゆっくりと嚥下すれば、温かさが舌を滑るように喉を通って胃に落ちる感覚が気持ちいい。
「……どうですか? その、今日はラム酒を入れてみたんですけど」
そわそわした面持ちで尋ねる卯月くんはまるでご主人様の様子を窺う犬か猫のようだ。
顎の下でも撫でてみようかな……いや、今は彼の厚意に応えたい。せっかく作ってくれたんだもの、まずは感想を伝えてあげよう。
「どうりで香りがいいと思いました。上の泡立てた牛乳といい、なんだかとても贅沢ですね。お店の新メニューですか?」
「いや……この間テレビでやってたから、真似してみようと思っただけで」
「そうなんですね。ふふ……美味しくできていますよ。生徒なら花丸あげちゃいます」
「……良かったです」
恥ずかしげに目を伏せながらも、口元はふにゃっと綻んでいる。……本当に彼は分かりやすい。
「な、なに笑ってるんですかっ」
思わず笑ってしまった僕を見て拗ねたような表情で睨んでくる彼――そういうところが堪らないのだ、なんて言ったらまた怒らせてしまうだろうか。
「ごめんなさい、あんまり卯月くんが可愛らしくて……ふふ」
おっと、つい口が滑ってしまったぞ。
「………………」
卯月くんは案の定みるみる顔を赤くしていく。わざと余計なことを口にしてしまう癖はもう直りそうもない――だって、僕の言葉ひとつでこんなに心を揺らしてくれるんだもの。
「――んにゃ」
いつの間にカップを置いたんだろう。
うどんでもこねるようにして両頬をむにむにと揉まれてしまう。……指先まで暖かな卯月くんの手つきが心地いい。そのまま身を任せていれば、困ったように微笑む彼の顔が近づいてくる。
「……ん」
口づけられた場所をぺろりと軽く舐めてみる――ほんのり甘い味がするなあ、なんてぼんやり思っていると、卯月くんが耳まで真っ赤になっていることに気付く。
「ふふ、どうしました? お酒が回ってきたのかな」
頬を撫でれば蒸したての温泉まんじゅうのような触り心地。このまま食べてしまいたくなるほど愛らしくて、また口元が緩んでしまう。
「……こ、このくらいで酔ったりしませんっ」
ぱっと離れてココアの入ったカップを煽る、照れ屋な彼の精一杯の虚勢。
そんな姿がたまらなく愛おしくて、僕はまた笑ってしまうのだ――。