※この作品はR-18です。

ベアトリクス・ブレーメの淫靡な夢   作:雄渾

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ユルゲン兄ちゃんがアイリスの事を諭して、我慢した場合です。
つまり『冥王来訪』の世界線から変化しないルートです。

ベア様と絡みのある女性と言えば、原作でシュタージ風の『お話』をされたマライさん。

彼女に登場してもらう事にしました。




魅了 マライ・ハイゼンベルク
第九話


 昨日、自分の前で見せた妹・アイリスディーナの愛の告白。

同じような事を見知らぬ男に、するのであろうか。

諦めを付けようとはしたが、ユルゲンにはそれが耐えがたいものの様に思えた。

 

「また奥様と喧嘩したのかね。それとも妹さん?

何も解決しないで自宅に戻るのか。ここに来たのは気分転換するためだろ」

困り果てたユルゲンは何時もの様に喫煙所に来て、同輩のヤウク少尉に相談していたのだ。

「ああ、でもその前にシュトラハヴィッツ少将に今一度掛け合って来る。

ベアトリクスとアイリスの卒業後の配属について相談しようかと思ってな」

ヤウクは諦観を漂わせた口調で述べた。

「望み薄だぞ。あの人は……」

「参謀本部作戦次長だったんだろ。どうにか出来るだろうし、何とかなるだろう。

『プラハの春*1』の話でも聞きながら、お願いしてみるさ」

 

 


 

 勤務時間後、そんな気持ちで参謀本部に来てみたが、肝心のシュトラハヴィッツ少将は不在……。

空軍からの転属組と言う事で陸軍の連中からの評判はすこぶる悪いのは自分でも知っている。

それにここは陸軍司令部も同じ建物の中にあって、いつまた喧嘩を仕掛けられるか分からない。

廊下から足早に退散しようとした時、声を掛けられる。

「もし……」

 ウェーブの掛かった胸まで有る金髪に翡翠色の目。

背はベアトリクスやアイリスディーナより10㎝近く低く、左目の下にある泣き黒子は、一度見たら忘れぬほど印象的……。

胸はやはり妻や妹と比べると貧相に感じるが、背丈の割にたわわと実っている。砲弾型で張りのあるのが上着越しに判る程だ。

両手で抱える様にして書類を胸に挟み、灰色の婦人兵用勤務服といた格好。

膝下まで有る同色のタイトスカートに黒いストッキング。

足の太さはベアトリクスより小柄だからだろうか、ほっそりしている。

妻より年齢も上なせいもあろう、腰つきやヒップの肉付きも何とも艶っぽい。

あの脹脛を触れてみたい……。おもわず考えてしまった。

 

 ユルゲンは段々と目の前にいる女の事を思い出した。

何時ぞやヤウクに教えてもらった、ハンニバル大尉の愛人との噂の有るマライ・ハイゼンベルク少尉。

左の泣き黒子は、一説によると情が深く、母性本能が強いという。

その様な所に、ハンニバル大尉は惚れたのであろう。妻子の有る男の心の隙間に入り込む、 魔性の女という見方も出来るかもしれない。

 

 

「失礼ですが同志……、本官に何か御用ですか。それではお暇(いとま)させて頂きますよ」

彼は敢て名前を答えないで去ろうとした。その時左袖を右手で掴まれる。

「貴方……、ハンニバル大尉の所のユルゲン・ベルンハルト中尉ですよね。

同志大尉から同志ベルンハルト中尉の事は色々伺って居ます」

 

「もし宜しければ、この後、お茶しませんか……」

右手で軍袴に入れた懐中時計を取り出し、覗き見る。

時刻は、午後3時を過ぎたばかりか……。

上司の愛人と言う話が本当ならば、無下には扱えない。

「う~ん」

 受け答えと言い、物腰柔らかな所がハンニバル大尉の気を引いたのだろうか……。

どこか、しっとりと濡れた感じの典雅な女性だ……。

一通り思案していると、彼女がこう答えた。

「そうしましょう。一旦用事を済まさせてきますから15分後に衛門で落ち合いましょう。同志ベルンハルト」

満面の笑みを浮かべる彼女を見て、苦笑いすることしか出来なかった。

 

 あの一件以降、ベアトリクスとちょっとしたいざこざが続いてるし、彼女に頭を冷やさせるのに良いだろう。

軽い返事でハイゼンベルクからの誘いに乗ってしまったのだ。

 


 さて、ユルゲンたちは、ベルリン市内に戻り、なじみのレストランに居た。

ハイゼンベルクの誘いを受け、夕食を共にすることにしたのだ。

 運ばれてくる料理を待っている間、去年のウクライナ派兵のことを話していた。

グラーシュ*2に、ブロートヒェンと呼ばれるパン。

毎度の如く並ぶ、ザワークラウト。

ユルゲンは、このキャベツの漬物だけは何度食べても好きになれなかった。

 

 外で食べるのは余り好きではないが、多少の気分転換には良かろう。そう思いながら、酒杯を傾ける。

静かに、ザワーブラーテン*3を食べるハイゼンベルクの姿を見る。

ナイフとフォークを巧みに扱う姿、そうした姿が紗がかかったような幻想的な姿を見ているようで引き込まれる。

(このまま家に連れ帰って、上等なブランデーでも飲みながら朝まで愛を語り合えればなぁ……)

食事を摂る手を止めて、彼女の冴えた美貌を無遠慮なほど盗み見た。

 瑞々しい処女妻・ベアトリクスとは違う、成熟した肉体とはこれ程の物か……。

己が劣情の中で、自由に辱める様を思い描いてばかり。

(なんてよい女だろうか……。こんな美女が40を超える初老の男に辱められてるなんって……)

ユルゲンはハッと我に返ると、顔を下に俯(うつむ)き、恥じ入るのであった。

 

「どうしました同志ベルンハルト、手が止まってますが……、せっかくの料理が冷めますよ」

ハイゼンベルグが、情感的な切れ長の瞳を向けてくる。

「これは失礼……、フロイライン・ハイゼンベルク(ハイゼンベルク嬢)*4」

そう言うと、残りの料理を突いた。

 ユルゲンは前日の事もあってか、彼女の話を呆然と聞き流していた。 

口直しに、アプフェルショーレ*5を飲みながら、考える。

此処で今、酒を酌み交わしている人物に妻との揉め事を打ち明けた所でこの気分は晴れようか。

精々、諭されて終わってしまうのではないか……。其の事を、彼は心の中で思うた。

 

*1:
1968年4月に始まったドプチェク政権下で展開されたチェコ・スロヴァキアの民主化運動。8月20日ワルシャワ条約機構軍(主力はソ連と東独軍)がプラハに侵攻して武力弾圧を行った

*2:
ハンガリーのトマトスープ料理。ドイツでも食べられた。

*3:
酢漬け牛肉を赤ワインで煮たドイツ料理

*4:
東ドイツではこの様な表現は忌避された。一般的に呼びかけは女性の場合、未婚・既婚問わず女性はフラウだった

*5:
炭酸水で割ったリンゴジュース




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