ベアトリクス・ブレーメの淫靡な夢 作:雄渾
喫煙所から台所に戻ろうとしたユルゲンの手首をヤウクが掴んだ。
その際、懐中から無言で物を取り出し、ユルゲンに差し出す。
「これは」
3メートルほどの一本の細い紐だった。
ヤウクは目をキラキラと輝かせ、興奮した面持ちでまくし立てるように告げる。
「君も色々奥様の愛に縛れて困っているのだから、愛には愛で答えてあげなよ。
ちょうどいい機会だ、愛の鎖で縛ってあげたら……」
愛の鎖という言葉にユルゲンも興奮して、どうしようもなくなってきた。
いつにも増して、怒張する男根に、困惑を感じるほどであった。
「縛り方が分からないなら、僕が教えてあげるよ」
教えてあげるという一言に戸惑いつつ、ユルゲンはヤウクの真意を考えた。
恐らくこの男は、自分の妻を縛る為ではなく、フェンシングを教えるノリで答えたのであろう。
そう考えて、同輩の申し出を
「ありがとな。それはまたの機会にするさ」
爽やかに答えると、ユルゲンはヤウクの前から辞して、ベアトリクス達の元に向かった。
「ハイゼンベルクさん、私もあなたに、言っておきたいことがあるの」
ベアトリクスは意味ありげに薄く笑って、マライの方を向く。
「後から来た人間に、色々とユルゲンの事を口出しされるのは困るわ。
それに今の私の立場は、あの人の妻なの。わかって?」
そんな風に言われれば、マライも言わずにいられなかった。
「あら、私の方が軍隊では先輩よ。
それにあなたも士官学校を出たばかりとは言え、将校でしょう。
女子生徒の主席卒業とはいえ、先任の将校の事を尊重する事ぐらい、できないのかしら」
「ふふふ、良いこと教えてあげるわ。
年齢じゃなくて、ユルゲンとの関係は私の方が古いのよ」
ユルゲンと関係するまで、男を知らなかったマライは、口惜しかった。
だいぶ年下のベアトリクスに馬鹿にされるのが、今更ながら悔しかった。
不甲斐無かった彼女が、ここでベアトリクスに敗北を認めるような事を言うのは耐えられなかったのだ。
自分の事ばかりではなかった。
20代半ばまで処女だった自分を、選んでくれたユルゲンが、あまりにもみじめではないか。
そう思って、きっぱりと言い返した。
「失礼な娘ね。早ければ、いいってものじゃないわ」
ベアトリクスは、マライに不敵の笑みを浮かべながら、答える。
「そうよね。あなたは、簡単に結婚出来なさそうですし……」
語気を強めて、付け加える。
「だからって、ユルゲンと猥らな関係に走るなんて、本物のけだものなのね。
あなたという女は……」
その瞬間、マライの顔に困惑の色が広がる。
「ひどすぎるわ。言ってることも分からなければ、ふしだらな事を口走るなんて」
「人の
「何よ、それは」
マライが、そう言うより早く、ベアトリクスは両手を掴んで、後ろ手に手錠で縛り上げる。
160センチ台のマライに比して、175センチという体格の大きいベアトリクスにしてみれば、彼女の腕をひねることなど造作の無い事だった。
「あ……」
「こうして、けだものにふさわしいアメリカ製のブレスレットを付けてあげたのよ」
マライは、顔を真っ赤にしながら、両手を必死に動そうとして、うろたえる。
「いや、いやよ。そんなの、外してよ。お願いよ、ベアトリクスさん」
「うふふ、女狐にふさわしいアクセサリーね」
戸惑いながら、全身を動かしてあらがうマライを見ながら、ベアトリクスは、己の中にある不思議な感情が高ぶっていくのに、戸惑っている様子だった。
自分の心の内に、こんな性格があったろうかと怪しまれるような気持ちが、抑えきれなかった。
それは、嫉妬というより、
ユルゲンは、あまりの興奮した現場に、呆然と立ち尽くしてしていた。
「お前達……」
ユルゲンの存在に気が付いたのは、ベアトリクスだった。
顔を上げたベアトリクスの目に飛び込んできた光景を、信じがたい物を見るかのように茫然と眺めていた。
やがて、時間が経つと、ボンヤリと霞んでいたものが、徐々に焦点を結んでユルゲンの姿になったのであろうか。
「あ、あんな年増女に入れ込むなんて……、あ、貴方って人は!」
マライへの嫉妬で激高していたベアトリクスは、ユルゲンに平手打ちを喰らわせる。
「このばか、色きちがい」
ユルゲンは打たれた頬を手で押さえながら、今にも泣きださんばかりの顔をするベアトリクスに、こう答えた。
「いいだろう。君はその美しい手で、俺の頬を打った。俺も暴力をもって報いよう。
炎のごとき、愛情の暴力で」
そういうと懐よりヤウクに貰った細引きを取り出し、たちまちベアトリクスの右手にかけた。
「い、いやあ、縛らないで」
「ああ、いいおっぱいだ」
そういって背後から、双丘をセーターの上から鷲づかみにされて、揉みしだかれる。
ベアトリクスは体を震わせて、長い黒髪をさわさわと揺らした。
「ア、アアアァァァ……」
波打った長い黒髪から甘く官能的なにおいが漂い、ユルゲンの熱情をより昂らさせる。
ユルゲンの力強い手のひらに、乳房を揉みしごかれたベアトリクスは、抵抗しようにも力が入らなかった。
焦点の定まらぬ赤い目を見開き、虚しく首を左右に振るばかりであった。
「ゆ、許して……」
ぐるぐると両手首に細引きが巻き付けられると、ベアトリクスは黒髪を振り乱した。
「いやぁ、いやぁ」
ユルゲンの初めてとは思えぬ巧みな紐さばきで、きりきりと縛り上げると、不思議な感覚が全身を駆け巡った。
生まれて初めて、女にかけた紐という物が、こんなに素晴らしい物なのか。
ユルゲンは、倒錯した快感に溺れていくのが実感できた。
「ほ、ほどいて……ねぇ、あなたとマライの事は認めますから……だから、許して」
ベアトリクスは、甘い嗚咽とも、哀願とも、判別出来ぬ様な声を漏らした。
ユルゲンは、ベアトリクスをベットの上に放置し、マライの方に体を向ける。
ユルゲンは、床に倒れ込んでいるマライに近づくと、深々と口付けをした。
彼女のわななく唇に舌を差し込むと、舌の先を絡み合わせて、淫らな音を立てて吸い上げた。
「抱いて。抱いて、何もかも忘れさせて。私の心の中をあなたの事だけにさせて……」
強く抱きすくめた後、再び立ち上がったユルゲンは、彼女の背後に回る。
「抱きたい、抱かれたい。二人の気持ちは同じだ。でもそれに耐える。
これが強い想いを作る。作れるんだ」
背中から抱き着いて、マライが着ている勤務服のブレーザーと、ブラウスの前を開ける。
「マライ。君と俺との間では二人で過ごした月日がない。つまりは
結ばれても、一時の事でしかない」
ブラジャーの留め具を外すと、両手で双丘をグッとつかんだ。
「俺とベアトリクスが作り上げてきた過去には負ける。
だが抱きたいのを我慢すれば、心の中に欲望が残る」
そういうとユルゲンは、後ろからマライの豊満な両胸を揉みしだいた。
「ああぁん」
手錠をされたままのマライは、甘い痺れに全身をなよなよとさせながら、ユルゲンにしなだれた。
顔を紅潮させながら、吐息を漏らす。
「はあああ……意地悪な人ね」
ユルゲンは、彼女の首筋に舌を這わせながら、そっとささやきかける。
「この渇きは強い。お前は俺の事を求めて、他のどんなものにも左右されなくなるだろう」
「貴方……」
余りの衝撃に唖然とする幼な妻ベアトリクス。
彼女は、見るのも
目を背けて、顔をうつむけることしか出来居ない様子だった。
ファンの皆様、申し訳ありません。
ベア様といえば、サディスティックな印象が強いんで、こんな展開にしてしまいました。
女性は、男性よりずっと、ずっと独占欲の強い生き物なので、お兄ちゃんの事で冷静さを失わせる結果になってしまいました。
まあ、手錠掛けられたマライさんも、原作より平和だから良いかな。
本番は来月に掲載する予定です。お楽しみに。