ベアトリクス・ブレーメの淫靡な夢 作:雄渾
深い抱擁の後、ユルゲンはベアトリクスへ向け、口付けをする。
彼は顔を斜めに向け、右腕を伸ばし、彼女の頭を支える様に項に手を添えた。
ユルゲンの左手がバスローブ越しに、そっと乗せられる。
ベアトリクスは、段々と鼓動が早くなり、息が詰まる様な感じがし始めた。
顔が火照り、気の遠くなる様を実感していた。
ベアトリクスは、顔を一瞬離すと、両腕を彼の背中から、腰に回す。
体全体で
そっと、彼の
ユルゲンの涙は、既に止まったとはいえ、その眼には未だ憂いが残っているのが判った。
幼くして両親の離婚という形で、家族を失った孤独な男。
こうして情愛の中に在っても、その気持ちは別な所にあるように思える。
彼が、一瞬見せる遠くを見つめるような仕草……
ベアトリクスは、気恥ずかしさから照れ笑いを浮かべると、彼もまた笑みを浮かべた。
彼女は、緊張のせいか、喉の渇きを感じていた。
視線を
「
ユルゲンの咄嗟の一言に、ベアトリクスは、思わず絶句する。
何方かと言えば消極的な彼が、その様な言葉を発したのに驚いた。
「どういう事……」
彼は舌を出し、唇の周囲を舐め始める。
「
そう言うと、ベアトリクスは顔を離した。
ユルゲンは、目を見開いて、戸惑っている様を見せる。
「嫌かい」
「何て言うか、その……。こういうのはしたことないから
「駄目じゃないんだね」
「初めてだから、恥ずかしいのよ……」
彼は破顔すると、満足そうに答えた。
「俺もだよ。もし君が、嫌なら止めても良いけど」
ベアトリクスは、彼の腰を、両腕で引き寄せる。
「
ベアトリクスは、目を一瞬閉じると、涙がはらはらと落ちてゆく。
滂沱の如く流れ出る涙は、それまで抑えていた感情を爆発させた。
彼女は
「それに貴方の心の中にあるアイリスへの想い……、聞かせてもらった以上、後戻りは出来ないわ」
ベアトリクスからの問いに、彼は黙して、答えない。
「彼女とは、もう今まで通りに接する自信が無いの……。
同級生でも、可愛い
ベアトリクスは、赤い瞳を瞬きさせながら、続ける。
「私が知らないユルゲンを知っている……、その事実だけでどうしようもなく
彼女と貴方は同父同母の兄妹。例え生年は別でも断ち切れぬ血の縁があるわ」
ベアトリクスは、全身に
「一方私は好いた仲とはいえ、他人よ。
仮に同年同月同日に死して、同じ墓所に葬られたとしても、其の事は消えないでしょう。
ヴァルハラに導かれても、キリストが言う最後の審判を受けても変わらない」
一度落ち着いていた鼓動が強くなっていく。
「仏教の伝える所の地獄、三途の川を渡って
ベアトリクスは、意を決して、告げることにした。
「
「とすると、俺との子供が……」
「私を繋ぎとめる鎖……、相応しい言葉じゃないかもしれないけど」
見詰める彼の顔は、満面朱を注いだかの様に変わって行く。
ユルゲンが背中に回した両腕から、ベアトリクスは彼の温もりをより強く感じた。
ナイトガウン越しにではあるが、段々と体温が上がってゆくのが判る。
その刹那、彼は顔を近づけ、ベアトリクスに口付けをする。
乱暴に右手で彼女の頭を押さえつけると、口内に舌を滑り込ませる。
彼女の舌を上下させ、自身の舌に絡みついて来るように動かす。
思わず目を見開くと、再び落涙している彼……
その顔に浮かぶ深い
その際、絡み合った舌より
ユルゲンは、ナイトガウンのマフポケットよりハンカチを出して口元を抑えた。
ベアトリクスは、その様を見て呆然としていると、ユルゲンが背中と両膝の裏に手を入れて来た。
「一寸待って……」
両腕で首にしがみついていると、そっと横向きに抱き上げられた。
「俺は、戦闘機乗りを訓練途中で辞めさせられ、宇宙飛行士の夢破れた。
そして望まざるとはいえ、戦術機という
その時からこう考えた。BETAという異星の魔物を狩る護国の騎士とな……」
確かな歩みでベットへ向かう。
「10メートル近い長剣を振るい、化け物を断つ……
さながら伝承の中にあるジークフリートの龍殺しと、身を重ねた」
ゆっくりとベットの上に、ベアトリクスの体を降ろしてゆく。
「せめて宇宙という大海を
ベアトリクスは力なくベットに横たわっていると、覆い被さる様にして、ユルゲンが目の前に立つ。
「鳥や伝承にある龍、
そういうと、彼女の濃紺のバスローブの紐に手をかける。
「其の為には全てを捨てて、家庭や安らぎをも忘れ去るつもりであった」
ベアトリクスの首筋に、ユルゲンは顔を近づける。
「だが俺はそんな鉄人には成れなかった」
舌を出して、ゆっくりと
予想外の行動に、思わず
「い、嫌……」
首筋をまるで虫が這うようにして、彼の舌で舐めまわされる。
全身の毛穴が逆立ち、鳥肌の立っていく。
「止めようか」
そう言って、彼は動きを止めた。
肩で息をして、顔は朱に染まっている。
「続けて……、此処まで来て後戻りはできないわ」
ベアトリクスは、ふと微笑む。
「ならばここは、夫として妻を導いてやろうではないか」
ユルゲンの余りの気取った言葉に、ベアトリクスは思わず噴出してしまった。
彼もつられて哄笑する。
「覚悟決めなさいよ」
彼は両腕で、ベアトリクスの右手を掴んで、己の股間に持っていく。
熱く脈打つ
「既に覚悟は決まってる。天に向かって怒張して……。これが俺なりの正直な気持ちさ」
開けたバスローブを両端に追いやると、ベアトリクスの
ユルゲンの男にしては細長く美しい指が、優しく揉む様にして、シミーズ越しに豊かな肉の山に触れた。
右の
「くうぅぅ!」
気恥ずかしさから、声を押し殺そうとしても漏れ出てしまう。
「なあ、俺の為にその声を聞かせてくれよ」
そう言うと、ベアトリクスの太ももを揉む様にして触る。
「遠い日本では、白く美しい足を何て言うのか知ってるかい」
「この
ユルゲンは、ベアトリクスの
「大根足っていうのさ。この間、日本人に聞いた」
ベアトリクスは、ふと不安に思った。
何か良からぬことを、また吹き込まれたのではないかと……
「
ユルゲンは、そう言って、深緑色のナイトガウンを脱ぎ去った。
黒色のタンクトップは汗で濡れ、厚い胸板に張り付いている。
ブリーフパンツは、まるで下に
「脱がすぞ」
ベアトリクスの濃紺のバスローブに手をかける。
彼女は、体を
思わず、右手で両胸を覆い、左手で下腹部に手を伸ばす。
全体がレース地で、股の所だけが別布で作られたショーツが、ユルゲンの目の前に露になった。
「俺の為にこんな派手な下着、付けてくれたのか」
ベアトリクスは、そっと右腕を彼の顔に近づけ、
「貴方は、とことん空気の読めない人ね」
その言葉とは裏腹に、彼女は微笑んでいた。
ユルゲンは、両腕を交差させると、タンクトップを剥ぎ取った。
縦に割れた腹筋には、幾筋もの
ベアトリクスはその様を見るなり、驚いて思わず、尋ねた。
「其の痣は……」
「何、一寸したチャンバラ遊びの跡さ」
言外にヤウクとの剣術修行の事を匂わせる。
どれ程過酷な訓練であったのだろうか。
その様に考えていると、声が掛かり現実に引き戻される。
「なあ、手をどけてくれないか」
ベアトリクスが唖然としていると、ユルゲンは続けて言った。
「そんな風にされてたんじゃ、ショーツも脱がせないし」
ベアトリクスは、両胸を覆って居た右手をどける。
「女心は分からないのに、変な所は優しいのね」
ユルゲンは、ふと冷笑を浮かべる。
「今の俺は、憂国の騎士さ。
努めて騎士らしく振舞わねば、
左手をどけるも、視線は依然として黒地のショーツに注がれていた。
「でもそんな汚い所、触れる必要はあって……」
ユルゲンが、ショーツに手をかけると、ベアトリクスは腰を浮かす。
彼は、それに合わせて、足に沿って脱がして行く。
「裸になって、愛を語らう男女が今更そんなところを恥じるのか」
そう言うと、黒地のブリーフパンツを勢いよく脱ぎ去った。
ベアトリクスは、思わず息をのむ。
天高くオベリスクの様に起立する、彼の男根。
そこには青白い肌色に浮かぶ赤く太い血管が触れるのも恐ろしいくらい、脈打つ様が見て取れた。
「これが俺の誠心誠意さ」
高まる鼓動に、乱れる息。
次第に緊張してきた彼女は全身を強張らせる。
「怖いか……」
ベアトリクスは、ゆっくりと頷く。
「俺もだよ。いざ君を抱こうと思うと恐ろしいほど緊張している」
ユルゲンは、そう言うと、下腹部に手を伸ばす。
「ちょ、一寸待って……」
両手をベアトリクスの両足に掛け、広げようとする。
「俺は、既に栓を抜かれた
不意に、ベアトリクスの
深く繁る森を思わせる様な陰毛に覆われた場所に、舌が入り込んだ。
「あぁっ……。嫌、止めて……、汚いし……」
ベアトリクスは、顔を上げて、答える。
「美しい桃色で
「本当に……」
ユルゲンは、一瞬戸惑う表情を見せたが、真剣な
「素敵だよ」
真剣な表情を見た後、自身の心の中にある性への
ベアトリクスは、まるで厚い氷河に覆われた凍土が溶けてゆくような感覚を