復活したヴォルちゃんは異世界に転生してでも自称・死喰い人のバイオレンス男子から逃げ出したい 作:ばにらいむ
目が覚めると、そこは真っ白な世界。
辺りを見渡してみたが、当然人の気配はない。
しばらく歩いていくと、大きなホールのようなものと、ドーム型のガラスの天井が見えてきた。
つまりここは――――――――
「はぁあ〜…私もとうとう死んじまったってことですか。噂には聞いてましたが、まさか私がリンボに来てしまうとは」
誰もいない空間に、私のため息だけが反響して響き渡る。
ふと、駅にポツンと置いてある椅子が目に入る。
「おっ…なんじゃらこれ」
そこにいたのは小さな裸の子供だった。否、子供と呼んでいいのかは分からない。
肌はまるで剥ぎ取られたと言わんばかりにザラザラで、おまけに血まみれだ。
それに子供の顔はどこかで見たことがあるような気がする。
そう。かつて名前を呼んではいけないあの人として恐れられたらしい…
「ヴォルデモート卿…」
私はそれに手を伸ばした。そしてギュッと抱きしめて見る。
その時の私の顔はどのようなものだっただろう。笑顔であったことは確かだ。
「我が君…こんなところでお会いできるなんて…」
そう。何を隠そう私は彼の大大大ファンだった。
彼についての本や映画は全て揃えたし、彼のことが掲載されている雑誌があれば、後輩の財布から金をパクってでも即買いした。
それくらい彼を愛していたのだ。
だからこそ彼に会えたことが嬉しくて仕方がない。
しかし、そんな私の気持ちとは裏腹に、彼は苦しそうな声を上げた。
「ああ、すみません…」私は謝罪の言葉を口にしつつも、抱きしめる力を緩めない。
「苦しいですよね?申し訳ありません……。ですがもう少しだけこうさせてください」
気がつくと、私は泣いていた。涙が止まらない。
生まれてから今まで一度も泣いたことなどなかったというのに、なぜか今は溢れ出して止まらなかった。
そしてふと、ある考えがよぎる。
『持って帰れんじゃね?』
我ながらなかなかの発想だと思う。おそらく彼はリンボに囚われ、死後の世界に行くことができない状態なのだろう。
と、いうことは。
「共に現世に行くことは、できるんじゃないか?!」
私は血まみれのそれを抱きかかえると、ダッシュでリンボのある方向とは逆の道を走り出した。
地面に足を踏みしめるたび、何故か自分が消えていくのを感じる。だがそれでも私は止まらなかった。
興奮して何度転んだかわからない。それでも決して諦めなかった。
だってこんなチャンス二度とないだろう?! 私は一心不乱に走り続けた。
(ああ、こんないいことがあるなら餅をのどに詰まらせたのは良かったことなのかもしれないっ!)
そう考えた瞬間、ものすごい浮遊感を感じ、私の身体はスッと消えた。
補足
誤解を生まないために書いておきますが、たぶん我が君がリンボから出るのは絶対に無理です。シカムはぎりぎりで死ななかったのでリンボから脱出できました。