※この作品はR-18です。

神技一刀´   作:TETUYA

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五章・二話:妄執という名の恐怖

 中庭を望む一階の奥室の前―――

 

 襖の前に立たされる悠也。この場所まで案内をした阿坂の姿はもはや無い。

 この先に兄・各務征司の行方を掴む手掛かりがある・・・そう思うだけで心が焦る。緊

張する手を落ち着かせ、襖を開ける。

 静かな音が鳴る。悠也は奥室へと入った。

 静まり返った薄暗い中、情緒を感じさせる為なのか壁には受け皿の上に置かれた蝋燭が

炎を点けている。

 蝋燭の炎は、淡く揺らめいて室内を照らす。

『・・・貴方が、老師―――妙源老師か?』

 中央には布団が一つ敷かれてある。その先に老師は腰掛に深く座っていた。

『・・・・・』

『老師か?』

『・・・・・』

 再度の悠也の呼び掛けに答えない。良く見れば俯いており、既に寝ているのかと思った

矢先、老師の顔が急に動いた。

 蝋燭の炎が大きく揺らめく。その中で老師が腰掛より立ち上がる。

『各務家の当主代理と聴いておるが、主がそうか?』

『はっ。―――代理の任、名ばかりの実力であります・・』

『その様じゃの・・・ふぉっふぉっふぉ』

 敬う礼はしたはずである。それを馬鹿にする笑いを厭らしく立てる。

 内心での苛立つ感情を抑え、外見は平常心を保ってみせる。

『怒るか?―――さもあらん。儂の言葉に耳を傾けてはの・・・ふぉふぉっふぉ』

『・・・・・いえ・・(こいつ・・)』

 忍として感情を抑えているつもりだが、それも全て老師にはお見通しの様であった。悠

也は老師に対する考えを改めざるを得なかった。目の前に居るのは単なる老人ではない。

「鏡閑」の頂点に立つ存在なのだと。

 悠也の意識が強張る。警戒感をいつまでも消し去れない。

『こっちへ来い。新生(わかき)忍よ』

『はっ』

 足の裏を畳に付けたまま、擦る様にして前に進む。しかし、老師と一定の距離を保つ事

は忘れなかった。

『ほほう・・・流石は「各務」―――親も子も、油断しないのは血筋か?』

『・・・いえ・・(父さんも知っている・・やはり・・・こいつは・・)』

『―――「父さんも知っている・・やはり・・・こいつは・・」と思ったであろう?』

『!?――なっ・・』

 老師は読心術でも心得ているのか。悠也は焦りを覚えた。両目を大きく開けて老師を見

てしまう。そんな驚愕を老師に見られて笑われる。

『各務雄司。そして、息子の征司も知っておる・・・ならば、お主も知っておかねばな』

『・・・』

『―――兄(征司)の事を知りたいそうじゃな?』

『・・・・・』

 いきなり悠也の確信を突く老師は、悠也の小さな感情の変化すら見逃さない様子の、そ

んな観察眼を向けてくる。

『ふぉっふぉっふぉ―――若者は正直で在らねばな。のう?―――各務悠也』

『・・・・・・』

『こっちへ来ぬとあれば儂の方から行くが?』

『・・・・・・』

 一歩、前に踏み出して止まる。正直、老師の考えが解らない。この部屋に呼んだ理由も

不明で、何故、布団が敷いてあるのかと思えば、老師が就寝する為だろうくらいしか考え

が及ばない。

 老師が愉しげな笑みを表情に蓄えて、悠也の傍へと寄る。立ち尽くす悠也を前から後ろ

から、また、側面からもじっくりと見ていった。

『美しい忍の肉体よ。まだ、穢れを知らぬな』

『・・・・何を・・』

 お尻を撫ぜ回してくる。その行動が悠也には理解出来ず、背筋に悪寒を走らせるに至っ

た。そして、背筋をぴんと張る。

 老師が腰帯に手を掛ける。先ずは側面から触り徐々に前へと手を移動させていく。

『・・・・老師・・―――何を・・』

『征司の行方か?―――知らぬな』

『なっ!?』

『知らぬが、身体の良さは知っておる。全てな』

『・・・どう言う事です・・・(こいつ・・・ふざけ・・―――くっ)』

 お尻を再度撫ぜられる。今度は双丘の間に手を入れる動作をする。そして、前に持って

いった手で腰帯を掴む。

『若いの・・・好きな女子も抱けぬか?』

『!?―――くっ・・ッ!?―――うあ!?』

『ふぉっふぉっふぉ!!』

 悠也は急に背中を押され、布団の上に倒れた。その際に老師に腰帯を握られていた所為

で、倒れた拍子に腰帯が解け、着ていた和服が乱れる。

 鋭く精悍な肉体が垣間見える。

『ふぉふぉっふぉ・・・好い肉じゃの』

『っ!?―――くっ』

 垣間見える肉体の箇所を老師の瞳が値踏みする。その視線に気付いた悠也は咄嗟に和服

の襟を強く併せて肉体を“薄地一枚の中”に隠した。

『お主は、まだ何も知らぬ子供よ―――征司が託した真実すら気付かず、雄司が期待した

未来すら知らず・・』

『!?―――(なに・・・兄さんと、父さんの・・?)』

『驚いているな・・・だが、お主が何も知る必要は無い。儂が教えてやろうに』

『くっ・・・やめろ・・――――オレは・・飼い犬じゃ・・・ない!』

 倒れていた身体を起こし、半身を強く立てて老師に抗した。

 しかし、そんな悠也の抵抗さえ老師の予測範囲内だった。老師は、不敵なほどの強みの

感じられる笑みを作り、乾いた笑いをする。

『ふぉっふぉっふぉっふぉ・・妹の無事と各務家の安泰・・・お主は既に天秤の中央に立

つ存在なのじゃよ・・二つを吊り合わす為に何をすべきか・・・今、ここで考えよ。妹の

笑顔を消したくなければの?』

『・・・きず・・なの・・・!?―――貴様ぁ!!!!!!!』

 老師の襟首を掴み、食って掛かる悠也であるが、それ以上の事がどうしても出来ない。

絆の事を指摘されて悠也は怒りに身を任せて“弱い”部分を見せてしまう。

『そうか・・ふぉふぉっふぉ・・―――貴様、妹に恋心を抱くかの?』

『なっ!!―――違う!!!オレは!!!――――オレは!!!!』

 悠也は必死に老師に反抗していた。必死にならなければ心の全てを暴かれてしまう錯覚

に陥っていたからだ。しかし、その事にも悠也は気付けていない。

 

ドクン。ドクン・・ドクン。ドクン

 

『無駄じゃ。儂に何もかも暴かれよ・・・お主の事は前々より知っての事。興味があった

が、雄司の抵抗にあえばそれも叶わなかった』

『と、父さんの・・!?』

『征司も然り。だが、今はそれも無し・・・両者とも死ねばの?』

『・・・・死・・――――――兄さんが、死んだ?・・・嘘だ・・・・・嘘だ!!!』

『お主が殺した・・』

『・・・・・違う・・――――――――違う・・・・オレは・・』

 悠也の力が弱まってくる。それを機会に老師は悠也の着る和服を乱し、上半身の筋肉を

露にさせる。

 胸の中央に触れ、その逞しい窪みの感触を実に良く愉しむ。

『―――“霧生”という賊に殺されよって・・・しかしの、それはお主が居た所為じゃ。

それはお主が最も理解していよう?』

『それは・・・』

 悠也の心を強固にしていた鎧が老師の巧みな言動で剥ぎ取られていく。一枚一枚、実に

良く効果的な弱点を突きながら。

 悠也は表情に動揺を表す。その頬を老師は手を当てて擦った。

『雄司も、征司も・・・雄司の妻も・・・全てはお主が悪いのじゃよ』

『オレが・・・・・(違う・・)―――(違わない・・・オレの・・)・・オレの・・』

 

 ―――オレが生きているからだ・・・・

 

『オレの・・・所為、ってンだ・・・・・・・・オレが・・・父さんも、兄さんも・・母

さんも・・・・・・・殺したも同然ってンだ・・・』

『ふぉっふぉっふぉ・・ようやく子供らしく喋るのう?』

『・・・・』

 悠也の表情が暗やむ。震える身体を止められず、その間も老師は巧みな手捌きで悠也の

着る和服を脱がし、遂には小さなサポーター一枚にさせた。

 逞しく鍛え上げられても尚、筋肉の美しさは失われない。鋭さを伴いつつも柔らかさを

秘める弾力を持つ―――筋肉へと、老師は手を伸ばす。

 触れる。胸を両手で揉んでいく。

『ふぉっふぉっふぉ・・・可愛らしく啼けば良い。ここには儂しか居らぬぞ?』

『くっ・・ぁ―――』

 

 ―――に、兄さん・・!

 

 するりと引き抜かれるサポーター。そして、老師の前に露になる性器。今まさに起こり

つつある現実に恐怖し、心の中で虚しく兄の名を呼び続けた。

『やめろ・・やめろってンだ・・オレに、俺に触るなぁぁ!!!うあぁぁぁぁ!!!!』

 

 中庭に続く廊下に立つ―――

 

 阿坂は冷ややかに中庭を望んでいる。悠也の悲鳴を実に良く心地良く聞きながら、雨の

日と粒一粒の落ちる様に笑みを作る。

『佐伯・・―――貴様の作った「IFAO」の事、じっくりと暴き出してやるぞ』

 その笑みが、突然に光った雷によって不気味にガラス戸に映った。

 雷鳴が大きく轟く。ガラス戸がその衝撃を受け取る音を立てた。

 

 

 

 ―――ここか・・

 

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