投げ出され―――
悠也の右手首を掴む大道寺は、思いっきり強く強引なまでに引っ張り、何度も力を加え
てようやくロッカー内より外へと引き出そうとする。
『くあ!―――くア!!―――ッ、ぐっ!』
ロッカーと悠也が激しくぶつかり合う音が更衣室内に響き渡る。そして、最後に大きな
音を立てたかと思うと、次には悠也の身体は床の上に投げ出されていた。
背中を打ち付けて転がる。疲労する身体には辛いものがある。呼吸が一瞬だけ止まり、
続けて咳を繰り返し吐き出す。
大道寺は、悠也の傍まで悠然と近寄ると、顎を前に出すような顔の位置で悠也を見下げ
てくる。まるで主人と奴隷の関係を強要させるかの様な瞳の冷酷さがある。
『各務・・俺は恐らくお前に興味があったんだろう。2年前になるか?―――俺を病院送
りにしたあの時からな。あの時のお前の獰猛なほどの強みが今は懐かしいぞ』
『くっ・・』
ニヤリと表情に笑みを大袈裟に作って見せ、悠也の左肩に右足を乗せた。
悠也の見上げる視線の位置には、大道寺の―――いきり立って勃起する肉棒が厭らしく
揺れている。まるで悠也に見せ付けて自慢するかの様だ。
大道寺の肉棒の凄まじい巨根さに悠也は絶句する。そして、気持ち悪さを覚えた。
一方の大道寺は、悠也が穿いている水着を見て、非常に満足感を覚えていた。
両極端の二人が、両極端の立場にある―――この状況を悠也は屈辱に、大道寺は興奮を
持って、二人の位置関係を明確にしていた。
悠也の両腕の側面が赤く腫れている。ロッカーより無理矢理に出される際に強く擦った
所為だ。ひりひりとした痛みが皮膚より筋肉奥へと伝わる痛みがある。
『ちく・・しょ・・・』
身体を起こそうとするが、大道寺の右足が悠也の左肩に乗っている所為で、中途半端な
起こし方しか出来ない。腹筋が綺麗に歪む様が大道寺の視界に映る。
『何処で鍛えたか、どうやってかなんて俺には関係ない。ただ、お前をこうしていれば、
今までの鬱憤は晴らせるしな』
『てめ、ぇ・・ふざけるなってンだ・・・』
怒りが増す。込み上げる感情が表情を硬く鋭くさせるが、それも負け犬の遠吠え位にし
か大道寺は感じていない。今は大道寺が優位な位置に立っているのだ。この一種の仕方の
無い現実に悠也は苛まれるしかなかった。
『よし』
『よ、よしって・・・何、する・・ってンだ・・・・くっ!?』
大道寺は屈もうとする。右足の下にある左肩が押し潰される際の軋みに似て痛みが新し
く発生してくる。
肩より足を退けて屈む大道寺は、左手で悠也の髪の毛を鷲掴みし、指の間に念入りに髪
の毛を入れて強く掴む。
『くあ――!!』
『ほらっ、立て!!―――立てと言っている!!』
『くア!!―――痛ッ』
頭皮が剥がされる様な、そんな痛みに耐えながら徐々に立ち上がらざるを得ない。
両膝を軽く曲げた状態の不自然な立ち方でも、一応に立ち上がる。すると大道寺は髪の
毛をようやく解放し、胸部を手で押して後ろへと下がらせた。
何度も倒れそうになりながら、背中をロッカーに付ける事で姿勢を支えたが、それは大
道寺に強要された結果であり、その事への意味を考え様と志向した矢先・・・
『な、何するってンだ!?―――大道寺ッ!!――――止めろってン!!だ!!!くっ。
くっ!!くっっ!!!』
両腕を共に上げさせられ、大道寺の左手が両手首を纏めて掴んで拘束する。
『怯える子供か!―――馬鹿か、お前は・・・ヤメロと言われてこの状況を楽しんでる俺
が、素直に止めますと言うと思うか?』
『くっ・・・』
両方の腋の下を完全に露にされる。同性の大道寺に見られても本来ならば恥ずかしいと
思うはずが無いが、間近でじっくりと今の状況下で観察されれば話は違ってくる。
『俺の様に濃くも無い。だが、最近のひ弱なイケメンな薄さって訳じゃない・・・これか
ら成長する高校生(ガキ)だな―――各務。お前は・・』
『見ンじゃ・・ねぇ・・・・この、変態野郎が・・!!』
『勇ましいな。まだ、俺には向かう気概を失わず・・か?―――それでこそ、甚大高校で
最も恐れられた不良だ』
悠也の両手首は大道寺の左手で押さえ付けられている。もう片方の右手は、今は空いて
いて自由に扱える。それを効率よく使う方法は既に妄想していた。
左腋の下へと手を伸ばす。毛先寸前で止めて軽く動かすと、静電気でも発生している様
子で毛先が軽く揺れた。
『う・・・っ。く・・』
『ほほぅ』
『やめろ・・――――――――――――って・・ン・・』
くすぐったい感触が腋の下に得られる。また、大道寺の掌の汗ばみより熱気が伝わって
きて、それが毛全体を濡らすような感覚にまで陥っていく。
ここまで腋の下をじっくり見られ、そして、鷲掴みされる事は今まで無かっただろう。
『男として屈辱だろう?―――まあ、俺には解りたくも無いが、解らせてやるのは・・・
好きだがな』
『くっ――てめぇ・・』
『おら!』
『ぐっ!ア!!!!アア!!!!』
ぐっと無理矢理に引っ張る。大道寺の右掌内に掴まれている毛が今まさに引き抜かれよ
うと悲鳴を上げる。痛みが腋の下から腕の先まで一気に駆け抜け、そのあまりの痛みに悠
也は声を上げて更衣室内に響かせた。
皮膚より生える毛の一本一本より痛みは広がる。その強い痛みの中で、毛穴部分の皮膚
が三角錐を形成する様にして盛り上がっていく。
『今、お前の腋毛を引き千切る事も出来るし、舐める事も簡単だ・・優しく頬擦りしてや
ってもいいぞ?―――どうだ?』
『くっ。ふざけンな・・!!―――誰が・・くぅ!!―――てめぇ、なンかに、な!!』
『お前は理解が出来ない馬鹿か?―――腋毛をもっと男らしく伸ばしてやろうと言ってい
る。すぐにでも大人の濃さに仕上げてやろうか?ン?ンン?』
『くっ・・勝手に、クゥ・・ぅ。言って、やがれ・・・ってンだ・・よ』
痛みで片目を瞑る悠也であり、嬉しそうに片目を瞑る大道寺だった。
毛に涎を付けて撫で付ける。水滴が煌いて汚されていく。くすぐったい感触が皮膚の上
を駆け巡る。舌より付着する唾液が毛と絡み合いながら音を奏で出す。
濡れて穢れた左腋と違って、今の所何もされていない右腋は元気の良い毛先の立ち具合
となっている。その違いを大道寺は愉しげに具に観察していく。
『いい加減に・・・てめぇ・・・しろよ!!』
『なになに?―――腋毛が何センチあるか測って欲しい?馬鹿だな。それならそうと早く
言わないか!』
『な、何ッ!?―――ば、馬鹿ヤロッ!!そンな事、誰が言ったってンだァァ!!!!』
『そう恥ずかしがるな・・と、言いたいところだが、残念だ。定規でも持って来るべきだ
ったな・・・メジャーの方でも良いか。どうせならチンチンの太さも長さもじっくり測れ
ただろうからな』
『・・・・』
狂気を含む声で囁く大道寺は、まさに本気でやりかねないばかりの調子だった。
『いつから腋毛が生えたか・・俺に教えろ―――大丈夫だ。誰にも言わんから』
『馬鹿か・・てめぇは』
もはや呆れるしかないが、それ以上に今の大道寺が怖いと感じているが、悠也の若さで
はその認識が甘い。背筋に悪寒が走って気持ち悪い位にしか考えられなかった。
大道寺の舌がもう一度、腋の下を舐める。毛の一本を上唇と下唇で挟むと、それをクチ
ュクチュと舌も使って舐めしゃぶる。そして、顔を前後させて、毛の側面を涎で艶やかに
汚して、そして、更に口の中に含んだ。
『くっ・・――――(気、持ち、わり・・ぃ・・)』
歯並びの悪い箇所の歯と歯との間に毛を挟み込む技を見せる。その毛をツツっと動かし
て引っ張る事を何度も続けた後、口よりようやく離す。
大道寺の涎で一層汚れた毛の一本が縮れて巻き毛になってしまっている。
左腋の責めにようやく飽きた大道寺は、今度は綺麗なままの右腋へと顔を移動させる。
その際に熱い鼻息を胸元へと吹きかけていくのを忘れてはいなかった。
右腋を最も近くで観察して、今度は鼻を極端に近付けて匂いを嗅ぐ。
『くんくん・・くんくん・・、惜しいな。どうせならプールに入る前に嗅いで置けば良か
ったな・・・塩素の匂いでいっぱいだ』
『・・・・・・・・・』
悠也の胸を押し付ける様にして掌を置いている。肌が若干に凹んだ様に見えて、そこか
ら若々しい肌の良さと質感の良さが良く解る。
引っ張られ、舐められ、舐め取られ、じっくりと観察された挙句に匂いまで嗅がれる状
態に、悠也は心底より大道寺を憎み恨んでいた。まさに怒りを通り越している。
『ふぅー』
一息を大きく吐く大道寺は、腋の下に飽きたのか、ようやく悠也を解放して離れた。ま
さにその瞬間を悠也は見逃さなかった。
唾液の残る腋の下を気にして気持ち悪さを感じながら、大道寺を追い掛ける様にして、
左手を伸ばして右拳を作って後ろに引く。
左手を大道寺の胸に添えて距離を測る―――瞬間、鋭い眼差しを放ち、後ろで力を籠め
た右拳を一気に前へと押し出した!!
が・・・
『がはっ・・・』
『・・ふんッ。こんなものか・・・』
悠也の右拳のストレートを大道寺は簡単に避けた。しかも、その動きに連動させて横に
ずらした半身を軸にして片足の膝を悠也の腹部目掛けて叩き付けていた。
膝が腹部にめり込んでいる。不自然な態勢で身体を“くの字”に曲げてしまう悠也は、
自分の千載一遇のチャンスの攻撃が避けられた事と、尚且つ攻撃を受けてしまった事への
驚愕を今まさに顔に出してしまっていた。
『今の俺は・・・お前より遥かに強いぞ』
『がはっ』
容赦なく耳元で響いてくる大道寺の声を聞きながら、右手で腹部を押さえて姿勢を崩す
悠也は、蹲りながら床に左手を付いて身体を支えていた。
腹部への痛みと極端な左腋の滑り感。また、驚愕感が絶えず引き起こされる精神状態に
晒される現実・・・
容赦なく見下げる大道寺の視線を前に、なす術が無い悠也だった・・・