プール場に鳴り響く水滴の音―――
木霊する音が響くのを悠也は屈辱的に聴く。
『12歳・・・ってンだ・・』
大道寺に陰毛の発毛時期を問われた後の事だった。プールサイドに立たされ、右足首に
競泳水着が絡む状態にされていても、逃げる意思を奪われて何も出来ない。
『ほぉ。それは興味深い』
『くぁ』
悠也の背後に居る大道寺は、悠也の背中に身体を吸い付かせて立ち、顎は右肩に乗せて
いる状態にある。その上で両手は悠也の腋の下を潜って胸に置いている。
五本の指を大きく広げて掌を強く開く状態で、
『硬い様である様に努めているが、実際は弾力と強みで料理された非常に旨そうな肉へと
調理されているな』
揉む。指の腹を筋肉にのめり込ませる様に、その動きはまるで肉汁を搾り出す動きに似
て実に卑猥だった。
『・・・くっ・・ぁ』
『さっきからそんな声ばっかりだな。―――つまらんぞ』
『くっぅ・・』
右手は胸を揉み続け、左手は胸より下へと移動させていく。その際、大道寺は悠也の身
体を前に押して強制的に歩かせた。
勃起した肉棒は、薄赤色に染まる亀頭を露出させて太腿の動きに合わせて左右に揺れ続
ける。
プール目前で大道寺は悠也の歩きを止めた。まさに際に立たせ水面に勃起状態の肉棒が
見える様にさせる。
右手は乳首を弄くる。悲鳴を上げるかの様に赤く染まり始める突起が実に魅力的だと、
大道寺は上から覗く態勢でニヤリと笑う。
左手は肌の若きこめ細かさを把握する様に、徐々に伝いながら更なる下を目指す。腹部
へとようやく達すると臍の周りを特に撫ぜ回した。
『・・・・ッ・・くっ。―――やめろ・・ってンだ、よ・・』
『やめるか。馬鹿かお前は―――』
『くっぅ・・ぅ』
粘着ある温もりを下半身の突起に感じて、身体をくの字に曲げるが、すぐさま大道寺が
後ろから押してくる為に態勢を直さざるを得なかった。
腰を突き出す態勢を強要されるのは、悠也には屈辱の何者でもなかった。歯を食い縛り
ながら、両目を強く細める表情をプールの水面へと向ける。
『精々、ここを暴れさせるんだな。―――それが精々の俺よりの復讐って訳だ』
『くあ!?―――っぅ』
滑りが非常に強く襲い掛かる。乳首にも冷やりとした感触を感じた。
全身より力が抜けていく気がしてならない。勃起する肉棒が痛々しく乱暴に扱かれる様
子を見守る事しか出来ない。
『こんなにもデカくしやがって・・・けど、俺にゃ構わないがな―――くくっ。餓鬼め』
『オレ、は・・―――ガキじゃ・・ねぇ・・って・・・ンだよ!!――くっ、くぅ!』
『ほらほら。そう言いながらあそこに力を入れるなよ。もうイっちまうか?』
『くっぅ!!―――くっ』
肉棒に力を入る。また、両足は爪先立ちで全体重を支えてしまう。今まさに他人の前で
射精を見られる瞬間が訪れようとしていた。
全身を覆い始める滑り、震え、鳥肌が立ってくる身体。筋肉の張りが見事に水面に映え
て映し出されている。
揺らめく中、抵抗も出来なまま悠也は腰を強く押し出す態勢に入った。
『くっ・・・やめろっ!!――――くあっぁぁ!!!!』
『ほらっ!!!イケっ!!』
悠也が叫んだ瞬間、大道寺が悠也の身体をプールへと押し飛ばした。
大きな水飛沫と音を立てて、悠也はプールに落ちた。
『ふっふふ・・ふっふっふ』
同じ声と質の笑いを繰り返し、水面を見守る大道寺。その彼の足下にはドロドロの液体
が揺らめいて広がりつつあった。その半液体は全身の毛穴より汗の様に噴出し始める。
プールに落ちた悠也は一向に水面に顔を出さない。ニヤリと大道寺が水面下を見透かす
様に見つめ笑っている。
『お前も仲間に加えてやる―――愉しいぞ、この身体は』
大道寺の全身より染み出る液体は、流れを作りながらプールの水と合流する。その水が
悠也の身体を支配していたのは明らかだった。
笑いながらも、その表情の奥には冷ややかな感情が住み着いている。水面上に激しい波
紋が出来るのを見守り続け様と・・・
『お兄ちゃん!!』
『――――――――――――――――――――――――――ッ!』
紛れも無くその声は絆だった。
プール内に大声が響き渡る―――と、同時に水を打ち叩く音が聞こえた。明らかに誰か
がプールに飛び込んだのだ。
『・・・各務の妹―――か・・ちっ』
『お兄ちゃん!!――――相葉さんッ!!!』
大道寺が立つプールサイドの反対側に絆は、プールに沈んだ悠也を、また、プールに飛
び込んだ悠輔を必死に見る。
大道寺は、絆の必死な様子を静かに見据え、スライムの様な半液体に濡れそぼった右手
を動かして唇に軽く触れる。
「頼むよ――――あの子を酷い事をしちゃって下さい。それが各務先輩への強烈な屈辱感
を、・・与える事になりますよ。ね、本気を出して下さい?・・・大道寺先生」
『・・・さて、仕上げといくか―――』
脳内で響き渡る支配的な声の主は、少年らしい声で響く。
少年の声が心を支配する。その支配を受けている自分に気付かない大道寺は、じっくり
と絆の様子を伺っていた。
瞳が加虐的に赤く染まっていく。それと同時に怨念の感情が心の奥底より湧き上がるの
を気持ち良いと感じ始めていた。
大道寺の視線に気付いた絆が急に顔を上げる。そして、身体を大きく震わせる。
『・・・せ、んせい・・?―――――――・・?』
恐怖する感情の意味が自分でも理解出来ない。ただはっきりと感じるのは憎しみが篭も
った不快さを大道寺の視線より覚えるだけだ。
絆の視界には、大道寺の瞳が大きく拡大して近付いて来る様に映っていた。恐怖が膨れ
上がる内に身体が竦み、尻餅を付く。
『こ、これ・・って―――いつもの発作・・?―――ハァハァ・・そんな。ハァハァ・・
どう、して・・』
熱が急に出た感じがして身体が熱くなってくるが、身体自体は奥底から冷たくなってく
るのを理解する。呼吸が荒くなり、言葉も上手く出てこない。沈みゆく身体を支え切れず
にその場にうつ伏せで倒れ込む。
大道寺がゆっくりとした歩調で近付いて来るのを、心がはっきりと今の状況を掴む。
無意識に広がる恐怖が動揺を広がらせ、近付いて来る大道寺を危険であると察知した。
逃げたい。逃げなければと心がざわめくが、身体が重すぎるほどに重い。
逃げる事も叶わなくなった絆は、倒れている姿勢より動かせない身体でプールへと顔を
向けた。揺らめく水面が見える。幾つもの波紋が広がり、その中で空気の泡が上がってく
るのを、次第に呆然となっていく視界で見続けた。
やがて意識が途切れた頃、大道寺は絆を見下ろす位置に立つ。
『行こうか?』
右手が絆の背中に触れる。直後、大いに震える身震いが絆の身体に起こり、それが二度
ほど繰り返されるのを見て、大道寺は表情を綻ばせて悦んだ。
この悦びの正体―――今の感情への理解には乏しく、単に悠也の妹を捕縛した事への悦
びと受け取っていた。
絆の身体を右肩に軽々と乗せ、波紋が激しく揺れるプールの水面へと視線を送る。
『各務・・、お前の妹は貰って行く―――精々、俺を追って来い。くくっ。但し、お前が
間に合えば良いがな!』
言い放つ大道寺が笑い声を上げようとするその時、
「―――――――――――――――――――――――そうはさせん」
声が―――雄々しく響き渡る・・・
外―――
『そうはさせん―――』
体育館の屋根に立つ男子生徒は、右手の指に縦長の紙を挟み、静かに雨を臨んでいる。
髪が雨で重く、水滴が絶え間なく髪先へと伝い落ちていくが、右手の指に挟む紙は雨に
濡れる様子も無い不自然さで立ったままを保っている。
目を瞑っていく。ほんの数秒間だけ精神を静め、その集中する中で目を開ける。強く見
開いて闇を見通す中、虚空へと告げた。
『―――在天の静寂、満ち欠けの流れを穢すモノよ。道心を集わす神符より衛士が命ず。
我が身・桐生将星を通じ、清浄へと還れ―――!!』
男子生徒―――桐生将星の身体の前面が光を受ける。右手にある紙(護符)に描かれた
紋様が輝きを放つ。
桐生将星の力が発揮される。護符が放つ力が増すに従って、体育館を覆う様にして同様
の光が満ちていく。
護符が眩い光を放つ。雨すら神々しく反射させるほどの輝きを生み出す瞬間、将星は力
を果敢に漲らせた。
『――――――――破邪霊符陣ッ!!!』