※この作品はR-18です。

神技一刀´   作:TETUYA

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九章・三話:怒りの彼方

 火曜日の夕刻、メルトショッピングセンター内―――

 

 このショッピングセンターは、甚大市の中で一際大きい規模を持つ。今の時間にもなれ

ば人だかりも多く、子連れの客も少なくない。

 その子連れ客の一人―――

『征矢、今日は何を食べたい?』

『うー・・悠パパのぉ~!!』

 片手に籠を、もう片方の手で幼児を連れている女性―――二階堂瀬名が、今日の夕食を

何にしようか迷っている。

 息子の征矢は2歳になる。ニコニコ顔が可愛らしい子供だ。

『そうね。あの人が好きなものにしましょうか』

『うんー』

 今日は久しぶりに訪ねてくるのだ。瀬名もそれが楽しみで仕方ない様子だった。

 

 

 沈み掛ける夕日―――

 

 ユーラス教会でIFAOのエージェント・佐伯隆一郎との接触を終えた悠也が、家路に

向かう途中で携帯電話に出る。

 携帯電話は常にバイブレーション機能にしてある。これはいざという時に目立たないよ

うにする配慮の様に思えるが、実際は使い方を間違えてマナーモードにしてしまい、しか

も直し方が解らなくなり、仕舞いには面倒臭くなってそのままにしてしまったのだ。

『絆からか・・――――――おう。絆、瀬名サン家にもう行ってンのか?俺もすぐに行く

ってンだ!・・・・?―――どうした?』

 電話越しの絆の声が重い。どうしたら良いのか戸惑っている様子である。

『・・そうか、征矢だけが・・――――――解った。瀬名サンはオレが探す・・・へーき

だって、ああ・・・そうだ・・そうしろってンだ。じゃあ家でな』

 電話を切り、強く握り締める腕が震える。絆との軽い会話の直後の悠也の感情の急変で

ある。これを目撃した者が居たとすれば、あまりの変化にぎょっと驚いただろう。

 俯いた表情が暗い。目元が髪で隠れるが、その前髪が吹き付ける風でやや揺れた。

 絆からの電話の内容は、瀬名の住むマンションで待っていると、征矢だけが泣きながら

帰って来たと言う。泣き喚く征矢より状況を聴こうとするが、まだ2歳児である。状況を

把握できるほどの情報が聴きだせなかった。そこで悠也に電話した訳である。

『瀬名サン・・無事で居てくれ――――すぐに迎えに行くってンだ!』

 凄まじい跳躍力を見せる。近くの民家の屋根に音も無く静寂に着地する。すぐさま体勢

を整えて背筋を正して夜空を見上げた。

 風が制服を戦がせる。月を睨み付ける表情は厳しく鋭い。そして、目を瞑る。

『相手は霧生か・・それとも・・―――いや、誰であろうとも・・・オレの敵と見なし、

討つまでだ・・ッ!!』

 目をカッと見開くと、既にその身は別の民家へと飛び移っていた。

 

 

 

 日も暮れた甚大高校―――

 

 多目的ホール内。舞台の上で相澤志郎は、一人の女性を降ろした。

『美しい・・・この人なら、きっとぼくを託すに限る・・ぼくの子供をね』

 気絶した瀬名は、衣服の所々が避けてしまっている。その裂け目より麗しい肌が垣間見

える。髪を乱す様がまた麗しさを誘う。

 瀬名を見て、相澤はにやりと笑う。そして、衣服を丁寧に引き裂いていった。

 衣服が避ける音がホール内に木霊する。その音を聞く相澤は心地良さを心に満たし、そ

の悦びが心を突き破って膨れ上がった瞬間、邪念となって肉体を包み込んでいった。

『ぼくの―――・・・ぉ・・ね・・』

 裸にされていく瀬名の優美な肢体の上に、ぼたぼたと血液の玉が落ちる。瀬名を赤く彩

りながら、その瀬名を覆う影が無数に広がっていく。

 不気味な胎動を、ホール出入口より覗いている者が居る。その者は静かに唾を飲み込む

と、相澤に気付かれない程の静寂さを保ちながら携帯電話を握った。

『・・・・・(帰りに立ち寄って正解だった・・)』

 その男―――英語教師の相賀雅彦が、敵の姿をその目に焼き付けた。

 

 

 夜空と月が輝いてくる頃―――

 

 月が悠也の姿を陰影とする。飛翔するまま携帯電話を取った。

『相賀先生か!?・・ッ!―――ああ、そうだ。そうしてくれ・・――――――ッ!!』

 恐ろしい程のスピードの急降下であるビルの屋上に着地すると、甚大高校の方角へと目

を向けた。力強い炎を宿す瞳より闇を見据えて頷く。

『先生、後はオレに・・』

「悠様・・敵の正体は・・・・」

 心配性な声で告げる電話越しの主は、悠也に敵の正体を告げた。その正体を聴いて悠也

は驚きながらも、冷静さをすぐさま取り戻した。

『・・“恭司”に連絡を。但し、オレが行くまで動くな――――3班に分ける。絆と征矢

の護衛。それと桐子サンに連絡する班と、―――瀬名サン救出だ』

「了解したよ・・すぐに手配する」

『・・頼む――――』

 言下、屋上を去っていた。その身は既に月の陰影となり、夜の空を疾駆して、風を切っ

て甚大高校へと向かった。

 

 

 

 甚大高校―――

 

 校門前に着地した悠也の背後には・・・

『早いな・・恭司』

『いいえ・・早速ですが状況を報告します』

『頼む』

 悠然と立つ悠也の背後に三人の忍が控えている。一人を先頭に他の二人が片膝を付いて

項垂れている。

 夜の闇にひっそりと佇む校舎を悠也は静かに睨み据え、飛龍忍者のリーダー・若林恭司

より報告を聞いた。

『解った。速やかに行動に移せ・・―――征け!』

『ハッ』

 悠也の檄が飛ぶ。三人の忍はその場から消え失せた。

 

 そして、行動は開始される―――

 

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