※この作品はR-18です。

神技一刀´   作:TETUYA

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九章・四話:結界

 十二忍の配置が終わる―――

 

 各務家に征矢と共に戻った絆の護衛に対して4忍を。また、瀬名が怪我を負った場合を

考えての治療をする為の保険医・三嶋桐子の同行者として4忍。そして、瀬名を救出する

為の4忍。計・十二人の忍を総じて「飛龍忍者」と呼称する。

 飛龍忍者は、悠也と同じ甚大高校の生徒・若林恭司を中心として成り立ち、元々は霧生

一族の抜忍や抜忍の子供で構成されている。

 活動内容の全ては悠也のサポートに尽きる。諜報活動を専門とし、悠也の優位性をどの

ような時でも確保する。情報収集能力だけなら悠也を凌ぐ。

 十二忍の固い結束は、悠也が中心に居てこそ揺ぎ無いものとなる。それは己が置かれた

環境以上に守るべき者を見出しているからに他ならない。

 悠也が多目的ホールにやって来る。

 出入口で見張っていた相賀は、悠也の姿を見て頭を垂れる。

『今は構うな。配置に付いてくれ―――頼むぞ』

『解ったよ』

 この相賀も飛龍忍者の一人である。悠也の言葉を聞いてすぐにその場から立ち去った。

「配置」と聞いて、すべき事を理解しているのだ。

 悠也は、扉に両手を付けると、力任せに押し開いていった。

 

 重い金属音が鳴り響く多目的ホール―――

 

『誰だッ!?――――折角いい所にぃ!』

 相澤が驚愕に表情を変化させる。顔を動かした瞬間、赤い血溜となった玉が舞台に飛び

散った。

 悠也が堂々と入ってくる。床を踏み付けて勇ましく立つ。

『相澤志郎・・邪念に取り付かれ、獣鬼と化すのか!お前も霧生の忍ならばッ!!―――

勇ましく散れ!!!』

『各務ぃ~~悠也ぁーーか!!―――いや、霧生当主・霧生悠様よ!!』

 叫びが気合と共に互いより放たれる。響き合う声が多目的ホール内に満たされる。

 悠也は、舞台に立つ相澤の背後で気絶している瀬名の姿を見つける。

『・・・彼女をどうするつもりだ。相澤!』

『はぁはん?―――彼女ぉ?――――貴方様の女でありましたか?』

『・・・・・もう一度訊く。彼女をどうするつもりだ』

 一歩、足を強く前に踏み出す。威圧感ある靴音が相澤へと届くが、当の本人は余裕綽々

な様子である。

 既に血が舞台を汚している。その汚れに満たされる瀬名の姿―――麗しいほどの肌を晒

す様を見て、悠也の怒りは頂点に達した。

 相澤が遅れて気付く時には相当に遅すぎる。急激な床を叩く音をその場に残し、悠也の

姿が忽然と消えていた。

『上か!?――――ッ!!がっ!?――――――――ッ!!』

 悠也の姿を見つけ出そうと頭上を見上げた瞬間だった。背後でステップ音がするのを聞

いた直後には、既に身体は前に押し出されていた。

 悠也が血溜の中に立ち、瀬名を救い上げる。舞台から転げ落ちる相澤は、強烈な音と共

に悲鳴を上げた―――瞬間!?

 

 四方より放たれる非情なる光が相澤を捕らえる―――

 

『あがっ!?―――こ、これは!!』

 相澤が驚愕する中、悠也が不敵に笑みを見せる。そして、舞台から降りた瞬間には既に

その身は出入口付近にあった。

 相澤は一瞬にして移動して見せた悠也へと振り向こうとするが、身体を捩ろうと努力す

るだけで思い通りに動かない。

『それでも“三忍”の力だ・・飛龍十二忍が編み出した術―――「鬼道式呪戒」にお前を

捕らえた。その身は呪力と共に閉塞した。――――覚悟しろ、相澤志郎』

『悠様・・・彼女を此方へ』

『頼むぞ』

『はっ』

 背後に現れた恭司に瀬名を託す。

 多目的ホールの外では、相賀を含む三忍が配置している。各々が右手を壁に付け、手首

を左手で強く握り締めて、身体を前に押す勢いで立ち呪力を放っている。

 「鬼道式呪戒」―――飛龍十二忍が編み出した術である。呪力を持つ者を呪力圏に閉じ

込めて呪力そのものに加えて身体の動きを封じる。

 そして、その効果はまた別の効果を生み出すのだが・・・

『ゆーう様ぁぁ!!!これで勝てるとぉ~~思うなぁぁ!!!ぼくの力はぁぁ!!!』

 相澤の身体より赤い鮮血がホール内に飛び散る。その飛び散った血より相当に強い呪力

が立ち込め始めた。

『なにっ!?―――くっ!』

 血風が出入口に殺到してくる。

『悠様!?』

『恭司は下がれ。瀬名サンを頼む!!!』

 そう言うと瀬名を抱く恭司を後ろに突き飛ばし、外に出ようとする相澤を閉じ込める為

に唯一の出入口である扉を閉めた。

 扉が閉じられる。外に突き出された恭司は、

『悠様!!―――悠様!!!くっ!!』

 扉を叩くが、内側からの反応がない。悠也の呪力すら感じられず、無事を確認する手掛

かりが失せてしまった。

 何度も扉を叩くが、やはり反応は返ってこない。無理に開けようとするが、中から鍵が

掛けられた様子で、力を籠めても全く開く気配が無かった。

 状況の急変を知った他の三忍が集まってくる。相賀が三忍を代表して内部へと流し込ん

でいた呪力が絶たれたと恭司に報告した。

『若林君。このホールを覆い尽くす勢いの相澤先生の呪力はまさに結界に近いものだよ。

これを破るのは並大抵じゃないよ』

『リーダー・・せめて悠様の呪力が回復していれば、俺達だけでもやれるんだが・・』

『このままじゃ悠様が!!どうしたら良いんですか?―――リーダー!!』

 視線が恭司に集中する。彼等の視線を受けた恭司は、自身に努めて冷静にさせた後、

『みんな、落ち着いてくれ・・・悠様は仰せになられたはずだ―――先ずは、彼女の身の

安全を確保しろ・・と。ならばそれに従うべきだ・・・それに、もうすぐ三嶋先生が来る

はずだ。それから人数を結集して悠様を救う!!(―――悠様。どうかご無事で・・)み

んな。悔しいが、一度退くぞ!』

 三忍を宥め、この場は退く決意をするしかなかった。

 

 

 凄まじい血風が発生するホール内―――

 

『くっぁ・・!!』

 身体を支える事が出来ない程の強い風が吹いていた。それと共に血溜が結晶化したもの

が悠也の身体にぶつかってくる。

 痛みと共に制服が破け散った。既に上半身は裸にされた。その状態で両足が床より離れ

て宙に浮いた。

 まるで竜巻に巻き込まれた様に風の中を荒々しく舞った。そして、上から吹き降りてく

る風に押し潰される勢いで床に激突する。

 這い蹲る悠也は、上から押さえ付けてくる風の勢いに中々立ち上がれない。

 相澤は、血風が乱れる中を悠然として歩いて来る。悠也の目の前まで来ると、冷ややか

に見下ろした。

『相澤ッ・・』

『ふふっ。ぼくの勝ちだ・・悠様――――今の貴方様は、呪力を使えない身であると判断

します。御身より一切の呪力を感じませんよ?』

『くっ・・』

 この血風の中で抗うには、呪力で対抗するしかない。しかし、今の悠也にはそれが全く

出来ない。身体を動かそうにも相澤の血が身体に染み付いて動きを封じてくる。

 肉体が縛り上げられる。

『くっ・・ぅ・・』

『痛いですか?―――くくっ・・ぼくが負った痛みはまだまだこんなものじゃないですか

らね・・・精々、味わって貰いましょうか?』

『くっ・・!?――――ッ・・!!』

 付近に存在する血溜が無数の柱となる。最終的には先端が不気味に蠢いて曲がる触手と

化した。

 触手に絡まれる悠也の身体は、強制的に立たされていく。

『さあ・・・盛大なショーを始めましょう!!!!』

 相澤が叫んだ時、その身全てが血と化して爆発してホール全体に飛び散った。

 血の弾丸を真正面から受ける悠也は、全身に走る痛みを堪えるしかなかった。

 

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