※この作品はR-18です。

神技一刀´   作:TETUYA

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二章・二話:水に映る鏡

 薄暗い中、集められた少女達の意識は奪われ―――

 

『可愛い子猫ちゃん達。ボクの言う事を聴くんだよ・・ね?』

 クスッと軽やかに笑う青年は、その外見の爽やかな表情とは違って、感情には欲望の種

を蒔いている。

 薄暗い一室の片隅で寄り添う様にして気絶する彼女等は、衣服を剥かれて全裸にされて

いる。皆、可愛らしい顔をしており、肢体もそれに見合っている。

『君達の中で誰が“そう”なのかな?―――クスっ、それとも、子猫ちゃん達を助けに来

るナイト(騎士)でも待つ方が懸命かな?』

 漆黒な艶やかさのある長髪の前髪を掻き上げる。そして、壁一面が鏡張りになっている

方へと顔を向ける。

『うぅ~ん。ボクはいい男だぁなぁ~~・・・絶世の美男子・如月京史郎ここにあり。ふ

ふ・・ふふふ・・』

 妖艶な笑いはまさに彼に―――如月京史郎に良く似合った。

 上半身は裸の華奢さを鏡に映し、下半身は青のタイツを穿いて股間を膨らませている。

 掻き上げた手をそのまま顔伝いに下ろしていく。口元まで至ると唇を指で触れた。

『16歳の齢を重ねた少女が持つ―――を見出せ、との命令であったが・・・どうせ、解

る訳が無いからねぇ~。だったら尚更ぁ、遊ばないと損じゃなぁい?』

 少女を見つめ、麗しげに笑うと、感情に蒔いた欲望の種を成長させていく。それに合わ

せる様にして股間が膨らんで見えていった。

 

 

 藤島家―――

 

 浴室に悠也と佐伯は入っている。風呂に入る訳でもない為、服を脱いではいないが、浴

槽内に水が溢れんばかりになっている。

 悠也が手に持っている二枚の手鏡を浴槽内に落とす。小さな音を立てて鏡は沈み、やが

て底に付くと、悠也は右掌を水面にそっと付けた。

 水の冷たさが掌より伝わってくる。それを意識しながら、心で浴槽の底に沈んでいる鏡

を掴むように意識しながら、

『各務奥義―――水鏡・・』

 言下、ゆっくりと右手を上げる。水面に若干の波紋が浮かぶ。広がり、やがては消えて

いく中で、静寂な水面となる鏡が形成される。

 水面下で二枚の鏡の鏡面が輝いて見える。その輝きを受けるようにして水面が一瞬の輝

きを帯び、そして、ある光景を写し出していった。

『二枚の鏡は汚れていなかったが、幾つもの細かい傷があった。それは彼女ら二人が常に

所持していた物と判断して問題ないはずだ』

『・・・ならば、当時の事もそこに(鏡)に写った光景として記憶されている・・・その

記憶を水に映す“合せ鏡”という訳か』

『そうだ。記憶に水は反応し易い。記憶した光景を水面(鏡)に合わせて垣間見る・・・

それが「水鏡」だ』

 鏡が鮮明に記憶する光景が水面に写っては消えていく。最初は幼い頃に両親に鏡を買っ

て貰った時の光景―――小学校に持って行って自慢した光景―――ひょんな事から失くし

てしまって探して見つかった時の光景―――いくつも光景が浮かんでは消え、そして、最

後に浮かび上がった光景こそ。

『姉は妹を攫う目的だったという事か・・・この施設は、二井川を越えた先にある「雪白

共同教育研究施設」・・・地形および気象の基礎情報を収集し、それらの応用技術の開発

を目的とした建てられた施設だな』

『環境に興味があったという事か・・・勉強熱心な彼女は、そこを訪ねて向学心に花を咲

かせたが、それが仇になった・・・つい妹の事を話し、標的にされた』

『・・・それで、この雨が降っていない昼間の景色からすると、気候的に考えれば、恐ら

くは5月中だろうな』

『ああ。・・・それに・・』

 彼女の身に及んだ事実こそ、華奢な研究員に術を掛けられる光景であり、そして、その

術に操られた彼女は、妹を外に連れ出した訳になる。

『この男が掛けた技・・・霧生一族だな?』

『ああ。相手は「操術」に長ける忍だ。彼女を呪力で意のままに操る。だからこそ「思兼」

では聴き出せなかった訳だ―――(・・記憶を探る意図を予め想定しての事か・・)』

 水面に写っていた光景が消える。姿勢を直す悠也が振り向いて、後方に立つ佐伯をじっ

と睨むように見る。

『ユウ。忍務だ』

『・・・最初から本音を言えば問題無かった。試す様な真似は、オレは好きじゃない』

 それが悠也の肯定の答えだった。佐伯は口元に笑みを浮かばせる。そして、踵を返して

浴室を出る。

『忍務は“彼女等”の救出―――そして、霧生一族の目的を探れ。ユウ・クサナギ!』

『分かった』

 彼女等とは、「水鏡」によって写し出された光景の中にあった、攫われたと思われる少

女達が監禁されている事であった。今回、攫われた藤島理奈もその一人なのだ。

 強く頷く悠也が顔を上げる。その表情には厳しいまでの決意が表れていた。

 佐伯は悠也の決意の表情を見るまでも無く立ち去って行く。

 浴室に残る悠也は、浴槽内に沈んだ二枚の鏡を拾い、それから出て行った。目的地が分

かった以上、焦る必要は無い。行動は夜と決めていた。

『一度帰る必要がある。・・・が、心配するからな』

 二枚の鏡を右手に握りながら、攫われた少女達の事を思う。その中で自分の大切な存在

と少女達とを重ね合わせて思い馳せていた。

 そして、まるでその存在の無事を確認したいかの様に、急ぎ藤島家を出て行った。

 

 

 

 深夜―――

 

 全てが寝静まる時間帯に影は密かに素早く動く。二井川の鉄橋の天辺に悠然と立ち、雪

白研究教育施設の建物を臨む。

 雨は既に止んでいるが、数時間すれば再び降り出してくるだろう。夜空に浮かぶ月と星

が見える光景は、今だけの光景に違いなかった。

 湿った風に当たり、悠也は首に巻き付く薄布地―――マスクを上げて口元を隠した。

 風が戦ぐ音を立てている。草木が何処かで揺れる小さな音を聴く。

『霧生一族は・・今のオレの――――――敵だ』

 まるで自分に言い聞かせるかのような口振りだった。敵である正当な理由が悠也にはあ

るが、どうしても憎めない一面もあるのは確かだった。

 貨物列車が鉄橋を通過する。煩い金属音と風を切る音が同時に唸った。そして、貨物列

車が鉄橋を通り過ぎた時には、既に悠也の姿は消えていた。

 風が悠也を探す様に鉄橋の天辺に逆巻いている。夜の闇の静けさが一層の到来を見せる

中、静寂な夜空だけが全てを見下ろしていた。

 

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