※この作品はR-18です。

神技一刀´   作:TETUYA

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十二章・六話:想定の含有

 甚大市・北西の方角に位置する御鏡神社――――

 

 境内で、甚大高校の制服を着ている生徒―――桐生将星は、夜の静けさを伴わせる静寂

さを身に宿して片膝を付く。

 目の前に立つ巫女・神代雪菜を見る。眼差しを強め、まるで睨み据えるかの様な視線を

保ちながら、鉢巻を額に当てて頭に巻く。

『・・・問う。巫女に従い、衛士の力を行使する。我が命、御鏡の糧となり、巫女の盾と

なる。我が決意は剣となる誓いをここに』

『出師の理を認めます。衛士・桐生将星に封魔鏡の加護を・・―――後は任せます』

 将星の言葉に頷いた雪菜が、右手を差し出して将星の額の鉢巻に触れる。すると鉢巻は

淡い光を生じて、暫く輝きはほんのりと帯びた後、緩やかに消失していった。

 雪菜を前にして立ち上がる。強い頷きの後に背中を向けて歩き出す。

 歩き出す将星と共に棚引く鉢巻を染める色が、夜の闇の中で雪菜には良く見えていた。

『将星さん・・・』

 御鏡神社を去って行く将星を、雪菜は見続ける。将星の姿が消えた今でも暫く立ち尽く

して闇を見続けていた。

 

 

 

 夜、川の流れを望む―――

 

 甚大市の東側に流れる二井川の堤防に立つ男は、背後に立つ黒き闇の存在に気付き、顔

を僅かに動かして止める。再び川を望んだ。

『旭志様―――』

『今は動くな・・・黒識』

 黒き闇(黒識)は、素顔を隠すマスクを取り、黒髪を涼しげな風に晒した。

 風が川の匂いを運んでくる。それが男(旭志清十郎)には不快である。

『里で感じる清流の風(匂い)はここには無いか、ただ現代という名の“穢れ”に満ちた

風(匂い)だな・・』

『・・・・』

 黒識は、話を逸らされたと感じるが、それでも表情は一切変わらない無表情さで清十郎

が見ている川を共に望む。

 それから無言が続く。

 吹き抜けてくる風が穏やかな時間の経過を知らせる中、一人のパーカー姿の青年が走っ

て来る。どうやらランニングで堤防を走っているらしい。

 堤防に立ち続ける清十郎の傍を青年が走り抜ける。その際、青年は不信感を表情に出し

て、走り抜けた後も暫く気になってチラチラと後ろを向いていた。

『変な奴だな。“一人”で川を見てるなんて、な』

 自分の言葉が恐怖感となる。静かに空に輝く月と不気味なまでの夜の静けさが青年の恐

怖感を煽り立てる。その恐怖感に耐え切れなくなると、急にペースを乱して走り去って行

った。

 青年の姿が堤防より消えると、一人佇む清十郎の背後に黒識が現れていた。まるで吹き

抜ける風と共に消え、また、吹き抜けようとする風に伴って現れたかのようだった。

 清十郎は相変わらず川を望んでいる。闇に揺らめく川の流れの中に浮かび揺らぐ月を見

据え、緩やかに両眼を細めると、

『―――悠輔殿は、自らの・・己の未来を決める・・・。―――里の掟を守るか、それと

も己の心に準ずるか・・・全ては“彼女”に委ねる事になる』

『相葉悠輔・・・もう一人の神技継承者・・その事、相葉殿は?』

『全て承知している』

 端的に黒識に答え、右足を一歩前に出した瞬間、吹き抜けてきた風と共に姿を消した。

 堤防に残り佇む黒識は、右手に持つマスクを強く握り締める。

『全ては“彼女”に・・――――――――――』

 

 

 

 雪白共同教育研究施設―――

 

 夜の闇が敷地と建物に忍んでいる。月の明かりだけでは闇は見通せない。この中で樹の

枝が風に揺れている音が出る。

 風がやや強まる中、茂みと樹と塀との間に隠れている、

『凄いよね・・こんなに真っ暗なのに平気なんだ』

 絆は、慎重に周囲を眺める。その視界に二人の漢の背中が入ると、その背中を交互に見

比べる様にして見つめた。

 一人は忍装束姿の各務悠也である。

 そして、もう一人は悠也と容姿が酷似している勇真である。

 勇真が振り返り、

『俺達はなんせ忍ってンだ!・・・夜目に慣れてンだよ』

『へぇ~。凄く便利』

『だろ?』

『うん。まるで泥棒みたい』

『がくっ・・って、それはねぇだろ!!』

『え、だってぇ・・・この塀も簡単に乗り越えちゃうし、しかも私を抱えてだし』

『まあ、絆サンは軽かったなー』

『・・・むっ、エッチ!』

『へへっ、そう怒ンなって!』

『フンだ!』

『わりぃわりぃって!!』

 会話を弾ませる勇真と絆に対し、悠也は呆れた様子の視線を二人へと向けると、特に勇

真には冷ややかな視線を送る。

『な、なンだよ・・』

『・・・・・・・・・』

 悠也の睨みが癇に障る勇真であるが、その隣の絆は悠也が無言で睨むのかを悟り、勇真

に向かって、

『しー・・です。しー』

 小声で囁き掛けた。

『わあってるよ。ンな事!』

 絆にではなく、悠也に小声で苛立ちの声を上げて返した。

『・・・だが、俺達はともかく・・絆の存在は既に気付かれているだろう』

 今までこの敷地内に入ってから一言も喋らなかった悠也が、ぼそりと口に出した。

 悠也の言葉を聞いて絆はしょぼんとして項垂れるが、それを勇真が宥めてくる。絆の肩

に左手を軽く乗せる。

『しゃあねぇよ。どうせ、奴(敵)はオレが来るのを知ってるし、絆サンの存在ももう知

ってるはずだしな。オレが誰を頼るのかってバレバレってンだよ』

『勇真さん・・』

『そいつの言う通りだ。今のオレの言葉で落ち込むな・・この場合の的確な表現を簡潔に

言ったまでだ』

『的確に簡潔・・・ですか?―――それってつまり・・面倒臭い?』

『・・・・』

『そうとも言うよなー。けどな、絆サン・・・って言うか、敵に囲まれてる状況も解って

くれよな?』

『え・・?』

『そう言うことだ。敵は既に敷地内に伏せている・・数は多いな』

『だな』

 悠也の言葉に同意して頷く勇真であり、二人は同時に堂々と立ち上がる。

 二人のいきなりの行動に絆は驚いて自分も立ち上がろうとするが、それを悠也が右手を

絆の顔の前で広げて止める。

『・・え』

『正攻法で行くと既に決めていた。敵がオレ達の事を知っている以上、隠れる必要は無い

が、絆の安全は・・・』

『確保してぇってンだ。だからここで潜んだンだよ・・絆サン。すぐに片してくるから、

ここで大人しくしてろってンだ・・・・じゃあ、若サン。行くンだろ?』

 勇真の言葉に悠也は言葉で答えず、行動で応えた。

 二人は茂みより出て、堂々と姿を敷地内に晒した。絆は樹と茂みの中で邪魔にならない

様に身を潜めた。

 

 敷地内の照明が一気に灯される―――

 

 四方八方より照明に照らされる悠也と勇真は、己の影が八方に伸びる中心に勇ましく立

って互いの顔を見合った。

『お前の力・・見せて貰う』

『だな・・けどな、ここは共同戦線だろ?』

 勇真がにやりと笑い、素早い動作で身構える。敵と対峙し、改めて悠也を見ると、

『そうだな』

 軽く答え、身構えもせずに堂々と立ち尽くしていた。

 そして、二人を取り囲む様に大量の人影が敷地内に出現した。

 照明が人影の正体を暴く。その姿を絆は目にし、彼等の姿を見る内に恐怖心に襲われ、

身体が震え、怯える声で、

『亡者・・―――――――――――――』

 彼等―――既に生命を終えた者達が、悠也と勇真に今まさに襲い掛からんとしていた。

 

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