※この作品はR-18です。

おバイオ世界の君がサロメ嬢とXXXする話   作:a-su

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"Thou shalt love thy neighbor as thyself."
『自分を愛するように あなたの隣り人を愛せよ』



1.おプロローグ&おゾンビ戦!ですわぁ~

 1998年、アメリカ。

 

『君』は、ゾンビたちを睨みつけ銃を構えた。丸太のように太い腕でハンドガンをしっかり握っている。

 引き金を引く。銃声。銃声。銃声。

 米陸軍制式拳銃・ベレッタM9の銃弾が暗闇を駆け抜け、ゾンビ3体の頭部を正確に射抜いた。

 

 それでも、歩く死者たちの行進は終わることがない。曲がり角から、車の下から、建物の中から──様々な場所からゾンビたちが現れる。

 ビデオゲームのように現実味のない光景だが、これは間違いなく実際の出来事だ。

 

 ここは地獄の一丁目、ラクーンシティ。つい数日前に発生した謎の感染症により、住民がゾンビ化した街だ。

 感染源は不明。どこからともなく現れたゾンビが人々を襲う。そして噛まれた者は感染者となり、やがてはゾンビの仲間入りをする。

 

『君』は、この生物災害(バイオハザード)の原因を突き止める為に派遣された米軍特殊部隊の隊員だ。怪物達との激しい戦いで、チームはもう『君』一人になってしまったが。

 

 夜のラクーン・ストリートに次々と銃声が鳴り響き、そして止む。弾倉が空だ。リロードを行いながら、周囲を見渡す。そこには大量のゾンビたちが蠢(うごめ)いていた。

 

 一体一体はそれほど脅威ではない。的確に銃弾を当てれば倒せる相手である。ただし、何十体も同時に相手取るなら話は別だ。

 君た(・)ち(・)は、ゾンビに背を向けて走る。ストリートの端にあるスクールバスを乗り越えて逃げるつもりなのだ。

 

「んきゃ〜〜〜!!!

 も、もうやめてくださいましぃ〜〜〜!!!

 わ(・)た(・)く(・)し(・)T-ウイルスの抗体なんか持ってないんですのよ〜!!!」

 

 そう、君た(・)ち(・)だ。悲鳴のような大声を上げながら走る彼女の姿を目にして、『君』は思わず舌打ちをした。

 

 街灯に照らされて、夜闇の中に薄紫の長い髪が流れる。今のラクーンシティには似つかわしくない赤と黒のドレスが風にはためき、スカートもまくれ上がっている。

 

 同行者の名はサロメ・ヒャクマンテンバラ。ゾンビだらけの街で偶然出会った、謎の美女だ。陳腐な表現だが、そうとしか言いようが無い。人種国籍共に不明、年齢不詳。名前と性別以外は全てが謎に包まれている。

 

 性格だって理解不能だ。常にテンションが高く、自信過剰。妙に臆病かと思えば、やたらと好戦的になることもある。おまけに彼女が使う単語は半分も理解できない。今もそうだ。

 

「きっつ!

 おバイオの世界きっついですわ!!!

 ゾンビって実際嗅ぐとマジくっせえですわ~〜〜!

 もう無理〜〜〜!

 こんな世界早く抜け出さないと、せっかくの百万人登録がパアですわ~〜〜!

 わたくしをリアルに帰して下さいまし〜!」

 

 おバイオ? リアル?

 また訳の分からない事を言っている。正体不明、意味不明、明るいのは性格だけ。せっかく綺麗な顔も涙と鼻水でぐちゃぐちゃである。本当に、本当に彼女は変な奴だ。

 

 出会いもひどかった。仲間を失い孤独にさまよう『君』のケツを蹴飛ばし、お立ちなさい走りなさい生き残りなさいと強引に鼓舞し、挙げ句の果てには「わたくしをお守りになって!」と高飛車に命令してきた。Bullshit(ふざけやがって)!

 

 だが。『君』は合衆国の兵士で、そして男だ。

 だからサロメを抱きとめ、全身の筋肉を総動員して力一杯放り上げた。

 

「どしぇ~~~~~!!???」

 

 綺麗な放物線を描きながら、サロメがスクールバスの屋根に着地する。「あふん!」という悲鳴が聞こえた。

 

 ゾンビたちは力こそ強いが運動能力が低い。高さは常に地の利をもたらす。

『君』もスクールバスに飛び上がり屋根の縁に陣取った。ゾンビたちを見下ろしながらハンドガンを構え、周囲を警戒する。

 

 ふと視線を下に向けると、サロメと目が合った。潰れたカエルのような格好で屋根に突っ伏している。

 めくれたスカートの裾からは黒い下着が見え隠れしていた。驚くほどに白い太ももや、肉付きの良い尻の形が分かる。

 とはいえ、実に締まらない姿だった。『君』は思わず、顔をしかめる。

 

「ちょっと!

 レディに対して失礼なんじゃありませんこと!?

 おパンツ見えましたわよね。

 今絶対ラッキーでスケベなイベントが発生しましたわよね!?

 あなた男でしょ!

 こういう時こそしっかりリードしてくださらないと困りますわ!!

 大体さっきから一体何を手間取ってますの!?

 ちまちま ちまちまと!

 もっとこう、バーンッ! っと、ズバッ! っとやりませんこと?

 ハンドガンなんかじゃ、こいつらは止まりませんわ!

 ショットガン!

 おショットガンをお使いになって!

 え? ない? 無いわけありませんでしょう?

 おバイオなのにどうして用意していないんですの?!」

 

 それこそ機関銃のようにまくし立てるサロメ。彼女の長所と言えば、驚くほどの美声だろう。どれほど大声を出しても、甲高い悲鳴を響かせても、その美しい声が濁ることはない。

 だが今はその才能が恨めしかった。耳を塞ぎたくなるほどの騒音だ。うるさい上に意味が分からないので尚さら苦痛なのである。

 

「だぁーれが人間メガホンか、この筋肉ゴリラ!

 んもう怒ったわ!

 こうなったら、わたくしが本気を出すしかありませんわね!

 ゾンビなんて所詮は動く腐乱死体じゃございませんこと!

 あ、ちょっと待ってくださいまし。

 今、思い出しましたわ。

 確かここにな(・)お(・)し(・)て(・)……

 あったありましたわ!!」

 

 ご自慢のドレスの中からサロメが何かを取り出す。『君』は目をむいた。

 その名もレミントンM870、黒光りするポンプアクション式のショットガンだ。警察用としても採用されている信頼性グンバツのベストセラー。一体どこに仕舞っていたのか。

 

「ショットガン!

 おショットガンは神をも殺す最強の兵器でございましてよ!

 さぁ、レッツパーリィー!

 わたくしは壱百満天原(ひゃくまんてんばら)サロメ。

 壱・十・百・千・満点サロメ!

 ゾンビの皆さまには鉛玉をお届けいたしますわ~!」

 

 そして膝を突いて構え、引き金を引く。乾いた破裂音が周囲に響き渡り、銃口から飛び出した無数の鉛玉が、ゾンビたちを打ち砕いていく。

『君』は心の中で感嘆の声を上げた。だが、感心している場合ではない。連続する銃声に、新たなクリーチャーが引き寄せられてくる。

『君』は再び銃を構えるが──

 

「さあ参りましょう!

 わたくしたち二人で、この地獄を生き延びて見せますわよ!

 ていうかバイオ2やった事ないですから核ミサイルがいつ降ってくるか分かりませんし!

 わたくしたちならきっと脱出出来ますわ!

 そうですわ!

 そうに決まっていますわ!

 わたくしが居れば、あなたは無敵ですわ!

 わたくしが居る限り、あなたの勝利は約束されているのですわ!

 さあ、行きますわよ!

 100満点の未来を掴む為に!

 ──ぐえっ」

 

『君』は彼女の首根っこを掴んで無理矢理立たせると、背中を押した。

 

「ちょっとぉ~~! レディに対する扱いが雑……いやあああああああああ!!」

 

 二人の間を、稲妻のように何かが通り抜けていく。鋭い槍のような、しなるムチのような、それでいて濡れた舌のようでもある奇妙な物体だ。それは建物の壁を貫き、さらに道路標識を引き裂いた。

 

 飛び散った破片の一つが『君』の肩に突き刺さる。焼けるような痛みが走った。

 

「……リッカーですわぁ~! リッカーですわよこれぇ──!!!」

 

 そいつらは、生皮を剥がれた人間が這いずっているような、見るに耐えないおぞましい外見をしていた。

 四足歩行で、腕の先端には巨大な爪があり、そして異常に舌が長い。さきほどの攻撃はその舌で行われたのだろう。

 

 動きの速さは、ゾンビの比ではない。そして跳躍力も。

 そいつらが、群れで何体も襲いかかってきたのだ!

 

「詰みましたわ……

 "You are dead"……

 わたくしの命日は今日でしたのね……

 イーサンのようには行きませんでしたわぁ……」

 

 諦めの早いサロメに呆れながら、『君』はその頭を殴りつける。

 

「いった!

 痛ったぁ~~~!!!

 なにしますの!?

 暴力反対!

 女の子の頭を殴るとか最低な行為ですわ!

 ──うわあお!?」

 

『君』は虎の子を取り出し、そして投げる。空中で放たれる閃光と爆音。米軍仕様の強力な閃光手榴弾(スタングレネード)である。

 効果はてきめんだったようで、リッカーの群れは悲鳴を上げながら後ずさった。どうやら耳が良すぎるのか、爆音によって大混乱を起こしているようだ。

 今の内に逃げ出そう。『君』は混乱するサロメを肩に担ぎ上げると、一目散に駆け出した。

 

 

 ◆◆◆

 

 ゾンビはどこにでもいる。それは『君』の背後で息を潜めているかもしれないし、あるいは向かう先にいるかもしれない。

『君』は振り返ること無く、走り続けなければならない。そして生き抜かねばならない。

『君』には背負うものがあるのだから。

 

 例えそれが、正体もよく分からない言うこともよく分からない何もかもよく分からない謎の美女であってもだ。

 

「とか思ってますわよね? あなたは!!」

 

 突如として、耳元ででっけえ声がした。『君』が担いでいたサロメが、足をばたつかせて暴れているのだ。

『君』は何も答えない。代わりに速度を上げることで、彼女の抗議を無視した。

 

「思ってるはずですわ!

 だってさっき思いっきり口に出してましたもの!

 ほらやっぱり!

 だれが100点満点中120点の謎の美女ですか!!

 Vtuberにも人権はあるんですのよ!!

 大体思うんですけどあなた当たりがキツくありませんこと!?

 ポコポコポコポコ殴りつけて、おコンプライアンスはどうなっていますの!?

 それになんで担いで逃げますの?

 おんぶならまだ分かりますけど!

 これはいくらなんでも恥ずかしいですわ!!

 もっとこうお姫様抱っことか!!

 例えば、そう! まるで物語の中の騎士みたいに!

 颯爽と駆け抜けてくれたりしてもいいんじゃなくて!!?

 ねえちょっと聞いてますの!?

 わたくしを無視しないでくださる!?

 無視だけは許しませんわよ!!?

 あ~~もう!!

 聞いてるんですの~~~!?!???」

 

『君』が侵入したのは、庭にハーブが植えられた古い教会であった。窓や扉がどこも破られていないことを確かめて、ようやく一息つくことができた。

 

「ぷは~~~~~っ!!! 死ぬかと思いましたわ~~~~~~~~~!!!!」

 

 床に降ろされた途端、サロメは叫び声を上げる。その身体は汗びっしょりで、顔や首筋からは滝のような汗が流れていた。

 

「あっせくっさああ……、本当に酷い匂いですわね……

 この『サロメ』が汗をかくなんて……

 ああぁ……髪がぐしゃぐしゃじゃありませんの……

 さっきの追いかけっこのせいですわ……

 こんなんじゃリアルに帰っても配信できませんわ。

 チャンネル登録も高評価も稼げませんわぁ……」

 

 薄紫の髪をかきあげるサロメ。汗の粒が月明かりに反射してキラキラと輝く。その横顔は美しく、しかしどこか作り物めいて見えた。幻想的でもあり、不気味でもある。現実感がない美しさだった。

 

 黙って見ていると、彼女はじろりとこちらを睨みつけてきた。しかし、その視線はすぐに逸らされる。

 

「……ええ分かっておりますわ!

 わたくしがワガママだという事は自覚しております。

 重~々承知しておりますわよ。

 あなたからすれば、わたくしは頭のおかしい奴にしか見えていない事も。

 ですが言わせていただきますけどね。

 わたくしは確かに謎多き存在でしょうけど、もう少し優しくしてくださってもいいんじゃありませんこと?

 もっとこう、レディとして丁寧に扱うべきですわ。

 ──ねぇ、何か言いなさいよ!」

 

『君』は困ったように頬をかくだけだった。そんな反応を見た彼女は、大きなため息を一つ吐く。

 

「……ごめんなさい。

 別に悪気があった訳ではありませんの。

 ただあまりにも、運命が理不尽(おクソ)過ぎて腹が立っただけですわ。

 だから気にしないでくださいませ」

 

 それから彼女は乱れた髪を整えつつ、静かに話し始める。

 

「あなたから見て、わたくしはどういう風に映りますか?

 どう見えますかしら?

 率直に答えていただいて構いませんわよ」

 

『君』の返答を待つ彼女の表情は真剣そのものだ。『君』は少しだけ考えてから口を開く。

 

 あなたはとても美しいと思う。

 あなたの容姿はとても整っているし、声も魅力的だ。

 特にあなたの声は素敵だと思う。

 聞いているだけで心が安らいでくるようだ。

 テレビにでも出れば、きっと多くの人がそう思うだろう。

 

「……え? ……はぁ!?!?

 なっ、いきなりなんですのなんで急に口説いてるんですの!?」

 

 なんでも何もない。『君』はそう思うからそう言っただけだ。

 

 サロメは、まさに絵に描いたような美女だ。

 薄紫の髪、宝石のように綺麗な瞳、陶器のように滑らかな肌、整った顔立ち、透き通るような声、女性らしさを主張する肉体。

 おおよそ人間の持つ美という美を全て凝縮したかのような存在だ。

 

「あう~……うぅ……」

 

 突然褒められて顔を真っ赤にするサロメ。『君』は彼女に、なぜそのように美しいのか尋ねた。

 

「ふえっ!?

 ……ええと……そ、それはですね……

 まぁ、生まれ持ったものとしかいいようがありませんわね……

 なんと言いますか……

 ほら、あの、わたくし一流のお嬢様を目指しておりますから。

 この身体も、お母様に綺麗に描(・)い(・)て(・)いただきましたのよ。

 だからほら、『サロメ』はとってもスタイルがよろしいでしょ?

 ボディラインも完璧で、ウエストはくびれてるし、お尻も大きいですし、足も長いですし……。

 顔もね、多くの方の好みに合わせてデザインしていただいていますのよ」

 

 理解できず、『君』は首を傾げた。サロメは舌を出して、ちょっと媚びるように笑う。妙にこなれたその仕草を見て、『君』も釣られて笑ってしまった。

 

「おほほ……♪

 分からなくても無理はないですわ。

 あなたはこの世界のヒトですもの。

 でも本当に、わたくしって綺麗ですよね?

 自信ありますわよ?

 世界中の誰もが認めてくれますわよね?

 ──ね? ね?」

 

 今まで聞いたことのない、ローテンションでしっとりとした声。上目遣いでこちらを見つめる瞳は潤みを帯びていた。

 少し間を置いて、『君』はこくりと頷く。それを見た彼女は嬉しそうに笑った。

 

 それからくるりと回って見せる。スカートが大きく翻り、白い太ももがちらりと見えた。

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