1998年、アメリカ中西部、ラクーンシティ。無人の地下鉄。
君とサロメのセックスは、いよいよ佳境に入っていた。二度の射精を経ても、君の欲望は萎えることを知らない。
サロメも、陰唇を肉棒にこすり付けるようにして君を誘惑している。
「ラブラブなおセッセしましょう、ベイビー。
もっと気持ちよくなりたいですわよね?
ほらほら、見てくださる?
わたくし、こんなにも濡れておりましてよ……♡」
サロメは『君』の手を取り、自らの陰部へと導いていった。そこはすでに大洪水になっており、ぬるりとした感触が伝わってくる。陰毛に絡みついた愛液が、糸を引いている。
「はっ、はっ、はっ、はっ……
わたくし、もう我慢できなくってよぉ……
ねえ、ねえ、いいでしょう?
はやくぅ、はやくう……」
サロメは犬のように舌を出し、はっ、はっ、と短い呼吸を繰り返している。
『君』はサロメを抱き寄せ、唇を合わせた。
「はむっ、んちゅ、ぢゅ、
んはぁ、いき、くるし、
はっ、はっ、でも、
は、はっ、はっ、
あは、はっ、はっ、きもちいぃ……♡」
酸欠状態に陥りながらも、サロメは『君』にキスをやめさせようとしない。まるで酸素よりも大事な何かを補給しているかのような情熱的なディープキス。
『君』は、自分が今なにをしているのか、何をしようとしているのかさえ曖昧になっていた。ただひたすらサロメを求める。
気がつくと、二人の性器は結合していた。
「ひっ、ひっ、ひっ、ひっ、いき、いきできない、あっ……!
しやわせ……!
しゅご……きもちいぃ……!」
サロメの膣内は蕩けるような快感をもたらしてくれる。腰を振らずとも、粘膜同士が触れ合っているだけで至上の悦楽を得られる。
「ひーっ、ひーっ、ひーっ、ひーっ……♡」
サロメは酸欠で顔を真っ赤にしながら、涙と鼻水とよだれを流して悶絶する。身体はガクガクと痙攣しており、『君』のピストンなどなくとも絶頂を迎えていた。
それでもサロメの身体は貪欲に刺激を求め続け、腰を揺らすのを止めない。
そのたびに子宮口をこね回す形になり、またサロメを快楽地獄へ引きずり込んでいく。
ハーブのせいだろうか。それとも死線をくぐって本能が刺激されているのか。
サロメの淫乱さは異常と言って良かった。
『君』はサロメを抱きしめ、身体を密着させた。
「んっ、ぎもぢ、いいれふ、
おなか、ぐじゅぐじゅいってる……
あたまが、ばかになりゅう……♡」
『君』は、サロメの腰をしっかりと固定し、動きを止めさせた。
「ふえぇ……?
なんれ? もっろしゃせて?
もっといっぱいほしいのにぃ……♡
おねがいします、おわりにしないでくださいまし……♡
もっとちょうだい……?」
回らない舌で懇願されるが、やはりダメだ。生命の危険さえ感じるような、激しい性行為。それを止めるのにはそれなりの理由がある。
サロメは身体の欲求不満に涙を流し、子供の様に泣きじゃくった。
『君』はそんな彼女を優しく抱きしめてやる。サロメが泣き止むまで、その背をさすってやり続けた。
「ふっぐ……
ひっぐ……
うっぐ……わ、わ、わたくしのこと……
きらいになっちゃったの?
だから終わりにするんですかぁ……?」
違う、嫌いになったりしていない、そう言って再び口づけを交わした。
「ちゅっ……♡」
しばらくするとサロメは落ち着いてきたようだ。
『君』はもう一度口を開き、自分の意思を伝える。
絶対にラクーンシティを脱出して、サロメを妻に迎える。そして、平和な街で共に子供を育てようと。
「ふっぐ……!
わたくしのために、そこまで……!
嬉しい……♡
わたくし、絶対幸せになってみせますわ!
約束ですわよ!
破ってはいけない、神聖な契約ですわ……!
指切りげんまんしましょ♡
ゆびきりげ~んま~ん、嘘付いたら、はりせんぼんのます♪
ゆびきった♡」
サロメは『君』の身体を抱きしめ、頭をぐりぐりと押し付けてきた。
「ふふ……
大好きですわ……
あなた。ずっと、ずっといっしょにいて下さいまし……♡」
『君』とサロメはお互いの愛を確認し合うかのように身体を絡ませ合う。そうすると、先程までとは違う、優しい、だが抗えないような幸福感が二人を包み込んでいく。
二人はハーブのせいでおかしくなっているのかもしれない。それでも構わない。今はただ、この甘美な時間に身を浸していたかった。
「んん……♡
ねぇ、そろそろ……
動いてくださらないかしら?
あなたとの赤ちゃん、お待ちしてますわよ♡
さあ、お願い……早く……♡」
『君』が腰を動かすたび、愛液が掻き出され、太ももを伝っていく。
「ふっ、ふっ、ふっ……あぁ……あぁ……♡ いいれふぅ……♡」
激しくは動かない。鍛えぬかれた『君』の足腰なら、ほんの十数ミリだけのピストンも容易に制御できるからだ。今のサロメをエクスタシーに連れて行くためには、じっくりとしたストロークが最適だろう。
ゆっくり、じっくりとした性交が続く。
『君』の動きは緩やかだが、全神経をサロメに傾けた丁寧なもので、サロメの弱点を的確に捉え続けている。
「あっ……は……はっ……♡
きもちいぃ……!
はぁ……はぁ……しゅきぃ……
やさしーのすきれすぅ……
あいしれますぅ……♡」
『君』はサロメに愛の言葉を囁きながら、耳や胸を舐め、キスの雨を降らせる。
サロメの肌が紅潮し、発汗する。
彼女は絶頂の海に漂いながら、愛する
『君』の言葉を聞き続けていた。
「んひぃ……♡
ひょっと、とめへくらはい……
とまらない……
とまりゃないん……れす……
あ、あ、あ……あ……♡」
愛液は絶えず溢れ出してくる。潤滑油の役目を果たし、ピストンを助けているのだ。
やがて、限界が訪れる。『君』は大きく息を吐いた後、ほんの少しずつの射精を開始した。
「ふっ……ふっ……はっ……はっ……♡」
音で表現するなら、
『ポタタタタタ……』
と言ったところか。
『ビューッ』でも『ピューッ』でも『ピュッピュッ』でもなく。
サロメの身体の奥深くで小さな射精が長く長く続く。
『君』の精巣から作られた大量の子種が、サロメの胎内に吐き出され続ける。
「ああ……お、お、お精液が来てますわ……
お腹の中を洗うみたいに……
いっぱひ、いぱい……きて……
ひゅごい……」
『君』はサロメを強く抱きしめる。少しでもサロメを安心させる為に。
「あ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ……
あ……あぁ……あ……あ……♡」
サロメは陶酔しきった表情を浮かべ、膣内で脈動し続けるペニスに意識を傾ける。
精液で味わうエクスタシーがよほど心地よいのか、サロメの表情はだらしなく緩みきっていた。涙と鼻水がダラダラと垂れ流しになっている。
サロメの子宮もそれに合わせるように痙攣を繰り返しているようだ。子宮口に鈴口を押し付けると、まるで口移しの如く白濁した精液を飲み込んでいるようだった。
「んくぅううぅぅぅ……♡
んくぅううぅぅぅ……♡
おせーしながすぎまふわぁ……
あはぁ……♡♡
はっ、はっ、はっ……はへっ♡
へへっ……
へへへへ……
へへへへへへ……♡」
やがてサロメの顔つきはドロリとしたものに変わっていく。それは普段の彼女の表情とはかけ離れたものだった。
まるで薬物で快楽漬けにされたかのような顔だ。サロメの瞳は虚空を見つめ、その口元には薄気味悪い笑みが浮かんでいる。
「んっ……んんっ……んはぁ……♡」
熱い吐息を漏らしながら、腰をくねらせている。
半開きの唇からは、ぽたぽたと唾液が滴り落ちていた。
鼻の穴が大きく膨らんでおり、呼吸するのも苦しそうだ。
顔は真っ赤に染まり、肌からは玉のような汗が吹き出していた。
『君』はそんなサロメの頭を優しく撫で付けてやる。すると、彼女の表情はさらにとろけていくのだ。
「……うへへぇ……もっとぉ……♡
あたまナデナデしてぇ……?
わたくし、あなたの手だいすき……♡
あ、イクの止まんないれふ……♡」
サロメは完全に快楽に支配されているようだ。呂律は回らず、口調にも幼さが滲み出てきている。
そんな状態でもなお、腰だけは前後に動き続けているのだから器用なものだ。いやらしく揺れる腰が艶めかしく動くたびに、結合部からいやらしい音が漏れ出てくる。
それがたまらなく興奮して、君は再び射精してしまった。
◆◆◆
熱い絶頂の後、『君』がサロメの身体を離そうとすると、彼女は両足でガッチリとホールドし、離れようとしなかった。
「いや……! いやあ……!
まだつながってたいです……!
はなれちゃやですわ……!
ずっと、ずっとこのままでいるの……!」
『君』の心を捕らえるように、サロメは腕を伸ばしてくる。
まるで子供が親にすがりつくような姿勢だ。
「わたくし、こわい……!
そとにでたら、またゾンビがたくさん……!
ずっとこうしてたほうが、いいの……
あなたとなら…………
もうはなさないで……
ずっと、いっしょにいて……」
『君』はそんなサロメを抱きしめ、背中をさすってやる。
考えてみれば、サロメの反応も当然だ。死と恐怖に包まれたラクーンシティで、縋って溺れられる相手を見つけたのだから。
『君』だってそうだ。サロメがハーブを飲ませてくれなければ死んでいた。そのせいとは言え、サロメを強姦したのも確かだ。
だがそれは全て、
そう心に決めた『君』は、サロメを眠らせ、明日の戦いに備えることにしたのであった。
◆◆◆
太陽が昇りゆく。
ビルの屋上で、皮を剥いたゴリラのようなクリーチャーが『君』たちを襲う。
『君』は1階で入手した大型拳銃を構え、醜悪な顔面にしっかりと狙いをつけた。
『マグナムLホーク.44AE』。
"the most powerful handgun in the world"
その名も高き.44マグナム弾は、アメリカ大陸のどんな獲物も刈り取ってきた死神の鎌だ。
銃声と共に、化け物の頭が吹き飛んだ。
あれから半日が経っている。途中で入手した情報によれば、もう間もなくラクーンシティは核ミサイルで「浄化」される。今サロメが乗り込んだヘリが、最後の脱出ルートだ。
「あなたぁぁぁっ! ぶっ殺! ぶっ殺!
ぶっ殺ですわぁ────!!」
サロメはそう叫びながら、滞空するヘリに装備された機銃を掃射していた。弾丸を受けたゾンビが弾けて血煙が巻き起こるが、それでも数は減らない。
『君』は全速力でダッシュし、ヘリから降ろされた縄梯子に飛びついた。
『君』が登り始めると同時に、機体がふわりと浮き上がる。あとは昇ってヘリにたどり着けばいい。
だが、地上にいるゾンビは諦めてはいない。
『君』の眼下に群がるのは、かつて仲間であったはずの兵士たちである。
彼らは「俺たちも連れて行け」と言いたげに殺到し、縄梯子に取りついた。ヘリが重みでがくんと傾く。
『君』は不安定な姿勢で必死になって射撃を続ける。
仲間たちの頭が、一つ、また一つとザクロのように弾けていく。『君』の目が涙で霞む。
しかしそれでも『君』は撃ち続ける。ここで躊躇してしまえば、サロメまで失ってしまうかもしれない。サロメだけは守らなくてはならない。
サロメの笑顔を思い出す度に、悲しみは怒りに変わっていく。
この苦しみをどうしてくれようか。
最後に残ったかつての相棒に狙いを付けて、『君』は腹から絞り出すようにつぶやいた。
"
最後の一発が、相棒の頭部に命中する。
マグナム弾が防弾メットごと頭蓋骨を吹き飛ばし、脳漿が噴水のように撒き散らされていく。
その光景を最後まで見ること無く、『君』は縄梯子を登りきった。
「あなたぁー! あなたぁー!!
わ──ーん、うぇ──ーん!!!!」
泣きじゃくるサロメを優しく抱きとめる。
『君』はその額にキスをしてあげた。
「あなた……
わたくし、幸せですの……
あなたが『わたくし』を選んでくれた事……
愛してくれた事……
全部が、嬉しいんですの……
あなたさえ居れば、他には何も……
あなたさえ側に居てくれたら……
何も怖くなんかありませんわ……」
『君』は黙ってサロメを抱き寄せ、強く抱擁する。サロメの体温が伝わってくる。サロメの心臓の鼓動が聞こえてくる。君達はしばらくそうやって抱き合っていた。
やがて、ラクーンシティ上空で炸裂した核の光が、ヘリの窓を通して君達の網膜を焼く。そして轟音とともに都市が消滅して行く様を、君達は決して忘れないだろう。
◆◆◆
十年が経った。世界は未だ、ラクーンシティを滅ぼした生物兵器の恐怖から脱していない。
『君』の放った銃弾が、ますます醜悪になったB.O.W.どもを穿っていく。
だが『君』とBSAAの仲間たちは、少しずつ追い詰められ、ついには弾薬を使い果たしてしまった。
『君』はナイフを引き抜く。恐れはない。
『君』は、十年かけてサロメに何人も子供を産ませた。サロメは年齢を重ね、ますます美しさを増している。子供達も誰一人欠けることなく健やかに育っている。ここで戦死しても、BSAAの年金で家族は何不自由なく暮らしていけるだろう。
『君』に未練は無かった。
サロメの全てを手に入れ、味わい尽くし、男として全てを家族に捧げた。
『君』は生ききったのだ。
これ以上望むものなど無い。
だが、もし。
『君』はナイフを構える。
もし
『君』は、ナイフを振り抜いた。
【END】