どうぞご査収下さい。
また、今後同じ形式でサブタイトルに【挿絵リンク有】と表記しますので、ティンと来た方はリンク先のPixivにて『いいね』していって下さいませませ。
1話読んでみな、飛ぶぞ!(リンクで)
使徒、風邪をひくー前編ー
今日も今日とて我が拠点、穏やかな朝日の差し込む寝室のベットの上に俺は居た。
「ズビビ……ズビッ……ッ!? ハッックショ───イ!! ……うぅ」
たった今、時速換算で300kmオーバーの何某をマークした幸運の使徒たる俺ですが、現在体調絶不調です。
何の前振れもなく熱を上げ、俺が床に臥してから約半日。
意外としつこい病原菌に苦戦しているマイボディは、ぼおっと熱を上げて頭の思考力が低下し、関節の節々がしんしんと痛むという症状……
……所謂、風邪を引いたわけなんです……へーっくしょい!!
「ううぅ……頭は熱いのに背中に寒気が……」
人間、常日頃から健康には気を付けているつもりでもひょんな事から風邪っぴきになるのが世の不思議。
それでも体のダルさを除けば、食欲はあるし、水分も補給する余裕があるのだから心配は要らんだろう! ガチャから出た謎の風邪薬も飲んでるからね!
──なんて、昨日からそう言っているんだけどなぁ……
「……あるじの涎で我べちゃべちゃ。はい、ティッシュ……」
「す、すまんな……ウル」
数枚先に取り自分の顔を拭ったウルヴァちゃん。俺は彼女の差し出した手からちり紙手を取り、それを鼻に当てて……チ──ンッ!! ……ふうっ!
そのまま丸めてそばのごみ箱にシュート。
昨日の夕方に熱を上げた俺は「こんな風邪なんてとっとと治してやらぁ!」と寝室に籠ったのだが、嬉しい事に嫁さん達の看病ラッシュが大層激しく……説得の末に少人数にしてもらい現在の担当は悪魔っ子ウルヴァちゃんとなっていた。
「……まだ寒い? あったかい御粥食べる?」
「いえっ、結構ですウルさん! 食べる時も自分で食べれるから、そのアッツアツの器とスプーンを一旦おいて!?」
「……ん? ……わかった」
鼻紙を投擲している間に待ち構えていたウルヴァのアチアチ御粥アタックを一旦回避。
昨夜の寝る前の夜食……その看病時の悲劇を繰り返してはならないのだ。まだ右頬がヒリヒリしているんでな!
ずびび……えっくしょい!
「……むう……でもあるじ、まだ寒そう……」
「だ、だだ、大丈夫だから……」
せっかく端のテーブルに置いた粥の入った器に、再び手を伸ばそうとする彼女を制する。
これは俺調べの統計なのだが、彼女は食べ物を持ち、それを誰かに与えようとすると……何故か手が滑り、その与えようとした相手の上に食べ物をぶちまけてしまうという事象が多発しているのだ。
この現象、ぶきっちょなウルヴァちゃんという属性を除いても再現率が高く、恐らくは彼女の『大食』という概念が『手にした食料を自分以外に与える』という行為に対して拒絶反応を起こしているのではないかと俺は考えている。
……つまり! そのまま御粥を「あーん」してもらっても俺は腹を満たせず、また顔か胸かを熱せられ転げまわるという未来が確定しそうなので必死に待ったをかけている訳だ! 決して意地悪を言っているわけではないのだよ!?
「……やっぱり体温める。……我の時も、あったかい御粥食べたら元気なった!!」
「ウルヴァさーんっ!! 間違ってないけど違うのっ!! お願い、ちょっとまっ……!!!」
……しかし、この推論を数分前に説明したが
自分の経験を元に最適解を実行するのは素晴らしいことなのだが、その行為を諫める大人の身にもなって欲しいとお兄さん思うな~?
「……あっ!?」
「ア────ッツツ!?!? 」
……って、しょうがないか! 君はまだ幼い子供みたいなもんだものね!!!
お兄さん、君のその純粋な善意が本当に嬉しいよ! 早く元気にならなくちゃね!!!
「……失敗しちゃった。あるじ、ごめんな……あっ♡」
──その後、こぼれた御粥から何から何まで、お兄さんが全ておいしく頂きました。
───
──
─
そうして無事? 熱々御粥アタックをやり過ごした病人の俺は、何故か失われた体力を取り戻すべく体温高め女子である「ウルヴァたんぽ」を抱え、ベットで安静にしていた。
抱えた彼女の温もりを感じながらうつらうつらしていると……
「御屋形様! ご友人のリント殿をご案内しましたであります! 御屋形様のお見舞いにお越しくださりました!!」
「マラプシアさんっ……あんまり大きい声をだすとお兄さんが……」
「……ハッ!? しまったであります~!?」
……ばっちり目が覚めましたとも。
「……大丈夫、起きてたからね……」
「……御屋形様っ!!」
二人に声をかけながら、寝ていた体を起こそうとする俺。
「……くかぁ~~~……くぅ……くぅ」
だが、体の上によく寝ているお嬢さんが居たのでもぞもぞするだけで終わってしまう。
良い子は寝て育つからね、一度寝たらなかなか起きないウルヴァさんです。
「お兄さん! 起きなくていいのでそのままで居てください」
「そうであります! どうかご安静に!!」
俺がもたついている間にベットのそばまで寄っていた二人が俺を諫める。
これならこの二人を前にして体を起こした所で、また寝かされていただろうな。
「ふふ、それじゃあお言葉に甘えて寝たままで。しかしリントちゃん、わざわざお見舞いに来てくれてありがとうね……マラプシアも、案内ありがとう……」
「もも、もったいないお言葉でありますっ!!」
「……い、いえ、良いんですよ! お兄さんにはいつもお世話になってますし。それに、早く元気になって欲しいですから……」
恐縮するマラプシアと、もじもじしながらも嬉しい気遣いを見せてくれる、出来たお嬢さんのリントちゃん。
「なに、軽い風邪だからすぐに良くな……こほ、こほっ……! ん゛っ、んん……!」
「御屋形様っ! 大丈夫でありますか……!?」
軽くせき込んだだけなので問題はないのだが、マラプシアはもう心配で心配で堪らない! といった様子。
前のめりの姿勢で、今にもベットに乗り上げそうな程だ。ステイ! マラプシア、ステイ!!
「お兄さん……! 軽い風邪だと甘く見てはダメですよ? ……汗もかきだして少し水分が足りてないみたいですね。でも丁度よかった……お見舞いに乳魔族に伝わる風邪の特効薬を持ってきたので、これで元気になってください♪」
「おおっ! リント殿! もしやそれは、噂に聞くあの秘薬でありますか……!?」
「こほっ……ん゛っ……ごほんっ……」
せき込む俺から見えないところで、何やらやり取りしている二人。
「ご存じなんですか? それでしたらもう一つ予備がありますので、よろしければマラプシアさんがこちらをお使いください。二人がかりならきっとお兄さんの風邪にも効果覿面です♪」
「ハハァ……! ボクが御屋形様のお役にたてるのであれば喜んでであります!! 謹んで、頂戴するであります!」
仲良く何かを用意している二人……だが、咳き込んでいるせいで良く聞こえない。……二人して何か飲んでいる?
「こほっ……ん? 二人とも、なんて?」
「……んっ、意外と甘いであります……! ……んっ? おおっ……♡」
「……こくんっ、ふぅ、ふっ♡……さあ、お兄さん、水分補給の時間ですよ~♡」
──その後、乳魔族特製の風邪の特効薬は全てお兄さんがおいしく頂きました。
───
──
─
しっかりと薬を飲み水分補給を済ませた後、二人をベットから見送り、ウルヴァたんぽを抱え直して寝入っていた俺。
「……すぅ……すぅ……」
「旦那様~? そろそろお体をお拭きしますわ~!」
「おいおい待てフィオナ! それは私の役割だとさっき決めたではないか!」
部屋の外からそんな二人の声が聞こえ再び目が覚める。ドタドタと慌ただしい足音、そしてそれは部屋の前まで来て一旦止まる。
「……確かに、セレステさんは旦那様の御着替え担当ですわ? わたくしは先ほどその担当を決めるじゃんけんで負けましたが……それは着替えを手伝う者を決めるじゃんけん! 体をお拭きする者の方は決めておりませんでしたの!」
──ーですからそちらはわたくしが担当いたしますわ!! と高らかな宣言と共に扉をブチ開けて入室する暴論王女フィオナさん。
「むむむっ、それもそうか……! わかったそちらはよろしく頼もう。……おい! 着替えさせに来てやったぞ、だ……だ、……だんなさま?」
後に続いて入室してきたのは、俺の着替えを抱えた狼っ子騎士のセレステさん。未だ平時に俺を呼ぶときはぎこちない。
(セレステ、たぶんお前騙されてるぞ……!)
心の中でそう呟きながらも、このままでは寝汗で冷えそうなのでありがたく彼女たちの申し出を受ける。
「ああ、二人とも……ありがとう……」
「……むにゃ? ……契約者と、セレス……? ……おはよう」
良く寝れたウルヴァもここに来て覚醒、目をこしこし擦りながらもぞもぞとベットを抜け出す。
「あらウルちゃんではありませんか! 姿を見ないと思ったら、旦那様にずっと着いていてくださったんですのね!」
「ん……、看病……、完璧だった」
自信満々に結果報告をする寝ぼけ悪魔ウルヴァ。しかし、確かに彼女の体温のお陰でより深く眠れた気もするし、ここは感謝を込めて頭を優しく撫でることにする。ナデナデ……
「うにゅぅん♥️あ、あるじ……♥️」
嬉しそうににゅんにゅん言うウルヴァを見ながらも、てきぱきと着替えの用意をしてくれる二人。
「まあまあ! 仲良しさんですわっ♪ ですがこれから旦那様をお着替えさせますからね? ウルちゃんは……一旦お風呂に入って来てくださいまし? そのあとは皆でお夕食にしましょうか」
「……ん~~、ごはん! ……わかった、お風呂はいる」
柔らかな赤い髪がてててっ……と俺の手から離れる。少々名残惜しくはあるが、部屋を出る所で振り返った小悪魔はこちらに手ふる。
「……あるじ、……おやすみぃ」
「ふふ、はいよぉ~」
笑顔で振り返して小さな背中を見送る、すると入れ替わりにセレステの手が俺の額にあてられる。
「……うむ、熱はだいぶ下がっているな! おい、そのまま汗だくだとまた風邪がぶり返すからな! その服を脱がすぞ!」
必要なことは迷い無く実行する、そんな軍隊上がりの元女騎士様に従い身を預ける。
「かはは、貴様の汗で随分重たくなってるではない、……か……♥️…………くんっ♥️」
上着は没収され、すぐベットの横にて蒸しタオルを構えていたフィオナが体を拭いてくれる。
「セレステったら、はしたないですわよ? いくら旦那様の香りが素敵だからといって、そんな匂いを嗅いで……くんくんくん♥️……スー! ……ハー!! くふぅ……♥️」
フィオナさん、驚きの特大ブーメラン発言。無事自分に突き刺さっております。
「なっ♥️!? わ、私はべつに、だんな様の臭いなど嗅いでなんて……ハッ、ハッ、ハッ♥️」
もはや隠せてすらいない荒い鼻息と垂れた舌。
ぐっしょりと汗で濡れた服で自分が汚れようと構わない! ……と抱き抱え、尻尾を嬉しそうに揺らすセレステには弁明の余地はないかもしれない。
両人、共に有罪です! アウト、アウト──!!
「くんか……くんか……♥️ふぅ……ふぅ♥️はー、はー……♥️」
「すんすんっ……♥️はっ、はっ、はっ、はっ……♥️きゅぅぅん……♥️」
「あっ、てかこれやべぇわ……! あ、二人とも……ぬわぁぁぁ!?!?」
──その後俺は、かいた寝汗からナニに至るまで、二人の狼に全ておいしく頂かれましたとさ。
裏編へつづく──
続く編にて時空の法則が…乱れる…!