使徒「…封印された記憶?そんなの即解除だろ、ぽちぃ!……っ!?」
「ムグ──ッ! ムグッ、ムググ~!!」
癇癪を起こしたソルテを取り押さえ、グルグルパンチの被害から救ってあげたエレティアに向き直る。まず彼女の知っていることを聞かねば。
「……ほんで? 一体どういう事なんですかね?」
「──なんだか手慣れていますね? まあ、いいでしょう」
エレティアの方もこれで落ち着いて話せると見てか、乱れた居住まいを正して話し始めてくれる。
「コホンッ! ……といっても理由は簡単ですわ? そもそもわたし達姉妹の女神は、『運命』を司る単一の女神でありました。しかしその後に役割にあわせて分かれ、三姉妹の女神として、存在するようになったのです。なのでそれぞれが自分を
「か、簡単でしょってなぁ……ん? 三、姉妹……?」
「……? そうですよ、三姉妹です。エレティア、ソルテ、ルトナ、ほら三神ですわ?」
「エレティア、ソルテ、……ると……な……、……るとな……
「どうしました、我らが使徒君……? ……我らが使徒君っ!?」
……なんだ!? その名前を聞いたら急に頭がっ……!?
思わず膝を着いてしまう。
くっ、頭の奥がジンジンと痛む。
まるで治りかけの傷口にあった瘡蓋を無理矢理剥がされ、修復途中の細胞から程近い神経が空気に触れてしまったような……面倒な痛み。
意識は保てている……しかし顔の筋肉がひきつり、僅かに歪んでいるのは手の感覚で分かる。
んん゛……だ、大丈夫だ……、これでも自分の身体の事。
何となくだが大事でないの分かる。少し休めば、この混乱もすぐに収まる……
「ど、ど、どうしましょう、どうしましょう……? …………ハッ!? こうなったら私の女神の権能で、痛み始める前の身体まで彼戻せば……!?」
……まって、なんかこのエレティアさん、スケールのデカイ事しようとしてないか?
「“時”は一刻をあらそいますっ! 悩んでいる時間はありません! ……安心して我らが使徒君っ、すぐ良くなりますからね……!?」
い、いかん、この感じソルテと一緒だっ!?
止めないとまた、妙な事になっ──ー
ーシャランー
〝────時よ──ー遡りなさいー〟
聞こえたのは錫杖の様な音とエレティアのセリフ。
「……あぁ? お、おぉぉ……?」
ジクジクとした痛みが
……そうだ、この音と声……!
……これと同じくモノを俺は前に…………
───
──
─
▲▼
「──ぷはぁ!」
我が使徒の見えない掌が放されました!
……というか、そもそも口を塞がれたところで信託の要領で念話ができると気がついたのに、これじゃ普通に喋れるじゃないですかっ! どうしてくれるんです、私のスーパーな閃きぃ!!
──じゃなくて!
「こらー! エレティア~!? 我が使徒にそんなことしたら、一体何が起きるかわからないでしょうに!」
「えっ? ソルテちゃんったら何を焦って……大丈夫よ? 我らが使徒君はこれで、痛いの痛いの時空の彼方に飛んでいった~……わよね?」
「痛がってるなら回復の神力でいいでしょうがぁぁ!? それに、そう
「……はっ!? そ、そうだったかしら?」
こぉのっ、おっぱいに頭の分の栄養が行ったアホ妹女神めぇ!? 腕組んで乳を持ち上げて首傾げてるんじゃねぇぇぇですよぉ!!
怒りが再び着火のファイヤーとなった私は、あの脂肪をどう燃焼させてやるかを緻密な女神頭脳で算出し始めます──
「……そうか……何度も……つまり、これが初めてじゃないということだな……?」
──始めようとしましたが、ゆらりと立ち上がった我が使徒を見て止まりました。いったん停止でお願いします。
「……あっ」
「~! 我らが使徒君っ、もう大丈夫なの!?」
「……ああ、だかちょっと待ってくれエレティア、確かめないといけないことが出来た。『コス用カバン』で診るよりコイツの方が早いか……? よし……『記憶操作』発動」
エレティアが我が使徒を介抱しようと詰め寄り、手をとり腕をとりと、あの贅肉を活用してボディータッチにいそしんでますね……ギリリッ!
でも、我が使徒はそれを意に介さずまったくの静寂……目を閉じて呟き発動させてた力の方に集中しているように見えます。
「……まずあの日だ……俺に加護が付いたあの日……ソルテに初めて会った日……」
……あっ、ヤバいです。完全に犯人のシッポを掴んだ敏腕刑事のような的確さで自分の
というか、なぁんで『記憶操作』なんて手に入れてるんですか我が使徒はっ!? アレって超超激レアスキルすら越えた『神の権能』の一種ですよ!? 私の加護が指定している
「あった、ソルテがベッドで脱ぎ出した時のだ……曖昧なのはその前の、記憶……なに、封印中?」……チラッ
「──ギクゥゥゥッ!?」
「──? どうしたのソルテちゃん?」
今、我が使徒がチラリとこちらを見ました。
ひ、冷や汗が流れています、これが追い詰められる者の気持ち……
「……スキルで解除できるな、なら『解除』し、て……これ……で……ッ!!! ぐうぅぅ!!?」
あ~、アレは間違いなく記憶を取り戻してますねぇ……痛みなんてもう無いはずなのに咄嗟に手が
……どうしましょう、神界にさっさと逃げ帰ってほとぼりが冷めるのを待った方がいいでしょうか。
「…えっ!?俺…ああ、あの時そういえば…神に祈って…」
あれは着実に取り戻してますね、一刻の猶予もなさそうです。こうなったらさっさと引き上げ……『女神ぱぅわぁ~』がチャージ中ですぅぅぅ!?!? リキャストにあと1800秒!? ウソぉぉ!?!? なんでぇぇ!?
「……あら~? ソルテちゃんったら、どうしてそんなに慌ててるのかしらぁ? まるで力を使おうとしたのに、それが使えないと今気がついたみたいねぇ……?」
「……ッッハ!? まさか、エレティアっ!?」
私の女神ぱぅわぁ~はコンマ数秒で再使用可……それがこんなに
「……何だか変だと思ったのよぉ? やっぱり、ソルテちゃんは何か知ってたのね? それに、記憶を弄れる力はルトナちゃんの専売特許だし……。二人して我らが使徒君に隠し事してたなんて、ちょっとひどいんじゃないかしら……?」
小癪な妹の後ろに、ゴゴゴゴゴ……という擬音が幻視できました。なんというゴッドプレッシャーですか、あんなの姉に与えていい圧ではありませんよ!? ひぃぃ──!!
「もし我らが使徒君に何か悪いことをしていたなら、神様ならちゃんと謝らないと駄目よね? 大丈夫、
こぉぉの妹ぉ!? 何をお姉さんぶったりして! 私の方が姉ですぅぅ!! いぃぃや、まった、今はソレどころでわっ!?
「──がぁ!? はぁっ! はぁ……! お、思い出したぞ……! そうだ、俺はあの時──お前ら二人が張り合って押し付けてきた力に耐えきれずに死にかけて……!」
「あっ……、あっ……あっ……!?」
「ルトナが泣きわめきながらエレティアを呼んで……駆けつけたエレティアが俺の身体を戻して……ん? 寝てる間ににソルテがルトナに記憶を封印させて……? ああぁ……でもこれは……ううん……」
「ひぃぃぃい!?」
「あらぁ、あの時の事よねぇ? 確かにちょっと元に戻るまで時間も掛かって、大変だったわねぇ……」
このアホ妹っっ!? 何を他人事っぽく懐かしんでるんですぅぅ!? あなただってあの時に、私とルトナと張り合う様に加護を与えたから、我が使徒の
「……まず聞きたいんだが、どうして俺の記憶を封じ込めたんだ?」
ニッコリと我が使徒が目を細めます。
「はひはひはひ……ひっ……」……ゴクリンコ
ヤ、ヤバいくらいに優しい微笑みですぅ……
しかしこの笑顔の裏にどんな感情が…? 迂闊な答えを返せば奈落に引きずり込まれる未来が見えます……!?
「い、いえ……封じ込めたのはルトナであって決して私では……「──ソルテ」──ふぃぃ!?」
声音が整い過ぎてますぅぅ……
感情が沈み切って底辺に擦り付き過ぎて、これ以上下がりようが無いせいですぅ!?
「聞き方を変えような? ……お前は、記憶を封じた方がいいとルトナに頼んで、俺の記憶を封じさせた……でいいんだよな?」
「は……? へっ……!? は……かぅ……」
『ハイ』か『YES』の二択しか返事のしようのない質問ですぅ!?!?
カコカクコ、こ、これに答えたら、私は我が使徒の記憶を封じて知らんぷりしていたって思われて……嫌われてっ……!?
「……ひっ、ひうっ、ひうぇ……うっ……」
「……しょうがないわねぇ? ──ねぇ、我らが使徒君?」
「……ん? なんだエレティア?」
「……ぇてィア?」
我が使徒の質問に答えあぐねていると、横から妹が我が使徒に話しかけ始めました……
……ぐすっ、なんですっ、いま答えようとしてたのに……
「別に我らが使徒君は、ソルテちゃんや、ここにいないルトナちゃんに仕返しをしようってつもりじゃないのよね?」
な、なんということですかっ……! 私が聞くに聞けなかった事をサラリと投げかけました……!?
で、ですがそれは希望的観測でしか……そんな、自分のおち〇ち〇をバクハツさせた相手を恨まないなんてこと、あ、あるはずが……!?
「仕返しって……いやぁ……」
「我らが使徒君は、二人が何も聞かせずに知らんぷりじゃあ、どうすればいいか分からないから、本人にちゃんと聴きたいのよね?」
「まぁ……それは……うーん、そうだけど」
「……ふぇ?」
わ、我が使徒……怒ってない……?
〝ほらっ! ソルテちゃんっ! ここまで分かったなら後はできるでしょ!! お姉ちゃんができるのはここまでよ……? 〟
〝い、妹よぉぉぉぉ!!!! あ゛り゛か゛と゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅぅ!!!! 〟
な゛、なぜだか前が見ずらいですっ……!? じがし、ここでぢゃんと我がじどに謝ら゛ないとぉ!!
ゆ゛う゛ぎをだずのです、私ぃ゛ぃ゛!!
「……わ゛っ……わ゛がじどぉぉ……」
「うぇぇぇ!? どうしたソルテっおまっ、何泣いて!?」
「う゛い゛ぃぃ、ご、ごめ゛ん゛な゛さいぃ……、私ぃ……わ゛が使徒が思いださなければ、ぞれ゛でいい゛って思っで、だまっでだんですぅぅぅ!! ご、ごめ゛ん゛なざい゛~~」
「わぁぁぁ!? それは怒ってないから!? 原因はともかく、その後むしろ助けてもらったってむしろ感謝してるから!? ソルテ!? ちょっ、泣き止んで!? えええぇ!? そんなにっ!?」
そうして私は気が付けば、我が使徒に抱きつきビエビエと泣いてしまいまっていました。
他に何の音も生れないこの空間にて散々泣き響かせた私の声。
それはどうせ、お節介な妹の止めていた時空に消えることになるので、もう少し叫んでおくことにします……
本当に……よかったよぉぉ……怒られると……、嫌われると思ってたよぉぉぉ!!!
う゛あ゛ぁぁぁ゛ん、わ゛が使徒の゛ばかぁぁぁぁぁ!!!!
【悲報】主人公、爆発オチならぬ爆発から始まっていた模様
この話の影響により、第一話が加筆されます。
次回、隠されていた記憶の中に何があったのか。
~ご期待ください~