「ま、まてリーリヤ、その指をどうするつも──えっ!? それ──『ビクッ!!』──きゃうんっ♥️」
ビクッ、ビククッ!!!
「おおぉ! 見なよセレスっ、打ち止め間近、歴戦の砲塔も……私の手に掛かればこんなものさっ!」
ビキビキッ!? ──ビクン、ビクンッ!
「わ、わふ……っ♥️これ、大丈夫なのか?」
指先ひとつで獲物をモノにした森の友に、さしもの蒼狼族も畏怖を覚えざるを得ない。長寿族のエルフを束ねるハイエルフが、こんな技を隠し持っていようとは……
「昔、長老に教えてもらったんだ~♪ エルフの秘術ってやつ? 男の人はここを押せば、まだまだ出来るんだって♥️」
そそり立つ巨塔の下、ドヤ顔で説明するエルフを狼狽えた狼娘がしばし見つめるがそれもわずかの間。
「……っ!? ……ハス、……ハスハス!! ♥️♥️あ゛ぁ──♥️確かにまた濃い臭いが……まったく、心配させよってからに♥️」
しかしただよってくる雄の臭いが増したことにより、彼の容態も大事ないと判断。
単純だが、何よりも信頼できる自分の嗅覚がかぎ分けたのだから問題ない! 『この臭い好き!』で頭のなかが埋め尽くされる。
「ハッハッハッハッ……♥️スンスン♥️ハッハッ……♥️!!」バシバシバシッ!!
「セ、セレステってば尻尾が痛いわ! 今私の番なんだから、確認出来たならもう少しそっちにずれてよ!」
「──んゃ!? す、すまないなリーリヤ、どんどん臭いが濃くなるからつい貴女が横にいるのを忘れて……くんっ♥️くぅぅ~ん♥️」バシバシバシッ!!
「あたっ!? あたたっ……って、もぉ~~! 使徒君の臭いが好きなのは分かるけど、興奮し過ぎよ?」
芝生の一角にて
〝……えっ、えっ!? セレステちゃんもリーリヤちゃんも、かれこれ十回ずつはしてるのにまだ……? あっ、すごっ……♥️〟
ソレを興味津々で覗く時の女神も使徒の新たな可能性を直視してしまい、発動間近だった時の逆行をストップさせてしまう。……この女神、続きが気になってしたがないようだ。
「あ、今跳ねたわっ! それじゃぁこれでっ♥️♥️ぎゅぅぅぅ♥️♥️」
「おごっ……!? うぅぅぅうっ!」
ビュククククッ!! ビュルッ!!!
「ワフッ♥️んキュゥ~~~ンッ♥️♥️」
「あっ、ちょっとセレスずるいわっ!? それは私が出した分なのにぃ~!?」
〝うわっ、うわぁ~~♥️『エルフの秘術』ってすごいのねぇ~!? わ、私にも出来るかしら……♥️〟
「おおぉ……おぅ゛……おぉ……」
その後女神によって戻されるまでに、二度の復活を遂げる。錫杖の音が鳴り響く間にも、塔は高く天を突き続け傾く事すらなかった……リトライ!
ーシャランー
▼▲▼TAKE 10 START▼▲▼
「──んくっ♥️ん゛んっ……♥️……ハッ!?」
「……ごくっ♥️」
「…………我らが使徒君は……まだ起きそうにありませんね?」
「…………っ♥️いけませんっ、早く戻さなくては……! ──て、てい!」
ーシャランー
▼▲▼TAKE 11 START▼▲▼
「のぽぉぉぉぉ……──おごふっ……!? はぁ……はぁ!?」
沈んでいた意識がまた浮き上る。
今日の朝日を見るのはこれで十一度目。寝起きの頭で直ぐにベットから抜け出すのにも慣れ、何の気無に視線を上げると……ふと足を止める。
(ああ、見慣れた天井が今日はやけに遠いなぁ、今度は天井裏に登ってみるかぁ? いや、それは四回目の時に試したっけか……へへっ! ──────って!)
「万策尽きたわっ! どうしろってんだよっ、も──────!!」
現実逃避からも過去が逃がしてくれない。いや、
「ああ、なんだかもうしっちゃかめっちゃかだっての」
ちなみに前回は『あっ、神界に逃げればいいじゃん!? エレティア様匿って下さいお願いします!』と思いつきエレティアに別空間に匿ってもらたのだが、どこからか俺の不調を嗅ぎつけたルトナとソルテがこの機を逃さんとばかりに飛び込んで来て襲われ結果気絶している。
またこの部屋で目を覚ましたのだから、まあそう言うことだろう。
……空間の壁をブチ割って飛び込んで来るのが女神のデフォとか、あいつ等の常識はどうなっているんだ?
ともかくもう本当に逃げ場が無い。現世から逃げてもダメだったなんて……現状の詰み具合がルナティックである!
「ウググッ、うぐぐぐぐぐぅぅぅ~」
〝ああ、立ち上がったと思えばそんなに頭をかきみだして……なんて不憫な我らが使徒君〟
そのまま床に悶えうずくまる。
手足を投げ出し、床の冷たさを全身で感じれば、ほら……心が安らぐだろう? ああ、今はこの冷たさすら心地よい。
(……床下の隠通路用扉なんてのもあったなぁ。籠城して時間稼ぎ作戦もここから入られて駄目だったし、塞いでこもれたとしてもフィオナが小一時間以内にバッチリ起きるからなぁ~~は、ははは、はぁ~~)
〝わ、我らが使徒君が思い詰める余りに過去を懐かしみ始めました! ……いけませんっ、そんな売られた子牛の様な哀愁を漂わせてはダメですっ!! 〟
「……もういっそ、俺以外のみんなの時を止めてもらえません? そうだよ、それでいいじゃん! エレティアに時間を止めて貰って、それで治るまで療養する! これでどうだ!?」
もう他力本願、もとい神力本願の発言がこぼれでる。
〝そんな大規模な力の行使をすれば、ソルテちゃんが察知して様子を見に来るかと……さっきも我らが使徒君を匿ったが為にソルテちゃん達が来たわけですし……その……ごめんなさいね? 〟
「おぅ……それであいつ等が空間をぶち割って来たと……」
単純に周囲に逃げ道は無い、別空間に逃げたり飛んだりしようにも魔力が足りない、エレティアに匿ってもらうとアホ女神が寄ってくる、周りの時間も止められない。
ならば……ならばぁぁぁ……
「はぁぁ、それなら俺だけ体が治るまで時間を進めちまうってのは……ん?」
……ん? 待ってくれ、あれ?
……何か今俺、とんでもなく単純で楽勝な解決案を口にしなかったか?
“治る頃まで体の時間を進める”????
えっ!? あれ?? それで良くないか!?
……この方法なら俺は逃げたり隠れたりする必要もないし? 時間を進めるのだって、時間を戻すのと大差ないだろうし……なんなら俺個人で済むからもっと楽だろうし……
あっ、考えれば考えるほどアッサリ済みそうだぞ? いやいや、まさかそんな……
もしこれで体も治って問題なく終われるならエレティアが真っ先にやってくれるだろうし……きっと上手くいかない理由があって今まで何も言ってこなかったという事ですよね!?
〝──えっ? ……あっ!? その手がありました! そんな方法を思いつくなんて……〟
──そんな理由などは特に無く、エレティア本人もただ思いつきもしなかったアイディアだったご様子。
〝どうして思いつかなかったのでしょう? 使徒君が治るまでちょっと体の時間を進めれば一瞬で済む話でした!? やはり敏しいですわ、我らが使徒君!! 〟
おもっくそ感心されてしまったよ!? ウッッソだろぉぉ!?
興奮のあまりエレティアの念話がでかく聞こえるが、反して俺の心は凪いでいる……
あー、つまりあれかい?そうだよな、そういう事だよな……だよなぁぁぁ!?
「………………さ……」
〝──さ? 〟
「──最初っからそれでよかったって事じゃんよぉぉぉぉ!!」
やるせなさから身体を丸めて転がりまわってしまう。
もしできるのならば、窓を突き破って朝日に向かって駆け出したいっ!!
けど窓から出たらセレステとリーリヤが居るっ!もう転がってこの衝動を発散するしかねぇ!!
〝じ、時間は戻っていますので、実質のロスはありませんよ……? 〟
「体感した十二日間は記憶から消えねぇんだよぉぉ!?!? お゛お゛お゛ぉぉぉぉ゛ぉ゛……」
エレティアからも
いいですか!?これが記憶に刻み込まれた防衛本能。俺の十二日間はここにあるのだという、何よりの証拠ですっ!!これが必要な経験なら甘んじて受け入れられるが…もうっ!ホントに女神って……もぉぉぉ!!!
〝きゃぁっ! 突然どうしたの使徒君っ!? 使徒くーん!? 〟
「おめぇのっっ、お前のせいだろうがよぉぉぉぉ!?」
俺は気が落ち着くまで静かに床を転がり続けた。
それでもベットの周りを二周半する程度で済んだのは、この体験でメンタルを鍛えられたからだと思いたい。思わないとやってられないぃぃぃ!
──―
──
―
「──さて、これでどうでしょうか? 肉体的には三日ほど時間が経った状態のはずです」
姿を現していたエレティアに力を行使して貰う。
するとさっきまで下半身にあった違和感が消えている! 具体的には、剥けたてのソレが風に当たるだけで──いや、詳細は不要か。ともかく、慣れ親しんだ感覚を取り戻せているのが分かる!
「うわー、本当にあっさり終わった。すっげぇ複雑な気分……」
尚、所要時間は……俺が平静を取り戻すまでにかかった時間よりもずっと、ずぅーと早かった。
ホント、本当によぉ……しくしく……
-メッセージ-
セレステと女神エレティアは『エルフの秘術』を習得した!
セレステは『エルフの秘術』を習得する前に戻された!