ある日、街のなか♪熊さんに、出会った~♪【挿絵有】
「おーう、ただいま~!」
「だ、だんなさまぁ……」
拠点に戻り、扉を開けると漂う煙。
そして奥から聞こえるフィオナの涙声。
「ど、どうした? フィオナ」
近づいてみれば、そこには……料理? 鍛冶? れ、錬金術?
いや、やっぱり料理? をした痕跡が残っている。
しかしどういうわけか、台所であった区画は見るも無惨な有り様。
なんで煤だらけなの?
なんで地面に爆発痕があるの?
疑問は尽きないが、現場検証には当人からの事情聴衆も必須。
という訳で、フィオナさん?
「わたくし、旦那さまの書き置きを見まして……お帰りまでに、お夕飯でもお作りできればと思いましたの……」
メソメソ王女さま、がっくしと肩を落とす。
「それで、ご飯を炊こうとしましたらお台所がこんなことにっ……」
「ご飯炊くだけで!?!?」
「ひゃ、ひゃいぃぃ……」
「あああ、ごめんごめん。別に怒ってないから、ちょっとビックリしただけだから! それより怪我はない?」
思わずおっきい声出ちゃった。
そうかー、ご飯炊いたらこうなったかー……
涙目王女、使徒に慰められなんとか落ち着く。
「失敗しちゃったのはしょうがないから、今はシャワー浴びて来な? 食べ物もいろいろ買ってきたから、着替えたらご飯にしよ、な?」
「うう、わたくしとしたことが……面目ございませんわ」
とぼとぼ王女様。
とりあえずシャワーに向かわせる。
王女様よぉ……あンた、背中が煤けてるぜ……
なんて思いながらも見送り、目立つ大きなゴミから片付け──
「ごめんなさい旦那さま、その……できればお風呂をご一緒に……」
これまた申し訳なさそうなフィオナヘルプ入りました!
そうだよね、昨日使い方教えたばっかだもんね!
まだわかんないよね? うんうん、一緒に入ろっか!!
「わかった今行く~!!」
掃除なんてあとあと!
これは役得だからバッチコイだと、フィオナの元に突撃だ!
そのままシャワーでイチャイチャ、風呂上がりにイチャイチャ、食後にイチャイチャの3コンボですっかり元気になったのであった。
(フィオナ、イチャイチャの度に嬉ガチャし、お腹の中の残りを排出完了。
頭をなでなでされながら慰められた時と、スパンキングの話を聞いてわたくしも! とせがんだ時のが特に出が良かったですの! と彼女は後に語る)
──ー
──
ー
翌日
「ホントに大丈夫?」
「はい、本日はわたくしもご一緒致しますわ!」
昨日の出来事から一夜明け、俺たちは失った物を買い替えに街へ向かう事となった。
お出かけファッションスタイルのフィオナ嬢。
俺の着てなかった余りものの服をどう着こなしたらそんなお洒落な感じに?
……謎は尽きない。
ともかく、着る服にも困っているので資金力が有るうちに色々揃えてしまおうという事になったのだ。
「デート♪ デート♪ 旦那さま~と、デート♪」
ルンルン王女様、胸踊るって感じ(ノーブラ王女)
バルンバルンと、魅惑の水風船をそのままにしておくわけにはいかない。
どうする!? このままでは道行く男共や、すれ違う者共の視線で穢れて……
そうか! 見えざる手で手ブラをすれば!?
いや、しかしそれでは俺もこの魅惑の果実を近くで眺めるという甘露を味わえない。
だが……!? いや……!?
俺は混乱してる。
「本当は旦那さまから「お手をどうぞ、お嬢さん」というのがスマートでしてよ?」
フィオナはそう言いながら俺の腕に抱きつく。
ぷにょん、ぽよん♪
「oh……」
まったく、スマートなお嬢さんだぜ!
体の右側が幸せなまま、彼女に腕を引かれ街へと向かう。
そうして歩くうちに、他人の視線なんてどうでもよくなり、俺は考えるのを止めた。
──ー
──
ー
「っは!?」
「うへへへへ……♥️」
回りの喧騒が耳に入り、俺は意識を取り戻した。
いつの間にか広場にあったベンチにフィオナと腰掛け、どこかで買った飲み物かたてに休憩していたらしい。
空を見れば太陽は真上を通り越し、夕暮れまでにはまだ余裕があるか、と言ったところ。
「旦那さま、はい、あーん♥️」
「えぁっ!? あーん……」
横から口元に何かを差し出されパクリ。
甘いフルーツだったようで、間食には丁度いい感じ。
「ああ、幸せぇ♥️こんな幸せでわたくし大丈夫かしら……」
ふにゃふにゃフィオナさん、デートを大満喫のご様子。
俺の記憶がよみがえる。
壊れた料理道具を買って、ついでに二三個家具を買い足して……。
早めにご飯を食べたらフィオナの服を買うのに付き合って、ちょっと休憩するかとその辺の店でおやつを買って……
それでここに落ち着いたと。
「あー、フィオナさん? 俺ってば今まで大丈夫でした? なんか記憶が飛び飛びというか、今気が付いたというか……」
「……? 朝も、さっきも、今も、素敵な旦那さまですわよ?」
んー……、フィオナフィルターを通してだからか、あんまり参考にならんが、まあいいか。
「そっか、ならいいや」
「ふふふ、変な旦那さま♥️」
お上品に笑うフィオナ嬢。
そんな所作まで高貴なんですね。
そのまま程々に休憩して、そろそろ帰ろうかとなりまして。
拠点へ向かい、街の外へ出ようかというところで……。
「……クマですわね?」
「……クマだな」
俺たちはクマさんに出会った。
タタタッ……とフィオナ嬢、目前のクマに駆け寄ります。
まあ、特には危険もないだろうと後を追う。
「もしもし? 大丈夫ですか?」
グゥゥゥゥ……
わぉ! おっきい返事! これはあれだな……?
俺を見るフィオナ。
頷き返す俺。
「これは……あれですわね」
「ああ、これは……あれだろうな」
「「行き倒れ」」
俺たちは声を揃えてそう呟く。
うつ伏せに倒れる小柄の少女。
顔は伺えないが、跳ねる赤い髪が地面に広がりちょっとしたホラーになっている。
しかし下半身はスカートが捲れ、荒々しいクマ(デフォルメキャラ系)のプリントされたパンツが丸出しである。
グゥゥゥ、グキュルルルル……。
情けない主のお尻を守る為か、クマのパンツがこちらを威嚇してくる。
「まあ、なんておっきなお腹の音!」
獲物を求めるクマの唸り声が辺りに響く。
正確には、クマパン少女の腹が唸ってるだけだが大差ない。
状況は理解できた、追いはぎや殺人などの事件性がないので気楽に行こう!
「あー、フィオナ? さっき買ったものの中で何か適当に出そうか」
「はい、そうしましょう」
うつ伏せのままではどうしようもないので俺は傍に寄り、クマパン娘を裏返す。
体を反すと、褐色の肌に赤い髪が映える何とも可愛らしい少女が現れる。
同じく横に腰を下ろしたフィオナは、肩から下げている鞄を開き、出店で買ったカットフルーツを取り出す。
「もしもし? 貴女、お腹が空いてらっしゃるのね? こちらを食べられますか?」
声をかけつつ、一つ手に取り少女の顔に近づける。
スンスンッ、スンスンスンッ
おっ、鼻が動いた。
ッン! パクッ!!!!
「きゃっ!」
モニュモニュ、モニュモニュ……
レロレロ、ペロペロ、チューチュー……
「ああっ♡この子ってばテクニシャン♡」
嚙みつかれはしなかったが、果汁のついた指まで美味しく吸われたフィオナはいい声を上げる。
モゴモゴ……ゴクン
グュゥゥゥゥ
心なしかお腹の音が小さくなった。
「甘い……」
そして少女が目を開き、感想を一言。
……起きたみたいですね。
「ふぅ♡ふぅ♡」
フィオナさんは立て込んでるみたいなので俺が話しかけようか。
「お嬢ちゃん、大丈夫? お腹すんごい音鳴って倒れてたよ?」
呼びかけに気が付いたのか、ゆっくりとこちらを振り向く。
目が合うが、いまいち何を考えているか読めない。
まだ自分がどうしてここにいるかとか分かってないのかな?
「自分の名前わかる? 体動かせそう?」
「……」
コクコク
少々時間を置きつつも、頷いて反応したので大丈夫そうだ。
頷き終えた彼女、その目線は俺を捉えて離さない。
またもや無言の時が訪れた。
が、少女はおもむろに下を向いた。
「おかわり、下さい」
グキュルルルル……
……どうやら頭を下げているらしい。
彼女の口よりお腹の方がよっぽどよくしゃべる。
「まあまあ! ちゃんと意識が戻ったのね。さあ、お好きなだけお食べになって?」
横からにっこりフィオナさん。
世話焼きなご近所のお姉さんチックな喜び様です。
「ありがと……」
フィオナの差し出した器を受け取り短く礼を言う。
そのまま小さな手でモキュモキュとフルーツを食べ始めた少女を、俺もフィオナも微笑みながら見守るのであった。