行き倒れクマパン娘を介抱した俺とフィオナ。
あの場でモクモクとフルーツを食べきった少女だが、未だ腹の虫は鳴りやまず。
「あらあら、まあまあ♪」
と、フィオナさんがこの子の食べっぷりを気に入り、晩御飯もご馳走しようと拠点に招くことになりました。
田舎のおばあちゃんが如き世話焼きっぷり。
自分で食べたくて買ってた料理をバックからポンポンだして食卓に並べるフィオナさん。
あらかた出し終えたところで皆席に着いた。
「さあさあ、たんとおがりなさいませ♪」
「よっしゃ、いただきます」
手近の皿に箸を伸ばして食べる。
うむ、やはりあそこの惣菜は旨い!
「美味しいですわー美味しいですわー!」
「……」
パクパクですわーと良い食いっぷりのフィオナ王女。
対して、以外な事に手をつけようとしない少女。
「どうした、別に遠慮しなくてもいいぞ? うちのお姫さんは言い出したら聞かんからな。食えない物でも混じってるか?」
クキュルル……
「……///」
なる腹に頬を赤くするクマパン娘。
お前のクマさんも遠慮するなっていってるぞ?
「助けてもらった……」
「ん? 見返りでもふんだくられると思ったか?」
「……お金無い」
うつむき気味でそんなこと言う。
そんな少女の様子を観察しながら茶を飲む。
ふむ、一応そういう考えはできると。
ただ飯を食い漁る恥知らずでも無いわけか……。
俺はそのまま続きを促す。
「だから、体で払う?」
「ブッ──ー!?!?」
思わず吹き出した。
そっちは恥知らずだーこいつ!?!?
「元気な赤ちゃん、産める」
「ゴホッ、ゴッホゴッホッ!!」
お茶が変なところに入って噎せる俺。
食うフィオナ、話が飛ぶクマパン娘。
「だから、食べていい?」
「まてまてまて!?」
慌てて否定する。
この娘っ子の狂行を止めなくては俺は飯も喉を通らん!
「でも……」
グキュルゥゥゥゥ
悲しくなく彼女のクマ。
まるで叱られた犬のよう。
「食べるのはいいから! ね!? お代は別の話にして! ね?」
「……」
……しゅん
お腹が空いて力がでないのか、お預け食らって落ち込んでるのか、はたまた両方か。
おかしい……食べてもいいよと言ってるのに食べてくれない?
ダメっ、若い子の心がわからない! 助けてフィオナさん!!
俺はあわあわしていると、見かねたフィオナさんが少女に話しかける。
「そうですわねぇ……。お代でしたらその首飾りを担保にするでどうかしら?」
ピクッ
ピクリと少女が反応した。
「はい?」
俺も思わず呟く。
「その青い首飾り、なかなかの品と見受けます。もちろん、それを質に流したりなど致しませんと約束しますし、他に担保になりそうな物があればそちらでも構いませんけれど……」
フィオナは箸を置く。
なるほど、手持ちのお金が無いのなら、適当な持ち物をお代の代わりに預かって、後で返してあげればいいのか!
フムフムと納得の俺。
食費程度、街でバイトでもすればすぐ返せるだろうしナイスアイデアですよ! 本当!
関心しつつもフィオナから少女へと向き直る。
おお! 確かに良く見れば首もとに特徴的な青い首飾りをつけている。
よく見つけましたねそれ。
「これは……でも……」
首飾りに手を当て、顔を伏せてしまう少女。
あれ、なんか更に気落ちしちゃいましたよフィオナさん!?
「ふふふふ……」
不敵に笑てますやん!
というか、最初から狙ってましたか……? まるで悪役令嬢のような笑顔してません!?
チャリッ、チャリッ
と、手の中で首飾りの揺れる音がしていたが。
グキュルゥゥゥゥ…………
……キュウ
「……」
クマパン娘よりもお腹が先に観念したようで、一際長い鳴き声の後に可愛く降参の声をあげる。
おもむろに少女は首の後ろに手を回し、その首飾りを外し机に置いた。
カシャリ……
「…………あぅ」
と思えば、机に少女が倒れ──ーボフンッ!!
「えええええええっ!?!?」
「あら!」
唐突に桃色の煙が!
どういう原理でなのそれ!?
モワモワ……モクモクモク……
食卓が謎の煙がに包まれる。
一応吸い込まないようにしとこうか……窓開けた方がいいか?
モワワ~ン……
なかなか濃密な煙が視界を遮る。
一先ず窓を開けに席を立つ。
窓を開き、少ししてようやく煙が薄まって来た。
「あら~? まあ、可愛らしい! 旦那さまー、早くこちらにいらして!」
フィオナは煙の中にいたであろう彼女を確認したらしく、テーブルの方から俺を呼ぶ声が聞こえる。
「一体全体どうなってんの? 可愛らしって何で!?」
呼ばれて向かった先にはなんと。
「よくぞ私を呼び覚ましてくれた……さあ、何が望みだ人間よ……?」
精一杯低い声を出そうとしている、小悪魔ルックのクマパン娘がそこにいた。
……あら、かわいい!
-
ガツガツッ! ガツガツガツッ! モッモッ! モキュ……モキュ……
ガツガツ……ガッ!? ……ドンドンドン!!!
「あらあら、落ち着いて! さあ、こちらのお水を!」
モガッ……! ガブゴブガブ…………ゴックン!
「……ありがとう」
「ふふ、ご飯は逃げませんわよ?」
すっかりお母さんムーブが板についたフィオナ王女。
なんか言ってた変身小娘を席に座らせ食事を再開、荒れ狂うクマも顔負けの大食っぷりにまったく動じないご様子。
「今まで贄は逃げ惑うものばかりでつい……」
なんかいってる小悪魔娘。
……で!?
心の中で俺は叫んだ。
色々とツッコミたいところを我慢して震える。
だがフィオナには、「まあまあまあ、よいではありませんか」とか窘められたので俺も食事に戻らざるを得ない。
あー、ハンバーグ美味しっ!!
-
食事を続けること小一時間。
すっかり俺の勢いも消沈。
食事中、「そっちのお醤油取ってー」「……はい」とか普通にやり取りしていた。
満漢全席とは行かないが、5、6人前あった食事の7割方がこの少女の腹に収まった。
うん、追加でフィオナさんもどんどん出すもんだから止まらん止まらん。
「……ご馳走様でした」
「はいはい、お粗末様でした」
「んー、フィオナさん、俺最後にお茶ー」
「はい、今お注ぎしますわ旦那様っ♪」
「ありがと……」
ずずずっ……。ふう、満足満足。
……で!?!?
もはや立上がっちゃおうかな俺!
ゴンッ! と湯呑を置き、
ガッっと椅子を引いて、
バッっと……お腹いっぱいで立ち上がる気が失せました。
グデェ~と机に突っ伏す。
「ウルヴァちゃんはやっぱり悪魔さんなんですの?」
「……いかにも」
ああ、切込み上手のフィオナさん。
情けない俺とは大違い。
そしてなんか大仰な感じで返す小悪魔娘。
フィオナさんも悪魔ですよ発言に警戒したのか、二の句をつむげないご様子。
「……」
「……人間」
おっと、今度は小悪魔娘からの問いかけ。
少々険しい表情で、何か焦っているようにも見える。
どうしたどうした?
彼女の反応にフィオナさんは落ち着いて応じる構え。
「なんですの?」
「なぜ……私の名前を……!?」
ン──ー!?
えっ? なんかちょっと前に自分で仰ってませんでしたっけ。
いや、確かに名前は聞いてなかったな。
フィオナさんどこでこの子の名前を?
てか、その名前だけでなんでそんな焦ってる感じなの?
「なぜって、首飾りに記されてましたし……」
そういいながら手に持つ例の青い首飾り。
あ、確かに食事中、「お皿を置くので寄せますわね?」って言って、首飾りよせてましたね。
あの時かー、納得!
「グウゥゥゥ……真名を知られていては、契約どころかお主に支配を受けて主従が成り立ってしまっ……ハッ!!」
「あらー、そうだったんですの……」
なんか自分で全部解説してくれたウルヴァちゃん。
対するフィオナさんも心配そう。
「あらー」ですってよ奥さん、「あらー」って。
「えー、でしたらとりあえずウルヴァさんの行き倒れの経緯とか、首飾りの件とか説明していただけます?」
「ヌグググググググッ……!!! さ、逆らえない……」
あれ、もう支配しちゃった感じ!?
俺、置き去りにされてない? 大丈夫?
俺を置き去りにするフィオナとウルヴァ。
そんなこんなで、彼女に色々話してもらいうことにしました。
-
・(自称)偉大なる悪魔ウルヴァさんは、普段は封印の首飾りを身に着け悪魔の力を封じ込めて封印モードで活動している。
・(自称)偉大なる悪魔ウルヴァさんは、大食を司る悪魔という自身の性質上燃費が悪く封印モードでもよくお腹を空かせていた。
そして今日、たまたま街でお財布をスられ飯を食えず、お腹が空いて力がでない~と行き倒れていた。
・偉大なる悪魔(笑)ウルヴァは、フィオナに名前を呼ばれ返事をしてしまったので悪魔主従の支配が成立してしまった。
現在フィオナに逆らえません。
・わ、我は悪い悪魔じゃないよ……ブルブル。ちょっと他の子より一杯食べるだけの悪魔だよ……ブルブル。←いまここ
-
だそうだ。
「あー……、その支配は解除できないの?」
「……あんまりそういうの詳しくない」
しょんぼりウルヴァさん、まさかの私わからないの……って、うぉい!? 悪魔!!!!
「んー……でしたらわたくし、ウルヴァちゃんに一つお願いしちゃおうかしら?」
そして、うぉい!? フィオナさん!?
貴女も意外と凄いですね!?
流石は元王族、人々を使うことに慣れた人種!!
「うぅぅぅ……あんまり恐い命令はやめてぇ……」
対する涙目悪魔。
フィオナから隠れるように俺の後ろに回り込んで足を掴む。
「フィオナ、ちょっとほら、この子泣いちゃいそうだしさ……」
「大丈夫ですわ旦那様! きっとこの子も納得の、互いにWin-Winの関係になれるとわたくし、自信をもって提案いたします!」
胸に手を当て、声は高らか。
肘を顎より上げるという、なかなかレアなお嬢様ポーズは自身の表れか。
だけど、彼女が自身満々の時って不安なんだよな……止めようがないから諦めてるけど。
「それではウルヴァちゃん、よろしくって?」
「うぅ……」
ビシッとウルヴァに指さしてフィオナが命ずる。
「貴女には今後この家で、旦那様の愛玩として私と共にたっぷり可愛がってもらいます!!!!」
ババ──ン!!! という擬音が聞こえた気がした。
……ほら、やっぱりね!?!?!?
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