ドキドキ召喚タイム
さて、最初の10連ガチャによって得られたものは、大半が俺自身の能力アップアイテムとやらだった。
む体力+5とか、み筋力+3とかだ。
め勃起力+なんてのもあったし、どこまでアレなんだと怪しいものだが……まあ全部使ったさ。
「今はまだ単なる一般男性ですからね、どんどん力を付けていきましょう! まあ、あっちの方はちょーっとは自信を持ってもいいですよ♥️」
アへ女神はそんな事をいっているが、さっきまで生まれたての小鹿のように足腰ガクガクだった記憶はどこかに飛ばしてしまったのだろうか。
「さてさてお待ちかね! SSRクラスのアイテムも1つ手に入りましたね、早速使ってみましょう?」
そう、今俺の手には淡く輝くアイテムがある。
一枚の紙切れに見えるソレは『ドキドキ♥️母体召喚チケット』と書いてある。実に胡散臭い。
「簡単に説明しますと、これからあなたがガチャを回すため、必要な母体を1つプレゼントしてくれる訳ですね♪」
キャルン☆とウィンクしながら女神はそうのたまう。
ガチャは身をもって体験したばかりだが……。
「母体って不穏すぎるだろ……。そもそも女神さまがこれからも相手してくれるんじゃないんですか?」
それを聞いて女神はニヤニヤ。
「あら!? もしかしてこの麗しくも尊き全能すら越える超絶美女女神さまである私のか、ら、だ、を! また好き勝手にできると思っていたんですか!? 不遜、不遜ですよこの人間風情が!」
早口で捲し立てる女神。
「……」イラッ
「睨んでもだめです♥️さっきのは所謂チュートリアルですから、そう何度も経験できることでは無いんです。これからは、このチケットで呼び出した母体とよろしくしちゃってください」
「チケットで呼んだ母体は比較的協力傾向にありますから、反逆や逃走なんかのリスクも最小限です。チケットをちぎれば貴方の好みにそった母体が召喚されますから、さあさあ!」
「わかった、わかったから後光を弱めてくれ! 目がつぶれるっての」
輝かしいオーラと満面の笑み(目は笑ってない)で圧をかけてくる女神。くっ、非力な俺は逆らえないぜっ。
手にあるチケットを見やる。ミシン目があるからここから千切ればいいんだろうか……
「ふんっ」ビリッ
随分アッサリとそれはちぎれた。
そして足元に魔方陣が現れ、光の粒子が渦をまく。ザ・召喚の演出が目の前にて繰り広げられ、ひととおり終わったらポンッとコミカルな煙が立ち上ぼり、中から一人の女性があらわれた。
「うぉっ!? あぶねぇな!」
そして、そのそばからパタリと倒れ込もうとするので咄嗟に支える。
意識がないようで、目をつむったまま静かに呼吸しているのがわかる。
あっ、なんかいい匂いがする。
「なーに鼻息荒くしてるのですか、童貞じゃあるまいし! もっとシャンとしてくださいよシャンと!!」
「失礼な! 荒くしとらんわ!」
後ろのうるさい女神に振り返る。
が、姿が見えない。
天から響く声。
「ファーストコンタクトにはもってこいのシチュエーションですね。眠れる乙女は目覚めのキッスで♥️後はお若い二人に任せて女神は退散しますかね」
「うわっ、問題ぶん投げで帰りやがったのかあいつ! この子どうすんだよ、キッスってマジかよ!?」
「それでわ~」
そして気配が消える。
残されたのは、立ち尽くす俺と意識のない女性。
……キッスって、ただの強姦じゃん。
色んな童話に喧嘩売ってる気もする。
仕方がない、とりあえず安静に出来るところに移動させるか。
──ー
──
ー
一先ず名も知らぬ女性はベッドに寝かせた。
健やかな寝顔をしているが、実は気がついた事がある。
彼女の頬が赤い。というか、顔が赤い。
煙からポンっと出てきた時より、確実に赤い。
そして雰囲気が落ち着かない。意識がないはずなのにどう見てもソワソワしている。
おかしい……これはどう見ても。
「チラッ」
「ちょっ! 今、目が合いましたよね!? チラッって見ましたよね!? なんなら口でいいましたよね!?」
「……」
うわっ、続けるつもりだこいつ。
てか、唇ちょっとすぼめてる。
キスのくだり聴いてたろコイツ! ってことは、ほぼ最初から意識あったんじゃん。
「起きてるんですよね!? ちょっと! もしもーし!」
ポフポフと肩を叩いたり揺すったりする。
「……」ムゥ
あっ、なんか不満げになってる。
なんで? ご期待に添えれなかったってこと!?
キス待ちだったのこの子? ウソでしょ!?
とりあえず肩を揺する手を離し、様子を見ようとするが……
ガバッ
「いったいどうなっていますの!? 女神様のご信託と違いますわよ!」
勢いよく起き上がったと思えば、プリプリしながら抗議の声をあげてきた。
「事前の打ち合わせでは意識のない私に対して劣情をもよおした殿方が、あらんかぎりのゴニョゴニョで、めくるめく快楽と悦楽の末に、お肌がつやつやのぷるっぷる、おまけに祖国の復興待ったなし! という話でしたのよ!?」
「いや、どんな話だよ!」
ぶっ飛んだ女しかいないのだろうかこのファンタジー。いや、ファンタジーだから女がぶっ飛んでいるのか? いかん、混乱してる。
「確かに今のわたくしは、少々貧相な身なりをしていましてよ? それでも、高貴なる身として自身を磨く努力は惜しんでおりません。ですのに、なぜ手を出そうともいたしませんの!? あなた紳士ですの?」
ですのですのとうるさいこの娘っこ。どうやら高貴な身分の方らしい。うん、知ってた。
服装は普通の一般人が着るような物を着ているが、服では隠しきれないセレブオーラみたいなものを放っているし。女神程ではないが、なんかキラキラしてるしな。
「その目っ……わかりますわ! 意識のないわたくしをただ犯すよりも! 嫌がるわたくしの悲鳴を浴びながら欲望のたけをぶつけようというつもりですのね!」
このケダモノっ! と頬を赤らめ、期待に潤んだ瞳。
「けれども心することね! わたくしの身体を好きにできても、心までは屈することはありませんわ!」
キャ♪ 一度言ってみたかったんですの! と、緊張感のないワックワクのざんねん娘。
「……」
……なんと言うか、あー。もういいか。
サラサラと俺の中での常識が崩れ、彼女が吹き荒らした暴風で彼方まで飛んでいった。よしっ、流されよう!
「そんなに欲しいんならもう容赦しねーぞこんちくしょうめが! 覚悟しろ!!」
「きゃ──(歓喜)」
こういう乙女のアプローチもあるんだろきっと。たぶん。メイビー。