ヤバいっス!パイセンってばマジパネェ!!
搾精事件の後、不意打ちでギンギンにさせるのは勘弁してくれという使徒のお説教に、定期的にごっくんする事を条件に引くと強気交渉を持ちかけたウルヴァ。
当然の如く使徒にわからされたウルヴァは、お口ご奉仕はあくまで使徒に決定権を委ねるという事でまとまる。
それから数日後、なんだかんだと穏やかな日常を取り戻した使徒拠点で使徒と悪魔モードのウルヴァが向き合っていた。
「なあウル、例えばこの間みたいに、お前の魔法でこのチケットを強化したりなんてできるか?」
とある子の初ガチャからでた、深紅に輝くチケットを手に尋ねる使徒。
『ドキドキ♥️母体召喚チケット-紅-』と書かれたレアモノの召喚チケットがそこにあった。
じー、とチケットを眺めたウルヴァがコクコク頷く。
「らくしょーである。我ほどの悪魔であればその程度の紙切れ一枚、なんとでもできるのだ!」
紙切れ(最上級レア)に大口叩いておりますウルヴァさん。よっ! 流石は『大食』を司る偉大なる悪魔!!
ちなみに、ウルヴァちゃんは召喚チケットのレア度についてはピンと来ておらず、マジで単なる綺麗な赤い紙切れと思っています。
よっ! 節穴の悪魔!
「本当か! じゃあ早速で悪いが召喚を書き換えてなんか別の札にしてくれ。できれば武器とか、防具がいい」
どう使おうが持ち主の自由ではあるのだが、なかなか思い切った事を企んでいる様子。
笑顔でチケットを手渡す使徒と、笑顔で受け取る悪魔。
「では、さっそくやってしまうのだ。むむぅ~……『
──―ズンドコズンドコズンドコ…………ぴかーん!
掲げた手の中で輝きを強めたチケット。
もともと深みの強い赤だったものが、紫混じりの暗い赤に変色。
「おおっ!」
「……できたである。はい、返すぞお前様!」
(なんか知らない太鼓の音がなったのである。ただの赤い紙にしてはよくやったではないか! だが所詮は紙切れ、偉大なる悪魔の我にはかなわなかったのう!)
にっこにこで自身の勝利を信じて疑わないウルヴァちゃん。
自信満々に強化してやったチケットを使徒に返して、成功の報酬はどうするかを考え始めだす。
「よーし、そんじゃあさっそく使うか! アイテムアイテム♪」
依頼人もにっこにこでチケットを受け取り、さっそくミシン目をちぎりにかかります。
「ふんっ」ビリッ
いとも簡単にちぎれるチケット。
そして足元に魔方陣が現れ、光の粒子が床に広がる。
明るかったはずの部屋が暗くなり、夜空の赤い星のように点々と光る粒子が使徒とウルヴァの目に映る。
「「おお? お──-!?」」
魔法陣の光が強まり、暗い部屋に赤光が満ちる。
余りの輝きの強さに目を閉じるウルヴァ。
数分して瞼の外の輝きが弱まった頃、ようやく目を開けた悪魔は部屋の異変に気が付きます。
「……あれ? お前様?」
床の魔法陣は消え、元の状態に戻った室内。
しかしさっきまで彼が立っていた位置には、ちぎられた紙切れが残るのみ。
とてとてと歩み寄り、落ちている紙切れを見るウルヴァ。
『ドキドキ♥️母体召喚チケット-紅-裏』
「……もしかして我、失敗してた?」
部屋に響いた独り言は、それはそれは小さい呟きだった。
──―
──
―
余りの輝きの強さに目を閉じる使徒。
体が感じる一瞬の浮遊感。
そして耳に飛び込んでくる笑い声。
「あひゃひゃひゃひゃ!! すげーッス! リリパイセンの魔法まじパネェ!!」
パシパシ手を叩いきながら笑う女性の声が響く。
「うぃぃ~、当然でしょ~!! うりゃ♪ ……ん~~このマイナスイオンがたまらない~♪♪」
グリグリグリ……
聞き覚えのある声が聞こえたと思えば、ガシッと何かに抱き着かれた。
「えっ!?!?」
衝撃に驚き瞼を開ければ、俺目に映る景色は様変わりしていた。
既に赤い光は無く、見慣れた部屋でもなければ、ウルヴァもいない。
代わりに目の前にいるのは小麦色の肌と輝く銀髪ショートのナイトドレス美人なお嬢さん。
そして……
「……リリ!?」
腰に抱き着いているのは、麗しき森の妖精(笑)エルフのリーリヤさんである。
「ぐっぐっぐっ……かっは──! パイセンらのアチュラチュっぷり見せつけらちゃあ我慢できないッス、そんなんずるいッス、ウチも~ギュッてする~」
盃を煽って放り投げたギャルっぽいお嬢さんも手を広げ、えいやっとタックル。
「うぐぉ!? 柔らか……酒臭っ!!!!」
男が感じる幸せマシュマロの喜びを追いやるほどの飲んだくれガール。
哀れ、突然二人の酔っ払いに絡まれた使徒。
幸せ半分、酒臭半分の状況で確信した。
(……召喚チケット使って逆に俺が転送されたわコレ!!!!)
そう! ウルヴァちゃんの魔法は半端に失敗し、使用した使徒が逆召喚されるというバグが発生していたのである!!!
「あ──、このお兄さんめっちゃいい匂いするッス……ヤバイッス……」スリスリ……
「数日…? 数週間…? 数か月ぶり…?の君の香り……たまりませんの~」スリスリ……
酔っ払い美女二人の赤らんだ顔、酒で上がった体温、すこし汗ばんだ腕の吸いつき。
色っぽいお姉さん成分とダメっぽい飲んだくれ成分のハイブリット。
溺れたくなるのをグッと堪えてまずは状況を整理したい使徒。
「……えーい、一旦離れなさい! コラッ! リリと知らない子!」
力づくで引きはがすほど鬼ではない漢使徒、困った二人に一旦離れてもらおうと働きかける。
「ん~、やだー♪ 本当は私に抱き着かれて嬉しい癖にっ、このっこのっ♡」
「えー、いやッス。離れて欲しいなら血を飲ませてくださいッス……じゅるり」
当然の反応、酔っ払いに無条件のお願いは通じないのである。
(くっ! この酔っ払いども……)
「あー、もうめっちゃ嬉しい! 俺ってば嬉しすぎて大変だからリーリヤさん、ね!? せめてこの子が誰なのか教えて!? さっきからなんか目が恐いのっ!!」
ヒヤヒヤしている使徒の必死な訴え。
横から抱き着く黒ギャルっぽい子の目線が気になってしょうがないご様子。
首筋に感じる熱い視線と吐息。
「うるせぃ~! チューさせろ、チュー♡この宴の主役は今から君なんだぞぅ……ん~~~」
ちゅっ♡ぺろぺろ……
シャツの中に顔を潜らせお腹に吸いつく酔っ払いエルフ。
「大丈夫ッス、全然痛くないッスから……ウチも初めてだけど、伊達に長生きしてないっスから♡」
レロレロ……
赤い舌で首を舐めるもう一人の酔っ払い。
口の中できらりと光った白い牙。
赤い瞳に見つめられる俺は蛇に睨まれた蛙状態だ。
それでも頭は思考を回す。
(長生き……リーリヤを先輩呼び……? でもエルフではなくて、赤い瞳と牙……血……)
「……吸血鬼?」
たどり着ついた仮説が口から出た。
「おっ? 正・解~~ッス♪♪」
にししと笑う黒ギャル吸血鬼。
パクッ♡チュ────♡♡
「あ────-っ!!!」
情けない悲鳴が響く。
長寿族の酒盛りは長く、今はまだ宵の口。
ヤバイサシ飲みに召喚された使徒の明日はどっちだ。