「スゥ……スゥ……」
「くぅ……くぅ……」
たっぷりとガチャを産んだ二人がベットで寝息をたてている。
部屋の空気を入れ替えようと窓を開ける。
外の空はすっかり白んできて、新たな一日が始まることを知らせてくれる。
コンコンッ
「お嬢様、お客様、お酒とお料理の追加に参りました」
そんなノック音と声が。
「……失礼します」
返事を待たずにガチャリと扉が開かれる。
「あっ!?」
……えっ!? 不味くね? 傍から見れば見知らぬ男と乱れた女性二人が一室に……
そんな考えがよぎるなか、扉を開けた女性と目が合う。
「……ふむ」
部屋を見渡しベットの二人を確認、再び俺を見てそのまま入室するメイドさん。
ツカツカと姿勢よく入ってくると、数歩前で立ち止る。
白いゆるふわヘアーに側頭部から生えたアモン角、横長の瞳孔。
白髪とは対照的に暗い肌が特徴的な、ヒツジ娘のメイドさんである。
「お嬢様はまだお休み中のようですね。お客様、朝食はいかがなさいますか?」
えっ、朝食ですか……?
曲者だ、であえ! であえー!! となるかと身構えたが、そんなこともなく淡々と質問されてしまった。
「えっと……? 俺って突然この部屋に来たはずなんですけど、不審者とかって思われたりしないんですか? その……お嬢様の寝室なんですよね、この部屋?」
「いえ、お客様のご入城は暗部からの報告で一同に周知されております。『これからもお嬢様をよろしくお願いいたします』というのが、城に務める者達の認識です」
質問に質問で返したのにしっかり答えてくれるメイドさん。
暗部って……、一同に周知って……。
「ご安心ください、廊下まで響き渡るメス猫とメス犬の鳴き声を聞いていたのは極一部の者だけですので。……お客様の調教術やご立派様を見た者は更にその内の一握りのみです」
どうやら城に来たことを使用人達は全員しっていて、二人を鳴かせていたことを知ってる使用人も一部居て、更に一握り覗き見していたスケベ共に息子を見られているらしい。
……はずか死!!!!
「ご質問を繰り返させていただきます、お客様のご朝食はいかがなさいますか?」
悶えているとメイドさんが再び聞いてくる。
この人案外神経図太いのかもしれん。
「あーすいません、……二人が起きたら一緒に頂きます、はい」
「かしこまりました。何か御用がございましたら、こちらの鈴でお呼びくださいませ」
テーブルに置かれたハンドコールベルを示し、一礼後に退出するメイドさん。
扉が閉まり、コツコツと鳴る遠ざかる足音が消えた。
「もしかして、映画で見るような隠し穴とかそこら中にあるのか……?」
とりあえず二人が目を覚ますまで、変なことはしないと決めた使徒であった。
──―
──
―
「よっ!!」
『按摩術』
『剣術+3』
『ダンス+1』
『死亡フラグ回避の妙技』
『幸運+5』
「よしよし、あらかた開いたかな?」
お嬢さん方が起きるまで、ベットに腰掛け溜まっていたガチャを開封して過ごしていた。
すると、ゴソゴソと横で動き出す娘さん。
「ふぁぁぁ~、んぁ? おはようございますッスぅぅ」
部屋の主、ベロニカちゃんが起床。
吸血鬼なのに案外早起きである。
「おうっ! おはようさん。……さっきヒツジのメイドさんが来てたけど、二人がまだ寝てるのを確認して戻っていったよ」
「あぃぃ、了解ッスぅ……ふぁぁふぅん……」
頭がユラユラお口モゴモゴと、ふにゃんふにゃんしていた寝坊助吸血鬼。
「…………っ!?!? ふぁ!?」
だが脳が覚醒したのか、大きな声を上げてアタフタし始める。
……酒が抜けたか?
「ウ、ウウウ、ウチってば、使徒さんになんかとんでもない事を!?!? ……はわわわっ! どうお詫びすればいいのかッスぅぅぅ!?」
「あー、うん。そだね……」
アワアワと大慌ての今更酒抜け美女。
こちとら役得ですから、ええんやで?
真っ赤になってるベロニカちゃんが可愛くて見ていたかったが、湯気まで出そうになっていたので助け舟を出すことにする。
「事情は何となく察してるから、何も謝ることないさ。女神ソルテの信託があったんじゃないか?」
「そそそ、その通りッス! 女神様に病気が治った事を報告した時、お兄さんの事を言われたんス「YOU、お礼に子袋捧げちゃいなYO」って……」
「Oh……」
天を仰ぐ。
…………女神、後でヤキ入れっからな?
〝な、なんでですか──-!?!? 〟
俺が天井を見上げた事を呆れていると見たのか、弁解の為に事情説明をまくし立てるベロニカ。
「その時女神様が教えてくれたんス……エリクシールをパイセンに持たせてくれたのが使徒っちだって。それでパイセンにお願いして魔法で来て貰ったんス!!!」
「お礼がしたかったんッス! パイセンの話を聞いて、羨ましかったッスし……これからもエッチしてもっと恩返ししたいんッス! …………おねがいッス、もう使徒っち無しだと満足できなくなっちゃったんす♡♡」
モジモジ♡
最後は少し小声だが、それでもよく聞こえた告白。
つまり、これからもお相手して下さいとの事。
美女にこんなお願いされちゃあ断れない。
「おっ、おう……! こちらこそよろしくな、ベロニカちゃん!」
勿論、これには漢らしく答える使徒さん。
それを聞いて、ぱぁぁぁ☆と明るい笑顔になるベロニカ。
「ありがとうございますッス!!!」
感動のまま、ひしと使徒に抱き着き幸せを掴んで離さない吸血鬼のお嬢さん。
-今ここに、使徒ヒロインズに新たなメンバーが加わったのであった-
因みにその後も、リーリヤはぜんっぜん起きなかった。
睡眠時間長すぎエルフである。
──―
──
―
「……というわけだな。それでいいかな? ベロニカちゃん」
「ん──-、なるほどッス。それならいずれ、ウチも使徒っちのお家に嫁入りッスね!」
使徒の生活スタンスを根掘り葉掘り聞いたベロニカちゃん、今後の計画を相談して粗方方針が決まったご様子。
バサバサバサ……
どこからともなく、部屋に飛んできた一匹の蝙蝠がキィーと鳴いた。
鳴き声を聞いて「うげぇ……」と顔をしかめるベロニカだが、ぐっと拳を握りしめ顔を引き締める。
「すんませんッス使徒っち。今、『孫娘よ、花嫁修業だ! すぐ戻るから首を洗って待ってなさい……』ってばあちゃんからの伝言が……。逃れられない試練ッス……ウチ、必ず乗り越えてお嫁に行くッス!!」
出逢ってずっとそばに居たはずなのに、いつの間にか家族にそんな事を言われていたらしい。
あの蝙蝠か? 便利だな、吸血鬼は……と思考を放棄している使徒。
「花嫁修業なんて瞬殺ッス! しばしの別れッスから、安心してほしいッス使徒っち!」
ご家庭の事情に首を挟まない、これが娘さんを送り出す家族の絆なのだと快く了承する。
「わかった、頑張ってなベロニカ!」
「はいッス!!」
──―そんな一幕があり、新たな嫁さんの見送りを受け夜の国の城からの帰路につくこととなった俺。
と、何故か後ろを歩く一人の女性──―
「……なんで?」
朝に部屋に来ていたヒツジ娘メイドさんがそこに居た。
ちょいと大きな革のケースを両手で持ち、姿勢よく後を付いてくる。
ベロニカ城の前で別れた時に、
『じゃあ、オリビア! ウチのいない間、使徒っちのお世話は任せたッス!』
『はい、お嬢様』
とか言ってたからおかしいな~とは思ってたけど……
極々自然についてきたから反応が遅れたが、結構歩いてようやくツッコミを入れることができた。なんで居るんですか? と。
「お付のメイドですので」
答えは単純、ベロニカお嬢様のお付のメイドだから!
う──ん、じゃあしょうがないね……
「……ん?」
待て待て待て、なんかおかしくないか?
「……いかがなさいましたか?」
悩む俺の百面相を見てか、尋ねてくるメイドオリビア。
「いやー、その……ベロニカはここに居ないじゃないですか。それなのにどうしてオリビアさんが?」
ベロニカの御付きなら一緒に花嫁修業の手伝いで横にったのでは?
「お嬢様がお世話になる嫁ぎ先にご挨拶するのも仕事の内ですから。事前に奥様にもお話を通しておかねばなりません」
それはなんとなく分かるが、うら若いメイドさん(これ重要)が付いてくる必要があっただろうか?
「えっと、……しかし」
だが言いよどんでしまう……。
そもそも、それを本人に確認したところでどうしようもないのか?
「なるほど、旦那様の懸念を払拭するにはわたくしの能力を見せるのがよさそうです」
「え?」
「お手を失礼いたします。……『転移陣』!!」
言うが早いか、俺の手を取り魔法を発動したオリビアさん。
ピカ──ン!!!
二人の足元には輝く魔法陣。
……これは、転移魔法!?
そして景色が一変、さっきまで歩いていた街道から宿屋の一室へと瞬間移動していた。
「……こちら、贔屓にしてあります旅宿でございます。元より本日泊まる予定のお部屋に、転移いたしました」
「おおおぉ!! すごいですねオリビアさん!」
感動そのままに称賛する俺。
「ああ、なるほど! これで先に拠点に出向いて、後からベロニカちゃんを迎えに戻るわけか!! 流石ですよ! そんな難しい魔法まで使えるなんて! 尊敬します」
諸手を上げて驚く俺に、無表情ながらも『ふっふ~~んっ♪』と嬉し気なオリビア。
この間にも、俺から手荷物達を受け取り、外套を脱がせてラックに掛けてと、よどみない使用人の洗礼された動きを見せてくれる。
「わたくしの能力はこれだけではございません、旦那様どうぞこちらに」
そう言って部屋の奥へと招くオリビア。
まだ何かあるというのか! 今度は料理? それとも洗濯?
全く予想が付かない優秀メイドさんである。
いったいどれだけ俺を驚かせれば気が済むのだろうか。
ワクワクと期待してしまう自分の好奇心には逆らえず、彼女を追って扉を進む。
そこには品の良い調度品達の置かれた一室。
立ち止まった彼女が振り返り、俺を待つ。
テーブルの前に椅子があるからそこに座ればいいのかな?
とりあえず彼女の近くに寄り、椅子に手を掛けようと……
「では失礼します」
「うん?うわぁぁぁ!?」
ふわりと視界が回転し、ベットの上に投げ出された。
ボフリッ…
そして上に乗り上がるオリビアさん。
沈むベット。
「ベロニカ様からの仰せに従い、夜伽を務めさせていただきます……♡」
「はいぃぃぃ!?!?!?」
流石の俺も、それには転移魔法の10倍驚いた。
因みに使徒のご立派を目に焼き付けたスケベさんは
ベロニカを守る暗部の子とベロニカのお付メイドのオリビアの二人です。
廊下まで響いていた声は、ベロニカを世話するメイドさん部隊と暗部部隊の皆が聞いていました。なので使徒のご立派を誇張表現した暗部ちゃんの情報提供により、花嫁修業中には周りから羨望の眼差しで見られたとかいないとか。
夜伽を強行しようとしだす褐色メイドイメージ
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