度重なるガチャ放出の末、無事爆乳美女ブレンダちゃんの症状を回復させて数日後。俺は未だ拠点には戻らず観光がてら魔術都市をぶらつきながらこの街を満喫していた。
しかし観光といっても、ちまたで有名などでかい城や話題の劇場施設なんかは初日に見終えてしまっており、他に面白そうなのもがないかと考えながらブラブラしている程度である。
“はあ、腹もすいたから適当な飯屋にでも入りたいけどどおすっかな……しかし、今のところ宿の飯が一番旨くて、二番目が学園の学食だったってんだからその辺の店は望み薄だよな、いっそ──ー”
「いよぉ~っす相棒! こんな所で会うなんて奇遇だねぇ~、どうだいこれから一杯? あ、もちろんそのあとは私としっぽりと宿にでも~にへへ」
ふわりと森の香りが漂ったと思えば背後から声をかけられる。
俺が気配を察するより早く近づき、バシンと背中を叩く身のこなし。さらに真昼間だどいうのに飲みに誘うという奔放っぷり。言ってることがダメなおっさんなのに、声が鈴を鳴らしたかの様に美しい女性の声音。
このギャップの交通事故具合と、聞き覚えのある気の抜けた声は……まさか!
「いやいや、全部声に出てるよ君、誰がダメなおっさんか! 麗しき姉さん女房のリーリヤさんだよ失礼なっ!」
「おー、リリ! まさかここで会うとはな!」
振り返えればそこにはお美しいエルフのお嬢さんがそこに。いつぞやにあったときのリラックス寝間着スタイルではなく、しっかりとした旅の装いでぷんすこと腰に両手を当てている。
そんな美の女神にお声をかけてもらえた側としては、この再会の感動を表現したく、俺は熱烈な抱擁をば。
ひしっ……
「うう~ん、このフィットする感じの抱き心地は間違いなく素敵な姉さん女房のリーリヤさんだ、会いたかったぞ? このこの!」
ジタバタっ!
「ええいっ! そんな再会のハグくらいで誤魔化されると思わ……そんなに嬉しいかい? ふへへ~♥️」
一瞬バタついたが、そんな感動の再会にすぐさまご機嫌になってくれるリーリヤさん。こちらも嬉しい事なのは違いないのよ? その事を向こうも解っているのでまあ、だいたい俺達はこんな感じだ。
「よっしゃ、再会を祝う酒じゃあ! お天道様の下で元気に飲んでこの喜びを高らかに歌おうぜ!」
「いよっ、それでこそ相棒さ! そうと決まれば私の行きつけの店に向かうよっ! 彼処は昼からやってるのだ」
「ガッテン! そんじゃその店に、レッツゴー!!」
気の長いエルフに似合わぬ急ぎ足の彼女に置いていかれるよう、俺もさっさと歩を進めるであった。
────
──ー
──
ー昼からやってる飲み屋ー
リーリヤの案内した店は本日も変わらず営業を開始しており、しかし俺達のような昼間から酒を飲むような輩で席が埋め尽くされる事もなく、がらがらの店内で適当な席を確保することができた。
席を決めて椅子にかけるやいなや、入店して直ぐに頼んでいた酒をおっちゃんが二つカウンターに置いてくれる。
「おう! まずはビールお待ち、鳥はもうすぐ出せっからもう少し待っててくれ」
ウェイトレスが居るわけでもないこの飲み屋では、奥で店主のおっちゃんが料理と酒を用意し終わったらカウンターに置き、それを注文した客が取りに行くスタイルだ。
あたしが取って来てあげる~♪ なんて言いながらご機嫌でカウンターに向かっていったリーリヤの背中を見送るあいだ(といっても直ぐソコまでしか距離はない)ふと、前のカウンター席で酒を飲んでいる他の客が目についた。
“他にも飲んでる奴はいるもんだな……ずいぶん若い……いや、小柄なだけか? ”
「はいは~いおっちゃんこれ持ってくね~、それじゃあ乾杯しよっか相棒よ! カンパーイ!」グビッ──
カウンターの目の前でグラスを確保した相棒に意識を戻す。振り返りながらグラスをこちらに掲げ、一歩進む前にそのまま呷りやがった!?
「──ぷはー! おかわり!」グビグビィ──
って飲みきるのはえーよ!?
席に戻ってくるまでの数歩で飲み終わって次頼んじゃったよこのエルフ。なんなら俺の分だと思っていたもう片方のグラスも呷っちゃうという奇行。
「いや、それ俺のだろ!? なにサラッとおかわりまで楽しんでるの!? うそ、乾杯って俺とするものじゃなくて、宣誓的な扱いなの!?」
「くっはー!! 大樹が大地から水を吸うように! 砂漠に降る恵みの雨のように! この体へと染み渡るわ~、これぞ命の水っ!」
「がははっ! 相変わらず良い飲みっぷりだな姉ちゃん! ほらよ、おかわりのビールだ」
そんな飲んべえエルフには慣れてるのか、店のおっちゃんは既に追加の二杯をカウンターに置き終え焼き鳥の仕上げに取り掛かっている。あの早さは、なんなら最初から四杯用意していたまであるな。
「サンキューおっちゃん! ささ、相棒もお待ちかねのおビール様の到着だよ~♪」
空のグラスと交換で受け取り、今度こそ席にビールを持ってくる染み渡ったダメエルフさん。
「リリさんや、今日はまた一段とぶっ飛ばしてないかい?」
「いや~、カウンターにいたお客さんの飲みっぷりを見たら『私も負けてられない!』って思っちゃってさ!」
「はー?」
そんな事わけの分からぬことを言いながら、カウンターで飲んでる他所様の背中をチラ見する負けず嫌いエルフ。
他には飲んでる客も居ないので直ぐにわかる、さっき目についたお一人様の若い客だ。たしかに端から見ても分かるほどの量の空グラスを並ているのがわかる。おーおー、良く飲むなあの客も。
……しかしだ、
「お前な……こんな真っ昼間に仕事もせんと酒を飲んでる時点で、俺達ぁ既に今日という日に対して勝ち星を上げてるんだ、わかる? 既に勝ち点一なんだから他で負けを拾ってくる必要は無いだろ。というか、そもそも酒を飲んだ量に勝ち負けは無い」
グラスを受け取り一口飲み下しながら高説を垂れてやる。なんなら俺は美人と酒を飲めてるから勝ち点二とカウントしても良いくらいだ。
「ふ~ん? まあ、君のその考えで数えるなら? 私のような超絶美女とお酒を飲んでる時点で、今日という日に勝ち星が二十点くらいついてても不思議じゃないけれど? それはそれ、これはこれよぉ!! あっ、おっちゃんビールおかわり!!」
「……さいでっか」
彼女の自己採点については置いておくとして、このままボルテージが上がってアルコールの巡りが良くなった単独二十点エルフが、対抗心を燃やす切っ掛けになった他所様に絡み酒を拗らせたら面倒くさい。
「あいよ! 焼き鳥盛り合わせとビールお待ち!」
「ああ、はいはい~今いきます!」
俺は一端話を区切って置かれた料理を取りに向かう。この酒の魔物にグラスが空の時間を与えると何をしでかすかわからないと知っているからな。
そうして待っていた料理を取る際に、必然的にカウンター席で飲んでいる
「くそっ! くそっ!! なぜあの……、もう少しで……のに!! ここまで……の、ああっ、くそ!!」
はい、この人完全にやけ酒です。
ブツブツと独り言言いながら苛立ちを酒で流し込んで居ます!
更には着こんだローブについたフードを被ったまま飲んでいるので怪しさ満点! チラリと覗く鼻先や、グラスを握る手の白さで女性とわかりますが、それ以上は近寄りたくない雰囲気バリバリです!!
「あのまま…………、だというのにっ! いったい……」
さっさと盛り皿を確保して愉快な相方が待つ席に戻る。
「ほらほら、熱々の鳥さんが俺達に美味しく頂かれにやって来たぞ~」
「や~ん♥️待ってたよ~♪ 今すぐ麦のプールで存分に泳がせたげるんだから~」
ビール片手に焼き鳥を頬張る優勝エルフさん。ご機嫌最高潮といった宴の開催をもって、謎の対抗心がこのまま鳴りを潜めてくれれば良いのだが……
「ふは──っ! お口の中が幸せ祭りじゃ~!」
どうやらお待ちだったお食事に注意が向いてくれたらしい。一先ず一安心とこちらもビールを飲みながら彼女に続く。
そうして始まるアルコールの宴。
キンキンに冷えたビールが喉を通り、首筋に流れた冷や汗を冷やしてくれるのは幸運だったと考えることにしよう。
……てかここの焼き鳥うまっ!?