「ぬおぉ……!!」
「くっ……、なんて
「うおっ!?大丈夫か、リリ!!」
ごうごうと渦巻く魔力の奔流の圧で倒れそうになったリーリヤを咄嗟に支える。くそっ!登場だけでここまで猛威を振るう相手なんて、どうすりゃいんだ!?
「ア──ーハッハッハ!!すごい、すごいわ!呼び出すのにここまで魔力を持っていかれるなんて!ア──ハハハ!!!」
術を行っている本人が会心の手応えにトリップしながら喚きひどく耳障りだ。
バチバチと明滅する魔方陣が、俺達の直ぐ目の前に先の見えない穴を形作った。
ずぬりっ……
ぺたっ、ぺたっ……
虚空に開いた穴から這い出るようにもったりと姿を見せたそれは、単なる小さな少女のような装いで、その剥き出しとなっている素足を未だ輝きを残す魔方陣の上に落とした。
「この我を呼び寄せるとは、中々の欲望よのぉ…………どれ、一時の戯れとして『大食』を司りしこの我が……貴様に力を貸してやろう……もちろん対価はいただくがな……」
ズモモ……ゴゴゴゴゴ……
ただならぬ気配を纏いて、いつぞやに比べて随分と様になった低音ボイスを発し、貫禄たっぷり可愛くご登場なされた悪魔は……なんか見たことのある赤髪をなびかせ、ゆるゆると悪魔シッポを振る小悪魔ルックなきゅーてぃガール。
「ああ、これが悪魔……!しかも低級ではく、特定の概念を司る上級悪魔族!!もう最高っ!これは是が非でも我が組織の幹部に……!!」
呼び出したルーフェンは目の前に登場した上級悪魔族様に大興奮、すっかりこの悪魔ちゃんを登用した組織計画を夢見てアヘアヘとトリップしかけている。
「ずいぶんちんとくりんな悪魔がでてきたわね?ルーフェンのことだからもっと厳つくてムキムキのゴツい奴が出てくると思ったわ……」……ヒソヒソ
「フヒヒ……魔力はそこそこ有るみたいだけど肝心のお胸はあたし以下ね……サンプルには必要なさそう……」……ヒソヒソヒソ
他の幹部二人も後ろの方でコソコソ囁きあっている。
確かに、局部をセクシィに隠すだけのほぼ裸体な小悪魔ルックを見ればそんな感想が出るのも仕方がないが中々に容赦の無い奴等だ。
「ああ、素晴らしいわ!!…………悪魔よ、その目の前二人があなたに捧げる贄だわ!その二人の命を持って私の願いを叶えて頂戴!?」
「……」
「……な、なんですって!?」
テンションMAXで贄として名指ししてくるルーフェン嬢にリーリヤは怯えた表情を隠せない。
俺も言葉が出てこない。
「くっくっくっ、他者の命を捧げ自らの望みを果たすと?なんたる強欲よ……」
呼びつけた術師の言葉を聞き、面白そうに笑う悪魔ちゃん。
「……だがそれもよかろう。どれ、この悪魔の贄に捧げられた憐れな者…………は……」
くっくっくと、時々脱衣所の鏡で練習していた悪い顔でこちらを振り向く悪魔ちゃん。
ようやくこちらを認識し、目が合った途端にカチリと動きが停止する。
パクパクと口が閉じては開き、二の句を紡げないようすの悪魔ちゃん。
しょうがないので贄側から話しかけてやる。
「……よう、何やってんだウルヴァ?」
「……あ、……悪魔違いである。我はせくしぃびゅーてぃで有名な大食の悪魔ウルヴァとは別人である」
自己評価高過ぎ悪魔のすっとぼけが炸裂する。
反動で頬に伝う冷や汗がキラリ。
「……じゃあオリビアに内緒にしていた『お前のゴーヤを代わりに食べて上げた事』は打ち明けないとな。えーと連絡用のマジックアイテムは……」
「のわぁぁぁ!?やめるのだ!それがあのメイドにバレては、我の夕食にあの緑のニガニガどもが並ばれてしまう!」
「……でも別人なんだろ?じゃあ関係な──」
「にぁぁぁぁぁ!?あー、我!!我こそがウルヴァ本人であった!この我が、ぱーふぇくとせくしぃびゅーてぃの悪魔と名高いウルヴァちゃんであった!!召喚によって記憶が混濁しとったが、今思い出した!!だからそのアイテムをしまうのだぁぁぁ!!」
泣き叫ぶ悪魔に呼応するように、薄く輝いていま魔方陣の光がフッと消える。
手に持っていたアイテムをしまうと、改めて続きを促す。
「……で、何やってんのウルヴァ?」
「ううう、ニガニガはいやなのだぁぁ……」
そう言って項垂れるのは、未だに苦いお野菜が苦手なお年頃の『大食』の悪魔ちゃん。……というかウルヴァだった。
───
──
─
「ううう、床冷たいのだ……」
「くぅぅ、ちょっ……!?同士コルル、同士シーシェラ!?なぜ助けてくれないのです!?三輝星筆頭の私が簀巻きで転がされてましてよ!?おぉ──い!!」
首から『我は苦手な食べ物を他人に押し付けた上に、嘘をついた悪い悪魔です(反省中)』とプレートを下げたウルヴァは正座中。
そして『大召喚』で魔力を空にしたルーフェン嬢は俺達に縛り上げられて床に転がされている。
「ねえ使徒君、そろそろ許してあげたら?こんなにちっちゃな子なんだし、子供のうちは結構苦いよ?アレ」
ものの三分でいたたまれなくなったリーリヤがそう話す。彼女も始めはウルヴァを警戒していたものの、拠点での居候生活中であることなどを話すうちにあっという間に警戒を解いてしまった。
「おお、そこのエルフはなかなか話がわかりおる!そうとも、我まだ子供だからニガニガはうぇぇってなるのだ!」
「うーむむむ……」
「ほら、それにこの子は君の家で一緒に暮らしてる悪魔ちゃんなんでしょ?こんな外で反省させるよりも、戻ってからゆっくり話し合ったほうがいいって~」
「そうじゃそうじゃ~、あんなにニガニガなのは初めてでビックリしたが次はアヤツを倒してみせようとも!」
そんな二人の訴えも相まって、確かにここまでする必要も無いかと思えてきた。
「……それじゃぁ反省したか?」
「反省したのだ……」
「もしもーし!?そろそろこの姿で五分は経ちましてよ~?おーい、同士たちも、ねーぇー?」
「なら今度はゴーヤが出てきても頑張れるか?」
「……彼奴等の出方を見るためにも、まず一口は食べるのだ。後はそれから考える……」
「ゴーヤよりも大事な事が目の前で転がされてましてよ~?ちょっと~?」
「うーん、ならまずよし!ほら、それ下ろして立ちな」
「わかったのだ!」
ウルヴァが首から下げていたプレートをぺいっ!と投げ捨てながらよいしょと立ち上がる。
膝小僧を軽くほろってやり、ガシガシ頭を撫でてやる。
「うにゅにゅ~ん♥️あ、悪魔の我はそんな頭ナデナデ位では……ご、ごまかされたりなぞ……ふにゅぅぅ~♥️」
「おうおう、そうかいそうかい」
「にゅぅぅん♥️にゅぅぅぅぅ……♥️」
「いったいどうなっていますのー?強力悪魔を呼んだ途端に手懐けるなんモガッ!?」
「ちょっとうるさいのだ」
ナデナデを邪魔されたのが気に入らないのか、止めとばかりに口もふさいでしまうウルヴァ。
ルーフェンの動きはモガモガと五月蝿いままだが声量は抑えられたのは丁度良い。
「そんでウルヴァさんや、なんでまた召喚なんぞにお応えに?お前もうフィオと契約しちゃってるし、そっちは良いのか?」
使い魔ならぬ使い悪魔なウルヴァちゃんであることは間違いない。これはもしや謀反か?契約不履行ですか?
「……ぬぅ、確かに本契約は既に契約者と交わしておる。……が!これは手間取りみたいなものである。つまり我は自由時間に遊んどるに過ぎんのだ!よって我的にはセーフ!」
手間取りて……それでエエんかい契約を重んじる種族よ。
「たとえセーフだとしても、自由時間に怪しいアングラな組織の幹部からの要請に答えられると保護者としては不安しかないのだが……」
「お前様が保護者!?孤高の大悪魔である我をつかまえてなんと不遜な物言い……」
「衣食住+おやつ付きで養ってたら保護者だっての」
「ぬぅぅぅぅ……た、たしかにそれを言われると我としても言葉が返せぬ……ぬぬぬぅぅぅ……」
うんうん唸りだしてしまうウルヴァ、さてどうしたものか。
「それなら妙案がありましてよ使徒様?」
「んお?」
「うぬぬ?また別のエルフが出てきたのだ」
「使徒様がこちらの悪魔さんの動向に不安をおぼえるならば!使徒様も我ら『明けの明星』の幹部として加入し、悪魔さんの活動に同行がしてくださればいいのです!!」
「はぁぁぁ!?」
ここでまさかのシーシェラさんからの提案。余りにも斜め上を行くアイデアをぶん投げて来やがった。
「……同士シーシェラ、あなた──」
これには流石の幹部仲間コルルが口を挟む、そうだ!言ってやってくれコルルちゃん!!
「──ーナイスアイディアじゃない!!!これなら幹部が三人から五人!ほぼ倍の戦力に!!!」
「ぶ────っ!?!?」
あかん、
「あの男のサンプルはいくらあっても困らんからな!あたしの研究に必要なモルモットが側にあるなんて良いことずくめだわ!」
「使徒様を引き込めば御姉様とお会いする機会も……グヘヘ……ジュルリ……」
キャイキャイとこちらの意志そっちのけで盛り上がりだす『明けの明星』のお二人。
「……ウルヴァ、この床の魔方陣まだ使えるか?」
「ん?そんなの楽勝なのだ、魔力をチョイと込めれば元の場所に帰れるのである」
「よし、それじゃあ三人でとっとと帰るぞ。リリ!早くこっちに!」
「えっ?あ、えっ!?」
「ほら、発動だウルヴァ!行くぞ行くぞ!!」
「んー、まあいっか?了解なのだ!!」
ポワ──ーン
……ヒュンッ
モガモガ!モガー!
「サンプルも手に入れば培養に頼らなくてもあの状態に──」
「ああ、御姉様と御兄様に挟まれて……ぐへへ……──ー」
───
──
─
「あら?」
「あれ?」
「モガ────!」
そして魔法陣の輝きは、すっかり消え失せていた
『とある掲示物』
私たち「明けの明星」は、共に戦う仲間を募集しています!
入会費用のみですぐに活動へ参加可能!
専門の秘薬で身体強化から高度な魔術の習得、未知との遭遇な----
-ここから下は千切れて読めない-