玉パン、それは諸刃の盾【挿絵リンク有】
とある日
ポワ~~ン……
手にしていた球体が輝く光へと変化し、丸い光がまた別の形となって輝きが収まる。
「んーと次のは~、……これは……なんだ?」
俺は朝から拠点の自室にて、連日連夜の営みの末に生成、排出されたガチャ達の開封作業を行っていた。
「えっと……? 紐……と、数珠……?」
輝きに包まれながら形を成したそれは、手の平に収まる形を持つタイプのアイテム。
ガチャは能力上昇やスキルなんかは不可視の何かが俺に吸収され、アイテムだったり物であれば小さな物は手に持ち、大きな物は側に置かれる。まあ、毎度その中身や効果は様々だが、数多のガチャを開いてきた俺にとっては慣れたものだ。
「パッと見アクセサリーっぽいけど……ガチャの色があれだったしな……」
ガチャの色が中身のレア度に関係するのと同時に、アイテムの系統とも関連性がある。
赤なら攻撃能力や武器。青なら防御能力や防具、といった風にだな。そして今しがた持っていたガチャは紺に近い紫のガチャ。
この色は、大体青に近いので身につける物で……しかしピンクが入ってるからアダルティな……物? ……の、はず。
「んあっ!? この部分はレースか……そんで紐が繋がって……」
両手に持ち上げて、紐と紐とが結ばれるであろうところを掴んで広げてみるとあら不思議、数珠の部分が重みでさがり女性の臀部を彩るTの字が……!
「……ッ!? 下着なの!? これ!!?」
広げた両手にて掲げられたのは、見紛うことなく女性物の下着、それもかなり……とても……大変えげつないデザインのセクシーショーツだ。
「こ、ここ……? えっ、履くとこの数珠……真珠!? 真珠かこれ! ああ、ともかくこの連なった真珠がモロ“あそこ”に……」
この危険物を女性が装着した場合の姿を考えると、その破壊力は一体どれほどの物となろうか計り知れないっ!!
しかもこれを身につけた場合、乙女を守る最後の守護者ともあろう物が寧ろ逆に! 守るべき乙女の花園を踏み荒らす逆徒となるであろう……!
「せ、攻めの下着……いや、諸刃の下着……だな」
おそらく勝負下着の更に上を行くモノ……かもしれない。ここまで人類は進化したのか。
神々が見れば驚きの余りひっくり返ること間違いなしだな。
「しかし、これ……どうするよ……」
神が驚くよりも先に俺がこの下着の処遇に困る事となった訳だ。
まあ今までも女性物のアイテムは希望者が居ればプレゼントしたり、商人に売ったりしてきたからな。
今回も誰かに欲しいか聞いてみて、それでも居なければ売れば良いだろう。
……しかし、物がモノだ……もし男の俺がこれを片手に女性にプレゼントしようとするとどうなる?
相手によっては、俺はすぐに憲兵に突きだされる事になるだろうかもしれない。
……慎重に相手を選ばなくてはならないっ!! イメージだ、イメージを働かせるのだ幸運の使徒よ!!
むむ、ムムムムム……
そうして俺は思考の海へとダイブした。
-フィオナにプレゼントした場合-
「実はフィオにプレゼントがあるんだ、これなんだけど」
「まあ! 旦那様からの贈り物!? つまり愛のプレゼントっ!? わたくし喜んでいただきますわ!!」
言うが早いか、差し出された手の上モノを持ち上げ確かめる。そして自分が手にした『真珠と紐とレースの何か』に「?」を浮かべるフィオナ。
「────これは?」
「パ、パンツ……のはず……?」
「パ、パンツ……? つまり、おショーツですのね……? えっ、あの、えっ!? これを、わたくしに……?」
パッと見困惑するフィオナ、いかん外したか……
「や、やっぱり要らないよね!? すまんっ、妙な物を出し「いいえっ!! 要りますわっ!!!」
謝りながらブツを返して貰おうと手を出すと、食い気味に所有権を主張するフィオナさん。
「このおショーツ……だ、旦那様がコレをわたくしに下さると言うことそれ即ち、今わたくしが纏うシルクのおショーツを脱ぎ去り、履き替えよという意……!」
「ちょっ、フィオ!?」
「変身ですわっ!!!」
カッ!! と目を見開き、ロングスカートの中に手を突っ込むと、手ずからお上品なシルクのサイドスリングショーツを
キラキラ☆キラキラ~☆
ギュッギュギューン!! グガピ──ーン☆☆
ヒロインの変身シーンを邪魔する様な野暮な真似など出来ない俺、そのままフィオナが≪パールショーツスタイル≫と成る事を阻止できなかった。
「……ふぅ、こ、これは新感覚ですわね♥️」
新たな力を確かめるように自分の姿を見るフィオナ。いや、結局着ていたドレスは変わらないから意味はないのだが。
「さあ、覚悟は出来ていまして? 旦那様……♥️?」
「えっ? 何でそんな獲物を狩る目を……? ……ちょっ!? ア──ーッ!!!??」
──ー
──
ー
……新たな力を得たフィオナにそのままこってり搾り取られる未来が見えた。
「べ、別の子にしよう……ムムム……!」
そして俺はたどり着いた予測から目を背けるように、また熟孝を開始する……
ーリーリヤにプレゼントした場合ー
「なあリリ、実はプレゼントがあるんだ。コレなんだけど」
「え~? なになに~? おおっ、真珠のアクセサリーだ~」
「あ、いや~、その……ちょっと違う……かな」
例のブツを受け取り、真珠の煌めきにテンションを上げるリーリヤさん。まだ正体に気が付かず。
「えっ? だってこんな感じの真珠のネックレスとかってあるよね? ……あ、そのわりには並んでる数が少ないか! じゃあ手首用とか?…あれっ、違ったかな?」
「手く……ん~……いや、違う……かな……」
「なんか珍しく歯切れが悪いね、……わっ!?」
シュルルッ
【パンツ】
何処からともなく見覚えのあるツルが伸び、板看板に三文字の真実を掲げて来た。最近質の良い魔力を吸収してレベルがアップしたらしく、リーリヤを守護するようにツルを異空間から伸ばしてコミュニケーションするようになった。
……別にリーリヤさんが本体を装備(意味深)している訳では無い。あくまで日のあるうちの彼女はノーマルである。
「ええっ!? 世界樹君が……、『パンツ』? そんな訳ないでしょ!?」
「……っ!」
世界樹君、正解です……!
そんな俺の気配を察したリリは世界樹君の掲げた回答が間違いでは無いのを悟る。
「えっ!? 嘘、本当にパンツなのコレ!? ……あっ」
両手に持ち、改めてしげしげと見つめると全てを察する。耳を赤く染めてポンッと湯気でも上がりそうなエルフさん。
「も、もぉぉおお! ダメダメ、履かないよ!? 君ったらなに考えてるのさ!」
「そ、そうだよな? すまん、妙な物をプレゼントしようだなんて……」
シュルルッ
【だが主は今、プレゼントされた草パンツを履いている】
「えっ?」
「ギャァァァ──ー!? 世界樹ぅぅうう!?」
突然の世界樹君のカミングアウトにリーリヤが悲鳴をあげた。
……因みに世界樹君が言う『草パンツ』とは、世界樹君の伸びたツルやツタの葉を剪定した時に出た葉(世界樹の葉)を使って編み上げたエルフ族秘伝のおパンツである。
実際は世界樹の枝の剪定で出た若芽や葉を使うとも聞いたが、実質同等品質だというのは一緒に作った世界樹君の談。
「なんだリリ~! お前この間プレゼントした葉っぱパンツ履いてくれてるのか! そっか、それじゃあまたパンツをプレゼントってのも芸がなかったな、すまねぇ!」
つい先日の『お姉さんしてくれた皆に優しくなろう週間』にて感謝を込めてプレゼントしたのも記憶に新しい。
「ノァァァァアアアッッッ!? 使徒くぅぅんん!?」
「いや~! しかし、正直渡したときは微妙な反応だったから履かれないかなとも思ってたんだけど、よかった、よかった!」
「ああぁぁぁ……!!」
ガクリと床に手を付ける草パンリーリヤさん。
はて、一体どうしたというのだろうか?
ゴゴゴ……、ゴゴゴゴゴゴ…………!!!
「せぇぇかぁぁいいぃじゅぅぅぅ~」
シュルビクッ!
地の淵から這い出る様な……いや、この場合は
「あんたぁぁ……今日という今日は許さないわよぉぉぉぉ……!!」
シュバッ!
【(੭ ᐕ))はにゃ?】
…このツル、煽りやがるっ!?
「こっっの!!! 除草剤に浸けてやるぅぅぅぅ!!!」
「おわぁぁぁ!?」
───
──
─
「……そういや最近下着を贈ったんだな、じゃあ駄目か」
草パンをリリが履いてくれているという願望も混じってカオスになってしまった感がある。今度確かめてみよう。
しかし残る候補者といえば……
「オリビア……は、毛を刈っている絡みでパンツ履かないし……」
羊娘メイドのオリビアは、羊らしく定期的に俺が“毛”を刈って主従をわからせている。
時たま謀反を企む……とは言わないまでも、高位の魔法使いなのでレベルが高く、言うことを聞かない(ご奉仕に遠慮が無くなる)のだ。
なので却下。
「……あとは、リントちゃん? でも下着を贈る程近しい間柄とは呼べないし、最悪絶縁されるかも……」
乳魔族の少女リントちゃんは、よく拠点に遊びに来てくれるが、このセクハラ成分五割強のアイテムはプレゼントするのを躊躇われる。
ともかく却下。
「残りはウルヴァ?」
最後の頼みの悪魔っ子娘ウルヴァ。
彼女は……うむ……。
「……こんなの履かせたら完全に犯罪だろ。絶対ダメ! 却下──!」
当人は意味も分からず履いてくれそうだけど、子供にコレを履かせるのは100%アウトなので即却下。寝巻姿のまま履き替えてどや顔で報告してくれそうだが、それはいかん。…くっ!煩悩よっ!サレッ!!!
えっ?……悪魔モードの時はぷにぺらの前張りだけだ?あれは……ねぇ? 例外というやつだ。
「むむむ……む~~ん」
結局決まらずただただ唸る俺。
「──旦那様~? そろそろ仰っていた時間ですわよ~?」
「……おおっ! もう、そんな時間か!」
そんな時、下の階から俺を呼ぶフィオナの声が。
どうやら人類の叡智を眺めながら思考を羽ばたかせている間にそこそこの時間が流れていたらしい。
時計を見ればもう既に予定時刻をオーバーしそうだった。
「しまった! もっと早く済ませて出かける用意をする予定が……」
慌ただしくアイテム達を片付け、出掛ける用意をする。
今日はマリアさんのいる教会の屋根修理をせにゃならんのだ。
「これは後にして……とっとと行くか!」
そうして俺は、急いで教会へと向かった。