※この作品はR-18です。

高級娼館のシスター   作:Scorcher

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(久しぶりなので)初投稿です。時系列は最終回の翌朝。当面の間はマキの妹である未希の視点から物語が進行します。

妹の詳細に関しては『陸上部のアイドル』に目を通していただければと思います。今更宣伝するような作品でもないんですけどね。

冒頭は夢オチから始まります。不謹慎極まりない内容ですが、エロなし導入なのでご容赦頂ければと思う次第です。


第17話 -姉妹-

薄暗く狭い部屋。彼女は顔に白い布が被さり、ベッドの上に横たわる骸と対面する。

 

「ご確認をお願いします。」

「……はい。」

 

彼女の返事を聞いた医師は顔に被さっていた布を取る。そこにはいつものように見ていた実の姉、真希の眠るような顔があった。

 

「おねえ……ちゃん。」

「あなたのお姉さんで、間違いありませんね。」

「はい……私の姉、坂下真希です。」

 

医師の問いかけに淡々と答える彼女。その最中も彼女は死に顔から目を離そうとはしなかった。

 

「きれいな顔……していますね。死んでいるなんて……ウソみたい。」

「確かに……安らかな顔で息を引き取っていました。まるで、この世で誰よりも幸せになったかのような満たされた顔で。」

「こんなに幸せそうな顔……見るのは久しぶりかも。」

 

自ら命を絶った人間とは思えない、安息に満ちた顔で長き眠りについている姉に、彼女は空しさを感じる。しかし、それと同時にこの状況を不可解に思うようになる。

 

「どうして……私が最初にここへ来たんだろう。」

「えっ……?」

「いえ……普通、こういうのって両親が先に来るか、一緒に来たりする気がするんですけど。」

「あっ……いえ、それは……」

「私、お父さんもお母さんもいるんですけど。どうして私だけが……ここに……というか、なんでお姉ちゃんが死んでいるのか理解出来ないんですけどっ……!」

 

1つの疑問が浮かび始めると、彼女の中にはあらゆる事柄が多くの疑問として生まれ始める。そして彼女は、薄暗く静かな部屋の中で声を荒げ始める。

 

「ぜんっぜん意味が分かんないっ!なに勝手に死んでんのっ!?死ぬんだったら私に一言いってから死んでよ!ああもう……バカっ!お姉ちゃんバーカ!バーカバーカっ!」

「ちょ、ちょっと……言い過ぎですから……」

「いいんですよっ!私より頭が良くて綺麗なくせに、さっさと死んじゃう姉なんてバカでしかなんだからっ!バーカ、バーカバーカっ!」

 

子供のように物言わぬ姉に対して、彼女は罵声を浴びせ続けるのであった。

 

 

 

◇

 

 

 

「うーん……ばーか、おねえちゃんの……バカ、バカ……んにゃ……んっ、んんっ……?」

 

奇妙な夢から目覚め、自らの寝言によってまどろみから解放される。そして重い瞼を開けて意識を取り戻すと、彼女はおもむろにベッドの上で上体を起き上がらせる。

 

「んっ……んん……!あれ……夢?夢……だったんだよね。」

 

周囲を見渡し、自らの部屋であることを確認する。そして、先程まで見ていた光景が全て夢であったことを理解する。

 

「はぁ……よかった。でも……夢にしては生々しかったような、馬鹿馬鹿しかったような……」

 

僅かな不安と呆れを残しながら彼女、坂下未希はベッドから降りて身体を伸ばす。

 

「んっ、うーん……ふぅ。最近……あまりシていないからかな?だからって、あんなヘンな夢を見なくたって……」

 

夢の内容に対して不満を口にしつつ、未希は部屋を後にするのであった。

 

 

◇

 

 

「んぐっ……んんっ……ふぅ。んっ……んっ……ぷはぁ……」

 

休日の朝。リビングで1人、トーストを頬張りながら牛乳を飲み干していく未希。

 

「ふぅ……。お姉ちゃん、今日も朝帰りかな。いくら休みだからって、やっぱり心配にはなっちゃうんだよね。」

 

夢に出てきた姉の姿も家には見当たらず、彼女はいつものことである思うようにしていた。しかし、今朝の夢が脳裏に過ると、些か不安は膨らむのであった。

 

「本当に夢だったんだよね……まさか、本当は夢なんかじゃなくて……本当にお姉ちゃんは……!」

 

何が事実で、何が虚構であるかを疑い始め、彼女の心は張り裂けそうになるまでの不安に襲われようとする。

 

「やだよ……お姉ちゃん。本当に死んじゃうなんて……私、お姉ちゃんのためだったらなんでも……」

 

自らの感情を押し殺そうする未希。そう苦悶している矢先、玄関のほうでドアの鍵が開けられる音がする。

 

「……!?」

 

勢いよく椅子から立ち上がり、彼女は急ぎ玄関へと向かう。そこにいるのが、かけがえのない姉であると信じて。

 

「お姉ちゃん!」

「……何よ、朝からうるさいわよ。」

「よ、よかった……生きてる……!」

「どうしたの?そんなに慌てて。私の朝帰りなんて、珍しくはないはずよ。」

 

狼狽える様子の未希に対して、姉は怪訝な顔を浮かべて言葉を返す。

 

「う、ううん……なんでもないよ。ただ、ちょっといつもより心配なっただけ……って、あれ……お姉ちゃん、それ……」

 

落ち着きを取り戻した未希が姉の顔を改めて見ると、そこには彼女が普段から目にしている姉とは異なる姿が映る。

 

「髪の毛……どうしちゃったの?」

「っ……!」

 

長かった髪をショートヘアである未希と同じくらい短さに切っていた姉。妹に指摘をされたことで、彼女は僅かに焦りの色を見せる。それを見逃すことがなかった未希は、改めて彼女に言葉を投げかける。

 

「なにか……あったの?どうしてそんな、急に髪を切っちゃうなんて……一体、何が……」

「……なんでもないわよ。私なら……大丈夫。あなたが心配する必要はないわ。」

 

怪訝な表情で問い質す未希に対して、彼女は半ば突き放すように言葉を返す。その反応は未希の疑念をさらに煽り立て、声を荒げて言葉をぶつける。

 

「そんなの……無理に決まってるでしょ!?心配するなって言われて、心配しないなんて……出来るわけがないよ……!」

「………」

 

未希の言葉に姉は言葉を返すことが出来ずにいる。自らのことを気に掛ける妹の心を蔑ろにするほど、彼女は未希を突き放すことは出来ないようであった。

 

「ねぇ、お姉ちゃん……一体何があったの?もしかして、お姉ちゃんのお仕事に関係していたりするの?私……よく分からないけど、お姉ちゃんの力になってあげたい。私に出来ることがあれば何でも言ってよ。相談でも何でもいい……出来ることがあるんだったら、私は何でもするから……」

「……っ!!!!」

 

しかし、未希が放ち続ける言葉は姉の琴線に触れ、沈黙を続けていた彼女の口を開かせてしまう。

 

「あなたに……あなたなんかに何が分かるのよっ!!!」

「っ……!お、お姉ちゃん……?」

 

大人しい性格である姉の怒気を含んだ声に未希は恐れ、困惑する。言葉を詰まらせる未希に向かって、彼女はさらに声を荒げて感情を露にする。

 

「なによ……人の気持ちも知らずに勝手なことを言って……普通に男の子と接することが出来て、普通の恋愛をしているあなたなんかに……私の何が分かるっていうのよっ!!!!!!」

「なっ……!」

 

自らが異性と交際している事実を、面と向かって姉に言及されたことに未希は驚き、彼女の言葉に黙って耳を傾ける。付き合っているという事実を知られていたことは承知していたが、このような形で突き付けられることには衝撃を受けていた。

 

「あなたみたいな子に、私の事なんて理解されたくない……!私みたいな女ことなんて……あなたは絶対に知っちゃいけないんだから……!」

「ち、違うよ……私はそんな……」

 

悲痛な面持ちで自らを嘲り、妹を突き放そうとする姉。そして彼女は未希の言葉を遮るようにして続ける。

 

「未希、あなたはもっと……自分を大切にしてね。好きな人のことも大切していれば……きっと、大丈夫だから。」

「………」

 

柔らかく薄い笑みを浮かべて未希にそう伝えると、姉は廊下を歩いて階段を上り、自らの部屋と向かっていく。未希はその背中を追うことが出来ず、しばらくの間そこに立ち尽くしていた。

 

「本当に……違うんだよ。」

 

1人玄関に残された未希は、姉に投げかけられた言葉を否定する。そして、つぶやくように彼女に対して自らの秘密を口にする。

 

「お姉ちゃんが普通じゃないんだったら……きっと、私だって……普通なんかじゃないんだよ。」

 

互いが取り繕い、保たれていたはずだった姉妹の関係。しかし、それがこの時から音を立てて崩れ始め、彼女を未知の世界へと引き込み始めるのであった。

 

 

◇

 

 

「……私、何をしているんだろう。」

 

自室に閉じこもり、ベッドに横たわって天井を見上げる彼女。気遣いをしてくれた妹に声を荒げ、一方的な言葉で突き放したことに後悔の念が生まれる。

 

「お店にも迷惑を掛けて……あの子にも心配をさせて。それなのに……私って……本当……バカ。」

 

自らを蔑み、虚無感に襲われる。持っていたもの、求めていたもの、そして自らの心。それら全てを壊し、捨てた今の彼女には何もないのであった。

 

「やっぱり……生きている意味なんてないのかな。」

 

生きる意味すらも見失い、踏み止まったはずの「死」を再び考えるようになる。選び取った未来に待ち受けていたのは、絶望さえも感じることのない孤独であった。

 

「もう一度……探しに行きましょう。私の……居場所を……」

 

日が沈み、自らが女として生きていた時間。彼女、坂下真希は誰に告げることもなく、家を出て、夜の街へと消えていった。

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