「……うぅ」
いつの間にか眠っていたようだ。いや、あまりの快感に気を失っていたのかもしれない。蟲惑魔の少女、セラとの性交は普通に生きてきただけの平凡な男には衝撃的に過ぎた。
「あ、お兄ちゃん、起きた?」
裸の胸元に顔を擦り付けていたセラは、俺の覚醒に気付くとこちらに目を向ける。数瞬前まではこたつで丸くなる猫のような、安心しきった表情だったのだが。その目が、再び情欲の火を灯した。
「それじゃ、続きしよー♡今度はどんなのがいいかな。お兄ちゃんがセラにしたいこと、なんでもしていいんだから♡」
裸の俺の腹を人差し指でねっとりとなぶり、ふざけた調子で誘うセラ。既に拘束は解けている。逃げようと思えば、いや無理か。それなりの大きさの湿地帯は、恐らくまるごとセラの体内のようなものだ。
物理的に絶対無理だし、この世ならざる魔性の快楽を強制的に覚えさせられた俺の体は、すっかり蟲惑魔の罠にハマり、抜け出せそうにない。快感への期待と、腹上死への恐怖で何も言えずにいる俺に、セラは再び恐るべき搾精の愛宴をはじめようと馬乗りになった。
「はい、そこまで」
「あーっ!? まだ! まだセラ全然満足してないのにーっ!」
後ろから伸びてきた手にひょいと首根っこをつまみ上げられ、セラは宙吊りにされていた。真紅の長髪を揺らす、セラと比べると背の高い、黒いローブのようなあちこち隙だらけの服を身にまとった少女。とんでもないミニのスカートから覗く白い太ももが眩しい。彼女はそう、アロメルスの蟲惑魔。ランク4エクシーズの上級蟲惑魔だ。
「あんたの番はここまで。というかやり過ぎ。お兄さんが干からびちゃうとこだったじゃない」
「お兄ちゃん絶倫だからだいじょぶだもん! ねっお兄ちゃん!」
「……あー、いや、それは」
いかに色ボケた寝起きの頭でも、流石に頷くことはできなかった。あの調子で続けられたらほんとに干からびるかもしれない。
「それでは、アロメルス、セラの隔離をよろしく」
「はーい。お兄さん、また後でね♡」
「うわぁーん! お兄ちゃぁーん……!」
アロメルスに抱えこまれたセラが泣きながら遠ざかっていく。パチャパチャと水を蹴る裸足の足に触手がまとわりつき、セラの本体の捕虫葉が伸ばされアロメルスを足止めしようとしたようだが、意にも介さず蹴っ飛ばされてさっさとどこかに行ってしまった。周囲に立ち並ぶ腺毛たちも心なしかしんなりと元気がない。止めるなり何なりすべきだっただろうか……。
「そのうちまた相手をしてあげてくださればいいのです。あの子は加減を知りませんから、お兄様が元気な時に」
いつの間にか、アロメルスと共に俺のそばにやってきていた少女、フレシアが言う。アロメルスと同じく上級蟲惑魔。桃色の長い髪に大きなラフレシアの髪飾り、布を巻いただけのような下半身が、横たわる俺のすぐ真上までやってくる。
みえそうでみえない魅惑の腰部に、おもわず股間のモノが立ち上がる。あれだけやったにも関わらずまだ元気なのか。我が事ながら呆れるが、この匂い立つような色気が相手では仕方ないとも思う。
「あら……♡」
俺の裸体を見てフレシアは頬を赤くする。千切れた服の残骸がまとわりついているが、大半はどこかに行ってしまい、とても体を隠せるような状態ではない。当然大きくなったペニスも少女の視線の先に丸出しだ。しかしフレシアは嫌がるどころか、艶めいた吐息を漏らすのだから、羞恥と興奮で体がこわばる。
「ふふ、せっかくですから、わたくしがお相手を、と言いたいところですが、まずは食事にいたしましょう。お兄様には休息が必要ですから」
「あぁ、そういえばしばらく何も食べてないな」
最後に食事を取ってからそれなりに時間が経っているはずだが、言われて初めて空腹に気づく。たしかに飲まず食わずでやりっぱなしではほんとに死ぬだろう。いや、セラの体液は大量に取り入れさせられていたが。
「ひとまずこちらを」
フレシアは薄手の黒いアームカバーに包まれた腕を差し出し、俺を助け起こすと、逆の手に抱えていた衣服を甲斐甲斐しく俺に着せた。普通のTシャツ、トランクスにスラックスのようなズボン。一般的なものに見えたがやたらと肌触りがよく、ワンポイントに小さなクモの模様がついている。蟲惑魔ブランド……?
「ええと、ありがとうフレシア」
「いいえ。当然のことです、お兄様」
「君も兄呼びなのか……」
困惑する俺にフレシアは笑いかける。
「ご主人さまとか、あるいはブタさんとかでも構いませんよ? お兄様のお好みに合わせますわ」
「普通に呼んでくれ頼むから」
これ以上妙な性癖を植え付けられても困る。クスクス笑う彼女が本気なのか冗談なのかわからないけれど、女王様の素質は十二分に備えているように思われた。精々10代半ばから後半くらいの見た目なのだが、なんというか、雰囲気があるのだ。
「ではやはりお兄様と。セラが兄のように呼び始めたのが、他の子にも伝わって、今ではわたくしまですっかり慣れてしまいましたの。でも、こんなところで立ち話もなんですわ。こちらへどうぞ」
「……これは、深黒の落とし穴?」
フレシアに手を引かれてやってきた湿地の隅に、ぽっかりと黒い落とし穴が開いていた。採用は見送るレベルだが見覚えがあるような気のする落とし穴。だまし絵のような宇宙的暗黒が距離感を狂わせ、穴であるはずなのに底は全く見えない。俺がレベル5以上だとは思わないが、底が見えないような深い穴に落ちたら普通に死ぬのでは……?
「移動用の安全なものですわ。滑り台のようになっていますから」
「お、おう……」
普通に怖気づく俺に、楚々とした微笑みを湿ったものに変えたフレシアが身を寄せる。
「では、ご心配の無いように、わたくしがお兄様を抱きしめて行きましょうか」
「や、そ、それはいい」
身体を擦り付けるフレシアから発せられる、頭がぶっ飛びそうになるくらいの濃く甘ったるい雌の香り。からかわれているのかなんなのか。童貞……ではなくなったが、女の子の扱いなんてさっぱりわからない俺に、怪しく笑う少女の本心を見通すことなど不可能だ。覚悟を決めて、逃げるように俺は穴に飛び込んだ。
▽▽▽
スポン、と出口から飛び出し、草むらに尻もちをついた俺が目にしたのは、大きなログハウス風の建物。ジャングルのような森の中の突然開けた広場にでんと建っていた。草を払って立ち上がると、脇に取り付けられた煙突から煙が上り、食欲をそそる香ばしい匂いが漂ってくるのに気付く。誰かが食事の準備をしているのだろうか。
「さぁ、中へどうぞ」
俺の後に穴から飛び出し、何事もないようにひょいと着地したフレシアに先導されて建物の中に入る。中はシンプルな作りで、大きな部屋に大きな木のテーブル、十数個の椅子、奥にはキッチンらしき部屋が見えており、炊事の音が漏れていた。
「わたくしたちの集会場のような場所ですわ。皆思い思いに気に入った場所で過ごしていることがほとんどですから、あまり使うことはないのですが」
これからは定期的に皆で食事を取ったりしてもいいかもしれませんね、とフレシアは微笑んだ。
「それでは食事の支度を待つ間、お兄様にわたくしたちの事を知っていただきましょう。とはいえ何から話したものかしら……」
顎に指をあてしばし黙考する少女。女優のようなわざとらしい仕草だが、不思議と彼女には違和感がなかった。裸同然、とまでは言わないが、露出の激しい衣装のわりに気品があると言えばいいのか。上半身は黒いビキニ水着、というかブラジャーに花飾りをあしらったものをつけただけで肩丸出しだし、下は包帯のような布を巻き、スカートとして全く機能していないスカスカのラフレシアデザイン腰巻きだけ。ちらちらと鼠径部が見え、穿いているのかいないのか。
「正直、ここはどこだとか、君らはなんなんだとか。色々あったんだけどなんか吹っ飛んじゃったな」
「セラとのエッチは気持ちよかったですか♡」
嫣然と笑い、しなだれかかるフレシアに、少し落ち着いていた股間がまた熱くなり、ごくりと唾を飲み込む。しかし。
「その、それだ。君たちはなんで俺のことをそんなに……」
初対面からやたらと好感度が高いのが意味不明なのだ。いや、なんとなく心でつながっているというか、そんなそれこそ意味不明な感覚はあるのだが、それは全く理性で納得し難いもので。今なら女の子にアピールされて引いてしまう優柔不断ラノベ主人公の気持ちがわかるというもの。もう一人とやってしまったが。
「わたくしたちがなぜこれほどお兄様を愛しているか、ですか?」
あ、愛……? うろたえる俺に全く動揺を見せずフレシアは答える。彼女にとっては、当たり前のことなのだというように。
「わたくしたちはデュエルモンスターズのカードの精霊。お兄様のカードの精霊です。ずっとすぐ側であなたを見ていましたし、あなたがわたくしたちを愛してくれていたことも知っています。精霊使いの決闘者の決闘は、たとえ遊びといえども、その心を映す鏡。あなたと共に勝利を喜び、あなたと共に敗北を口惜しく思い、あなたと共に、生きてきたのです、わたくしたちは」
「俺は別にそんな、すごいデュエリストってわけじゃ……」
紙のデュエルをそこまでやり込んでいたわけじゃないし、あんまり勝てなかった。アニメキャラみたいな熱いデュエルができることなんて何十回か、あるいは百回やって一度あるかなくらい。へぼデュエリスト、凡骨扱いすら温いレベルだというのが客観的な評価だろう。長いこと蟲惑魔デッキだけ握り続けてたのは確かだが。
「強さは別に問題ではないのです」
「そう、そういうのは別にどうでもいい。クーはお兄ちゃんのことが好き。お兄ちゃんもクーが好き。大事なのはそれだけ」
いつの間にかフレシアの反対側に椅子を寄せくっついてきたのは、白いふわふわの長髪にウサギの耳、クラリアの蟲惑魔だ。ぎゅっと押し付けられた双丘は、幼い顔立ちに反してかなり大きく、俺の腕をゆったりと挟み込む。フレシアはそれを見て頬を引きつらせている。大人な雰囲気のわりに意外と小さいので気にしているのだろうか。
「クラリア。まずはわたくしがお話すると約束したでしょう」
「フレちゃんはお話するだけって言ったのにお兄ちゃんにこんなにくっついてる。ずるい。クーもくっつく」
「そ、それは……」
「「「「そうだそうだ! ずるいよー!!!」」」」
窓の外や扉の隙間から覗いていたらしい少女たちがわらわらと入り込み、あっという間に俺は女の子団子に包み込まれることとなった。ランカ、カズーラ、アトラ、ジーナ……他にも他にも、蟲惑魔全員集合といった様相だ。どの子も見覚えのある蟲惑魔の少女たち。積極的に揉みくちゃにしてくるものもいれば、やや遠巻きにして頬や足の裏をつついてくるような子もいる。
「あぁもう、こうなるのがわかっていたから、まずはわたくしだけでと言ったのに」
「あんたが真面目に事務的にやっとけばよかったんだよフレシア」
「アロメルス! そんなの無理に決まってるじゃないですか! お兄様を目の前にして!」
「……もうちょっとクールだと思ってたんだけどね」
「アロ姉ちゃん離して! セラも混ざる!」
「お兄さんが潰れちゃうから、やめなさい」
後からセラを抱きかかえたアロメルスも入ってきたらしい。もうすでに椅子から押し倒されて床で潰されているので何も見えないが。というか股間のモノをぎゅうぎゅう掴んだり耳穴をなめているのは誰だ。
「はーい、ご飯できたよ~って、エラいことになってるね……」
暴徒の中に見当たらなかったトリオンは食事の用意をしていたらしい。香辛料の効いたいい香りとともにほこほこと湯気を立てる、一抱えもあるような大鍋を持ってキッチンの方からやってきた。
「ほら、大人しく席につかない人はごはん抜きだよー」
「「「「「「はーい」」」」」」
鶴の一声で大人しくなった少女たちから解放された俺はようやく落ち着いて食事を摂ることができた……。
▽▽▽
「すげえ美味しかった」
「えへへ、良かったー。料理はボクが作ることが多いんだけど、口にあったなら嬉しいな」
白いショートヘアを揺らしてコロコロとトリオンは笑った。ボーイッシュな印象だがずいぶん家庭的なようだ。
「姑息なポイント稼ぎを……。わたしも料理覚えようかしら」
「はいはい。その前に自分の身の回りのことは自分でできるようになろうねー」
そんなトリオンをじっとりと見つめるティオに、ティオの口元についた汚れを拭うジーナ。こうして見ていると普通の女の子にしか見えないな。いやちょっと普通の露出じゃないけど。へそ出しがほぼデフォだし、肩や太もももほぼ全員丸出しだし。
「さて、お兄様もこれで力を回復することができたでしょう」
「へ? ああ、確かになんか元気になった気がするけど」
メシ食って即回復ってまるでゲームのようだが、まあ異世界? ならそんなこともあるのだろうか。
「精霊と交わることは、いかに強大な魂の力を持つお兄様といえど消耗します。しかしこの精霊世界の食事をとり、水や空気に馴染めば、いずれほとんど負担はなくなるでしょう」
「……もしかしてなんかヤバいもの食べさせられたのか?」
めちゃめちゃ美味しかったが、クスリでも入ってたのだろうか。いや遊戯王だしクッキング流……? というか蟲惑魔の食事ってもしや虫とか? 今更ながらに恐ろしくなる。美味かったとは言え食べ慣れない感じがしたのだ。
「いや、ふつーに羊肉だよ。お兄さんにそんな変なもの食べさせるわけないじゃん」
トリオンの否定にちょっと安心。
「スケープゴートのお肉ですけどね」
「虫とかハングリーバーガーよりはだいぶマシだが、普通か?」
「わたくしたちにとっては普通ですが、お兄様にとって普通ではありません。こうしたものを食べ、長くこちらで過ごせば、お兄様は現実世界に帰ることはできなくなります。いまならまだ、帰ろうと思えば帰れますが」
ヨモツヘグイ的な羊トークンだったらしい。いざ帰れない、と言われるとなかなかショッキングだ。現世に未練があるかと言えば、あんまりない。しんどいばかりで楽しいこともなくなっていたし、こんなに可愛い女の子に囲まれるなんて、それも大好きだった蟲惑魔に、そんなことは現実ではありえない。
だが地元に両親は健在だし、挨拶もなしに失踪は心配かけるのは間違いない。あとここネット環境なさそうなのがキツイ。
「ネットは繋がってるよー、電網の落とし穴でさ」
金、というか黄緑というかオレンジというか、複雑で華やかなグラデーションの長髪、お嬢様のようなワンピース、の前を大半開いてへそ出しルックのカズーラが、ほら、と手に持ったスマホをフリフリアピール。花と蝶のデコケースは自分イメージなのだろうか。
「大体、ソシャゲでヒマつぶしてる……」
机にもたれながらじっとりと半目で見つめる、ゆるく三つ編みにした黒髪を垂らしたティオも、気だるげにスマホを取り出す。こちらはシンプルなデザインのケース。彼女はどうもダウナーな感じ、と思っていたがもしかしてソシャゲで寝不足なのか?
「ご両親に連絡も、まあ電網の落とし穴経由でできるし、人間が行き来するのは大変だけどそれ以外はさほどでもないわね。きちんとするなら遺言状のカードでも使えばいいわ」
渦巻くような長い銀髪のツインテールをいじりながら言うリセの言葉で、問題がさっぱりなくなってしまった。揉みくちゃにも参加せず、興味なさげにしていたがやたらとこちらをちらちら見ていた子だ。
「お兄さんがずーっとここにいてくれたらあたしたちすっごく嬉しいんだけどなー」
「いっぱいサービスするしねー。こんなチャンスは今だけだぜー?」
セクシーポーズでアピールするアトラとランカ。常人であれば、子供のおふざけと微笑ましさを感じるくらいのものであろうが、セラの幼い体を知ってしまった今の俺には軽く流すことなど不可能だった。
少女らしい細い体に眩しいほどに白い肌を見せつけるアトラと、ピンク髪の幼い雰囲気のわりに大きな胸を腕で寄せあげてアピールするランカ。二人とも声の調子は軽いものの、こちらをじっと見つめる瞳は艶めいており、求めれば間違いなくこの場で押し倒してくるだろう。
息を呑むこちらを、いくつもの視線が貫く。愛しい恋人を見るような、性交直前の伴侶を見るような、あるいは罠に落ちた獲物の愚かを愛おしむような。こうなることは運命だったのだろうか。俺が引き当てた、もはや後戻りのできない手札。
「俺もみんなのこと好きだから。ここに居ていいなら、ずっと居たい」
言ってしまった。本心ではあるものの、やらかした感が酷い。でも帰る理由も留まらない理由もないのだから仕方ない。期待に満ちた無言の空気に応えた結果、当然のように爆発した。
「「「「「「やったー!」」」」」」
再び椅子ごと押し倒され揉みくちゃにされる。頭を打たないように支えてくれたのはリセだろうか。雰囲気はどうにもキツそうな感じだったが、なんとも面倒見のいい。
いつの間にかアロメルスから解放されていたセラに、クラリア、アトラ、ランカ……少女たちが隙間なく俺の体にまとわりつく。せっかくの服がずり上げられずり下ろされ、体中をくまなく撫で回され舐め回され、何がなんだかわからない。
「それでは、あらためて。蟲惑魔の森へようこそ、お兄様」
「これまでも賑やかではあったけど。お兄さんと一緒なら、これからはもっと楽しくなりそうねー」
少女団子を少し離れたところで眺めながら、フレシアとアルメロスが妖艶に微笑んだ。
なんとなく蟲惑魔全員分のキャラ付け考えてみたりしたんですがビジュアルと元ネタの食虫植物くらいしか情報ないので難しい。そもそも全部で11人+αというシスタープリンセスの蟲惑魔状態なのでやりきれるかも不明。とりあえずマスターデュエルでよく使ってお気に入りの子たちはやりたいなあと思ってます。
あとマスターデュエル初めてまともに蟲惑魔使えるフェスはじまりましたね。いつもは大体ウィッチクラフトで芝刈りメスガキだったので嬉しい。セラちゃん殴られると終了度が普段より高いので難しいですが程々に勝てて楽しい(執筆遅延)