君の周りには何時も魅力的な女の子達がいる。
当然。わたしも彼女達に後れを取るとは思っていないけれど、新しい娘が増える度に、内心気が気でなかったのも今ならわかってくれると思う。
――何せ君ときたら、新しい精霊が増える度、格好良く、揺ぎ無く、頑固に、そして、可愛くなっていくんだから。
……勿論、褒めてるさ。
誇りに思っていい、このわたしを完全にデレさせたんだから。
そして君はわたしを選んでくれた。
運命。そう、これは間違いなく運命、そうだろう? ……君もそう言ったじゃないか。
だからわたしも、君の女として何でもしてあげたくなってしまう。
――首肯。ああ、君が言うように、わたしは意外とちょろいらしい。
「確認。耶倶矢、夢を見ましたね」
開口一番、夕弦は耶倶矢に質問ではなく確認した。
昨日とは打って変わってからりと晴れた昼下がり、約束通り耶倶矢は夕弦と昼食を取るべく移動した。場所は何度か行ったオープンカフェ。緑地が近く、隣席の声も聞こえないので、騒がしいのが嫌いな夕弦はたまに来るらしい。夕弦はパスタとコーヒーのセットを注文した。……ふむ、カッペリーニか、イタリア語も悪くないけど、もうちょっととがった名前だと恰好良いのに。
耶倶矢はと言うと今しがた注文したアイステーのみ。八舞は二度の飯…という訳ではなく単に食欲がわかない。むしろ、あの夢を毎日見て変わらない夕弦は慣れすぎだと思う。……やはり本性だろうか?
グラスの氷を突いていた耶倶矢が聞いた言葉は、話の切り出しとしては予想できたものだった。
「……何でそう思うの?」
「直感。初めて見る耶倶矢はわからないでしょうか、夕弦は昨日の夢を見ている間、他に誰かがいる感じがしました。」
「……夕弦も同じ夢、かな?」
「推定。恐らく。鎖で縛られて後少しで」「あー!! わかったから!! ……ねえ、やっぱりおかしいよ、二人して同じ夢をみるなんて。話しにくいのはわかるけど、士道にも言って一回ラタトスクで調べてもらおうよ……私も夢の内容はごまかすからさあ……」
「同意。それが良いでしょう」
思ったよりもあっさり夕弦の同意が得られた。昨日の様子から厄介ごとを覚悟していた耶倶矢は拍子抜けしつつも安堵する。
「――ですが。その前に……質問。夢を見て耶倶矢はどう感じましたか? 教えてください」
意図的に話したくなかったことを直接質問してくる。グラスの中身を、時間をかけて吸い切った耶倶矢は言葉を選んで返すことにした。
「……どうもこうもないわよ、ろくでもない夢だったし」
「それだけ?」
「あんたの言う通り、士道と私か夕弦がいた」
「それだけ?」
「……場所も時間もわかんなかった……!」
「それだけ?」
「……っ夕弦! ……いい加減に「明白。士道に沢山触ってもらって気持ち良かったのでしょう?」
憤り立ち上がろうとする耶倶矢の両頬に、制するように夕弦の白い手が添えられる。
「な、何を……」
「再現。沢山キスしてもらって、動けないように縛ってもらって、あと少しで犯してもらえる……こうでしたっけ? どれも今の耶倶矢には手が届かないことですが」
「……何よ、もしかして自慢? 」
「否定。ただの情報のすり合わせです。他意はありません。ですが……」
夕弦が耶倶矢の瞳を覗き込むように見つめる。
「断言。耶倶矢はこのままだと壊れます」
耶倶矢は夕弦の瞳が心不安を含むものだと初めて気が付いた。昨日の雨の置き土産たるじくじくとした空気を今さら鬱陶しく感じる。
「壊れるって……大げさな……所詮夢だし、本当に……その……だ、抱かれてるわけでもないし、何よりこれから専門的に調べてくれれば……多分……」
「証人。経験が長い夕弦が一番良くわかります。あれは我慢したり、無視できるものではありません。ただひたすら、情動や快楽を垂れ流し現実に影響する……できることは現実を夢にすり合わせることだけです」
「……」
「予感。とはいえあの夢に悪意や敵意は一度も感じたことはありません。好感。感じるのはひたすら、愛情、信頼、快楽、それと……恐らく諦観……そういったものです。」
「それで……私にどうしろって? 今から適当な男でも見繕えって?」
「却下。それは論外です……予想外ですし、こうなっては他にいい手はありません。」
夕弦が一旦、コーヒーを飲む。飲む、というより言葉をひりだすための時間が欲しいように見え
た。ややあってカップから唇を話した夕弦は告げる。
「告知。今から士道に全ての話をします。勿論。検査はします。そのうえで士道に耶倶矢を抱いてもらうようお願いします」
「ちょっと待てー!!」
「是非。もしかして嫌ですか?」
「そりゃ嫌じゃないけど……ってそうじゃないし!?」
今度こそ耶倶矢は声を荒げてしまった。
理解はできる。心情的にも――全く期待していなかったと言ったら……多分、噓になる、と思う――まあ、わかる。しかし、だからと言ってそうはならんやろ、耶倶矢は脳内で独りごちる。
「そもそも、夕弦!! あんたはそれで良いの!? 他のことならともかく士道だよ!! あたしが横恋慕もみたいなマネした「質問。逆に、耶倶矢は士道を寝取れるとでも?」
夕弦の強い視線を感じる。耶倶矢が少し気圧る圧迫感すら感じる眼力。
「平気。何の問題もありません。他でもない耶倶矢のことです。何より――」
夕弦が微笑む。湿度が高い空気が、殊更重く、鼻と皮膚にまとわりつく。
氷のみのグラスを空になるまで吸う。水しか口に入らなかったが、味はわかっていなかった。
「夕弦も士道も、耶倶矢のことが大好きなのですから」
「調整。喜んで夕弦と同じようにしてあげますよ」
その言葉は耶倶矢の脳内にいつまでも響き、それ以上どんな否定の態度も取らさなかった。
気が付けば太陽に雲がかかり、木々や建物間から風が抜け少し肌寒いほど涼しくなってきた。
すごしやすくなって調度良い。
湿度を振り払うような風に吹かれながら耶倶矢はそう思うことにした。
嫌な予感やおかしな気配、危険予知が当たることは喜んで良いのだろうか。
勿論転ばぬ先の杖は必要だろうが、あたかも紛争地帯の様な、危険があるのが当たり前な状況の方が間違っているのではないか。そもそも、危険地帯に近づく方が悪いのではないか。虎児を得ることにどれだけメリットがあるのかないかなど誰にわか可愛らしるのか――
「……士道。あの、ちょと良いかな……」
現実逃避気味に脳内評定している士道に、おずおずと話しかけてくる声。浴室から出てきたのは耶倶矢だった。髪をヘアーバンドでまとめて、体にバスタオルを強く巻き付ている。風呂上りの女性特有の良い香りに、赤く上気した可愛らしくも整った顔はどんな男でもその気にさせてしまうだろう。――実際、可愛くて仕方ない。
とは言え、そういう訳にもいかない。これはあくまでやむを得ぬ処置、最終手段なのだ。
士道が、夕弦と耶倶矢から予想外のカミングアウトとそれに対する対策に驚かされて、3日。
この間、事情の(多少かいつまんだ)説明と種々の検査、それを受けての対策会議等で時間はあっという間に過ぎていった。
それで解決できれば良かっのだが、現状では何も分からないことが分かっただけで、静観するしかないとあっては自分の彼女姉妹が不安な士道としては暗い気持ちにもなる。
増して、検査が上手くいかなかった時に、耶倶矢に対する予想外の『処置』を夕弦持ち掛けられ、結局同意した士道としては、現状は割と最悪と言っても言い。
(ポジティブに考えれば、夕弦が少しおかしかった理由がやっとわかったわけだし。そもそも知らなかったら何もできなかったから最悪ではないか)
ここでようやっと自分が耶倶矢に話しかけられていた事を思い出し、慌てて返答する。
「ああ、悪い。ちょっと見惚れちゃったんだ。それで、何だ?」
「見惚れ……うん、ごほん! あ、ありがとう……ってそうじゃなくて! ……えっと、準備できたんだけど。今さら何だけど……本当にベッド使わしてもらっていいの…?」
場所は士道と夕弦のマンションを使用した。ホテルの使用の提案は、夕弦がここでの情事に慣れる必要があるとの鶴の一声で却下された。それに――
「許可。気にする必要はありません。耶倶矢が士道と夕弦の匂いを嗅げないと禁断症状を起こす性質なのはよく理解しています」
「勝手に変態扱いする様な適当な事言わないでくれるー!?」
この部屋には三人目、夕弦がいた。そしてこれこそが、士道が(多分耶倶矢も)気が重い最大の理由だった。
「随伴。士道が耶倶矢を抱く時は、必ず夕弦も一緒に見ています」
夕弦がこの件を士道に説明する時、最後に付け加えた条件は士道と耶倶矢を驚かせた。とはいえ、士道にはその訳もよく分かった。
「当然。浮気まで許すつもりはありません。夕弦がいる前の情事は同意であって、裏切りではありません」
夕弦のある意味まともな理論の前に耶倶矢も恥ずかしそうに同意するしかなかった。
かくして、士道が耶倶矢を抱くこの場に夕弦がいる。先日と同じような薄いカットソーにルームパンツというラフないで立ちの夕弦は、寝室の端に椅子を置き、座っている。
「不在。夕弦のことは終わるまでいないものとして扱ってください」
そう言うと夕弦はヘッドホンを装着し、スマホをいじりだした。見ないふりはしてくれるらしい。
ここまでくれば是非もなし。士道は借りてきた猫の様になっている耶倶矢の手を取り、ベッドまで誘導した。
「それじゃあ、始めるけど。耶倶矢、痛かったり怖くなったらすぐ言うんだぞ」
「子供じゃないんだからそんなん言わないし! ……士道、でも、あの……私初めてだから優しくしてくれると……その……助かるかなって……」
「わかってる。お前の初めて、大事にするよ」
「……うん、ありがとう。ねえ、士道……私のこと好き?」
「……好きでもない奴をこんな状況で抱けないよ」
「ならさ……今は夕弦に言うみたいに好きって言ってキスして」
顔を伏せる。酷く心が痛む。結局の所、自分のことが好きな女に上手いこといってセックスしようとしているだけではないか。自分にあれだけ尽くす誓った女がいるのに。
投げ出したい、今すぐにでもチャラにすべきだ。
そこまで考えて再び顔を上げて耶倶矢の顔をみる。
――そんなことは耶倶矢も、夕弦も分かっているのだ。
分かっていて自分達の関係に別の線を加えようとしている、夢は多分きっかけでしかない。
(問題は動機だけど……今考えてもしょうがないか……殊更冷静に対処していこう)
腹をくくりなおした士道は耶倶矢を抱きしめると、好意を吐露し、口付けた。
(初めてだっていうけどものすごい敏感だな……体触っただけですごい反応だ。夕弦でもここまでじゃない)
最も、経験人数今回で二人目な士道に比較できるほど知識があるわけでもない。単に耶倶矢はこうなんだろうと思うことにする。勿論嫌な反応ではない。
顔、胸、お腹、太もも、上から順に愛撫し、キスする。
その度に耶倶矢は激しく振動し、嬌声を上げる。
士道としては自分が誘導できている様でまずは一安心と言ったところか。
「や、やぁ……士道、切ないよ……」
「耶倶矢の反応があんまりかわいかったんでな。つい」
「そ、そう、かわいいんだ、私……」
そういうとこやぞ、とそのまま一気に行ってしまいそうな衝動を抑える。素でやってるのは強い。
ごまかす様に耶倶矢の股間に手を伸ばす。予想通り、あそこは濡れ切っている。このまま挿入でも良さそうだが念には念を入れておくべきだろう。
「……何でそんなに落ち着いてるのさ……何時から士道そんな手慣れ、あん、い、いきなり」
「耶倶矢のここ、すごいエッチになってる。やらしーな」
「やだ、そんなの言わない、くむぅ……!」
長い時間をかけて、あそこをいじりながら、不意打ちでキスをする。舌を絡めると、耶倶矢の方もやや必死気味に士道の口内をなめ始めた。
気のせいかジト目で見られている気がする。焦らしすぎだろうか?
(……思ったより大丈夫そうだな。流石にきついけど、十分濡れてるから指二本でも問題なさそうだし)
そろそろ、ゴムの準備をと考えていると、それまでキスしていた耶倶矢はいきなり士道の首に抱き着き、そのまま士道を押し倒した。
「かぐ、んんん!?」
「んんんっ、んちゅぅ……れぇろ……んぅんむ……ん……ぅふ……ぢゅる、ぢゅぷ……」
突然のことに驚いた士道がなすがままの間に、耶倶矢は全身を士道に押し付け、深く口付けあい、自分の股間を士道の固くなったものを当てると、擦り付け始めた。
後ろで椅子が音を立てて動くのが分かったが、今の士道にそちらを気にする余裕はなかった。
「ぷはっ……ねえ士道……」
酷く長い時間が経ったように感じる。頭の中が、血の代わりに熱湯を注がれたようだ。呼吸はできたはずなのに酸欠の様に感じる。
…焦らされたのは自分の方だ、と自覚し、心臓が早鐘を打つ。
耶倶矢が士道を見つめる。
何時もの活発な、素直な耶倶矢ではない何かがいた。
「私今、すっごいドキドキしてるんだ……体中が熱いんだ……もう、頭の中、士道に犯されることしか考えてないんだ……おかしいよね、初めてなのに。でも、私、ずっとずっと士道のこと好きだったんだよ……だからさ」
耶倶矢が絡めていた腕を外し、股間を自分の指で広げながら宣言、あるいは懇願する。
「落ち着いてないで、士道ももっと熱くなって! 私の初めて、滅茶苦茶にして、好きなだけ犯して!」
ゴムを付ける冷静さはあった――それしかなかった。
「ああ、嘘……本当に、今、私士道とセックスしてる……♡」
ゴムを付けたときは一瞬不満げな顔を浮かべた耶倶矢だが、挿入した時の反応は士道にとっても予想以上のものだった。
膣がきつい――単に処女だから、という感覚ではなく、士道自身が酷く興奮していた。耶倶矢の喘ぐ声、濡れる肌、抱き着いてくる感覚全てが士道を攻め立てる。何より――
「ああ、士道……♡処女の女を遠慮なく犯す感じはどう……♡もっと遠慮なく動いて良いよ♡うぐっ跡になっても、傷ができても良いから♡」
「耶倶矢、お前……」
「あん♡私士道以外犯されるつもりないから、士道専用のまんこ、都合の良い女のまんこ、滅茶苦茶にして……! 」
「……耶倶矢……」
「あふぅ! き、きつぃ……♡ね、ねぇ私とどっちのまんこが気持ちいいの……♡」
「……耶倶矢、お前、ちょっと黙れよ……」
「あは、怒った? あうっ♡怒っても、んんぅ♡エッチは止めないんだ……♡、ひぐっ♡クリが……♡はうっ♡」
耶倶矢の挑発が脳を焼く。
この女を犯したい。
屈服させたい。
意識がそれだけに向けられる。
視界の端に立ち上がった夕弦が移ったがその顔を伺うことはできなかった。
そして
「興奮♡っ士道、士道♡ああ来る♡私もうすぐいきそう♡初めてなのに♡士道のチンポでいくぅ!」
「耶倶矢!耶倶矢……!」
「士道! 」
士道は耶倶矢の中で達した。ゴム越しに耶倶矢が達して震えるのを感じ酷く安堵した。今まで人生の中でも最高クラスの射精感。これを膣で出せていたら――
自分が危ない考えをしていることに気が付く。そして夕弦のこともようやっと。
慌てて振り返ろうとする士道の頬に柔らかい掌が当たる。耶倶矢だ。上気した頬に汗が玉の様に浮かび、潤んだ瞳はただひたすら蠱惑的だった。
「士道……」
耶倶矢の顔がゆっくり近づいてくる。そのまま正面からまっすぐせまり――
「次は膣に出して良いよ」
――それた先の耳元で囁く耶倶矢の顔は多分嗤っていた。
直後、士道は後ろから抱き着かれる。汗ばんだカットソーの感覚、夕弦だ。
突然の抱擁に驚いた士道は、さらに追加の情報に頭が真っ白になる。
夕弦が泣いている。自分への謝罪を口にしながら。
付き合い始めてから一度も見たことが無い光景への衝撃、自分が泣かしてしまったことへの罪悪感。
頭の中が気持ち悪いくらいグルグルする。今までの熱が全部どこかに行ってしまい、ただただ泣き止んでほしくて、夕弦の方を向き直り、頭を抱きしめる。
共犯者たる耶倶矢も、瞳から熱が消えていた。うなだれ、一言だけ「ごめん」と言い押し黙った。
嗚咽だけが聞こえる部屋、三人は何かが変わってしまったことを拒絶しようとし、そして受け入れつつあった。
――へぇ、フェラチオってこんな感じなんだ。縛られてるとやり難いなあ。
それに私が気持ち良くないし。……まあ士道の情けない顔が見えるからとんとんかな。
あっ、もう良いの、じゃあ挿入だねって、焦―らーすーなー、それに後ろから抱き着かれるとキスもしにくいし。……うわ、耳か、耳を噛むのか。油断した。
あっやっとか……うーん騎乗位か、自分で動かないといけないから疲れる…って疲れないんだった。
おー士道の顔が良く見える。……余裕ない顔してる、可愛いなあ。
……もうそろそろかな。……うん、出た出た、精液って意外と外に出てこないんだ。
うん、なーに? って掃除フェラか。良いよやったげる、その代わり終わったらちゃんとキスしてね。
勿論フェラしたそのままで……
「……成程。確かに余裕ができるわ、これ」
起床した耶倶矢は一人つぶやく。前回の夢よりは大分余裕をもってあたれた故の発言だ。
――最も股間の惨状は前回と変わらないが。
「……シャワー浴びよ……」
まだ感想していない床を、再びお湯が濡らす。数時間前---士道との初体験以来だ。
あの後、耶倶矢はそのまま服を着、二人のマンションを後にした。士道は何か言いたそうだったが、自分に抱き着いたままの夕弦がいては、引き留める等不可能だろう。
夕弦――そう、夕弦だ。
耶倶矢は浴室内の鏡に手を伸ばす。
自分の顔――夕弦と同じ顔に。
(夕弦……馬鹿なんだから。まあ、私もか……)
今なら今回の夕弦の不可解な行動も恐らくわかる。後ろめたさだ――昨日今日では無い、多分士道と付き合い始めた時から。今回の夢は彼女にとってある種の罪滅ぼし、そこまでいかなくても耶倶矢に少しはいい目に合わせてやりたいと言う親切心だろう。
そして楽観視、いや甘く見ていた。耶倶矢が士道にどういう風に振舞うかを。
(ああ見えて、結構無鉄砲だからなー夕弦。…まあ、私も士道が初めてだからって冷静な態度とってなかったら、あそこまでならなかっただろうし)
士道が自分ほど興奮していない。その事実は――夕弦もいるんだから当然だろうと理解していても――耶倶矢を思ったより傷つけ、そして気が付いたらああいう風に振舞っていた。――処女なのに。
「痛っ……」
自覚したとたん、今になって股間が痛い。体を温めすぎない方が良いだろう。
シャワーで水を一頻り浴びる。程よく冷えた体をタオルで拭き浴室から出ようとし、その前にもう一度鏡を見る。
「悪いね、夕弦」
再び手を伸ばす。今度は拳で自分の顔を軽く小突く。
「もう、私咲いちゃったんだ」
――でも大丈夫、私夕弦が大好きだから。
その言葉は口内で言いつつ、今度こそ耶倶矢は浴室から出た。
次の日、夕弦が耶倶矢から、今日会いたいとの連絡を受けた時、返事が遅れたことを誰も責められまい。正直、返事を保留しようすら――一瞬だけだが――思ったほどだ。
あれから、一晩中お互いに謝罪の言葉をかけながら抱き合い続けた夕弦と士道は、結局一睡もしていない。疲れている夕弦を気遣い、士道が日にちを遅らせる、あるいは自分も付いていくことを勧めたが、夕弦は耶倶矢の提案――先日と同じ場所、時間に一対一で――を受けた。
実際、怖い。士道の話を切り出されるのが怖い。そのことで、耶倶矢に嫌われるのが怖い。他のことは何でも大抵受け入れよう、この二つさえ回避できるなら。
正直、自分でも調子に乗っていたと思う。いくら後悔しても足らない。今となってはあの夢が憎くて仕方ない
うっとおしいくらいの晴天と真逆な心象風景の夕弦は、時間より30分以上早く喫茶店に到着する。時間が平日の11時台と言う、中途半端な時間なこともありオープン席に人影は無い――ただ一人を除いて。
「耶倶矢……」
「おはよう、夕弦……昨日はごめんね」
耶倶矢は先に来ていた――ただそれだけの、何の異常もないことに、酷く夕弦は動揺する。
耶倶矢の格好は、夕弦もあまり見たことが無い物だった。黒がメインのワンピース、それもいわゆる軍服ワンピースという、色は控えめながら目立つ服装だ。勿論普段の耶倶矢を考えれば別段おかしくはないが、この場においてどんな意味があるのか、同じ女性として夕弦はやや不思議に思う。
細身だが、スタイルも悪くない耶倶矢には、腰を締める形状は良く似合う。黒がメインなので今の時期は暑そうだが、その分、銀色の大ぶりなコンチョボタンが縦に並ぶのが良く映える。薄く化粧し、わざわざ揃えのキャスケットとショートブーツまで着こなす気合の入った様は、どう見ても今からデートにでも行く様な、耶倶矢の勝負服にしか見えない。
勝負服――誰に対する?
ぞわっとした不安に捕らわれる夕弦を見てか、耶倶矢が穏やかに話し出す。
「先に言っとくね、――私、士道のこと諦められない、ううん、元々諦めてなかったんだ、きっと」
「……耶倶矢。夕弦は「でも、夕弦と士道を争う気も無いんだ。」
予想していた、したくなかった耶倶矢の宣言に痛みを堪えながら返そうとする夕弦は、畳みかけられた言葉に押し黙る。
どういう事だろうか。昨日のような関係をずっと続けるという事だろうか。もしそうなら、例え夢の問題が続いたとしても正直難しい。夕弦がひたすら我慢する――士道がそれを受け入れて、耶倶矢がその状況を甘んじた上で。
やはりそんな光景を想像できない。どこかで誰か、あるいは全員が駄目になる。事ここに至りてなお、夕弦は二人を失いたくない自分のエゴに潰されそうになる。夕弦のそんな思考を尻目に続いた耶倶矢の提案は――
「だからさ、夕弦と士道の物に、私をして」
「……はい?」
夕弦にとって予想外の物だった。
「あん……夕弦が縛られてるのを見てから、私……この格好で縛られてるの想像してたんだ…」
「……嘆息。大した変態ですね、耶倶矢」
「あんたも同じじゃん、変態」
「肯定。夕弦は士道の奴隷です。ご主人様と同じく変態なのは宿命です」
「頬を染めながら、変態発言で惚気るの止めてくれる…!?」
耶倶矢は今二人の部屋で着衣のまま縛られていた。黒い比較的かっちりしたワンピースの上をロープが走る。多分服に傷を付けないためであろう、荒縄ではなく柔らかいロープを使っているが、服の上から縛られた耶倶矢は、胸を絞り出し後ろ手に拘束されたきつさに一種の縄酔いを感じていた。
耶倶矢の説明は、ある意味分かりやすいものだった。曰く、自分は士道が好きだ。このままだと士道と結ばれたいと思ってしまう。だから、同じくらい好きな夕弦と二人で自分を縛ってほしい。上下関係をわからせてほしい。
明らかな詭弁、誤魔化しであり、うがった見方をすればお為ごかしである。
夕弦も、昨日の夕弦が忘れられない士道も首を縦には降らなかったが
『くく、呆れたものだな我が眷属。嘗て女神や魔術師(ヘクサー)と死闘を繰り広げた我らが紐帯、斯様なことで絶たれると思うとはこの颶風の巫女も焼きが回ったものだ……されど努々忘れるなかれ我が契りの言は言霊となりて永遠(とわ)に三千世界に響かん……駄目、かな?』
上目遣いでそう言う耶倶矢の姿はあまりに可憐で。愛らしくて。何より必死で。
士道も夕弦も思わず微笑みながら肯定してしまった。
結局、最初から耶倶矢を受け入れたかっただけだ。
例え、これがズルくて汚い関係だと分かっていても。
昔みたいに三人で。
「教導。では夕弦の奴隷でもある耶倶矢に、今から最初の調教を与えます」
「う、うん。覚悟はできてるし。よろしくお願いします……」
「恥辱。まずは奴隷にふさわしい辱めを与えます」
「あの……夕弦? それ、お湯の入ったバケツとタオルに見えるんだけど……」
そう問われた夕弦は、絞った湯気の立つタオルを持ち、耶倶矢の顔を拭き始めた。
「ちょ……やめて! 化粧が落ちる!!」
「却下。調教前に化粧を付けたままというのがありますか。すっぴんの時間です」
「いっ、いやぁぁぁぁぁぁぁー!!」
「……何やってんだ二人とも……」
一人置いてけぼりの士道は呆れたように手持ち無沙汰気味につぶやいた。
「うう……士道の前で……もうお嫁にいけない……」
「嘆息。二亜みたいに言わないでください……心配しないでも耶倶矢はそのままでも十分可愛いですよ」
「……まあ、そう思っとくし……」
一頻り嘆いた耶倶矢を褒める夕弦。なんだかんだ言っても夕弦は耶倶矢に甘いと思う。
「授与。素直な耶倶矢にはこれをあげましょう」
「これって…むぐっ!? 」
「解説。夕弦がつけていたのと同じリングギャグです。それと……」
夕弦は床に紙皿を置くと、その上に何かの錠剤らしき物を置いた。
「それは何だ? 」
「避妊。ピルです」
「い、いつの間に……」
「準備。八舞たるもの、常に用心はかかさないのです」
普通に考えて既に購入していた物を出しただけだろう。ということは先日の話があった段階ですでに……
「準備がよろしいことで……」
「当然。ふふーん……さて、許可。耶倶矢、飲んでいいですよ? 膣にだされたいのでしょう?」
夕弦がにっこり笑って耶倶矢に促す。前言撤回。なかなかどうしてサディストだ。
顔が真っ赤になった耶倶矢は涎を垂らしながら、しゃがみ込む。縛られたうえリングギャグのせいで、犬のような格好で、舌を出して錠剤を飲み込もうとする
「ふっふ、ふぅぅぅぅ、あう、ふうう……」
上手くいかず何度も耶倶矢の舌先から錠剤がくっついては落ちる。耶倶矢は何度も夕弦を切なそうに見つめるが、その度に夕弦は無言で微笑みかけるだけであった。
「ううっ……ふぅ、ふ、ふぅ…あっふふぅぅあ……!」
「称賛。よしよし、よく頑張りました、耶倶矢」
「ふう、ふう、あふ、ふふふ、ふぅぅ……ふふっ」
度重なる失敗と自分のみじめな姿ですっかり涙目になった耶倶矢だが、点滴岩を穿つ、とうとう錠剤を飲み込むことに成功した。褒められ頭を撫でられて、耶倶矢も嬉しそうだ……飼い主に再開した子犬みたいだとは言わない。
「嚥下。飲み込むには水が必要です。夕弦が飲ませてあげましょう」
言いながら、夕弦がペットボトルの水を取り出す。封を開けるとそのまま、自分の口に水を含み、口を閉じれない耶倶矢に口付けた。
「ちゅ……ちゅう、うむ、ちゅう、あん……ちゅっ」
「ふ、ふぅ! がっぐ、ごっふう、ひゅうむっ、ふぅ……! ふっ!」
頭を押えられ、強制的に水を飲まされる。息ができない苦しさと、抵抗できない恐怖、そして夕弦の舌での口内愛撫の感覚が、耶倶矢の中にあったマゾヒスティックな性質と相まって際限なく感覚を高ぶらせていく。
「ぷは、れろぉ……ふう、服用。これで耶倶矢はいつでも膣に出してもらえますね……」
「……ふぅふぅ、うぅ……はふ、ぷは……ああ、夕弦ぅ、士道ぅ……」
夕弦にギャグを外してもらった耶倶矢は完全に出来上がっていた。顔は真っ赤に上気し、唾液と水でてらてらとぬめりきっていた。
良く似合っていた衣装も、縄打たれ、水を吸い、まるで雨の中を通て来たかのように前面が体にぴったりと張り付く扇情的で被虐の様相を呈している。
スカート部分まで濡れそぼり、地面に水滴が垂れている様は、耶倶矢がもじもじと股を擦っている光景と相まって、愛液を垂らす淫売そのものだ。
「ねぇ、もういいでしょ……お願い、私を犯して、お願い……」
「訂正。それが所有物の口の利き方ですか」
パシッと夕弦の平手打ちが無防備な耶倶矢の臀部を襲う。
「ひぎっ! ……あう、やだ、言う、言うから止めて……」
「停止。少し待ってください」
言うと夕弦は耶倶矢に近づき、首に鍵付きのチョーカーを取り付けた。そして、スマホを取り出す。
「貸与。特別に今回だけ士道の奴隷の証を貸してあげます。記録。さあ、耶倶矢、宣言してください……」
「ああ、私本当に奴隷に……ひうっ……わ、私八舞耶倶矢は、八舞夕弦と五河士道の奴隷です……二人とずっと一緒にいたいです……頑張って仕えます……だから、私を可愛がってください……!」
奴隷の宣言というにはえらく可愛らしい宣言だったが、正直辛抱たまらない。それは夕弦も同じだったようで、何も言わず涙目でカクカク震える耶倶矢を後ろから抱きしめていた。
「あむ……ん……わぁ……うふぅ……んぅんぅ……ちゅぷ、ちゅぱ……ねぇ士道、気持ちいい……?」
「うん、滅茶苦茶気持ちいいよ。耶倶矢上手いな……」
「そう……えへへ、ん……ちゅぷ、ぢゅるるっ……あ…んん、あむぅ……」
一頻り夕弦に抱きしめられ、士道に頭を撫でられ落ち着いた耶倶矢はいよいよ奉仕する。
早くも夢の体験が生きた。耶倶矢としては微妙に既視感のある光景。…嫌な気はしない、寧ろ耶倶矢は夢の主観者に共感していた。――というかあの夢はもしかして――
「むふ……っんっ、んっ、ん……むふっ、むふっ、ぢゅるぢゅぷ……はぅ……奥まで、咥え込んであげよっか……?」
「大丈夫かあんまり無理、いっっつ!」
「かりっと……ふふ、私は奴隷なんだからぁ、そんなこと気にしないでいいんだってば……ごぷっ! おごっ、ご……ぢゅぼ、ごぷっっ、お゛……! あ、あう……ゆ、夕弦やめ…ひぅ!」
「奇襲。油断大敵です。ほら、クリも剥いてあげましょう」
「うあぁぁ、ぐ……ん、ふぉ……ぢゅるぢゅぷ、あう、咥えられな……ひゃぁう!」
「愛撫。くちゅくちゅくちゅくちゅっと。クリトリスもこんなに尖らせて……いやらしい……嘆息。手がべとべとです、耶倶矢のあそこが孕みたい孕みたいって言ってますよ」
「そ、そんなの言ってないし……ひゃう! や、やぁ、つままないで、あぐぅ……う、嘘です。私、孕みたいです……! だ、だから……ひぎぃ!」
「確認。だから?」
「っだ、だから!……私の淫乱まんこ、縛られて発情する淫乱まんこ、避妊してても孕みそうなどうしようもない淫乱まんこに、士道のチンポ突っ込んで……! 好きなだけ中に出して……! 士道の奴隷に逆らえなくなるまでわからせてぇぇ!!」
「ああっうっ、士道、入ってる、生で入ってる……♡すごい、熱い……♡ひゃあ、う、うん、好きに動いて、突きまくって♡あん、あん……♡もっと……もっと気持ち良くなって、もっと気持ち良くして……♡」
「……言われなくても、後悔するまで犯してやるよ、変態奴隷二号……!」
「! あぁ……嬉しいよぉ……♡あん♡夕弦と一緒にぃ……♡あん♡士道のぉ♡あん♡奴隷……♡……ひゅごっ! げほっ! ゆ、夕弦……チョーカーは引っ張らないひゅぐ!」
「……憤慨。ご主人様にほっておかれた奴隷一号は、悲しくなって二号に八つ当たりです。えーい」
「ごふっごふっ! はぁはぁ……死ぬ……死んじゃう……♡縛られて……♡膣に……出されて……♡孕んで……♡ふぐ♡いき死ぬ゛ぅぅぅ♡」
「……不安。今の耶倶矢にピルが効くか心配になってきました。妊娠したらどうしてくれましょう」
「ごほっ! ……はぁ……はぁ……産む……産みますぅ……♡はぁ……はぁ……士道の……赤ちゃん、産みますぅぅ……♡産んで……士道と……育てるのぉ……♡」
二人の激しい攻めに耶倶矢は正気を失ったような有様となった。……と言うより夕弦の調教によってと言うべきだろう。耶倶矢の膣を貪るのに必死な士道も――女性に生で挿入するのは初めてだ――二人のやり取りをどこか上の空の様に聞きながら、少し不安になってきた。
何せ滅多にないことに、夕弦の目が吊り上がったような気がしたからだ。
「……激怒。士道の伴侶たる夕弦を差し置いて奴隷の耶倶矢が何ですか…告知。もし、耶倶矢が妊娠したらその子は取り上げて夕弦の子にします。耶倶矢は一生奴隷として飼ってあげます」
「そ、そんな……! はぐっ♡、い、嫌だ、うぐっ……ごほっ……! し、士道……! 私、士道の赤ちゃん産みたい……助けてよぅ……!」
避妊してるんだよな!? と絶叫したくなる士道。何でこんな話になっているのか。完全に空気に飲まれている二人。士道の上でポロポロ涙を流し哀願する耶倶矢は余りにも可憐かつ哀れで、今すぐにでも慰めてやりたいが、そんなことをしたら怒れる夕弦の反応が怖い。だから――
士道は夕弦を抱き寄せ、深く口付けた。
「ふぐ!? む、むぅぅ♡うむ、れろ、あむ♡くちゃ、ぺちゃ♡はう、れろ、むう……♡」
最初こそ、強ばった反応を見せたものの、夕弦は一切抵抗せず、士道のなすがままとなった。
普段よりずっと長いキスを十分楽しんだ後、士道は落ち着いたであろう夕弦に問いかける。
「ぷは……夕弦、お前は俺の何だ……?」
「はぁはぁ……返答。夕弦は士道の奴隷です……」
「じゃあ、この後俺がどうするかわかるな?」
「……期待。はい……士道に犯してもらいます……」
「覚悟しろ、お前も膣に出してやる。それまで大人しくしてろ」
「~~~は、はい♡」
夕弦が顔を火照らしながら離れる。少しふらついているが大丈夫だろう。
安堵感と罪悪感もそこそこに、耶倶矢に向き直りキスする。
「はふぅ……♡ううぅ……♡れろ、ちゅる♡あむ、くちゃ♡ずず、はむぅ♡ちゅぅちゅぅ……♡」
舌と舌の接合を楽しみながら、耶倶矢の涙に濡れた顔をぬぐい、そのまま髪、頬、首を愛撫する。そして落ち着いたころを見計らい唇を離す。
「落ち着いたな……?」
「うん、もう大丈夫だし……だから、もう一回犯し直して……♡」
「勿論だ……ピル飲んだんだよな……?」
「……うん、飲んだ……はず……あん♡」
はず、は聞かなかったことにして再び、耶倶矢を犯す。
「ああ♡やっと今度こそ、あん♡いく、いける♡ひゃん♡ふぁぁ耳、噛まないで……♡ひぎっ♡く、クリ潰しちゃダメ……♡ふぐっ♡」
「いきたいいきたいって言う癖に注文が多い……なっ!」
「ふぎゅ♡ふ、深いぃぃ♡だ、だってさっきからぁ♡あん♡め、滅茶苦茶にされてぇ♡もう…ひゃん♡訳わかんないんだもん……♡」
「そうか……じゃあもっと訳わかんなくなっちまえ……!」
「ああ♡速い、速いよ……士道……♡あん♡ああ、来る♡もう少しでいける……♡」
士道もラストスパートをかける。そろそろ限界が近い。
耶倶矢の嬌声が耳に痛い。縛られて動けない体が震える様は酷く煽情的だ。流す汗に匂いが鼻腔を犯す。
「ああ、士道……士道……♡ね、ねぇ、いくときは、思いっきり抱きしめて! 縛られて、動けなくて! 酷いことされて、興奮してるの! 私をもっと動けないぐらい強く抱きしめて……!!」
「耶倶矢……!」
「士道……!」
士道が耶倶矢を抱きしめる。小さな体が折れんばかりの力で抱きしめると耶倶矢が大きく痙攣したように震え、同時にその膣に射精した。
…
「ああ……熱い……♡熱いよ士道……♡膣に出されてぇ、犯されてぇ……逃げれないぃ……♡子宮の中まで犯されてるぅ……♡」
士道の人生初の中出しは、耶倶矢の嗜虐を煽るような反応と相まって、今までなく長い射精となった。
(まいったな……)
正直、気持ち良すぎてゴム有がしたくない。ごまかす様に耶倶矢から、引き抜く。
「……あん……♡ふふふっ……♡」
今まで自分を犯していたモノを見た耶倶矢はおかしそうに笑うと、顔を近づけ――
夕弦が間に割って入ったことで止まった。
「ゆ、夕弦?」
「……限界。……士道、……あなたの奴隷はもう我慢できません……すぐに、抱いて……下さい……」
「……待たしてごめんな夕弦……耶倶矢、ロープ解くよ」
耶倶矢の体を縛っていた戒めが解かれる。全身を満たす解放感と自分の体内を満たす充足感、これで終わりと言う寂寞感、そして疲労感にフラフラとなりながら、最後の力でワンピースを脱ぐ。
奇跡的に水と汗、そして自分の愛液以外で汚れていない様だった。皺の処理と併せて後で何とかする。服の上から縛られていたこともあって体に跡はあまりついていない。
シャワーを浴びないと、と言う当たり前の欲求は、極限の疲労感に阻まれる。倒れこむように床のクッションの上に横たわると、視界の端で全裸の夕弦が、自分と同じように縛られていくのを見ながら耶倶矢は目を閉じた。
(頭おかしくなるくらい気持ち良かった……)
もうすぐ来るであろう夢の気配を感じながら、耶倶矢は少しの時間、夢の主について考える。
(そっちのあんたもこんな感じで士道とセックスしてたのかな……ねぇ……多分、八舞……)
問いかけに答える者はなく、耶倶矢は微睡に包まれた。