夕弦は士道が大好きです。
愛しているしている、と言っても良いでしょう。
何時もひたむきで、必至で、愚かしく思えるくらい愚直で、頑固で、可愛くて、時々かっこいい――そんな士道が夕弦のことを選んでくれた――この瞬間、夕弦の初恋は終わり、最後の愛が始まったのです。
夕弦は耶倶矢が大好きです。
愛している、と言っても良いかもしれません。
夕弦の分かれた片割れ、いじるといつもいじらしくて可愛く、夕弦が持っていない多くを持ち、誰にも愛される――夕弦を含め――愛しき妹分。
夕弦は幸せです。何よりも大切な人が二人もいて、何よりも夕弦を大切にしてくれるのですから。
他の精霊達を含め大切な人々は沢山いますが、それでも夕弦は人生最後の瞬間、この二人のことを思うだけで幸運な人生だったと断言できるでしょう。
だからこそ
「呵呵、颶風の御子は風の王すら従えん……何これ」
「えーと、何でも風の邪神のその又化身をモデルにしてるらしいな」
「くっ……我が強大なる力の代償故の戒めか…何か触手がうねうねしてるんだけど……どこが風なの?」
「とりあえず、この勝負が終わったら別のにしたら良いから、それまではやってみたら……」
「くくくっ……まんまとかかったな、哀れな生存者よ、そこは我が領域だ……って、ああ! もう解読されてるし!?」
「……気に入ったんなら良かったよ」
「交代。お風呂あがりまし……」
「耶倶矢、スマホは使ってて良いからそろそろ退いてくれ」
「あー全員逃げられた……ねぇ士道もう一回だけやるからあとちょっとだけ付き合ってくれない……?」
「しょうがないな……」
「……」
だからこそ夕弦そっちのけで、ずっと士道の膝の上で耶倶矢といちゃついているのを見て嫉妬――あるいは激怒――した訳ではありません。
「あの……夕弦……何で私達縛られてるのかな…? いや、何でかは分かるんだけど……」
「愚問。分かるならば良いではないですか」
「その……夕弦を蔑ろにしてすまんかった。それに関しては本当にごめん、俺が悪かった。だから……」
「誤解。士道は思い違いをしています。夕弦はそんなことで嫉妬してはいません」
「それじゃあ……」
「反乱。これは横暴なご主人様への奴隷反乱で、奴隷の奴隷に対する躾です」
「スパルタクス!?」
処刑前の罪人の様に項垂れる士道と耶倶矢の姿に夕弦は胸を張る。
実際夕弦は、今日の情事を楽しみにしていたのだ――それも数日前から。それを裏切られたと感じた夕弦は折紙も斯くや、と言う無言の圧力で二人座らせると、縄で後ろ手に拘束し、今に至る。
耶倶矢との関係が変化して以来、どうも耶倶矢の態度が変わってしまったように感じる。以前は恥ずかしがったり、夕弦に遠慮して士道にスキンシップを取る様なそぶりはあまりなかったと思う。それが今では距離が近い様に感じるのは多分気のせいではない。
ならば当然――
「教育。たっぷりわからせてあげますよ。さあ士道に耶倶矢、今夜は楽しみましょう……」
「「ヒェ……」」
「ゆ、夕弦……結構痛い、グっ……!?」
「膨張。そう言いながら夕弦の手の中で大きくなっていますよ……嫉妬。それとも、あの姿に興奮しているのですか?」
夕弦が士道のモノを手コキしながら囁く。夕弦の柔らかい手に摩られるている内に否が応でも反応してしまう。
「ね、ねぇ夕弦、士道……見てるの……? 聞こえないからわかんないんだけどこれ、結構恥ずかしい……」
二人の前には全裸に剥かれた耶倶矢がいる。アイマスクで視界を塞がれ、耳には耳栓とヘッドホンを装着している。腕を前に縛りなおされ、足をM字に開かれた状態で縛られ股間を晒している様は今から喰われる哀れな子羊そのものだが、耶倶矢の顔は上気し、それを期待しているのは明らかだった。
『命令。耶倶矢、士道がいつでも入れられるように準備してください。準備ができるまでお預けです』
それだけ言われて聴覚と視覚を塞がれた耶倶矢は辛うじて動かせる手を使って自分の秘所を愛撫する。
「ん……あっ……ゆ、夕弦、オナニーして……あん、濡らすから見てて……あふっ……」
耶倶矢の細い指が割れ目に入り、膣を広げる。
「あん、ねぇ士道……見てる……? 私の膣、すごい濡れてるよ……いつもみたいに、沢山犯して……♡」
指のが出入りする度に床に愛液が落ちる。欲しい、あそこに欲しくてたまらない。拘束された耶倶矢の嬌声と相まって、その光景は士道の股間を熱し続けた。
「士道、士道……! 私、一回イクから……見てて……私がイクところ見てて……早く犯しに来て……!」
細い指の出し入れが早くなり、耶倶矢の悲鳴のような懇願が脳を焼く。
今すぐにでも耶倶矢を犯したくなるが――
「確認。士道、耶倶矢を犯したいですか……? 駄目です」
「ゆ、夕弦……」
「膨張。士道のモノ、夕弦の手ですごく硬く熱くなっています……夕弦が大きくしたのですからこれは夕弦の物です。ちゅっ……ふふふ……」
悪戯っぽく笑う夕弦は士道のモノに口づける。そのまま手ですり刺激を与え続ける。
だが、足りない。
これではイケない。
「夕弦、頼む……そろそろ……」
「微笑。ふふーん、もう我慢できませんか。しょうがないご主人様ですね。……解放。解きますから、夕弦を楽しませてくださいね」
苦しそうな士道の声を聞き少し満足そうな夕弦は、期待に満ちた声色で士道を誘いながら士道の拘束を解く。
士道はそのまま夕弦を抱きしめると口付け股間を夕弦に擦り付ける。
「ちゅう……くぷっ……れろっ……はぁ……接触。士道……熱い、熱いです……良いことを思いつきました」
そう言うと夕弦は今まで士道の手を縛っていた縄を取ると、士道の右手を取り、手をつないだ自分の左手と合わせて縄で縛った。
「結束。これでもう解けません。ずっと一緒です」
「おう……分かった、このままやろう」
「士道……はむ……ちゅう……くぷぽ……ちゅう……れろっ……うむっ。ああ、来てください……あんっ!」
ようやっと夕弦の膣に挿入できた士道は今までの鬱憤を晴らすかのように夕弦を激しく抱くこととする。自由な片手で抱き合いながら、キスしながらはめる。握ったまま縛られている片手がどれだけ放したくても放せないという実感が、もどかしくて、暖かくて、何より愛おしかった。
(まあ、俺達らしいと言えばそうかもな……)
「んむぅ……くふ……ちゅぷ……べろ……はぅ……あっ……ぷはっ……は、激しい……しど、きひっ……懇願。もっとキスしてくだ、ひゃう!」
キスを辞めたことで抗議する夕弦の首筋を甘噛みし、その理由を分からせる。最初に焦らされたこともあって最後が近い。少しでも夕弦を感じさせるべく、様々な刺激を与えつつ、挿入のペースを上げる。
「ひゃう! あっあっ! 士道、好き、好き……あぁん! ああ…絶頂。もう……もう、イクんですね……一緒に行きましょう、あん!」
「夕弦……!」
「ああ、士道……!」
何時もよりだいぶ早い絶頂だが射精感は生で出していることもあり強かった。このまま深く眠ってしまいそうになるような達成感と疲労感。そのまま、夕弦の頭を抱きしめると仰向けに倒れこみ、目を閉じたくなり――
「ぐすっ……夕弦、士道……! そこにいるんだよね……!? もう、私三回もいったよ……! お願いだからかまってよぅ……」
――ようやっと耶倶矢を放っていたことを思い出した二人は目を合わせると、手の拘束を解き軽くキスした後立ち上がった。
「ぐぽ、じゅる、ぺちゃ、れろ、ん、んむぅ……ぷはっ……やっと大きくなったし……私を放置して二人でさんざんやったうえ、その使い古しをしゃぶらせるとか……本当酷いご主人様達なんだから……」
「調教。これも躾のうちです、格差社会を思い知るのです」
「そんな話だっけ……? でもありがとうな耶倶矢。すごく気持ち良いよ」
士道が耶倶矢の頭を撫でながら褒めると、耶倶矢は嬉し恥ずかしそうに、「えへへ」とはにかむ。正直この表情が一番ぐっときた……夕弦の言う通りのプラン、誰かわからないまま耶倶矢を犯し、怖がらせる、に従わなくて良かったと確信する士道だった。
今の耶倶矢はヘッドホンとアイマスクは外されている。代わりに胸を絞り出すような形で後ろ手に縛りなおされている。足はまだ縛られたままなので 今の耶倶矢の姿は正に犯されるためだけの姿と言っても良い。マゾな耶倶矢は今の自分の姿に興奮しきっていた。
「ぺろ……れろ……ふぅ……ねぇ士道……もう良いでしょ…? もう私我慢できないよぅ、士道の固いので、私のドロドロマンコたくさんついて♡膣に出してぇ♡」
顔を上気させ、口元から涎を垂らし、拘束された脚を開いて、嗤いながら淫らに誘う耶倶矢の姿は、一度射精して少しは落ち着いた士道の思考をもう一度焼き尽くすには十分すぎた。
「あああぁ……♡……やっと、やっと入ってきたぁ……♡はぁっああ……♡ね、ねぇ士道私も、夕弦と同じ位キスしたいよ、うぐぅ……!」
「命令。耶倶矢、夕弦の膣に出された士道の精を嘗めとってください。好きでしょう、キス。夕弦にもしてください♡」
士道のモノが耶倶矢の膣を抉り始める。同時にベッドの上に寝かされた耶倶矢の顔の上に乗り自分の股間を嘗めさせる夕弦。
「や、やあぁ……ぷふ……あむ、ぺろ、れろ、ちゅちゅう、ごぶっ……ああぅ……頭おかしくなる…♡」
士道の激しい出し入れと、夕弦への奉仕からなる上下からの多くの情報で、耶倶矢の脳内は快楽で真っ白になった。
呼吸がし難い
体が動かせない
汗を吸った縄が体を締め付ける
耶倶矢の被虐心はこれ以上ないほどに煽られていた。
「ああぁ、ね、ねぇ夕弦、来る! いっちゃう! 士道、士道……好き、大好き……! たくさん出して……!」
「許可。耶倶矢も気持ち良くなってください……」
「ああ、沢山いっていいぞ、耶倶矢……!」
耶倶矢の体が痙攣したように震える。士道も痛いぐらいに膨れ上がった自分のモノを最大限の速さで動かす。
「ああ、いく……!」
「ああ、耶倶矢……!」
「……!」
士道が今日二回目の射精を膣に出し、同時に耶倶矢の震えが最大限に達し、そして弛緩したように止まる。
夕弦はどうやら同時に達したらしい。暫らく呆然とした様に息荒く立ち尽くしていたが、やがてふらふらと立ち上がり、士道の方にゆっくり向き倒れこむように抱き着き、キスした後、士道の股間のモノをきれいにし始めた。
耶倶矢のきれいな顔は、自分の唾液と夕弦の愛液、士道の精液でドロドロになっていた。上気しきった自分の奴隷が愛おしくなった士道は、動けない耶倶矢を抱き上げると、耶倶矢の惨状も気にせず、そのまま口付けた。
「男の子の寝顔って案外可愛いもんだね」
「同意。まあ、夕弦はいつも見ていますが」
「まあ、夕弦はそうだよね」
「自慢。ふふーん」
あの後も三人は性交を楽しんでいたが、当然最初に脱落したのは射精を何度もした士道だった。疲労困憊の体で後片付けをした後、謝罪しながら倒れる様に眠りについた。
落ち着いた耶倶矢と夕弦はベッドで眠る士道を眺め、顔をなでながらピロートークをしていた。
大学の事、おしゃれの事、旅行の事、遊びの事。取り留めもないおしゃべりが続く。
ここで耶倶矢は夕弦がもう怒っていないことに内心ようやっと安堵できた。なのでようやっと他の気になっていた話題に触れる。
「……ねぇ、夕弦……ちょっと聞きたいんだけどさ……最近あの夢見る?」
「……否定。見ていません。夢自体は見るのですが」
「やっぱりそうなんだ……ってことは、よくわからないうちに解決したのかな?」
「不明。わかりません。ただ、元々良くない物だった気はしませんから、どう転んでも悪くならないとは思いたいです」
「そっか……」
ここで一旦話題が途切れる。もしそうなら、この関係を続ける理由は薄れる。それならば――
「宣言。予め言っておきますが夕弦も士道も手に入れた奴隷を手放す気はありませんよ。」
「はは、夕弦はそうだもんね……私も疲れたからもう寝るね……」
お休みを言って士道が眠っている横に潜り込む耶倶矢。夕弦もやはり士道の反対側に川の字になる形で横になる。
(とは言え耶倶矢の懸念も分かります。やはり士道にも相談すべきでしょう)
夕弦も、疲労を今更ながら感じ、眠りにつくことにした。耶倶矢が静かになったのを感じ取り、傍らの士道が規則正しい寝息を立てているのを横目に夕弦は微睡んだ。
――久しぶりに『彼女』の夢を見た。いつもと同じ場所、だが何かが違う。
『彼女』は走り回っていた。地面すら良く分からない場所で、誰かを追っていた。
やがて背中が見える。高校生の士道、ただどこか何時もの夢より楽しそうな表情だ。
士道を捕まえると『彼女』はまた走りだした。途中で立ち止まり、物陰、隙間、高台など今まで夢の中で見たことが無いそれらをくまなく探す――ようやっとこれが鬼ごっこだと理解する。
やがてその中から一人の女の子を見つけ出す。まだあどけなさが残る、桃色の髪の女の子。
その女の子の顔に覚えは無かったが、何故かどこかで会った気がした。
その女の子は『彼女』笑いかける。「みつかっちゃったー」とでも言っているのだろう。
微笑ましい光景。『彼女』も楽しそうだ。ならば何故、こんなに不安なのだろう。
やがて鬼ごっこが終わったのを察したのか他の人影が姿を現す。
件の女の子をもう少しだけ大きくしたような少女。
葡萄色の髪の目に傷がある少女。
記憶に無いが見覚えのある彼女たちの姿を見る度、不安が増していく。
最後に――金髪の赤い目の少女の姿を見た。
万由里
ほんの一時だけ邂逅した精霊の様な少女。
そして自ら霊力を封印され消滅した少女。
夕弦と耶倶矢は全てを理解した。これは風待八舞が見ている死後の世界だと。