※この作品はR-18です。

八舞ドリームキャッチャー   作:TORIA

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⑤八舞耶倶矢はやっぱり縛られたい(内容:耶倶矢温泉調教)

 

 

「聞いてた通り、きれいな海じゃん」

「首肯。話に聞いていた通りです」

「そうだな。また来たいと思って……結局中々来られなかったから良い機会だったと思う」

 

 季節は長い残暑がやっと終わるかと言う頃。それでもまだまだ日差しは強く、少し日向を歩くだけで汗ばむような陽気と潮騒の中、強い海風に頬を撫でられながら三人は無人の海岸にたたずんでいた。

 時期的に禁泳区になってしまっていたがお陰で誰もいない静かな砂浜で空と海を眺めることができた。まるで世界で自分たち以外消えてしまったかのような感覚。―――それはあの時と同じ。

 

「うん、あの時もこんな感じだったな。いや、夏だから今の方が空と海は蒼いかも」

「同意。彼女も今の景色を見たら喜んだでしょう」

「澪か……あの戦いの時はまだ冬だったもんね」

 

 そう、三人がいるのは士道が令音―――澪と最後のデートをしたあの海辺だった。

 

 

 

 

 夕弦と耶倶矢が夢の正体に気が付いてから、数か月。当初は困惑や恐怖、不安などの感情に囚われていたが、今の二人にそれらの気配はない。むしろある意味自分自身とも言える存在とのつながりがそれなりの形で維持されていることに奇妙な安堵を抱いているような感さえあった。

 それよりも、気になるのは話を聞いただけの士道の方だった。もし、これがあの世の情景ならば、彼女たちの夢に出てきた士道とは何なのだろうか。あるいは、彼こそが真士なのかもしれない。

だとしたら―――澪はどうなったのだろうか。

 そんなことを考えている時、連休中の旅行先の相談で、令音とのデートで一日だけ行った旅館の話が夕弦から出た時、士道は自分だけの悩みで無かったことに何とも言えない感慨を覚えた。     

 かくして遠慮しようとする耶倶矢の首根っこを掴み、今に至る。

 

「質問。士道は澪のことをどう思っているのですか。」

「どう、なんだろうな…俺は真士じゃないけど、それでも澪のことは大きすぎて何年たっても後から考えさせられる。ただ、やっぱり思うのは、澪の生きざま、あるいは死にざまに今さら付け足すことは何もないかな……」

 

 そうですか、とだけ返す夕弦。

 そもそもなぜここに来たのだろう。別に澪はここで死んだわけでもなく、墓があるわけでもない。

 付け足すことは何もないといったのは士道自身だ。

 ―――それでもここに来てしまった。来たかった。

 何となくしんみりした雰囲気。話題を変えようと自分のものではない記憶を思い出す。

 

「澪は海を見たらすごい喜んでくれた真士の記憶があってな……もっと色んなことをさせてやりたかったんだと思う。流石にあの世に海はないだろうし」

「そっか。暑い時期だったら澪も海で遊べたのにね」

「回顧。昔は良く海上で耶倶矢と追いかけっこをしたものです」

「中々勝負がつかなかったもんね。何か懐かしくなってきた。……やっちゃう?」

「肯定。やっちゃいます」

「この炎天下、よくやるな…まあ、どれだけ汗かいても、宿には個室の温泉もあるし。日焼けと熱射病だけは気を付けような」

「何言ってんのさ、士道もやるの」

「勝負。最初は士道が鬼です。一番駄目駄目だと罰ゲームですよ」

「えっ……お前らと本気で走り回って勝負すんの? もしかして罰ゲーム確定? いや、わかった、やるから。そんな顔はするなよ」

 

 答えの出ない問は一旦さておき、駆け出した二人につられて士道も走り出す。誰もいない海辺の駆けっこは三人が疲れるまでしばらく続いた。

 

 

 

「ふへ―、疲れたし……でも久々に走り回ったわ。はい、水」

「サンキュー、途中から曇ってくれたけど、こりゃ首から上と手足は真っ黒かもな…」

「交代。夕弦が今出ました。温泉につかってすぐ個室と言うのも良いものです」

 

 旅館に戻ってきた疲労困憊の三人は早速部屋に備え付けの温泉で汗を流した。

 ……一緒に入るお誘いは辞退した。まだ日は高い。

 二人が入ったので最後に士道が浴室に入る。あの時と同じ部屋ではないがほぼ同じだ。

 先にシャワーで汗を流す。温かいお湯に当たりながら思い出すのは先ほどの情景―――海と空だ。

  

「ほんと、何でこんなに気になるんだろう……」

 

 澪を救えなかったことは確かに士道にとって最大の心残りではあったが、同時に澪が士道に救われたいと思っていなかったのも事実だ。

 

(今さら恋愛感情でもないだろうし、憎いとか悲しいでもない。罪悪感も違う)

 

自分が澪をどう思っているか、聞かれた質問を改めて考え直す。

―――そうして

 

「ああ、そういえば……」

 

 遂に士道はやり残したことに思い当たる。

 

 

 

 夏の日が長いと言っても、夕食を終えるころにはもう辺りはとっぷりと日が暮れ切っている。昼間、馬鹿馬鹿しく遊んだせいでそれまでの時間は三人とも泥の様に伸びていたが、この時間ともなると否が応でも再び動き出す。

 

「自分で言うのも何だけどゾンビみたいだな」

「温泉に行くと、無理にでも入らないといけなくなるあの気分、何だろね?」

 

 士道が耶倶矢とぼやいているのは部屋に備え付けの露天風呂。先ほども入ったが、近いのでまた使ってしまった。大浴場は明日入ることになるだろう……それにここに耶倶矢が一緒にいる、と言うのはそういうことだ。ただ―――

 

「すっごい分かる。なんだろうなあれ……って耶倶矢、夕弦は?」

「今回は大浴場に行くって。……夕弦が許してくれたんだ。だから……今は二人きり……」

「耶倶矢……」

「ねぇ、士道。いいでしょ……しよ♡」

 

 今いるのは露天風呂である。夏なので外気が寒いということはないが、それでも外の空気に接するのは気温以上に涼しい気がする。まして―――

 

「えへへへ……士道のもう大きくなってる……ちゅっ」

「耶倶矢……のぼせたと思ったらすぐ引きあげるからな。今おまえ動けないんだし」

「えー何よそれ。私が駄目駄目みたいじゃん! ふえーん」

「耶倶矢、お前ちょっと酔ってるだろ……やっぱり危ないから風呂はやめとこうぜ。」

「いーや、士道は私とここでするの……それとも、令音とは良くても私とはできないの?」

「だから令音さんとは何もやってないって……あーもういい、わかったから。」

 

 士道は自分がいつもの様に縛った耶倶矢の頭に手を置く。浴槽の中で士道のモノに口付ける耶倶矢の顔を風が撫ぜる。ここは屋外なのだ。

  

「ちゅぷ……ちゅっ……れろぉ…もう、すっかり固くなってるし……そんなに私としたかった……?」

「……ああ、そうだ。耶倶矢は上手いんからな」

「うん、嬉しい……ちゅっ……ぐぽ、ぬぽ、ちゅぶ、ぺろ、ぐぽ……」

 

 耶倶矢がペースを上げる。癪ではあるが実際以前より上手くなっている。

 あと少しででる、というところで耶倶矢の奉仕が止まる。顔を見ると悪戯染みた表情を浮かべ、士道のモノに軽くキスをして焦らす。

 

「もう出そうなんだ……駄目だよ士道。出すときは私の中に出して……」

「……耶倶矢、お前ペース大丈夫か? って痛!?」

「かりっ……つまんないこと言わないでよ。ねぇ、士道……さっきから縄が水を吸ってきついんだ……まるで全身士道に抱きしめられてるみたいで…だから、本当に抱きしめて。もっともっと私を束縛して……!」

「……ああ、やってやるよ」

 

 また耶倶矢のペースに乗せられている。そういう自覚はあっても、高まりきった熱は士道に従うように命ずるのだった。

 

「……ああ、士道……ふふふ、もうすごい固いよ、あん。やぁ、激しい……」

「耶倶矢の身体がすごく熱いからな……」

「そう…ねぇ士道、そろそろキスしたいよ……んっちゅ、くむちゅ、ちゅ……」

 

 耶倶矢を抱きしめ、上も下も塞ぐ。耶倶矢の体と湯の熱さで血が滾り意識が飛びそうになるが、それでも腰は必死に動かす。思わず口を話し、喘ぎそうになるがそれは耶倶矢が許してくれない。

 

「はぁはぁ……やあ、もっとキスして……士道、あん、ここで声出したら……あふっ、大勢に見られちゃうかも…そしたら、私と士道はどうしようもない変態カップルって……あはっ、思われちゃうよ……? ちゅむ、くむちゅう、ちゅっちゅ……」

 

 耶倶矢の望み通り、再びキスをする。舌を絡めあい、下半身を突く。熱が逃げられる所は無く、体の中がひたすら熱され続けるような感覚にとらわれる。

 何というか癪だ。毎回耶倶矢に乗せられて、なんだかんだ、掌の上な気がする。

 

 自分が主導権を取りたい。

 

 過剰なほど上ずった思考の士道からは先ほどの耶倶矢を気遣う優しさは無くなっていた。耶倶矢と繋がったまま、片手を耶倶矢の首の裏に回し、もう片方の手で耶倶矢の鼻を押えると―――

 

「―――!!―――」

 

 耶倶矢を抱きしめたまま自分ごと浴槽に沈んだ。

 

(な、何? 士道と一種にお湯の中……? い、息ができない……)

 

 突然の状況に戸惑う耶倶矢だがそんな彼女の状況は一切関係なく、酸素不足と今まで以上の熱が耶倶矢を襲う。加えて今まで通りキスされ犯されているのだ。

 

(や、止めて士道……! 熱くて、苦しくて、気持ち良くて……私達死んじゃうよ……)

 

 抵抗できることはほとんどなく、唯ひたすら士道からの刺激を受け入れることしかできない。

 

(このまま死んだら、私達馬鹿な死に方したカップルって言われちゃう……夕弦じゃなくて私が士道の恋人になっちゃうんだよ……!) 

 

 熱と苦痛と快楽に晒された耶倶矢の思考はおかしな方向に行っているが、耶倶矢はその感覚にゾクゾクした。

 あと少しでいけそうな耶倶矢も士道の舌を嬲るように舐り、体を押し付けながら腰を動かす。目を開けることはできないが士道も終わりが近いことがわかる。

 

(ああ、いく、いく……! 士道……お願い一緒にいって……私と一緒に破滅して……!)

 

 耶倶矢が体を痙攣させて絶頂する。同時に達したであろう、士道に膣に出される感覚を感じていると、急に体が抱き上げられる。

 

「ぷはぁ……!!……はぁはぁはぁはぁ……げほっ」

 

 ようやっと解放され息を吸う。文字通り湯だった頭が少しだけ冷える。

 耶倶矢は士道の顔を見つめる。顔は上気しきっており、目はとろんとしている。恐らく士道の目に映る耶倶矢も同じような表情だろう。

 不意に愛おしさが湧き上がってくる。体はひどく疲れていたが、耶倶矢はそれ以上に、士道にもっと甘えたい。

 

「ねぇ、士道……もう一回しよ……♡」

 

 そう言いつつ、耶倶矢は士道に口付けながら、彼の胸板にもたれかかった。

 

 

 

「うわぁ、髪が重い……乾かすのが大変だ……」

「うん……まあ、ちょっと、いや大分やりすぎた。ごめん……」

 

 弛緩した雰囲気の中、解放された耶倶矢と士道はクーラーに当たりながら睦言を紡ぐ。床に体を伸ばす士道の上に座りながら、疲れ切った耶倶矢は水を飲みながら涼む。

 

「まあ、私もすっごい気持ち良かったし……少しだけ死ぬかと思ったけど」

「本当、すまんかった……」

「だから、怒ってないってば」

 

 頬を膨らませた耶倶矢が士道の発言に文句を言う。何か埋め合わせを士道が考えていると

 

「ただまあ、折角澪のお墓参りに来てるのに、それで死んだら笑えないとは思ったけど」

 

 耶倶矢は当たり前の様に笑いながらそう言った。

 

「うん……士道? どしたの?」

「わかってたか……」

「わかってたって何も、それしかないじゃん。夕弦もそう言ってたし……あんまり考えすぎない方が良いよ?」

 

 どうやら士道だけが自分のことを分かっていなかったらしい。それに気が付くと二人が急に愛おしくなってきた。

 

「そうだな……よし、折角付き合ってもらっているんだし、耶倶矢に何かしてやらないとな」

「そう? じゃあ、髪乾かしたら私にマッサージしてよ。夕弦も今頃、旅館のマッサージやってもらってるだろうし。士道得意でしょ?」

「ああ、いいよ。それでいいなら、いくらでもやってやるよ」

 

 そして士道は耶倶矢の望み通り、耶倶矢が眠そうにするまでマッサージを行った。

 戻ってきた夕弦がその光景を見て、文句を言い、士道は頭を悩ませながら幸福感にひたるのだった。

 

 

 

「夕弦、少し付き合ってくれないか」

 

 朝5時。士道にしては早い目覚めに合わせたかのように、夕弦も起きた。昨日楽しみすぎたせいで耶倶矢はまだ疲れて寝てしまっている。

 あの後疲れ果てていた士道は流石に夕弦の相手はできなかった。だから代わりにつ疲労困憊のままあられもない格好の耶倶矢を酒の肴に、暫らく晩酌に付き合うことで妥協してもらった。

 士道も疲れていたはずだが、温泉の効能か思ったより疲労が取れている……疲労は。

 実際、夕弦も眠そうだし、士道も眠い。それでも顔を合わせるとそんな言葉が思わず口をついた。夕弦は一瞬意外そうな顔をしたが、何となく察したのであろう、すぐに耶倶矢を起こさないように、静かに最低限の身支度を始めた。

 

 この時期とは言え、夜明けはまだ過ごしやすい。まして海辺は風も強く、二人は海岸までの道を心地よく歩く。夕弦も目的地は分かっていたようで二、三言話した後は黙って士道の隣で手をつなぎ歩いた。

 

 そうして暫らく、たどり着いた。暗い空と海を切り裂くような朝焼け。まるでここから世界が始まるかのような、ここではただ波が満ち引きする音だけが許される。

 士道も夕弦も何も言わず、ただこの光景を眺め続ける。

 どれほど時間が経ったのだろうか、夕弦が疑問を口にする。

 

「質問。澪もこの光景をみたのですか」

「いや、あれは昼間だった。俺も今来たら朝日が見れるかも、って思っただけだからな……でも、こうして夕弦と見られて嬉しいよ」

 

 そうですか、とだけ言う夕弦。どことなく満足気で、握る手の力が強くなったような気がするのは多分気のせいではない。

 

「……昨日さ、夕弦に澪の事を聞かれてからずっと考えてたんだ。俺澪のこと思っていたんだろうって」

「……」

「言った通りだ。いまさら澪に関して何か言うつもりはない……と考えていたんだけどな。実は一つだけ澪に言っておきたかったことがあるんだ」

「……それは?」

「俺を産んでくれてありがとう。おかげで俺は夕弦にも、耶倶矢にも、みんなにも会えた。だから……俺は幸せだ。例え澪がどんな意図であったとしても」

 

 夕弦は何も返さない。ただ、赤く照らされる彼女の顔と握りこむ手の感覚があるのみ。

 やがて夕弦は腕を抱き込み、顔を士道の方にもたれ掛けた。士道もだんだんと感じる日の暑さと、夕弦の体温の温かさを心地良く思った。

 

 こうして五河士道は自分の伴侶に、母ともいうべき人物の墓参りを行いに来たことを明かしたのだった。

 

 

 

 旅館に戻ってきた夕弦は、すでに起きていた耶倶矢に出くわす。どこに行っていたかは、わかっていたようだ。

 

「だから、心配いらないって言ったじゃん」

「同意。そうですね、士道が余りにも何か考え込んでいるようだったので」

「士道が夕弦じゃなくて澪を今でも思ってるって?」

「追加。夕弦だけでなく耶倶矢もです。夕弦は士道に一番大切にされていますが、二番目は耶倶矢でないとダメです」

「う、うん。その……ありがと……これは亡くなったお母さんへの挨拶的なものになるのかな? 俺の結婚相手です、一生幸せにしますみたいな」

「……耶倶矢。訂正。士道とも相談しましたが、夕弦は士道と籍はいれませんよ?」

 

「……え?」

 

 

 

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