王宮は、【オルクス大迷宮】等とは比べ物にならない危険地帯である。
王都に戻ってから十日が経過した今、ハジメは、骨身に染みるほどそれを実感していた。
「ハジメ様、おはようございます♡ うふふ、朝からとってもお元気ですね?」
「おほっ」
毎朝、ベッドで目を覚ますと瑞々しい女の子の肢体が目に入る。クラクラするような瑞々しい女の子の匂いと、魅惑の肌色が身体に纏わりつき、生理現象などが理由ではない朝勃ちが起きる。
無論、床を共にした女の子がそれを見逃すはずがなく、果敢にスッキリさせてくる。
ハジメの一日は、始まりからして爛れていた。
今朝は香織が、積極的にお大事を咥え込み、邪淫を絞り出そうとフェラチオをしてくれる。
「ちゅぽ、じゅぷっ、ふぅっ……まあ、こんなにパンパンだなんて……♡
昨夜も、あんなにいっぱい出しましたのに……ふふっ、流石はハジメ様ですねっ♪」
絶倫と褒められるのが嬉しくない男はいない。この気持ちを言葉ではなく行動で示した方が、香織が悦ぶと知っているハジメは、彼女の身体を抱き寄せ、そのままベッドの上に押し倒した。
キョトンとする美少女の唇を奪い、朝から膣に男性器をインサート。
「んっ!? はむ、ふぅうっ、ハジメ様ぁ……そんな、いきなりわたくしの中に挿れるなんて、情熱的すぎます……♡」
挿入されて1秒でチンポ堕ちしてしまう聖女様。彼女の姿は、もはや聖女ではなく性女である。
そんな彼女を満足させるためにも、ハジメは、朝からせっせとピストン運動に勤しんだ。
「ああ、うはっ、すげー気持ちいい……!」
「わたくしも、ハジメ様が奥までいっぱいで……蕩けてしまいそうです……!」
一事が万事、この調子なのである。流石に、チンポが乾く暇もない、とまでは行かないが、昼休みに数回抜いてもらう、程度だった元の世界の生活と比べると不健全極まりないわけで。
一昨日は、雫に挿入したまま眠ってしまった。最高の抱き枕である。朝起きて、朝勃ちがジャストフィットしていたのには驚いたものだ。
勿論、こんなことではいけない。
いくらハジメが間抜けでも、十日もすれば危険性に気付く。
何せ十日間、オマンコにチンポを突っ込む以外のことを碌にしていない。
健康的で最高だが、文化的ではない生活。
そんなことを考えながら、気持ちよく腰を振っていると、香織が頬を膨らませる。
「もう、子作りの時くらいは、わたくしのことだけを見てくれないと……めっ! ですよ」
「お、おっと、ごめんごめん。ちょっと、これからのことを考えてて」
「これからのこと……ああ、赤ちゃんのことですね! そんな大事な事を考えていたなんて……わたくし、最初の赤ちゃんは女の子がいいです。でも、双子だったら、もっと嬉しいなあ……今生でも、いっぱい、赤ちゃんを作りましょうねっ! サッカーチームが出来るくらいっ!」
「え、あ、うんっ」
「それでは早速、愛の結晶を作りましょう、ハジメ様っ♡」
絡み付く腕の力が強まり、貪欲な膣がペニスを締め付けてくる。
甘美な摩耗が、震えるような快楽を呼ぶ。
ハジメは夢見心地で、ぐっぽぐっぽとモノを抜き差し、蕩けるような気持ちで射精した。
純真無垢な聖女様の子宮に、朝の一番搾りを流し込んで気分はスッキリ。
賢者タイムに突入したところで、慌てて思い返す。やっぱり、このままではいけない、と。
「というわけで、冒険だと思うんだよ」
「もげるといいわ」
所変わって王宮の食堂。朝食を摂りながら、恵里の見事な切り捨てである。
「まあ、その、なんだ……余は何だか、コメントし難い。少なくとも、外に出ようと思っただけ、貴様にしてはマシではないか?」
「ううむ、発情期のウサギとか、ネズミを思い出すのう……」
散々な言われようだった。
しかし、この十日間の有様を思い出し、ぐうの音も出ないハジメである。
「雫、貴女も何か言いなさいよ。恋人でしょ? 一つや二つ、言いたいこともあるんじゃない?」
「まあ、言いたいことがないって言ったら嘘になるけど……私、南雲君のそういうところも含めて好きになっちゃったから……」
「「「「マジで?」」」」
驚愕のあまりに目を見開く残り三人の問題児と、そう遠くない場所で朝食を摂っていた優花。
常識人にして苦労人であるはずの彼女が、まさかそんなことを理由に惚れていた……!?
「その……雫よ、余もあまり、露骨な言い方は避けるが、その……ううむ……こやつの怪物級の体力や、人体の神秘に惚れたとなると、問題が……」
珍しく言葉を選ぶ康介は、何だか子供向けの性教育のような言葉遣いである。
一方の恵里は、ブレることなくド真ん中にストレートを投げつけた。
「同性として言うけど、絶倫だからって男を選ぶの、あんまり良くないと思うのよね」
「わしも、そういうのだけで番を選ぶのはどうかと思うがのう……」
「これに関しては、そこのボンクラ共と同意見よ。雫、少し考え直した方がいいと思うわよ?」
「そ、そういう意味じゃないわよっ!! な、南雲君の、困ってる女の子を放っておけないところとかが素敵、って……確かに、女好きでだらしない人ではあるけれど」
雫は顔を真っ赤にして、必死に四人の疑惑を否定した。大袈裟に手を振り、ポニーテールがひゅるんと揺れるように動いては「違うわよ!」とアピールする。必死過ぎて逆に怪しい。
実際、雫自身にも心当たりはある。ハジメとのセックスは、信じられないほどに気持ちがいい。
ネット等で調べた話では、女がその気になった頃には男は満足している、なんてことが多いそうだが、ハジメは、自分がその気になると益々元気になって、腰が抜けるほど愛してくれる。
「ま、確かにそれは同感かな」
懐疑の視線を向けられる雫に助け舟を出したのは、苦笑いを浮かべるキリカだ。
「私は彼と付き合ってる訳じゃないけど……それでも、きちんと女の子を守ってくれるところは素敵だと思うよ」
「女の子を守る、ねえ……それなら、光輝はどうなのよ?」
「論外」
即答。恵里の言葉に、雫は残酷なまでに正直で容赦のない評価を下した。
「光輝に夢を見ていたこともあるけど……それも、道場に入門したばかりの頃の話よ。だって、光輝がもたらしたのは、私に対するやっかみだけだったから」
思い出す。痛みを伴う記憶を。冷えていく女の子達の眼差しを。
「小学生の頃から正義感と優しさに溢れ、何でもこなせる光輝は女の子達の注目の的だったわ。髪は短く、服装は地味、剣のことばかりで女の子らしい話題にも付いていけない私がどうして、そんな彼の傍にいるのか。女の子達には我慢ならなかったのね。結構な嫉妬を浴びたのよ」
その頃は稽古のために髪を切り揃えており、服装も地味なものが多く、可愛いというより美人系の顔立ちだったこともあって、女の子らしさというのは彼女とは縁のないものだった。
そんな雫が、小学生の頃から人気のあった光輝と一緒にいれば他の女の子達が黙っているわけもなく、子供故の残酷さが雫を襲った。
陰湿で、まだ幼い故に加減を知らない残酷さは、容赦なく雫を追い詰めた。
「おまけに、私って当時は不器用でもあったのね。上手く対処できなくて……」
「あのバカチンは何もしなかったの? 幼馴染の女の子が困ってるっていうのに」
「もちろんしたわ。私に嫉妬している女の子達に、私と仲良くしてくれと頼みに行ったのよ」
「「「「うわぁ……」」」」
雫の返答に、初めて雫の事情を聞いたトラブルメーカーズの三人と優花がドン引きする。
どう考えても、それで雫の問題が解決するはずもない。実際、事態は悪化した。雫に対する風当たりはより一層強くなり、繊細な女の子の心は言葉の刃に切り刻まれた。
それ以上光輝に相談しても、光輝にとっては解決済みのこと。返ってくるのは困ったような笑みばかりで、いつしか雫は光輝に頼ることをしなくなった。
そんな生活が暫くの間、続いた。そして、四年生の時、雫は彼女の”王子様”と運命の出会いを果たすことになる。熱を帯びた瞳をハジメに向ける。
「助けてくれたのは、南雲君だったわ。他の女の子達から私に対する態度を教えられた香織が、そんなの関係ないとばかりに、私のところに彼を連れて来てくれたのよ」
今でも、鮮明に覚えている。
前々から、きっと同じクラスになって香織が雫を知る前から、雫は香織を知っていた。
ほのかな嫉妬と共に。
キラキラした女の子だと思った。男の子にすら見えると言われる自分とは住む世界の違う本物の女の子だと思った。それこそ、まるでお姫様のような。
何の関係もないと分かっていて、それでも、雫は香織を直視できなかった。真っ直ぐな心も向けられなかった。香織が近くにいるだけで、誰かが香織を褒めるだけで、ドロリとしたものが心の中に湧き上がりそうで、そんな自分が嫌で、だから同じクラスになっても避けていた。
なのに、香織は、そんな雫のささやかな防壁など何の意味もないと言わんばかりに、一人の男の子を連れて、簡単に踏み込んできたのだ。
『可愛い……』
『ですよねっ! こんな女の子を男の子みたいだなんて……皆さん、失礼にも程があります!』
『それは失礼……! こんなに美人さんで、何処からどう見ても素敵な女の子なのに!』
それが、最初に聞いた、二人から雫への言葉だった。
最初は厭味かと思った。他の女の子のように、こんなお姫様みたいな子まで私を傷付けるのかと、雫は絶望にも似た気持ちを抱いた。それが杞憂であることは、その後の二人の行動によって否応なく分からせられたのだが。
『雫様は、本当に髪が綺麗ですね』
『雫って、いい匂いがするね』
『一緒に、お買い物に行きませんか?』
『わっ。その服、凄い似合ってるよ』
『ダブルデート、でしたっけ? 三人で遊びに行きましょう!』
『両手に花……! すっげー、夢みたいだよ!』
毎日毎日、二人は飽きることなく雫のことを徹底的に女の子として扱った。人間不信から意固地になっていた雫も、二人に向けられる本心からの好意の言葉に段々と気を許していった。
何よりも嬉しかったのは二人が自分の事を女の子として扱ってくれたことだ。道着や和服ではなくフリルの付いた可愛いお洋服を着せてくれて、可愛い人形やキラキラしたアクセサリーをプレゼントしてくれた。
自分を、女の子にしてくれた。そんな二人に、雫が心を許すのは当然の成り行きだった。
「二人が、私を女の子にしてくれたのよ。髪を伸ばし始めたのも二人のおかげだし」
「どういうこと?」
「南雲君が、長い髪が似合いそうなのにもったいないな~、って言ってね。私はお祖父ちゃんから剣術をやる上で短くするように言われていたから、それは出来ないって言ったんだけれど……」
むっ、とした表情を浮かべたハジメは昂ぶる感情のままに八重樫流の道場に突撃した。
そして、焦って止めようとする雫を振り切り、「たのもーっ」と道場破りの如く乗り込むと、警察のお偉いさんにすら”先生”と畏敬の念を抱かれる鷲三へ、両目をかっと見開き、全身全霊を込めて吠えたのだ。
『長髪の美少女剣士の何が悪いんだ!!!!!』
『『『『『……は?』』』』』
その場にいた全員がポカーンと口を開いたのは言うまでもない。しかし、この男は気にした様子も見せずに美少女剣士の浪漫と、如何に雫に長い髪が似合うか、多くの門下生がいる前で力説。
憎からず思っていた男の子が他ならぬ自分の魅力を力説している。それを聞かされた雫は顔を真っ赤にして、全身が燃えるように熱くなった。感じたことのない感情が胸の中で暴れ回るのを感じて、どうしたらいいかわからなくなった。
「……貴様、またやらかしていたのか」
「姫騎士の件で懲りなかったの?」
「馬鹿は死んでも治らないとはこのことじゃのう」
「うっせーやい! 雫みたいな女の子が長髪NGなんて世界の損失じゃんか!」
「うわっ。逆ギレしたわよ、このヤリチン」
「おいそこ! 俺はヤリチンって名前じゃねーぞ!」
開き直り、己の性癖をぶち撒けるハジメ。
その姿は、恵里の言う通り、逆ギレしたヤリチン以外の何者でも無かったが。
「まぁ、そんなこんなで南雲君のことを好きになってね……今では、彼以外の男性と付き合うなんて考えられないわ。ましてや、光輝のことをそういう対象と意識したりはできないわね」
恋は盲目。苦笑いを浮かべつつ、彼の本心からの褒め言葉に胸が熱くなるのを感じていた。
「……どうしてだ。俺は、君のことを助けたはずだろう、雫……?」
偶然、その会話を耳にした光輝は、普段の輝きとは程遠い暗く沈んだ表情をしていた。