※この作品はR-18です。

短編置き場   作:赤坂 通

1 / 2
媚薬香漬け黒天使

 

「今作ったNo.531のシェルターに入ってくれるぅ?」

 

 ある日、廃人のご主人から声をかけられた。

 

 私のご主人は、シェルターに籠ったら最後、数年は出こない。

 最後にまともに会話したのも何年前の事だったかしら。

 

 たまに出てきたと思えば、ふらふらと外を出歩いてまたシェルターに戻っていく。

 すくつにすら最近は潜らないでシェルターに籠りっきり。そんな冒険者。

 

 廃人となってからどれだけ過ごしていたのか。

 やる事もなくなって、たまにふらりと目覚めて暇つぶしの様に少しだけ……といっても数万とかの単位だけれど……ハンマーで皮を叩き出したりとか。

 別のシェルターに入ったら収穫の魔法を唱えまくっていたり、突然顔を上に向けて指で何かをなぞるように動かしていたら、急に私みたいな姿の神様を作っていたり……。

 

 自由気まま、というよりは何をしようかずっと悩み続けているような感じ。

 

 そんなご主人が急に。

 久しぶりに皮叩き用のシェルターから出てきたと思ったら、別のシェルターを作っていつものようにしばらく籠って、出てきたと思ったら声をかけてきたのだ。

 

「……………………は?」

 

 だから、久しぶりの事過ぎてしばらくは声が出なかった。

 目を丸くしてまじまじとご主人の顔を見つめてから言われた言葉を反芻する。

 今作ったシェルターに入れ? 

 何を考えているのだろう。少なくとも碌な事ではない気がする。

 

 何せ、「抱き枕……」と呟いたかと思ったら、冒険者にしたりモツ抜きだったり……あらゆる手段で、他の黒天使を使ってもいいだろうに、私だけで集めた素材で私の姿の人形を作って致すような馬鹿だ。

 

「えぇと、断ったり、は……」

 

 物凄く嫌な予感がして聞いては見たけれど、答えはいつの間にか音もなく移動して、シェルターの前で顔をこっちに向けながら体育座りするご主人の姿が物語っていた。

 多分、入らないと次の何かを思いつくまでじっとあそこでこちらを向いて座っているだろう。

 それはそれでちょっと楽しそ……いや、流石に気まずい。

 

 読んでいた『かたつむりでも出来る! 簡単、冒険者の殺し方!』の本を閉じて、ため息を一つ吐いて、シェルターの扉に手をかけた。

 

「*ワクワク*」

「ワクワク、じゃないのよご主人……」

 

 ゆっくりと階段を下りる。階下から少し、甘い匂いが漂ってくる。

 何かしらのお菓子? 

 ご主人はお菓子も好きだし、単に何かを作ったから私に食べてもらいたがってる? 

 それとも、もっと別の何か? 

 

(甘い匂い、甘い匂い……。何かしら?)

 

 そんな風に考えを巡らせながら階段を下りていると、上からシェルターの扉が閉まる音が聞こえた。

 振り返る必要もない、閉じ込められたのだろう。

 閉じ込める意味は? まだよくわからない。

 

 中はシェルターの初期の姿とほぼ同じだった。

 変わりがあるとしたら、机と……香炉と、深皿? 

 香炉から薄くピンク色をした煙が漂っており、深皿の中には赤い血のような物がなみなみと注がれてある。

 嫌な予感はしつつも、香炉に顔を近づけて少しだけ嗅いでみた。

 

「お香? また変なカスタムアイテッ……!?」

 

 気づいた時に、すぐに鼻を摘まんで呼吸を止めて机を蹴り飛ばした。

 香炉が倒れて香炉の中身の粉末が漂い、バシャッと音を立てて皿から零れた液体と混ざり合う。

 液体がぶくぶくと泡立ち、先ほどよりも濃いピンク色の煙が湧きだして漂い始めた。

 

 ──体が熱い。

 

 即効性の高い香、ご主人がハーブを使って調合したのだろう。

 悪趣味な事だ。ふと思いついて、『媚薬の香』的なのを作ったのだろう。

 それなら媚薬を使えばいいだろうに。何故お香にしたのか。

 

 一瞬嗅いだ香りと体に現れた効果から推測する。

 大量のアルローニアとモージア、あと少しのマレイロン……あとは多分、クラムベリー? 

 あの液体は何だろうか。記憶にある媚薬の色合いではない。

 染料を使って色を変えた可能性はあるが、だとしても嗅ぎ慣れたあの匂いを間違えるとは思えない。

 

 思考を回しつつ、階段を急いで登ってシェルターの扉を開けようとしたけれど、押しても押しても開く気配がない。

 ご主人が上から抑え込んでいるのだろう。

 

「っ……はぁ……ぁ───ッッ!!?」

 

 息を止め続けられない。覚悟して一息吸うと喉が焼けるように熱くなる。

 小さく息を吸えばよかった。いや、だがそれも無駄だろう。そうか、そういう事か。

 シェルター内を媚薬で並々と満たすのは簡単だろう、だが、そんな事をしては入る前から私に気付かれて、私にシェルター内に蹴落とされるだけだ。

 香りだけなら、警戒も薄い。

 現に私はまんまとご主人の考えに引っかかった。

 

(───本当に、本当に悪趣味ッ!)

 

 机の上に置かれた香はブラフ。気づいた瞬間、私が間違いなく机を蹴倒す事を想定した上での二段階の罠。

 馬鹿なご主人の癖に、私が取るだろう行動を嫌というほど理解している。

 ほんの少し嗅いで、息を吸っただけだというのに汗が滴る。

 媚薬じゃない……これは『トロールの血』の効能? 

 体がうずく。おそらくは数十年ぶりの感覚に体が震える。

 

「……はぁっ……はぁっ……ぁっ」

 

 先程まで息を止めていたというのに、鼻を摘まむ手も緩み、小さく息をしてしまっている。

 自然と口角が緩む。自由な片手が自分の体をなぞろうとする。

 そんな自分に嫌気が差す。

 

「く……ぅ、開け、なさいッ!」

 

 なんとか意志を振り絞ってドンドン、とシェルターの扉を叩くが反応はない。

 煙はシェルターの床で漂っている。空気よりも重い、出来るだけ離れているのにそれでもここまで漂う気持ち悪い程の甘ったるい匂いだけでこれだけ体が反応しているのだ。

 もし降りようものなら、媚薬漬けよりなお酷い事になるのは目に見えている。

 怒りがこみあげてきていたその時。シェルターの扉が勢いよく開けられた。

 

「……ご主じッ!?」

「ちゃんと下に降りてぇ?」

 

 反応が遅れた。

 開けられた扉からご主人の手が伸びてきて私の胸をトン、と叩く。

 力が入らない、踏ん張りがきかない。階段から私は転がり落ちた。

 

 煙の中に、落ちたのだ。

 

「───ぁあッ!!」

 

 背中から床に叩きつけられ、息が漏れ小さく悲鳴を上げる。

 同時に、無慈悲な扉の閉まる音がシェルター内に響いた。

 

「…………ぁ」

 

 吸ってしまった。叩きつけられて漏れ出た息の分だけ体は空気を求めて吸い込んだ。

 じわじわと脳が蝕まれる。霞がかった景色が開けるように瞳孔が開き、視界の端がパチパチと煌めく。

 

「ぁ、ひ……ぅっ……」

 

 体がビクン、と跳ねた。そこからの反応は早かった。

 

「─────ッッッッ♡♡!!!! ♡??」

 

 足がピン、と伸びて絶頂した。

 ぷしっ、ぷしゅっ、と数度潮を吹いた。

 反射的に体を丸めたが一度反応した体は止まらなかった。

 

「は……ぁぁあッ♡♡!!! っうぅぅ───ッッ♡♡!!」

 

 歯を食い縛るが、耐えられるようなものではなかった。

 浅く、しかし何度も、何度も繰り返しイき続ける。

 イク度に何度も息を吸う、吸う程により、より深く強く体が反応する。

 2度、3度とイキながらも体を捩ることで膝を付き、半ば倒れ込んでいるような四つん這いの体勢になった。

 なんとか、なんとかして立ち上がりたい。せめて立ち上がれれば、この煙から少しでも遠ざかれば──ー。

 ガクガクと震える足と腕に力を籠める。

 

「んぅ……あっ、ぃァッ♡♡♡!!!!」

 

 先程蹴倒して零れた液体で濡れた床で手が滑り、バシャリ、と顔から液体に顔が浸かった。

 ほぼ同時に、ブシュッ! と情けなくも派手な音を立ててイった。

 籠めた力が一気に抜けた。べしゃりと床に倒れたまま震える事しか出来ない。

 

「は、ぁあ……イッ♡……く……♡ぅ……♡♡」

 

 暑い。体が熱い。

 脳が焼ける、視界の端がチラつく。

 思考がまとまらない、きもちいい。

 口角が上がる、表情が緩む。

 

 きっと、ご主人にも見せられないくらいだらしない顔をしているのがわかる。

 

 ただ、ただ、きもちいい。

 

 仰向けになって、天井を見上げた。

 

「あ、はは……ぁ♡」

 

 震える両手を天井に向けて伸ばす。

 

 息を深く、深く、吸うたびに、すう、たびに。

 

 あぁ、きもちいい。

 

 涙が零れた。頬を伝う感覚がする。

 

 それすらもきもちいい。

 

「ごしゅじん?」

 

 けむりのはしに、ごしゅじんのすがたがみえる。

 

 ごしゅじん、きもちいい。

 

 ひさしぶりに、してくれるの? 

 

 ……ごしゅじん? 

 

 

 

 

 ──────。

 

 

 

 ───。

 

 

 ─。

 

 

 

 

 *

 

 

 

 しばらくして、あなたはシェルターの扉を開けた。

 怪電波があなたの脳に送ってきた「エッチな気分になるアルローニア」というフレーズから導き出された、

「エッチな気分の黒天使????????」という疑問に答えを出す為に、黒天使を思いつく限りエッチな気分になりそうな諸々を色々混ぜ込んだ煙漬けにしてみる案は成功しただろうか? 

 途中、逃げ出そうとしてたから思わず突き落としてしまったが、そもそも無事だろうか? 

 体力は減っていなかったから階段から一回落ちた程度では死なないはずだが、もしかしたらという事もある。

 まぁ死んでたら復活の書でいいか。そう思いながらシェルターを開けて中に入った。

 

 はたして。

 中には間違いなく黒天使の姿がある。あるいは黒天使だったモノだろうか。

 

 ソレは仰向けで股間に手を伸ばし、息を荒げながら必死にぐちゅぐちゅと激しい音をたてながら自らの陰部を抉るように自慰にふけっていた。

 普段の冷静沈着で、人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべながら罵倒しつつ蹴り飛ばしてくれる黒天使の姿はなかった。

 性欲に身を任せた、あなたの知らない黒天使の姿があった。

 

 その姿を見てニヤリ、とあなたは笑みを浮かべて服を脱いだ。

 あなたも混ざろうと思ったのだ。

 

 しかし、これは黒天使のえっちな自慰を書きたいという思いから書かれた話である為、これに混ざろうとするあなたは犯罪者だ。

 警告する。あなたは自慰に混ざろうとしている。犯罪者は殺される。

 

 警告されているが、それでも自慰に混ざる? 

 

 yああ◇

 nいや……

 

 あなたは突如謎の光に包まれて死んだ。さようなら…… 遺言は? 

 

「黒天使バンザイ!」

 

 あともう少しで埋葬される……

 あなたは埋められた。さようなら……

 

 




私の書いてる別の作品とは
多分きっとおそらく関係ありません。
きっとそうです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。