あなたはまたふと思いついた。
いや、今回は特段えっちなやつではない。
黒天使が耳元でささやいてくれたら、なんだか今日イけそうな気がする。
あると思うのだ。
今回はえっちなやつではないといったが、もしかしたらえっちな奴かもしれない。
さて、何を混ぜる?
*
──だいたい10分後。
「それで? なんだかうまくいかないから手伝ってほしいと?」
「えぇそうなのぉ」
「……前に酷い目に合わせた本人に頼むかしら普通」
「けど、断らないでしょぉ?」
「………………まぁ、えぇ」
またご主人が変な事を言い出した。
私のささやきボイスを聞きながら寝たいというのだ。
別に、ご主人が望むならそういう意味で寝るのも……って違う違う。
「えぇ、と。 とりあえず欲しいのはどういう薬なのかしら?」
ご主人を問いただして、いったいどういう薬にしてみようと思ったのかをそもそも聞いてみた。
前みたいにあまりにも酷い効果を狙っているのだとしたら流石に止めようと思うのだけれど……
「声が良くなるやつとかぁ?」
……それなら変異とか進化のポーションで良性変異で魅力を足す効果でいいんじゃないかしら?
その言葉をぐっとこらえて考える。
おそらくご主人の事だ。
ご主人の考える事よりも、もっともっとずっと凄い効果を……。
例えば、『天使の涙』に、『唸る草』……『フェアリーダスト』なんかもいいかしら。
それを砕いた『魔力の結晶』と混ぜ合わせて『聖なる草』と混ぜたら『お湯』に溶かして……
*
──おおよそ1時間後。
「……なんかすごい事になったわ」
「ヘェーラロロォールノォーノナーァオオォー♪」
「驚くほどご主人がバグったわ」
出来上がった謎の試薬を嬉々として飲んだご主人が物凄い美声で歌いだした。
というより言葉がすべて歌声に変換されている感じかしら?
「とりあえず『ハイ』って言ってもらっていいかしら?」
「ヘェーラロロォールノォーノナーァオオォー♪」
「いいわわかったから黙りなさい。その口を閉じなさい」
高らかに歌われてしまった。
「……どう治そうかしら」
「ヘェーラロロォールノォーノナーァオオォー♪」
早急に治そう。そう固く誓って、ご主人の集めたマテリアル達をもう一度広げた。
元に戻すなら、『記憶の欠片』とか、『トロールの遺伝子』とかいいかしら?
*
──もう1時間後。
「ヘェーラロロォールノォーノナーァオオォー♪ ヘェーラロロォールノォーノナーァオオォー♪ ヘェーラロロォールノォーノナーァオオォー♪ ヘェーラロロォールノォーノナーァオオォー♪ ヘェーラロロォールノォーノナーァオオォー♪ ヘェーラロロォールノォーノナーァオオォー♪ ヘェーラロロォールノォーノナーァオオォー♪ ヘェーラロロォールノォーノナーァオオォー♪ ヘェーラロロォールノォーノナーァオオォー♪ ヘェーラロロォールノォーノナーァオオォー♪ ヘェーラロロォールノォーノナーァオオォー♪」
「ごめんなさい、本当に黙って貰っていいかしら?」
悪化した。最悪だ、本当に最悪。もうどうしようもない。
ずっと歌っていてあまりにもうるさい。
本人が無表情で高らかに歌っているのが何よりもムカつく。
「………………」
見ていたら腹が立ってきた。一向に黙らない。
「なんだか、『わめく狂人』みたいね」
マテリアル、『わめく狂人』。説明は「黙らない」とだけ書かれている。
今のご主人に似ている。
そのマテリアルは頭蓋骨に似た形の石で、耳を澄ませて聞くとずっとワーワーと何かを遠くで叫んでいるような音がするからそう呼ばれている。
痛む頭を押さえつつ、その石を持ってご主人の前に立った。
「ヘェーラロロォールノォーノナーァオオォー♪?」
「なんで疑問形を使いこなせるようになってるのよ」
「ヘェーラロロォールノォーノナーァオオォー♪!」
「ちょっとその口閉じてもらえるかしら」
面倒くさくなったから、『わめく狂人』を口の中にねじ込んだ。
ご主人は息継ぎのタイミングでそれを飲み込んで、喉に詰まらせて死んだ。
体当たりで助けようかと少し思ったけれど、うるさいからどうでもいい。
この間の仕返しだ。
少しでも反省してくれればいいのだけれど。
何か書いてるうちによくわからなくなった