「先輩知ってますか? さくらんぼの茎を口だけで結べる人は、キスが上手いらしいっすよ」 作:猫語呂師団
原作:CeVIO AI
タグ:R-18 オリ主 CeVIO AI CeVIO 小春六花 高校生 学校
「先輩知ってますか? さくらんぼの茎を口だけで結べる人は、キスが上手いらしいっすよ」
同じ部活の後輩である小春六花は、なぜか毎日この場所で僕と一緒に昼食を食べていた。だがある日こんなことを言われ、彼女のキスの上手さを体感することになり……。
「そう……なんだ。それで?」
彼女はわざとらしくため息をつき、首を左右に振った。僕にはこの問いに対する最適解は見つけられそうもない。それは相手が後輩で、しかも女の子だからだ。
昼休みの体育館裏は春の陽気がポカポカと心地いい。ここには草地のなだらかな斜面と木陰があり、その他には古びた階段が一つあるだけだ。正面には学校と街を隔てるこんもりと茂った森が、そして左右には脱走防止なのか不審者を入れさせないためなのかよくわからないフェンスが連なっている。校舎からも校庭からもアクセスの悪いこの場所は、人が滅多に来ないことで有名だ。それはこの学校で二年過ごしてもなお、一人の友人も作ることのできなかった僕には都合のいい話だった。
僕は毎日四時間目が終わると、弁当をひっつかんで真っ先にこの場所に来る。どうせ教室にいても話し相手など誰もいないのだ。それなら一人きりになれるこの場所で、パンを食べながら小説でも読んでいた方が少しは楽しめるではないか。
ところが最近、僕のお気に入りの場所の平穏を乱す輩がいる。それが現在進行形で話しかけられている、真横にいる後輩の女子生徒だ。確か名前は小春六花といった。
「それでじゃないすよ先輩。そんなことしか返せないから、友達いないんじゃないすか?」
「いなくて悪かったな」
ニヒヒと笑って彼女はさくらんぼを口に入れた。一度果肉のみを食べ種を取り出すと、茎をひょいと口に入れてもごもごとやり出した。
僕はため息をつき、菓子パンの最後の一口をミネラルウォーターで流し込んだ。まったくこんな場所にいて何が楽しいのか僕には理解できない。僕なんかといるより、教室で同級生とだべっている方が百万倍楽しいだろうに。
初めて彼女と出会ったのは、春に行われた部活動の顔合わせだった。この高校ではなぜだか部活動への入部が強制させられていて、それは中学校でも友達のおらず、高校でも当たり前のように孤立していた僕にはつらい話だった。しかし教師に反発する勇気も、ルールを変えてやると意気込んで生徒会に入る高い志もあいにく持ち合わせておらず、様々な折り合いを考えた結果、僕は写真部に入ることを決めた。部紹介パンフレットの隅の方に描かれていたイラストを見て、どことなく僕にふさわしいような気がしたからだ。その予想は見事に的中し、写真部は部としての活動はほとんど行われていないというのが現状だった。部員は三年生と二年生が一人ずつ。その三年生は受験を理由に早々と引退し、二年生は所属はしているが活動には来ないという所謂幽霊部員状態になっていた。部室内には「××コンクール優勝」と台座に掘られたトロフィーが転がっていることから、過去にはそれなりに結果を残していたのだろう。だがそれも過去の栄光に過ぎず、今ではまともな部員は僕ぐらいしか残っていなかった。そんなときに入部してきたのが、彼女だった。
「よろしくお願いします、先輩!」
彼女が発したその声は、重く澱み、澱のように空気が凝り固まっていた部に風を吹かせた。少なくとも僕にはそう感じられたのだ。僕はその一件からは心を入れ替え、第二の幽霊部員ではなく一部員として、毎週水曜日の活動を実施してみたりもした。彼女は案の定というかやはり毎週部活に来た。活動らしい活動はできなかったが、それでも放課後の校内でちょっとした撮影会をやってみたりと、それなりに楽しい活動をすることができた。
ある水曜日の放課後、僕たちは撮影会を終えて部室で帰り支度をしていた。家に置いてあった安いデジカメをリュックサックに仕舞い、さあ帰ろうというときに彼女から声がかかった。「一緒にお昼ご飯を食べたい」、と。その頃の僕は自分の立ち位置を把握できるようになっていたから、彼女のそれもただからかうためだけに言った言葉なのだろうと理解した。僕は冗談半分で「体育館裏で待ってるよ」とだけ返した。しかしその次の日、やはりいつものように体育館裏でパンを食べていると不意に彼女の姿が見え、危うく喉を詰まらせてしまいそうになった。これが何を意味するのかはどうであれ、少なくとも彼女のあの言葉の意味は本当だったのだ。その後もこの奇妙な関係はずっと続き、今の今まで雨の日以外はここで一緒に昼飯を食べていた。
「ほーら先輩、見て下さいよ」
ペットボトルのキャップを閉めてから左を向く。彼女は得意げな顔で、きゅっと結ばれた茎を舌の上に載せていた。
「おお、凄い……のかな?」
ぱちぱちと軽い拍手をして見せた。彼女は得意げに頷いたが、正直僕にとってはさくらんぼの茎など微々たる問題だった。僕の目は、茎の周囲に広がっている彼女の口内に釘付けになった。
先ほどまで茎をいじっていたせいか、唾液が舌や歯に絡みついて妙にてらてら光っていた。口の奥の、充血した肉がちらりと顔を覗かせている。唇はほんのりと赤い。彼女も他の大多数の生徒と同じように、校則違反である化粧をしているのだろうか。
「……先輩」
彼女から声がかかる。その口の動きで凝視していた自分に気付き、僕は慌てて目線を外した。
「そんなに茎が珍しいんすか? それとも……」
彼女は膝立ちでこちらに近づき、耳元に件の口を近づけて
「私とキス、したいんすか?」
女子高生の馴染みのない制服が肌に擦れる。これまで嗅いだことのない甘い匂いが、僕の真横からぷんぷん漂って来た。
女子とまともに会話したことがない僕にとって、毎日のように行われているこの昼食会は、僕の精神を最大限に削ってきていた。それでも最近は何とか慣れ始め、彼女ともまともな会話ができ始めたところであったが、そのような長きにわたる苦労はこの瞬間にあっけなく崩れ去ってしまった。
心臓がどくどくと脈打っている。昔読んだ小説の中に「鍛冶屋のふいごのように脈打つ」という表現があったのを覚えているが、まさしく今の僕ではないだろうか。
「いや……、その、そうだ、うん。さくらんぼの茎なんて結んだことなかったからさ、珍しくてつい──」
「ふーん?」
とんっ、と左頬に何かが当たった感触を覚える。咄嗟にそちらを向くと、右手で唇を拭いながらニヤリと笑う彼女の姿があった。
「今の、どうすか? あんな一瞬で、しかも頬っぺたになんかじゃ、上手いか下手かなんてわかんないすよね? ……もう一度訊きますけど、キス、されたいんすか?」
彼女は大胆不敵な笑みを浮かべていた。僕は咄嗟に頭の中で遊女という単語を思い浮かべた。彼女の何がこの単語を思い浮かばせたのかはわからないが、しかしそれでも、彼女が全身から立ち上らせている"女"の魅力は、僕の身体に強く巻きついて離そうとしなかった。
僕はそれが何を意味するのかを深く考えずに、つい頭をがくりと振ってしまった。
「それじゃ、目、つぶってください。私も少し恥ずかしいので……」
彼女はそのしなやかな腕を、僕の首元にぐるりと回した。腕に力が入る。眼前に彼女の整った顔が浮かび、僕は慌てて瞼を閉じた。
唇になにか柔らかいものが当たった。それはこれまで触れて来た、どんな柔らかいものよりも柔らかかった。朝露に濡れた若草のような湿り気と、軽く力をこめるだけで壊れてしまいそうなそれは、僕の唇にぴったりと重なった。
その中に、僕は熱いものを感じた。それはこれまでの経験とは全く真逆の存在だった。燃えるような熱と、それに見合わない充分な弾力性をもったそれは、二枚貝のように閉じられた唇をゆっくりとこじ開け、その内部へ侵入していった。それは彼女の舌だった。舌は僕の口内に入り込むと、おっかなびっくりといった様子で動いた。やがて僕自身の舌を見つけ出すと、始めはそろそろと、やがて大胆に、舌同士を絡めるようにしてそれは動いた。まるでそれ自身が意思を持っているようだと僕は思った。
唇は近すぎず遠すぎずの距離を保ち、常に充足感を満たしてくれていた。舌は口内をじっとりと這いまわり、ある時は舌同士をゆっくりと絡ませ、ある時は唾液を押し出すようにして動いた。それが本当に上手いキスなのかどうかは僕には判断しかねるが、それでも僕は十二分の快楽をそこから感じ取った。やがて彼女から口を離してくれた頃には、熱気と快感で倒れそうになってしまった。
「どうすか? 先輩」
彼女は頬を赤らめながらそう訊いた。
「あの……ごめん、初めてのキスだったから、あんまりわからなかった。……でも、その、き、気持ちよかったです──」
まだ彼女の舌の感触が消えない口を、僕は必死に動かした。そうでもしないと、どうにかなりそうなほど気持ちがよかったのだ。
「先輩、やっぱり初めてだったんすね。良かったですねえ、私みたいな美少女にリードしてもらって。これで次キスするときに、迷わなくて済みますね」
彼女ははにかみながらそう言った。
僕はと言えば、それに対して何も返すことができなかった。ここで気の利いたセリフを一つでも言えれば彼女も喜ぶのだろうが、僕にとってそんなことは到底出来そうもない。僕は相変わらず初めての経験に圧倒され、ただぼんやりとその場に座ることしかできなかった。
遠くからチャイムが聞こえて来た。授業五分前を知らせる、予鈴というやつだ。
「あ、もうこんな時間なんすね」
彼女は立ち上がってお尻を払い、荷物を手に持った。そしてしばらく思案すると、未だ座り込む僕の口に、唐突に二回目のキスをした。それは一回目とは違って触れるか触れないかという軽いキスだったが、僕の唇はそんな刺激にも敏感に反応し、思わず彼女を抱きしめそうになってしまった。
「ねえ先輩。キスだけじゃなくて、もっと気持ち良いことしたくないすか? ……言わなくても大丈夫すよ、その顔見ればわかります。お預け食らった犬みたいでちょっとかわいいすね。──それじゃあ、放課後にまたここに来てくれますか? 今日はいつもより授業が一時間少ない日すから、それまで待てますよね? この続きは放課後にしましょう。それじゃ先輩、また後で」
彼女は自分の荷物を抱え、太陽が差し込む体育館裏から抜け出していった。
僕は相変わらず地面にへたり込んでいたが、やがて次の授業を受けるために体育館にやってきた他学年の声が聞こえてくると、不意に我に帰り大慌てで教室に戻って行った。
◆
今日は確かに、いつもより一時間授業が少ない日だった。普段の僕ならラッキーだと思いながら適当に授業を受け、その後ゲームを楽しむために一目散に家に帰っただろう。しかし今の僕の頭の中は彼女のことでいっぱいで、数学や化学に全く身が入らず、今日だけで三回も注意される羽目になってしまった。ようやく帰りのHRが終わった時、僕はリュックサックをひっつかみ、いつもとは別の情熱を持って校舎内を突き進んだ。
「あ、先輩。やっぱり来てくれたっすね」
彼女は既に校舎裏に到着していた。
「良かった。これで来てくれなかったら、どうしようかと思ってましたよ」
体育館の壁にもたれかかっていた彼女はよっと身体を起こして僕の眼前に近づき、その潤んだ瞳を上に向けながらニヤリと笑った。男女の平均身長に漏れることなく、彼女と僕との身長差は少しばかりあったから、それは所謂上目遣いの形式を取っていた。僕の理性はそれだけでも零れそうになったが、すんでのところでそれを抑えた。
「それじゃあ早速続きを、と言いたいところなんすけど……この場所じゃあんまりよくなさそうすね」
彼女の言葉はもっともだった。この場所に人が寄り付かないのはあくまで日中だけのことであり、放課後になれば裏の体育館には部活をしに来た運動部員たちがわんさか押し寄せて来る。勿論この場所にだって、ランニングやらなんやらで人が訪れてくるはずだ。そんな場所で逢瀬をするわけにもいかず、僕たちはしばし悩んだ。
「あの……それじゃ、北校舎のトイレに行かない?」
「あっ、それいいすね。ナイスアイデア」
彼女は指をぱちんと鳴らしてみせた。この高校は二年程前に工事を行い、校内の設備を新しくしていた。その内の一つが最新式の綺麗なトイレだ。元々あった陰気臭い便器や床は取り払われ、今では明るくて清潔なトイレが顔を覗かせている。そしてその中には、男女別のトイレだけではなく、男女兼用の多目的トイレも増設されていた。放課後のトイレ、ましてや移動教室しかない北館には、滅多に人が寄り付くことがない。そんな場所であれば、この後如何なる行為に及んでも誰からも咎められることはないだろう。
僕たちは荷物を持ち、そこここから声が聞こえてくる放課後の学校を移動した。これでもし隣にいるのが見知らぬ女子生徒だったなら僕は後ろ指を刺されていただろうが、毎週の撮影会が功を奏したのか、このアンバランスな二人組に気をかける生徒は誰もいなかった。そして無事に件のトイレに二人で滑り込み、扉の鍵をガチャリとかけると、僕はほっと溜息をついた。
「こんな場所に女の子を連れ込んで、しかも鍵までかけるなんて。先輩、一体何をするつもりなんすか?」
彼女は一つだけある便器に坐って軽口を叩いていたが、鍵を閉め終えて荷物を降ろし、いざ彼女に向き合うと、先ほどと同じように僕の眼前に立った。
「それじゃあ始めましょうか。……まずは何からしたいですか、先輩?」
「じゃ、じゃあ、キスを……」
「先輩ほんとに好きっすね。──それじゃ、しますよ?」
今度は目をつぶらなかった。そのお陰で、彼女の整った顔が間近に迫ってくるのをまじまじと見ることができた。前髪が額に擦れてくすぐったい。閉じられた彼女の瞼や、薄鼠色の眉が目の前でゆっくりと揺れていた。
唇の感触は僕に前より新しい快楽を伝えて来た。キスをするたびにその感覚は変化し、きっと百回キスをしても百回とも違う感覚を感じられるだろう。
僕は相変わらず棒立ちでキスをしていたが、これが三回目なのだという事実と、ここが密閉された空間であるという二つのことが、僕に多少の勇気を与えた。僕はそろりと腕を持ちあげ、目の前にいる小柄な後輩の背中にゆっくりとそれを回した。そして壊れやすいものを抱きかかえるように、おっかなびっくり回した腕に力を込めた。
「んっ」
彼女が短くうめく。痛かったのかと慌てて腕を離しそうになるが、キスは継続しているので、えーいままよと僕は彼女の身体をぎゅっと抱き寄せた。彼女のそれは不安になるぐらいに細かった。僕が強く抱きしめればぽっきりと折れてしまいそうな程に脆く、華奢な身体が腕の中にあった。それは言うなれば相手に生命線を差し出しているようなもので、そんな状態でもキスを止めようとしない彼女は僕に対して少なくともキライという感情は抱いていないのだろう。
腕の中には男子と生物学的に違う柔らかな身体と、どこでも嗅いだことのない心地よい香りがあった。女子の過剰摂取で僕は危うく倒れそうになったが、一分一秒でもこの感覚を味わっていたいと回した腕にさらに力を込めた。
いつまでそうしていただろうか。ふと我に帰り慌てて腕を落とすと、彼女はゆっくりと口を離した。
「先輩、どんだけキスが好きなんすか。こんなに長くキスするなんて、よっぽどっすよ」
彼女はそう言いながら平気そうな顔をしていたが、その一方で僕はかなり前からある生理現象に悩まされていた。いくら服の下で起こっているとはいえ、こんなにも密着していれば彼女の目にも簡単に入ってしまう。案の定彼女は僕のそれに目ざとく気付き、いたずらな笑みを浮かべた。
「先輩……ここ、こんなになっちゃってますよ。そんなに──私に興奮したんすか?」
耳元でひゅっと息を吹きかけられながらそんなことを言われ、僕の理性はもはや風前の灯火だった。彼女はそれすらも察しているのかそれ以上煽るのを止め、僕を連れて壁際に移動しそこへ坐ることを持ちかけた。このトイレは乾式仕様になっているし、何より利用者が少なく新品同様に輝いていたので、それに躊躇することはなかった。
彼女は坐り込んだ僕の前に回り込むと、ベルトを外し、ズボンをゆっくりと引き抜いて行った。キスにより既に固くなっていた剛直は、パンツを押し上げるように屹立していた。
「それじゃ……パンツも脱がせますね?」
僕に拒否権は無かった。仮にあったとしても、それを使おうとは微塵も思わなかっただろう。
彼女がパンツの上側に手をかけ、そしてそれをずらしていく。黒く固い剛直がゆっくりと姿を表し、パンツを膝辺りまで下げると彼女は手を放した。
彼女の顔には笑みが浮かんでいた。しかしそれは、先程までの無垢な笑みや、男を手玉に取って楽しむような笑みではなかった。男性器を目の前にした一匹の雌の、妖艶で淫らな笑みだった。
「痛かったらすぐに言ってくださいね……」
彼女は小声でそう呟いた。そしてプレゼントを早く開けたいと焦る子供のように、その真っ白な手を僕のそれに近づけた。
ひんやりとした彼女の指が剛直に巻き付いた。これまで経験したことのない類いの感覚が伝わってくる。普段ノートを取り、箸を操り、スマホを弄っているその手が性器に触れているという事実は、僕を堪らなく興奮させた。
彼女はふっと息を吐くと、巻き付けている右手を軽く握り直し、ゆっくりと上下に動かし始めた。柔らかな指としっとりした手のひらが撫でるように刺激する。指は竿をぎゅと握るように動いたり、亀頭の出っ張りを引っかけるように動いたりした。僕のそこからは既に液体が滲んでいた。所謂"先走り液"というそれは、彼女によって剛直全体に塗り広げられ、よりいっそう摩擦を少なく、快楽を大きくさせた。
「先輩のここ、もうガチガチっすよ──」
彼女はそう言いながらも刺激を止めようとしない。彼女は恍惚とした表情のまま、剛直を手で擦り続けた。
細くしなやかな指は剛直の形に沿うようにぴっちりと張り付き、その状態で上下に動いた。それは単調な上下運動ではなく、牛の乳搾りのように微細な変化を伴っていた。根元や竿の中ほどでは指をきつくぎゅっと締めつけ、先端付近や亀頭を刺激する際はその握った手の人差し指と親指をしぼませて、押しつぶすように刺激を与えてきた。
それは普段部屋で行っている自慰の何倍も気持ちのいい刺激だった。異性の、それも後輩の、真っ白でシミ一つないすべすべの手のひらが竿を握る度、亀頭を撫でる度、危うく射精してしまいそうになるほどの快感が腰に流れた。
早々に射精してしまったら彼女から笑われてしまうかもしれない、という考えが僕の脳裏をよぎった。しかしそんな事すらも彼女にはわかり切ったことなのか、僕が射精すまいと性器に力を入れ、腰をずらす度、ピンポイントで気持ちの良い場所をその手のひらで押しつぶしてきた。
「もうイきそうなんすか? ──いいんですよ、先輩、我慢しなくても。ちゃんとこの先もしてあげますから、イっちゃいましょう、ね?」
彼女は刺激を止めずにそう言った。
とっくに我慢の限界を迎えていた僕は、その言葉と彼女の柔らかい手の感触をきっかけに、異性によって導かれた初めての絶頂を迎えてしまった。
剛直がどくどくと脈打ち、尿道から白い精液があふれ出してくる。それは普段と比べると、目で見てわかるほどに濃く、量の多いものだった。
彼女は僕の剛直を右手で握ったまま、左手で精液を受け取った。
「うわぁ、これが精子ですか……」
彼女の手のひらには僕の精液が乗っていた。白くダマになっているそれは、手のひらに留まらず、指の隙間から徐々に漏れ出そうとしていた。
唐突に、彼女は左手を口元へ近づけた。そして手のひらに乗ったそれに慈しむように口づけをした。
ぐちゅり、ぐちゅりとゼリーを潰すような音がトイレに響く。流石に味は良くないのか彼女は苦い顔をしたが、それでも吐き出すことなく口の中のそれを飲み込んだ。綺麗な彼女は、歯も舌も食道も僕の精液で汚れてしまった。
「うーん……、あんまり美味しいものではないすね」
「別に飲まなくてもよかったのに」
「でもクラスの女子の間では、みんな飲むって言ってましたよ」
高校一年生なのに、だろうか。ひょっとすると高校生というのは僕が思っている以上にませているのかもしれない。
僕の剛直は、一度出したにも関わらず依然と固さを保っていた。出した精液によって竿先がヌラリと光っていて、性器のグロテスクな質感を増していた。そこには未だに快楽の余韻が残り、たまゆらの風がトイレ内の空気をかき回す度、僕のそこにはチリチリとした快感が走った。
「さ、先輩、立ってください」
床に座り込んでいた僕は彼女に手を引かれて立ち上がった。
次に僕は、部屋の中に一つだけある便座に座らされた。勿論下半身は裸のままで、座った僕の足の付け根からは、今なお剛直が立ち尽くしていた。
彼女は僕の目の前に跪き、剛直のすぐ前に顔を置いた。
「先輩、さくらんぼの茎を口だけで結べる人は、キスの他にもう一つ上手いことがあるんすよ。……何かわかります?」
ここまでされれば、察しの悪い僕でも彼女が何を言いたいのかがわかった。そしてそれは、僕の剛直に再び熱い血を巡らせるのには充分すぎる言動だった。
彼女は左手で剛直を支え、それと対面した。「ほう」と艶っぽい息を吐いた。そしてこれから自分の口内を犯す相手に、優しく口づけをした。鈴口に彼女の唇が触れ、熱い吐息が直に当たった。先走り液や精液で濡れていたそこからはちゅっと湿った音がした。彼女は服従の意思を示すように幾度も音を響かせキスをし、そこに残っていたものを口に納めた。
彼女は右手で髪を耳にかけながら、左手で剛直を支え、先ほどまでキスをしていた口をあんぐりと開き、暗く落ちこんだ口内にそれを咥えこんだ。
途端、剛直にこれまでと比べものにならない程の快楽が流れた。彼女自身の唾液によって濡れている口腔は僕の剛直を捉えて放さず、舌や歯が意識せずとも端々に当たり、手とは全く違う刺激を与えてきた。
思わず顔を歪ませる。彼女はそんな僕の様子を見て満足そうに頷き、口に剛直を咥えたまま「先輩、気持ちいいですか?」と訊いた。口に物を咥えながらのためそれは潰れて聞き取りにくかったが、そのような行為ですら喉の振動を剛直に与えるだけで、僕は快楽に溺れそうになりながらガクガクと頭を振ることしかできなかった。
彼女は剛直を咥えこんだまま、ゆっくりとそれへの刺激を開始した。始めに強く感じたのは、剛直を包み込む熱だった。柔らかい肉の中には、人肌より少し高いくらいの温度が込められていた。唇は竿部分をしっかり挟み込み、指とは別種の圧迫感を伝えきた。舌はアイスキャンディーを舐めとるように剛直を上下に動き、頭もそれにつられて動いた。彼女は口で息ができない分、鼻で荒い呼吸を行っていた。口が剛直をすっぽり飲み込むと、彼女の鼻元が陰毛の辺りに触れ、それをさわさわと揺らした。
後輩の女子生徒が自分の股間の前で跪き、性器に対して奉仕をしてくれているというこの光景は、どこか非現実感を伴っていた。彼女は剛直を丹念に嘗めしゃぶり、主人の欲求を満たそうと自分の持つ最大限の能力を振るっている。舌が剛直を舐めとり、歯が剛直を擦り、唾が剛直を濡らす度、剛直はびくりと跳ねた。
彼女の言葉通り、それはキスと同じかそれ以上に妙技だった。舌はまるでそれ自身が意思を持っているかのように動き、剛直を優しく、そして強く刺激し、射精を促した。彼女の舌が剛直を一舐めする度に、舐められた部分の輪郭が無くなって、中身が融け出していくようだった。
彼女は刺激を変化させた。先ほどまでは剛直全体に這わせていた舌を、先端部分にのみ集中して当て始めた。ただでさえ女の子の手によって射精させられ敏感になっていた亀頭に、彼女の舌のざらざらとした感覚が、生暖かい唾液を通して存分に伝わってきた。舌は亀頭を型に沿って丁寧に磨き上げ、鈴口のあたりを舌の先端でチロチロと舐め回した。舌はただ柔らかいだけでなく筋肉の心地いい固さも兼ね備えており、僕は一瞬でその快楽の虜になってしまった。
そんな風に舐められてすぐ、僕は射精しそうになった。
「くぅっ……」
熱っぽくうめき、下腹部に生まれた射精感を思う存分に解消しようとする。だがそんな僕の感情は、彼女の刺激の中断と共に急速に小さくなっていった。
「ど、どうして……?」
出せそうで出せなかったもどかしさから、僕はなんとも情けない声で彼女にその理由を訊いた。彼女は口の端から唾液を零しながら、ゆっくりと剛直を口から抜いた。
「駄目じゃないですか先輩、女の子のお口に勝手に出しちゃったら。……それに今出したら、いくら性欲の強い先輩でも次は持たないでしょ? だから今は我慢して、次もっと気持ちよくなりましょうね」
彼女は僕の剛直を撫でつけながらそう言い、そして僕に便座から立つように言った。先ほどまで口内でいじめられていた快楽が逃げ場を失って腰のあたりで滞留し、立ち上がるのもやっとという状態な僕は、真横に備え付けられている手すりにつかまって慎重に立ち上がった。
「あの、先輩。……あんまり見ないでくださいね。その、わ、私も、恥ずかしいので……」
彼女はそう前置きすると、腰のあたりに手を伸ばし、身につけている制服のスカートをするりと降ろした。その下には教室での井戸端会議でぼんやりと聞こえてきていたように学校指定の体操ズボンが履かれていたが、彼女はそれにも手をかけ、ゆっくりと藍色の布を足元へ動かした。
彼女の脚が露わになった。陶器のような滑らかな脚に、肌色のカンバスがしわ一つなく広がっている。それは体育の時に見る男子の筋肉質な脚とは全く違う様相を呈しており、滑らかできめ細やかな芸術品のようだった。
そして何より目を引いたのが、彼女の脚の付け根に見える真っ白な下着だった。彼女がこちらに半身を向けているせいでその全体像を見ることはできないが、大腿と腹を分断するように白い線が見え、柔らかな丸みを帯びた彼女の臀部に沿ってぴっちりと張り付いているのがうかがい知れた。
彼女は頬に含羞の色を含ませ、一度大きく深呼吸をした。そしてその分断している白い線に指を入れ、体操ズボンと同じようにそれを下へ降ろして足首から外した。
彼女の下半身を隠すものは一つも無くなった。すらりと伸びた脚部とその付け根は、今この瞬間外気に晒されてしまっていた。彼女は顔を真っ赤にしながら僕の前を横切り、先ほどまで僕が坐っていた便器に腰を降ろした。女の子座りという膝を内側に揃える座り方をしていて、その付け根には黒いものがぼんやりと見え隠れした。
「せ、先輩。遅くなりましたけど、最後にするのは──ね」
彼女は大腿を徐々に開き、その奥にある女性器を見せつけた。改修工事で新たに設置されたトイレの煌々と輝く明かりの下で、それは少しの陰りも無く的皪と照らされていた。初めて見た後輩のそれは、彼女が脚を開いたことによってぴったりと閉じられた中身が少し零れていた。綺麗に刈り揃えられた黒い毛の下で、赤く充血した肉が顔を覗かせていて、こうしている間にも透明な雫が一滴、つうっと割れ目に沿って垂れ、ポトリと床に落ちた。
その雫が落ちた音が、まさしく理性の糸を切ったきっかけだった。僕は半ば無意識に彼女の元へ歩み寄り、先ほどの寸止めで痛いほどに硬直している剛直を手で支えた。彼女は右手を自分の性器にあてがい、僕の目の前でゆっくりとそれを左右に開いた。そこは既に濡れており、くちゅりという水音と共に彼女の女の部分がゆっくりと顔を表した。盛り上がった肉の中には小さな突起と、そして男性器を迎え入れるための穴があった。
「先輩、いいっすよ……?」
彼女は左手で僕の剛直を支え、その先端をゆっくりと自分の元へ手繰り寄せた。亀頭が女性器にキスをした。ぐちゅりという湿っぽい音がして、彼女は短く「あっ」と喘いだ。僕は彼女に導かれるがままに腰を動かし、ゆっくり、ゆっくりと自らの剛直をその小さな陥没穴へ押し当てた。
始め、彼女の身体は体外から侵入してくる異物に拒否反応を示した。ぴったりと閉じられた肉は剛直を挟み込み、それ以上奥へ進ませまいと入り口を開かなかった。それでも辛抱強く亀頭をそこへ押し当てると、観念したように先端がにゅるりと内部へ入り込み、その異物を迎え入れるべきものなのだと認識した。
小さな肉のトンネルが四方八方から剛直を締め上げた。それは指とも唇とも違う締め付け具合で、男性器を迎えるためだけに作り出されたものだった。折り重なった肉を無理に押し分けているような感覚がして、内壁のうねりや突起が、鈴口や亀頭や竿を無遠慮にぞりぞりと削りあげてきた。
「せっ、先輩、あっ」
彼女は右手で口元を抑えながら控えめにうめいた。もしかしたら痛いのだろうかと心配をするが、彼女の顔には苦痛の色は見られず、むしろこの快感を必死に耐えているような感じがした。
不規則に蠕動する肉をこじ開け、折り重なる筋肉を掘り進めると、剛直はあるとき柔らかい肉の壁に遮られてその動きを止めた。これが話に聞く子宮口というやつなのだろうか。それが正解かどうかを確かめる術は無いが、一つだけ言えることは、この挿入という行為は思っていたよりも大きな快楽をもたらしているということだった。
彼女の中は燃えるように熱かった。それは口内のように外気で冷まされた温度ではなく、身体の内部で保持されている彼女自身の熱だからだ。彼女の羞恥心や色情突発が奮い起こしたその熱は、そもそもの要因である男性器を迎え入れることで発散されようとしていた。
「だっ、大丈夫? 痛くない?」
僕は剛直を締め付ける肉の感覚に必死に耐えながら訊いた。
「ええ、大丈夫っすよ、先輩」
彼女は顔をしかめながら応えた。
「私は大丈夫ですから、好きなように動いてください、ね?」
剛直に伝わる快楽と接合部から立ち昇る芳しい香りに包まれて、僕の理性は既に崩落していた。彼女が落ち着くのを待ってから、僕はゆっくりと剛直を動かし始めた。
彼女の内壁は剛直を決して離さないように締め付けた。剛直を後ろへ下げれば抜けるのを防ぐためかぎゅうぎゅう強く圧迫し、逆に奥へ押し込めばその主を迎え入れようと吸いつくように蠢いた。
「んっ……! せ、先輩……あっ」
彼女の膣が収縮を繰り返す度、あとからあとから、ぬるぬるとした透明な液体が湧き出てきて、剛直の滑りをよくさせた。どろりとした粘性のあるそれは亀頭の溝にまでするりと入り込み、彼女との境目を曖昧にした。それは彼女に挿入しているのだという事実を強く感じさせ、そのために僕の性器はより固くなった。
「すごく濡れてる……」
「せっ、先輩。あんまりそういうのは言わないでっ、ください……んあっ!」
彼女は悩まし気に言った。それでも愛液の分泌は止まることはなく、狭苦しいトイレの中に、にちにちという肉同士が擦れあう音を響かせた。溢れたそれは二人の脚を伝って地面へ流れ、ぽたりぽたりと床に染みを作っていた。
僕は彼女の腰元をしっかりと掴み、痛くならないように優しく、そして自身の性欲を満たすために力強く腰を打ち付けた。彼女のワイシャツのさらさらした生地が手のひらに擦れ、そして腰回りの優美な曲線はそうあるべきだと言うように手にしっとりと張り付いた。腰を打つために回した手に力を込めると、それが合図だと分かっているのか彼女もそのあたりの筋肉にぐっと力を入れた。それでも剛直が膣をごりごりと削りながら奥へ突き進み突き当りへ到達する頃には、快楽に負けて腰をがくがく震わせた。
「あっ、んんっ! せ、先輩、そこ、もっと……あっ」
始めの内は気持ちよさを味わうためだけに一心不乱に腰を動かしていたが、何度もつき動かす度に彼女は泣きそうな顔を見せ、それが僕の加虐心を煽った。もう少しで射精してしまいそうに張りつめた剛直を器用に動かし、彼女があからさまに反応する部分を執拗にこすり続けた。
効果はすぐに現れた。先ほどまでの乱暴な攻めから、気持ちいいところだけを的確に削る攻めに変わると、彼女は先ほどよりも激しく甘い声を響かせた。
「そこっ、ごりごりしちゃ、あっ! 先輩、だめっ! だめぇ、ああっ」
膣がぎゅっと剛直を締め付ける。その力は明らかに強まっていて、亀頭が天井のある部分をこりこり圧迫すると、剛直全体をきゅんきゅん圧迫した。再び剛直を打ち付けようと腰を下げると、肉が剛直全体にまといつき、それを磨き上げるように動いた。膣外へ出ていきそうになるとそれを遮るように肉がねっとりと絡みつき、挿入するととろとろにほぐれた肉が剛直を包み込んだ。
「あっ、んん! あんっ! あっ! 気持ちいよお、んあっ!」
いよいよ僕は我慢の限界だった。彼女の膣内は僕の剛直をねちっこく攻め続けていて、先ほど口淫で射精を寸止めされたこともあり、熱く濃い精液が後輩を孕ませようと盛んに湧き上がっているのが感じられた。
「もうっ……いきそう……っ!」
僕が腰を打ちつけながらくぐもった声でそう言うと、彼女はしどけない様子を晒しながら跳ねた声を上げた。
「先輩っ、あっ! な、中に出してください、んんっ! 先輩の熱いの、私の中にくださいっ、ああっ!」
紅潮した顔からとろんとした目がこちらを見つめた。その視線には敵意や嫌悪は少しもなく、自分より力の強い者に全てを任せきっているという一種の安堵感のようなものが見え隠れしていた。
彼女の膣がひと際強く収縮した。先ほどから剛直に与えられていた快感はその刺激でついに限界に達し、僕は腰をこれまで以上に彼女の身体に近づけ、剛直を膣の奥の奥にまで突き入れ、そしてやはりあの突き当りの柔らかい肉の壁に塗りたくるように、射精をした。
「先輩のがっ、中で……んっ!」
剛直は彼女の奥深くで断続的な長い射精をし、精巣に残っていた最後の一滴までをそこで出し切った。彼女も僕も腰ががくがく震えている。しばらくその状態で待ち続けて、ようやく射精が終わってから僕は剛直を引き抜いた。彼女のそこは最後まで名残惜しそうに剛直に吸い付き、完全に出る瞬間にはぬぷりという水音を響かせた。
僕は手すりにもたれかかって荒い呼吸をした。剛直がバカになりそうなほどの快楽に包まれた余韻が、未だに脊髄を駆け巡っていた。それは彼女も同じなようで、彼女は便器の背もたれに上体を預け、ぐったりと浅い呼吸をしていた。膣からは透明な液に混じって白い液が流れ出し、便器の白い陶器に落ちてそこで目立たなくなった。
「先輩、やってしまいましたね」
彼女は肩で息をしながら言った。僕は何かしてしまっただろうかと冷静に考え込み、そして自分が犯してしまった重大なミスに気付き頭に冷や水をぶっかけられたようになった。
「あ……、どうしよう、か……」
「……先輩、そんなに心配しないで下さいよ。私も危険日にこんなことするような馬鹿じゃないっすから。ちゃんと今日は大丈夫な日っすよ」
彼女はおちゃらけてそう言ったが、僕にとっては何よりの救済だった。
「良かった……」
「大体っすよ、先輩。今回は大丈夫だからよかったものの、女の子の中に勝手に出すなんて本当はしちゃいけないんすからね?」
「ご、ごめん」
「もしするんなら、ちゃーんと責任を取らないと……ね?」
彼女はいたずらっぽく笑った。甲斐性もないこんな身分ではそんな言葉ですら冗談で済まされず、ひとまず安心なのだと大きくため息を吐いた。
彼女は便器の真横に備え付けられているトイレットペーパーをガラガラ音を立てて巻き取り、何層にか重ねたそれを自分の股間に押し当てた。空いている方の手で割れ目を左右に開く。ピンク色の肉が零れそうになり、先ほどまで僕の性器を挿入していた穴からごぽりと精液の塊が漏れ出て来た。彼女はトイレットペーパーでそれを器用にふき取り、最後に股間に新しいトイレットペーパーを抑えたままあの白い下着を履いた。
二人は無言で行為の後始末をした。トイレの床には愛液や唾液やその他色々の液体が飛び散っており、それらを丸めたトイレットペーパーで拭きとる度に自分たちがした行為のことを思い出して羞恥に顔を赤らめた。最後に便器にそれらを落として水を流せば、後には何も残らなかった。正確には彼女の体内には未だに僕の精液が残っていたが、それはさしたる問題ではなかった。
彼女はポケットからスマホを取り出して、電源を入れた。
「あっ、もうこんな時間。先輩、そろそろ帰りませんか?」
「そうだね、それじゃ、また……」
「次の昼休みに」と言いかけて、僕は口をつぐんだ。果たして本当にそれでいいのだろうか。こんな風に告白すらしていない後輩と身体を重ねて、そしてそのことについて触れずにいるというのは彼女の気持ちを裏切ることになるのではなかろうか。ところがそこまで考えても恋愛弱者の自分には最適解を見つけることができず、口をつぐんだまま難しい顔で考えこんでしまった。
「あはっ! 先輩、そんな顏しなくてもいいんすよ?」
彼女はぴょんと跳ねて僕の身体に近づき、すらりとした手を背中に回してぎゅっと力を込めた。二人の身体が密着する。彼女の凹凸やふんわりとした優しい香りが立ち上り、あんなことをした直後であるというにもかかわらず僕は彼女に夢中になってしまった。
「こんなことしちゃいましたけど、別に先輩のこと変に思ってるとかじゃないっすから。むしろ逆だから──わわっ、気にしないでください、なんでもないっすから! ……だからね、先輩。あなたが望むなら、またこういうこともしてあげますから、だから、今の関係は続けてほしいっす」
彼女は多少まごつきながらも、確かにそう言った。
僕にはそれを断る理由はなかった。その言葉の意味を推し量った神妙な顔つきで頷くと、彼女は顔にぱっと明るい表情を浮かばせた。
僕には友達がいない。そして何かが特別できるという訳でもない。しかしこの小さなトイレの中だけには、僕の心を安らげる空間が確かに広がっていた。
◆
荷物をまとめて外に出ると、辺りは既に真っ暗になっていた。僕たちは警備員さんや窓ガラスの隅に貼ってある有名な警備会社のお世話にならぬよう、裏口を通って校内から迅速に抜け出した。
学校から街へは少し距離がある。僕は彼女の横に並んで、何を言うでもなくぼんやりと歩いた。
「うえ、ちょっと漏れてきたかも」
唐突に、彼女は下腹を撫でながら言った。それはあの行為を思い出させるには充分な挙措だったが、さすがにあれだけのことをやった後で、僕の剛直はもう反応しなかった。
「大丈夫?」
「多分……。家に着くまでならなんとかなりそうっす」
「そっか、ならよかった」
夜はまだ始まったばかりだったが、それでも周囲に広がる森の影響もあり、辺りには不安になるくらいの静寂が漂っていた。頭上にはまん丸い月が浮かんでいて、辺りに柔らかな光線を投げかけている。くたびれたブロックを敷き詰めた歩道脇には等間隔に街灯があり、その周辺にスポットライトのように光を落としていた。
「そう言えば、さ」
「どうしたんすか?」
「今日のって、ほんとに大丈夫だったの?」
「まーだ気にしてたんすか先輩。大丈夫っすよ、ちゃんと調べてありますから」
「そういうのって、女の子はやっぱり調べるものなんだ?」
「勿論っすよ。自分で自分のを知っておけば、突然始まって準備が~なんてのを防げますから」
「そっか」
「ひょっとして先輩は、今日みたいのが不満だったんすか?」
「え?」
「ほんとは危険日に出したかったとか? うわあ先輩、とんでもない変態っすね」
「ち、違う違う! そんなんじゃないから!」
「ほんとっすか? そんな風に必死に否定するなんて、逆に怪しいっすけどね」
彼女は笑いながらそう言った。僕は手を左右に振ってそれを否定した。
「まあでも、先輩ならそれでもいいすよ」
彼女は正面を向きながらポツリと呟いた。
「それって──」
「どういう意味?」なんて訊いてみる勇気は、あいにく僕は持ち合わせていなかった。
二人の間に気まずい空気が流れ、会話が途切れた。
朝方は登校する生徒でうるさいくらいのこの道も、こんな時間には驚くほどに静かだった。辺りに響くのは運動靴が道を擦る音、そしてリュックサックの紐が服に擦れる音ぐらいだ。
このままいけば、あと五分もしない内に街へと繋がる大きな交差点へたどり着く。部活動の後に何度か一緒に帰ったことがあるから知っているが、彼女は僕と真逆の方角へ行ってしまう。それは仕方のないことではあるし、頑張ったからと言ってどうこうできる話でもない。けれど、一度は情交を結んだ相手と物理的に大きな隔たりを抱えてしまうというのは、僕の心をたまらなく不安にさせた。今日の経験と今の状況が、僕をほんのちょっぴり勇気づけてくれた。あの時とはまた別の感情の高調を抑えながら、僕は少しばかり震える声で、しかし彼女に聞こえるようにはっきりと言った。
「ねえ」
「ん、先輩?」
「月が、綺麗だね」
「本当に、そうですねえ。こんな綺麗な月はなかなか見れませんよ」
それはイエスなのだろうか、それともノーなのだろうか。これはあまりにも有名な話ではあるが、それ故に普段の会話とも受け取れてしまう。こんな回りくどい告白よりも、もっと直球に言った方が良いのだろうか。
結局それらしい返事も聞けぬまま、僕たちは交差点の手前のカーブまでたどり着いた。ここはまだ静かだが、その角の先ではヘッドライトをつけた車がビュンビュン飛び交っていた。
「それじゃあ、また明日」
「ですね先輩、さよなら。……あ、そうそう、一つ忘れてることがありました」
「忘れてること?」
彼女は立ち尽くす僕の元へゆっくりと歩み寄り、ポカンとした顔に優しいキスをした。
「私……死んでもいいすよ。先輩の為なら」
「それじゃまた明日」という声と共に、彼女は角を曲がって行った。後に取り残された僕は、しばらくその場でぼんやりと彼女の言葉の意味を理解しようとした。そしてその言葉の意味をようやく理解できた時、僕は嬉しさのあまり飛び上がりそうになってしまった。
彼女は今僕から遠く離れている。しかしこのやり取りのお陰で精神的な繋がりができた。それはどこまで行っても決して切れない強固な繋がりだ。
夜空にはやはり月が輝いていた。それは先程と変わらぬ様子だったが、しかし今の僕にとって、その輝きは以前とは変わって見えるのだった。