龍玄の初変身&戦闘シーンですが、作者の技量不足によって何とも盛り上がりに欠けるものになってしまいました。戦闘描写を書くのは本当に難しいです。
というわけで続きをどうぞ!
「よし、抜け出したぞ!」
俺と塔城さんは必死に化け物から逃げて、何とかファスナーを潜り抜けることができた。するとそこには、さっきまで俺がいた場所の風景が広がっていた。
元の場所に戻れたことに内心ホッとする俺だったが、後ろから化け物が追ってきていることを思い出した俺は、塔城さんを連れて近くの物陰に隠れると、できる限り落ち着いた口調で塔城さんに話しかけた。
「塔城さん、俺がおとりになるから、その隙に逃げてくれ」
「え!? 何を言ってるんですか!? そんなことしたらあなたが!」
「だからこそだよ! 俺が奴を引き付けている間に、塔城さんは助けを呼びに行ってくれ!」
「でもやっぱり無茶です! 助けを呼んでいる間に倉岡さんが死んでしまいます!」
「じゃあ他に何か手はあるのか!? このままだと俺たち二人ともやられちまうぞ!?」
「そ、それは……」
化け物に追われている状況だというのに、俺たちの言い争いは加速していく。そうこうしているうちに化け物は俺たちのすぐ近くまで迫っていた。
「とにかく! 俺が何とかして時間を稼いで見せるから、塔城さんは助けを呼んでくれ!」
「……わかりました。絶対に死なないでくださいね」
「大丈夫! 俺だって死にたくないから、全力で逃げまくってやるさ!」
俺はその言葉と同時に、化け物の前へ躍り出る。
「ほら! こっちだ化け物!」
「グルルルルァ!」
俺は化け物を挑発すると同時に、一目散に逃げだした。俺は部活やバイトで鍛えた身体能力を存分に発揮して化け物を自分に誘導する。化け物は吠えながら俺に向かって走ってきた。
「そうだ! もっとこっちこい!」
俺は時々後ろを振り返っては化け物を挑発していく。この調子でいけば塔城さんが助けを呼んでくるまで十分な時間を稼げるかもしれない。
しかし、そんな俺の淡い希望はあっけなく崩れ去ることになる。
「う、嘘だろ……。行き止まり!?」
俺が逃げた先は運悪くコンクリートの壁が広がっていた。俺の足が止まると同時に、化け物も俺に追いついてしまった。
「グルルルルァァ!」
「あ~、なんかめっちゃ怒ってるっぽい?」
化け物は先ほどの俺の挑発が効いていたのかは知らないが、明らかに怒った様子だった。心なしかものすごい殺気を込めた目線を向けられている気がする。
「畜生! こうなったらやってやる!」
とはいえ、俺も大人しく殺されるつもりはないので、俺はその辺に落ちていた鉄パイプを拾って一か八かの勝負に出た。果たしてこんなものが効くのかはわからないが、何も出来ずに殺されるのだけは絶対に嫌だった。
「おらぁぁぁ!」
俺は渾身の力を込めて化け物に鉄パイプを振るった。しかし化け物には全く効いている様子はない。
「ガァァァァ!」
「ごはぁ!」
お返しとばかりに化け物から喰らったパンチは、俺を軽く吹き飛ばすほどの力があった。化け物は追い打ちとばかりに俺の首を絞め、そのまま反対方向に投げ飛ばす。
「うわぁぁぁ!」
俺はコンクリートの壁とは反対方向に投げ飛ばされた。運よく逃げ場を確保した俺だったが、もはや俺には逃げるための力も残されていなかった。
(くそ……ここまでなのか)
俺はすぐそこまで迫る化け物を見て、己の死を予感する。化け物の右手に生えている大きな爪は、一瞬の狂いなく俺の命を刈り取るだろう。
(やっと……あんな息苦しい生活から抜け出して、自由になれたと思ったのに……こんなところで死ぬのか?)
今思えば、俺の人生は碌なもんじゃなかった。出来のいい兄と比べられ、頑張って結果を出しても一切認めてくれない。常に俺は兄の踏み台として育てられてきた。けどこの町に来て、俺の頑張りを認めてくれる人達に会えて、ようやく俺は自分の人生を歩めるんだと思っていたのに。
(…………いやだ)
俺はどうしても認めたくなかった。思い出されるのは、実家を出ていく時に言われた罵詈雑言の数々。
──もうお前のことで悩まなくて済む。
──あなたはもう家族じゃないもの。
──せいぜい底辺らしくみじめに暮らしていくこった。
(…………ふざけるな)
その通りのままここでみじめに死ぬなんて、俺は絶対に嫌だ。
「ふざけるなぁぁぁぁぁ!!」
俺は雄叫びと共に、今まさに俺を狩ろうとする化け物にキックを繰り出した。
「ガァァ!?」
俺の叫びに怯んだのかはわからない。けど俺は確かに化け物に一矢報いた。
(けど、このままじゃ……)
とはいえ、今の状況を打破できたわけではない。どうすれば今の状況を覆せるのか。その時、俺は無意識に腰の方に手を伸ばしていた。
(……いや、まだ手はある)
それは昨日手に入れた不思議なベルト、戦極ドライバーだった。この戦極ドライバーと、さっき手に入れた錠前のようなもの。あれを使えばなんとかなるかもしれない。
(……でもやれるのか? そもそもあの錠前が本当に戦極ドライバーで使えるのか?)
不安はある。もしかしたら無駄な徒労に終わるかもしれない。けど今の俺にやらないなんて選択肢はなかった。
(もとより覚悟の上だ。こんなところで終わるなんざ御免だ! それに……)
──絶対に死なないでくださいね。
「あんなこと言わせといて死んじまったら、死んでも死にきれない!」
覚悟を決めた俺は、ブドウのデザインが描かれた錠前を取り出し、錠前を起動した。
【ブドウ!】
音声が鳴ると同時に、俺の頭上にファスナーが出現し、そこから巨大なブドウが出現した。
「……!?」
化け物は突如出現したブドウに警戒心を強め、それ以上近づいてこなくなった。その隙に俺は、戦極ドライバーに錠前をセットする。
【ロックオン!】
するとドライバーから銅鑼の音が鳴り始める。
(昔見ていたヒーローは確か、こう言ってたな……!)
俺は一瞬懐かしい記憶に思いをはせると同時に、かつてのヒーローが言っていた言葉を叫ぶ。
「変身!」
その言葉と共に、俺はドライバーについている刀のオプション──カッティングブレードを倒す。錠前が開かれると同時に、ドライバーから音声が鳴り響いた。
【ハイィー! ブドウアームズ! 龍・砲・ハッハッハッ!】
俺の頭を巨大なブドウが包み込み、それと同時に俺の体に鎧が形成されていく。そして俺が仮面を被ると同時に、ブドウが鎧として展開された。鎧に包まれたその姿は、まさしく中華の武将を思わせる姿だった。
「これなら、いける!」
「ガァァァァ!」
化け物は姿が変わった俺を見て驚いたようなしぐさを見せるも、だからどうしたと言わんばかりに吼える。
「さっきはボコボコにしまくってくれたなぁ? けどもうさっきのようにはいかないぞ!」
俺は化け物に向かっておもいっきり叫んだ。
「気合入れていくぜ!」
俺は化け物に向かって走り出す。それは俺が思っていたよりもはるかに速く、まるで自分が風のようになったのではないかと錯覚するぐらいだ。
「おらぁ!」
俺はその勢いのままに化け物に向かってストレートを繰り出す。それは化け物の顔に直撃し、化け物を大きく吹き飛ばした。
「ガァァァァ!?」
化け物は自分に起きたことを認識できなかったが、直後に怒りながら俺に爪を振りかぶってきた。
「グルァァァ!」
「そんなもの!」
俺は片腕でその一撃を受け止めると、もう片方の腕で武器を構える。
【ブドウ龍砲!】
俺はブドウ龍砲のトリガーを化け物に向かって引いた。六つの銃口から放たれる秒間100発のエネルギー弾は、化け物を食い破らんと殺到する。
「ガァァ!」
ブドウ龍砲から放たれたエネルギー弾は化け物の胴体に直撃し、化け物は大きく下がった。俺は追い打ちをかけるように化け物に向かって回し蹴りを放つ。しかし化け物は体中から帯状のビームを放ってけん制してきた。
「ぐっ!」
俺はそれをもろに喰らってしまい、大きくのけぞってしまう。化け物は畳みかけるように攻撃を仕掛けてくるが、一瞬の隙をついて化け物の胴体に蹴りを入れて距離を取った。
「とどめだ!」
俺はカッティングブレードを倒してエネルギーをチャージする。
【ハイィー! ブドウスカッシュ!】
「これでも喰らえ!」
俺はブドウ龍砲のトリガーを引いてエネルギーを収束させていき、限界まで収束させたエネルギーを化け物に向かって放つ。そのエネルギーはまるで龍の息吹のように化け物を包み込み、その瞬間、化け物は跡形もなく爆散した。
「ふぅ……。なんとか倒せたな」
俺は化け物を倒したことを確認すると、錠前を閉じて変身を解除する。すると何者かが後ろから思いっきり抱き着いてきた。
「倉岡さん! よかった! 無事だったんですね!」
「あぁ、塔城さん。化け物は何とか倒したよ。それより塔城さんこそ大丈夫?」
「私なら大丈夫です。……ごめんなさい」
「ん? どうして謝るんだ?」
「私、あの後倉岡さんが心配で、こっそりついていったんです。もし倉岡さんがやられそうだったらいつでも助け出せるように。でも私は、あの化け物が怖くて見ていることしかできませんでした。結局助けも呼べずに、このまま倉岡さんが殺されるのを黙ってみているしかなかったんです」
塔城さんはどうやら何もできなかった自分を責めているようだ。
「気にする必要なんかないぞ塔城さん。正直俺もビビりまくってた」
「え? でも倉岡さんは」
「たまたまうまくいっただけだよ。このドライバーと錠前がなければ、あっけなく殺されていたさ。錠前なんて君と出会ってなければ手に入らなかったかもしれない。けどこうして君も俺も助かったんだ。本当に良かったよ」
「……優しいんですね。倉岡さんは」
「そうか? 俺は思ったことをそのまま口に出してるだけだぞ?」
とにもかくにも、化け物は倒した。あの謎の森とか果物とかまだまだ謎は多いけど、今はただ無事を喜びたかった。
「さて、それじゃ帰るか。塔城さんは家はどこらへん? 途中まで送っていくよ」
「……その、倉岡さん」
しかし塔城さんから帰ってきた言葉は予想外の言葉だった。
「家には住んでません」
「……え?」
「そのままの意味です。私には帰るところがありません」
「ちょ、ちょっと待て。それってマジなのか?」
「……はい」
塔城さんは苦々しい顔をしながらそう言ってくる。けど生まれてこの方家に女の子を上げたことのない俺に、彼女を家に誘うのはハードルが高すぎる。とはいえこのまま帰るのもなんだか違う気がする。少し考えた結果、
「……塔城さん。もしよかったらうちに来ないか?」
結局自分の家に上げることにした。このまま外で塔城さんが野垂れ死ぬことになったら、あまりにも寝覚めが悪すぎる。
「……いいんですか?」
「あぁ。といってもしばらくの間だけど、塔城さんが良ければ」
「おねがいします。ここ最近ちゃんとした物を食べてないので……」
少し顔を赤らめながら、塔城さんは頷いた。
「よし、そうと決まればさっさと帰ろうか。塔城さんは何か食べたいものとかある?」
「とりあえず美味しい物ならなんでもいいです。それと倉岡さん」
「ん? なんだ?」
「私のことは小猫でいいですよ。いつまでもさん付けなのもちょっとおかしいですし」
「……わかった。じゃあ俺のことも光弘でいいよ。改めてこれからよろしくな、小猫!」
「はい! よろしくお願いします、光弘さん!」
こうして無事に生き残った俺は、小猫と一緒に自宅への帰路に就いた。とりあえず帰ったら風呂浴びないと。あの化け物との戦いで結構汚れちまったし。
次回はR18描写にいけるかも?
小猫のキャラって本当にこれであってるのか不安。もし違っていたら(できるだけ優しめに)ご指摘お願いします。