※この作品はR-18です。

仮面武闘演戟 カラー・オブ・ザ・ブラッド   作:水ようかん -Mzyukn-

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1. 象牙の塔 後編

 

「お前、自分の命とあのガキの命どっちが大切なワケ?」

 少女の背中を見送る立香の隣に、バーヴァン・シーが竪琴を掻き鳴らしつつ降り立った。

「それは、もちろん両方だよ」

「だったら、さっきのアレは何?」

 彼女の言う「アレ」とは、おそらく身を挺して少女を助けようとした時のことだろう。

「自殺行為だって? 半分はそうかもしれないけど、残りの半分は、皆を信じてたから」

「…………マジで吐き気がする」

 ガスガスガスガスッ! と足元で蠢くオートマタの四肢に追撃の棘が降り注いだ。それらは地面に杭を打ったように縫い付けられる。

 

 周囲一帯の襲撃対象であろう一般人が避難し終えたからか、オートマタの大群は徐々に立香及びサーヴァント達へと目標を変更していく。それ自体は、避難優先の戦闘より、サーヴァントによる迎撃が容易いため問題はないのだが……。

「マスター君! こいつら倒しても倒しても勝手に修復して数が減らないんですが! もしかしてこれがゾンビってやつですか!」

 XXの報告の通り、砕け散って沈黙したはずのオートマタは、その悉くが、独りでに欠片同士が集まり、また元のオートマタとして彼らを襲っていた。

「おそらく、まずそのデカい像を倒さなきゃいけないんだと思う!」

 オートマタと同時発生した、異様にして威容の墨色の石膏像が、首(しゅ)魁(かい)として活動しているのではないだろうか。であれば、それを撃破しない限りは際限なくオートマタは復活してくるだろう。

「こんなゴールデンなデカブツと相撲たァ、腕が鳴るねェ! これが黄金体験(ゴールド・エクスペリエンス)ってヤツか!」

 しかし幾ら音に聞こえし坂田金時であろうと、身の丈五メートルを越える敵と正面切って戦うのは難しいだろう。立香は、オートマタの迎撃全てをバーヴァン・シーに任せ、墨色の石膏像へは金時とXXの二人がかりで対峙するよう指示した。

 

「バーヴァン・シーの掃討にも限界がある、宝具ですぐに決着をつけよう!」

「OK、カッ飛ばすぜェ! ――『夜狼死九(ゴールデンドライブ)・(・)黄金疾走(グッドナイト)』!!」

「了解です! ――『蒼輝銀河(エーテル宇宙)即ち(然るに)コスモス(秩序)』、ツインミニアド・ディザスターッ!!」

 金時はゴールデンベアー号に騎乗し、距離を空けてから助走して突撃、XXはロンゴミニアドを展開して斬撃を繰り出す。

 

 同時に行われた二人の宝具解放に、墨色の石膏像は抵抗する素振りを見せず、無抵抗にも直撃して粉砕された。墨色の石膏の破片があちこちに転がり、粉塵が舞い上がった。

 またその間も、間断なくオートマタによる攻撃は続いており、粉塵の帳(とばり)を諸共切り裂くように、風の刃がそれらを切り刻み続けていた。

「……なぁんだ。案外呆気ないじゃないの」

 隣で竪琴を爪弾きながら、バーヴァン・シーが呟く。

「いや、駄目みたいだ」

 やがて煙が晴れ始めるが、その中には果たして、先刻と同じ姿で佇む石膏像の姿があった。

 あれは首魁ではない? ではどうすればあれを撃破できる? 他にこれらのエネミーを取り纏める存在が? 通常の戦闘で倒せないのは、この特異点の特性故だろうか?

 疑問は尽きず湧いてくるが、それらを解決する術も情報も今の立香には不足していた。

 

「どうするつもり? あの脳筋バカ二人がダメなら、私がやったってどうせムダだろうし」

 他人事のように言うバーヴァン・シーを見て、立香は一つのことを思い出した。それは光明と呼ぶには微かで、しかし暗闇の中で確かに輝く一縷の可能性。

「バーヴァン・シー、君にやってもらうしかないかもしれない」

「はぁ? どうしろって言うワケ?」

 彼女は眉を顰めた。

「レイシフト直前に、女王モルガンから受け取った礼装があるだろう? それしかない」

「あー、アレ? わざわざお母様の手を煩わせるまでもなくやれるってことを見せたかったんだけど、しょうがないか」

 バーヴァン・シーは、モルガンから手渡された、青と黒の斧(ふ)槍(そう)のような礼装を手にする。

「でもコレ、どうやって使うか何も聞いてないんだけど」

「形と大きさから気になってたんだけど、それ、腰の前に翳(かざ)してみて」

「こう?」

 すると途端に礼装からベルトが伸び、バーヴァン・シーの腰に巻きつき、固定化した。

"術式展開許可、承認"

「ちょっと、何コレ!? なんか喋ってるし、外れねぇんだけど!」

 狼狽するバーヴァン・シーの手が斧槍の部分に触れる。

"展開シークエンス、起草(Initium)"

 音声が流れると、礼装から青黒い影が溢れ出し、徐々にバーヴァン・シーの全身を覆う。

「バーヴァン・シー、礼装の部分、何か動かせない!?」

「いや目の前が真っ暗でそれどころじゃ――コレか!」

 訳が分からないまま、バーヴァン・シーは立香に言われた通りに斧槍部を強く握り、それを扇のように展開した。

"擱絶(Finis)"

 すると、彼女を覆っていた青黒い影が吹き飛び、

"Est etiam sine fine iter"

 暗紅色の甲冑のような装束を全身に纏ったバーヴァン・シーの姿が露わになった。

「………………何コレ!?」

「仮面ライダーだー!!」

 

 バーヴァン・シーの困惑と立香の快哉を余所に、墨色の石膏像はこちらへ歩み寄ってくる。

「あぁもう、こっちはそれどころじゃねぇんだよ!」

 バーヴァン・シーは、横薙ぎに繰り出された拳を苛立たしげに蹴り上げ、同時に自身の周囲に深紅の刺棘を浮遊させ一気に飛ばした。

 すると驚くべきことに、それまでは破砕される度に復元して再び襲ってきていた墨色の石膏像とオートマタは、変身したバーヴァン・シーによる損壊の部分からのみ、墨のような液体を噴出させていた。

 どうやらバーヴァン・シーの使用している礼装は、通常倒しえない敵に対して特効のような性質を発揮しているらしかった。

「さっすが、お母様直々の礼装ね! 最っ高じゃない!」

 カァン! とバーヴァン・シーが地面をハイヒールで鳴らし、それに呼応するかのように、墨色の石膏像とオートマタの全てを、地中から突き出した棘が檻と磔を作り出し、拘束した。

「アッハハハハハ!」

 滑るようにそれらの間を疾駆し、心臓に杭を打つように棘がオートマタを穿ち貫いていく。それを受けたどれもが、やはり墨色の粘液を噴き出し、やがて跡形もなく消滅していった。

 何十体も現れ猛威を振るっていたオートマタの大群は、バーヴァン・シーが駆け抜ける数秒の間に、悉くが打ち倒された。

 鮮血と墨の飛沫を上げ、バーヴァン・シーは遂に墨色の石膏像を残すのみとなった。

「お前は派手にブチ殺してあげる!」

 宙空に舞い上がったバーヴァン・シーは、礼装の展開された斧槍部を格納、再展開し、

"Promissum est fatum et specimen se intersecare"

「死に曝(さら)せよ、クソ野郎――『世に悉く法を押し広げよ(ディラータ・レクス・トート)』!!」

 青黒い影を纏ったバーヴァン・シーが、ハイヒールに影を収束させると共に推進力として後方に射出した蹴(しゅう)撃(げき)が、墨色の石膏像の胸部を破砕、一瞬遅れて全身を爆散させた。

 

 その見事な活躍を目の当たりにした立香は、墨の雨が降る中、着地して礼装の展開を解除したバーヴァン・シーに駆け寄って言った。

「プリキュアじゃなかったね」

「は? 知らねぇよ」

 




次回は前後編に分けなくてもいいんじゃないかな知らんけど
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