※この作品はR-18です。

絶頂❤️首都圏 エロ体験短編集 アブノーマルは突然に❤️新作はイラスト付き   作:みなぽん

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とある技能実習生の転落 ベトナムから来た娘 埼玉県草加市

午前五時二十分。

 

まだ空が薄い青色を残したまま眠っている時間に、リンは目を覚ました。

 

「……もう朝?」

 

六畳ほどの部屋。

 

窓の外には、まだ誰も歩いていない住宅街が広がっている。

 

日本に来て一年と三か月。

 

それでも、目覚まし時計が鳴る少し前に目が覚める癖は治らなかった。

 

ベッドから起き上がり、カーテンを開ける。

 

日本の朝は、ベトナムの朝とは少し違う。

 

空気が冷たい。

 

季節によっては、息が白くなる。

 

最初に日本へ来た冬、リンはそれだけで驚いた。

 

「寒い……。ベトナムより、ずっと寒い」

 

あのときは、同じ寮に住む先輩のミンが大笑いした。

 

「リン、日本の冬はもっと寒いよ」

 

「これより?」

 

「もっと」

 

「……帰りたい」

 

そう言って二人で笑った。

 

けれど、今は違う。

 

リンは日本にいる。

 

そして今日も、工場へ行く。

 

洗面所で顔を洗い、髪を後ろでまとめる。

 

鏡の中にいるのは、二十歳の自分。

 

黒い髪。

 

細い身体。

 

少し眠そうな目。

 

そして、まだ完全には上手にならない日本語。

 

「おはようございます」

 

小さく呟く。

 

「今日も、よろしくお願いします」

 

これは毎朝の練習だった。

 

工場で働き始めた頃は、日本人の言葉がほとんど分からなかった。

 

「リンさん、これお願いします」

 

「はい!」

 

「いや、それじゃなくて、こっち」

 

「……はい?」

 

そんなことが何度もあった。

 

それでも、一つずつ覚えた。

 

「検品」

 

「部品」

 

「不良品」

 

「作業手順」

 

「安全確認」

 

「報告」

 

日本語を覚えるということは、仕事を覚えることでもあった。

 

そして――日本で暮らすということでもあった。

 

リンが働いているのは、地方都市にある自動車部品工場だった。

 

巨大な工場ではない。

 

けれど朝になると、何十台ものトラックが出入りし、青い作業服を着た社員たちが次々と建物へ入っていく。

 

リンも、その中の一人だった。

 

「おはようございます!」

 

工場の入口で頭を下げる。

 

「おはよう、リンちゃん」

 

声をかけてきたのは、同じラインの佐藤だった。

 

四十代の女性で、リンが日本へ来たばかりの頃から面倒を見てくれている。

 

「今日は眠そうね」

 

「……昨日、日本語の勉強しました」

 

「偉いじゃない」

 

「でも、難しいです」

 

「そりゃそうよ。私だって英語なら難しいもの」

 

佐藤は笑った。

 

「じゃあ今日も頑張ろう」

 

「はい!」

 

その一言が、リンは好きだった。

 

頑張ろう。

 

日本へ来る前、母にも同じことを言われた。

 

空港で別れるときだった。

 

母は何度も何度もリンの手を握った。

 

「身体に気をつけて」

 

「うん」

 

「ちゃんと食べるのよ」

 

「うん」

 

「つらかったら……」

 

そこで母は言葉を止めた。

 

リンも何も言わなかった。

 

二人とも分かっていた。

 

日本へ行くということが、楽しいだけではないことを。

 

リンが日本へ行く理由は、家族だった。

 

ベトナムの故郷には、母と弟がいる。

 

自分が日本で働いて得たお金は、家族の生活を支える大切なお金になる。

 

だから、頑張る。

 

そのために日本へ来た。

 

――そう思っていた。

 

けれど。

 

「リン!」

 

突然、背後から声がした。

 

振り返る。

 

そこには同じベトナム人実習生のミンがいた。

 

「今日、仕事終わったら駅行く?」

 

「駅?」

 

「うん。夏祭り!」

 

リンの目が輝いた。

 

「夏祭り?」

 

「そう。日本の祭り。一緒に行こう」

 

「でも、明日仕事……」

 

「大丈夫。夜には帰る」

 

リンは少し考えた。

 

そして――笑った。

 

「行きたい」

 

仕事が終わった夕方。

 

工場の外へ出ると、空はオレンジ色に染まっていた。

 

昼間の暑さがまだ残っている。

 

蝉の声が響く。

 

リンは着替えを終えると、寮へ戻った。

 

そして、鏡の前で浴衣を見つめた。

 

日本へ来たばかりの頃、地域の人からもらったものだった。

 

白地に、小さな青い花が描かれている。

 

「これ……私、着られるかな」

 

何度も動画を見ながら着付けを練習する。

 

帯を結ぶ。

 

髪を整える。

 

そして鏡を見る。

 

「……日本人みたい?」

 

自分で言って、恥ずかしくなった。

 

「違う。ベトナム人だけど……」

 

少し笑う。

 

「日本で働いてる、ベトナム人」

 

外へ出る。

 

ミンが待っていた。

 

「おお!」

 

「どう?」

 

「似合ってる!」

 

「本当?」

 

「本当!」

 

二人は笑いながら駅へ向かった。

 

祭りの会場には、たくさんの人がいた。

 

屋台。

 

提灯。

 

太鼓。

 

浴衣姿の子供たち。

 

焼きそばの匂い。

 

リンは目を輝かせた。

 

「すごい……」

 

「初めて?」

 

「うん」

 

「じゃあ、何食べる?」

 

「これ!」

 

リンが指差したのは、りんご飴だった。

 

「それ?」

 

「かわいい」

 

「食べる?」

 

「食べたい!」

 

二人で笑いながら屋台を回る。

 

仕事の話。

 

寮の話。

 

日本語の失敗。

 

ベトナムの家族。

 

将来の夢。

 

そんな話をしているうちに、リンはふと夜空を見上げた。

 

ドン、と大きな音が響いた。

 

花火が上がった。

 

夜空いっぱいに、光が広がる。

 

赤。

 

青。

 

金色。

 

そして、最後には大きな白い花が咲いた。

 

「……綺麗」

 

リンは呟いた。

 

スマートフォンを取り出す。

 

画面には、ベトナムにいる母の名前。

 

電話をかけようとして――やめた。

 

代わりに写真を撮る。

 

花火。

 

浴衣。

 

友達。

 

そして、日本の夜。

 

写真を母に送る。

 

少しして、返信が来た。

 

『元気そうで安心した』

 

その短い言葉を見た瞬間。

 

リンは胸の奥が熱くなった。

 

「お母さん……」

 

目に涙が浮かぶ。

 

でも、泣かなかった。

 

今日は泣かない。

 

だって――楽しい日なのだから。

 

「リン?」

 

「ううん。なんでもない」

 

そして彼女は笑った。

 

祭りの帰り道。

 

提灯の灯りが少しずつ後ろに遠ざかっていく。

 

人混れを抜けると、夜風が少しひんやりとしていた。

 

浴衣の袖が風に揺れる。

 

「楽しかったね」

 

ミンが笑った。

 

「うん。すごく」

 

リンも笑った。

 

花火の余韻がまだ胸に残っている。

 

駅へ向かう道は、祭りの会場から少し離れると急に静かになった。

 

電灯の光がオレンジ色に道を照らしている。

 

コンビニの前に自転車にまたがった男たちが数人いた。

 

三、四人。

 

髪を染めていて、制服を着崩している。

 

年は、リンより少し上くらいに見えた。

 

タバコの煙が夜の空気に混じる。

 

リンは少し足を止めた。

 

ミンも気づいた。

 

「……行こう」

 

ミンが小さく言った。

 

二人が通り過ぎようとしたときだった。

 

「おい、君たち」

 

声がした。

 

リンの肩がびくっとする。

 

振り返ると、一人が自転車から降りて歩いてきた。

 

茶髪で、ピアスをしている。

 

笑っていた。

 

「浴衣、似合ってるね」

 

「……ありがとうございます」

 

リンは小さく言った。

 

日本語が少し震えた。

 

「ベトナムの人?」

 

別の一人が聞いた。

 

「……はい」

 

「ベトナム語話してるの聞こえた。かっこいいね」

 

最初の男が笑った。

 

「俺らも少し話せるぜ。チャオ»

 

「チャオ」

 

別の男も言った。

 

発音は少し変だった。

 

けれど――

 

リンは少しだけ肩の力が抜けた。

 

「……チャオ」

 

ミンも小さく返した。

 

「どこ行くの?」

 

「寮に……帰るところです」

 

「寮?ああ、工場の人たちか」

 

男たちは互いに顔を見合わせて、頷いた。

 

「俺らもこの辺育ちなんだ。工場で働いてる外国人たくさんいるよ」

 

「駅まで送るよ。暗いから」

 

「大丈夫です」

 

ミンが言った。

 

「いやいや、俺らもそっちの方だから。ついでだから」

 

男たちは特に悪い様子はなかった。

 

笑っていたし、距離も近づきすぎなかった。

 

ただ少し騒がしかった。

 

「祭り楽しかった?」

 

「はい。すごく」

 

「花火見た?」

 

「見ました。綺麗でした」

 

「だろ。ここの花火、毎年でかいんだよ」

 

男が自転車を押しながら歩き出した。

 

リンとミンも、なんとなくその隣を歩いた。

 

---

 

「俺、ケンジって言うんだけど」

 

最初の男が言った。

 

「これはトモ。で、そっちがユウ」

 

それぞれが自己紹介をした。

 

「私はリンです」

 

「私はミンです」

 

「リン……ミン……。覚えにくい?」

 

「いや、覚えやすいよ。かわいい名前だな」

 

ケンジが笑った。

 

リンは少し恥ずかしくなった。

 

「俺らさ、今からちょっと集まるとこあるんだ。公園で飲もうかなって」

 

「公園で……?」

 

「うん。コンビニで買ったんだけど、誰か来るかなと思って」

 

ケンジはビニール袋を揺らした。

 

中には缶ビールが見えた。

 

「……私たちは帰らないといけなくて」

 

ミンが言った。

 

「そっか。まあ、無理には誘わないけど」

 

「でも……少しなら」

 

リンが言った。

 

ミンがリンを見た。

 

少し驚いた顔だった。

 

「少しだけなら……いいかな」

 

リンは自分でも驚いていた。

けれど――

今夜は、もう少しこの夜にいたかった。

 

 

気がつけば、祭りの喧騒も遠く、男たちのアパートの一室にいた。

 

「いやー、涼しいでしょ? エアコン効いてるからさ」

 

ケンジが冷えた缶ビールを差し出す。

「あ……ありがとう」

リンはそれを受け取った。

 

薄暗い部屋。

六畳一間。

男たちの生活感が散乱している。

漫画雑誌。飲みかけのコーヒー。脱ぎ捨てられたTシャツ。

中央のローテーブルには、コンビニで買ったおつまみが並んでいた。

 

「まあ座ってよ」

トモに促され、リンとミンはクッションの置かれた床に腰を下ろした。

 

最初はぎこちなかった。

知らない男の部屋。

ベトナムでは考えられないこと。

でも、ケンジたちは悪い人たちじゃないみたいだった。

祭りの話。仕事の話。日本とベトナムの違い。

他愛のない会話が続くうちに、緊張は少しずつ解けていった。

 

「いっきいく?」

ユウが缶ビールを傾けて言った。

「いっき?」

「ほら、一気飲み」

「ああ……無理無理」

リンは手を振った。

 

「リンちゃんかわいいなあ」

ケンジが目を細めた。

その視線に少しドキリとしたけれど、アルコールのせいか心地よい感覚に包まれていた。

 

「おっと」

その時だった。

トモが缶ビールをこぼした。

「あー! クソッ」

「トモ! 何やってんだよ!」

「ごめんごめん」

琥珀色の液体がテーブルの上を伝い、床へと広がっていく。

 

「あっ私……拭きます」

ミンが慌ててティッシュを取ろうとした。

その手をトモが掴んだ。

「いいよ。俺がやるから」

「え……」

トモの手がミンの手の上に重なる。

ミンの動きが止まった。

二人の視線が絡み合う。

 

「……トモくん?」

ミンの声が少し上ずった。

「ミンちゃんさあ……」

トモの声が低くなる。

「俺さあ……ミンちゃんのこと……」

 

その言葉は最後まで言われなかった。

代わりにトモの顔がミンの顔に近づいていった。

ミンは拒まなかった。

いや、拒めなかったのかもしれない。

唇が重なる。

 

「おっ」

ケンジが笑った。

「トモのやつ……やっと言えたか」

ユウもニヤニヤしている。

 

リンは呆然とその光景を見ていた。

日本人の男と女がキスをする。

それはテレビドラマで見たことがある。

けれど目の前で見るのは初めてだった。

トモの手がミンの肩を抱き寄せる。

ミンの浴衣の襟元が少しずつ崩れていく。

 

「ねえ」

不意に耳元で囁かれた。

ケンジだった。

「リンちゃんも……どう?」

「え……」

「俺さあ……リンちゃんのこと……すごいと思ってたんだ」

「……私?」

「うん。浴衣似合うし……一生懸命仕事してるし……」

 

ケンジの顔が近づいてくる。

タバコとビールの匂い。

「……ケンジくん……」

「いいだろ?」

 

その言葉の甘さにリンは抗えなかった。

あるいは抗いたくなかったのかもしれない。

日本の夜。

祭りの余韻。

そして少しのアルコール。

全てがリンの理性を溶かしていった。

 

ケンジの唇がリンの唇に触れる。

柔らかい感触。

トモとミンもキスを続けている。

部屋には水音のような唇の触れ合う音が響く。

 

「んっ……」

ミンが小さく声を漏らした。

トモの手が浴衣の中に滑り込んでいるのが見えた。

ミンの白い太ももが露わになる。

 

「ミン……」

リンは親友のその姿に目を奪われた。

いつも一緒に働いていたミン。

日本語を教え合ったミン。

家族の話をしたミン。

そのミンが男に抱かれようとしている。

 

「リンちゃんも……」

ケンジの手がリンの帯に掛かる。

「あ……」

帯が解ける音。

リンの浴衣が前開きになる。

下着姿のリンが露わになる。

 

「綺麗だね……」

ケンジの視線がリンの身体を舐めるように這う。

「そんな……見ないで……」

「見たいよ。リンちゃんの全部」

 

ケンジの手がリンの胸を覆う。

「あっ……」

電流が走ったような感覚。

リンの身体が跳ねた。

 

「感じる?」

「わかん……ない……」

「じゃあ……もっと感じて」

ケンジの指がブラウスの上から乳首を擦る。

「んんっ……!」

 

リンの声が甘く変わっていく。

トモとミンの愛撫も激しくなっていた。

ミンはすでに浴衣を脱がされ下着だけになっていた。

トモの頭がミンの股間に埋まっている。

「ああっ! トモくんっ! そこっ!」

ミンの嬌声が部屋に響く。

ユウもそれに加わりミンの胸を揉みしだく。

三人の絡み合う姿は淫靡そのものだった。

 

「リンちゃんも……負けてらんないね」

ケンジが笑う。

そしてリンのブラウスを外した。

小さく形の良い乳房が露わになる。

「かわいい……」

ケンジが乳首に吸い付いた。

「ひゃうっ!」

リンの背中がのけぞる。

 

見知らぬ男に乳房を吸われる。

それは禁忌のはずだった。

けれど身体は正直に反応してしまう。

乳首が硬くしこっていく。

太ももの奥が熱くなり濡れていくのがわかった。

 

「リンちゃん……濡れてるね」

ケンジの手が下着の上から秘所に触れる。

「あっ……いやっ……」

「嘘。こんなに濡れてる」

下着を横にずらし指が直接触れる。

「あああっ!」

リンの口から甘い悲鳴が漏れた。

 

ケンジの指が濡れた秘裂を上下に動く。

クリトリスを優しく擦られるたびに身体が震える。

「んっ……んんっ……」

トモとユウに攻められるミンの声も重なる。

二人のベトナム人の少女の喘ぎ声が狭いアパートに充満する。

 

「入れさせて……」

ケンジが耳元で囁く。

リンは首を縦に振った。

もう後戻りはできなかった。

いや後戻りしたくないとさえ思っていた。

 

ケンジのズボンが下ろされる。

屹立した男根が露わになる。

「大きい……」

リンは思わず呟いた。

 

「リンちゃんの中に……入るよ」

ケンジの男根が濡れた秘口に当てられる。

「あっ……」

ゆっくりと先端が沈み込んでいく。

「んくっ……!」

肉壁が押し広げられる感覚。

痛みと快感が混ざり合う。

 

「全部入った……」

ケンジが腰を進める。

「ああっ! ケンジくんっ!」

リンの嬌声が高くなる。

ケンジがピストン運動を開始する。

「いいよ……リンちゃん……すごくいい……」

「あっ! あっ! あんっ!」

 

リンの声と肉のぶつかる音がリズムを刻む。

隣ではミンがトモと結合していた。

ユウはミンの口を犯している。

三人の交わりも激しさを増していた。

 

「んぐっ! んんっ!」

ミンの口からユウの男根を抜き差しする水音。

トモの激しいストロークにミンの身体が波打つ。

「ミンちゃん! いくよ!」

「あっ! トモくん! あああっ!」

トモがミンの中に精を放った。

 

それを見たケンジも興奮を高める。

「リンちゃん! 俺も!」

「あっ! 私も! なんか! 変に! なるっ!」

リンの身体が痙攣する。

絶頂が押し寄せてくる。

「いくっ! いくううっ!」

リンとケンジが同時に果てた。

 

狭い部屋に荒い息遣いだけが残された。

汗と体液の匂い。

乱れた浴衣と脱ぎ捨てられた下着。

 

リンは天井を見つめていた。

身体は満たされていたけれど心には穴が開いたような感覚があった。

これでよかったのだろうか。

これが日本の夜なのだろうか。

答えは出なかった。

ただ窓の外から微かに祭りの囃子が聞こえていた。

それはまるで遠い国の出来事のようだった。

「ねえ……まだ終わってないよ」

 

ケンジの声が、汗ばんだ首筋に触れる吐息と共に降ってきた。

 

リンはまだ天井を見つめたままだった。

身体の奥に残る熱の余韻。

けれどそれは火が消えたわけではなく、じっと燻っているだけだった。

 

「リンちゃん……もっと感じていいんだよ」

 

ケンジの手が再びリンの胸を這う。

さっきまでの優しさはなりを潜め、もっと貪るような触り方だった。

乳首を指で挟み、捻るように刺激する。

 

「あっ……! いやっ……もう……」

 

「まだだよ。俺も……みんなもまだ足りないんだ」

 

その言葉通りだった。

隣ではミンが再び男たちの手に絡め取られていた。

 

「ミンちゃん……今度は俺もいいだろ?」

ユウがミンの背後に回り込む。

トモはミンの正面に座り込み、先ほどのように太ももに顔を埋めようとしていた。

 

「えっ……二人とも……?」

ミンの声が震える。

けれど拒絶の色はなかった。

むしろ潤んだ瞳が男たちを誘っていた。

 

「いいよ……ミンちゃん。気持ちよくなろうぜ」

トモがミンの脚を開かせる。

ユウは背後からミンの乳房を鷲掴みにした。

 

「ああっ!」

 

二人の男に同時に触れられ、ミンの身体が大きく跳ねた。

前からの愛撫と背後からの愛撫。

その二重の刺激にミンの理性はあっけなく崩れ去っていく。

 

「んっ! あっ! そこっ! ダメぇっ!」

 

ミンの嬌声が再び部屋に響き始める。

その甘く切ない声はリンの心臓を直接叩くようだった。

 

「リンちゃんも……ほら」

ケンジがリンの顔を自分の方へ向けさせた。

その視線の先には、ユウの屹立があった。

いつの間にかズボンを脱ぎ捨てていたユウがリンの目の前に立っていた。

 

「俺もリンちゃんとしてえな」

 

ユウの男根がリンの顔の前に突き出される。

それは熱く脈打ち、先走りで濡れていた。

 

「……ユウくん……」

 

「口で……してくれる?」

 

リンは呆然とそれを見つめた。

拒むべきだという理性はもう霞んでいた。

祭りの夜の魔法。

あるいはアルコールと快楽が作り出した熱病。

リンはゆっくりと顔を近づけた。

 

舌先で先端を舐める。

しょっぱい味が口の中に広がった。

ユウが低く唸る。

その反応が心地よかった。

リンは夢中でそれを口に含んだ。

 

「んっ……んくっ……」

 

リンがユウを咥えていると、下からケンジが秘所に顔を埋めてきた。

「あむっ!」

クリトリスを舌で転がされ、リンの身体がビクビクと震える。

口にはユウ。

下にはケンジ。

二人の男に同時に責められる。

 

「んぐっ! んんっ!」

 

声にならない喘ぎが漏れる。

前後の快楽がリンの思考を白濁させていく。

ただひたすらに舌を動かし、腰を振る。

自分が何をしているのかさえ分からなくなっていた。

 

「リンちゃん……すごいよ……」

「んっ……あむっ……ちゅぱっ……」

 

隣ではミンがすでに二人の男と繋がっていた。

仰向けになったトモの上に跨り、その男根を奥深くまで咥え込んでいる。

そして背後からユウ……ではなく、ユウはリンの前にいた。背後からミンを抱いていたのはケンジだった。

いや、違う。

トモとユウがミンを挟み込んでいた。

トモが下から突き上げながらクリトリスを指で弾き、ユウが背後から乳房を揉みしだき耳を舐める。

 

「ああっ! ああっ! いいっ! 二人ともぉっ!」

「ミンちゃん……すげえ締め付け……」

「ミンちゃんの中……熱いよ……」

 

三人の肉体がぶつかり合い、粘着質な水音を立てる。

ミンは完全に快楽の波に飲まれていた。

目は虚ろで口からは涎が垂れている。

二つの男根に交互に突かれながらミンは絶頂を迎えていた。

 

「いくっ! いくううっ! ああああっ!!」

 

ミンの絶叫が部屋を揺らす。

それを見たリンの奥底で何かが弾けた。

 

「んくっ! んんーっ!!」

 

口いっぱいにユウを含んだままリンもまた激しく絶頂した。

ケンジの舌技と指技がリンの身体を追い詰めていたのだ。

ビクビクと痙攣するリンの身体。

ユウが限界を迎える。

 

「でるっ! 飲んで! リンちゃん!」

 

熱い飛沫がリンの口の中に放たれた。

リンはそれをこぼさないように喉を鳴らして飲み干した。

 

「はぁ……はぁ……」

 

ユウが抜けるとリンの口から白濁した液が糸を引いた。

その淫らな姿にケンジの欲望が再び燃え上がる。

 

「リンちゃん……今度は俺とユウで……いいよね?」

 

ケンジがリンを四つん這いにさせる。

前には再び硬くなったユウ。

後ろには猛るケンジ。

 

「二人で……?」

「そう。リンちゃんの中も外も……全部気持ちよくしてあげる」

 

リンはもう逆らう気力もなかった。

いや逆らいたくなかった。

この熱に包まれていたかった。

 

「……して」

 

リンは自ら腰を高く突き出した。

その無言の誘いに二人の男は同時に襲い掛かった。

 

ケンジが濡れそぼった秘裂に一気に突き入る。

「あああっ!!」

同時にユウがリンの口を塞いだ。

「んぐうっ!!」

 

前後からの激しい責め。

二つの男根がリンの身体を貫く。

激しいピストン運動。

肉と肉がぶつかる音。

水音。

嬌声。

 

「あっ! あんっ! んぐっ! ああっ!」

 

リンの口からは意味を成さない言葉が次々と溢れ出る。

思考能力の限界を超えた快楽。

二つの男根がリンの身体の内部で互いを押し合うような感覚。

それは痛みを伴うほどの強烈な快感だった。

 

「すごい……リンちゃん……締め付けすげえ……」

「んっ……んくっ……ちゅぱっ……」

 

隣ではミンもまた二つの男根に貫かれていた。

トモとユウ。あるいはケンジとトモ。

誰が誰の中にいるのかさえもう分からなかった。

ただ四つの肉体が一つになって蠢いている。

 

「あっ! ああっ! もう! わかんない! なにこれぇっ!!」

「ミンちゃん! リンちゃん! いくよ!」

「俺も!」

「俺も!」

 

五人の絶頂が同時に押し寄せる。

 

「いくうううっ!!」

 

リンとミンの声が重なり合う。

二人のベトナム人の少女は日本人の男たちの欲望の海に沈んでいった。

 

強烈な快感の波が去った後。

リンは冷たい床に崩れ落ちた。

汗と体液にまみれた身体。

乱れた浴衣はもうただの布切れだった。

 

ミンもすぐそばでぐったりとしていた。

二人の目が合う。

そこにはもう羞恥心も理性もなかった。

ただ共有した快楽の余韻だけがあった。

 

「……ミン」

「……リン」

 

二人は手を伸ばし互いの手を握りしめた。

その手は熱く濡れていた。

 

窓の外からはもう祭りの囃子は聞こえなかった。

夜が明けるまであと何時間もある。

この狭い部屋の中で二人は完全に快楽に堕ちた。

日本の夜はまだ長かった。

 

 

あの夜以来、リンとミンの生活は少しずつ変わり始めた。

 

工場での仕事は相変わらずだった。

朝五時半に起き、六畳の部屋で顔を洗い、黒い髪を後ろでまとめる。

「おはようございます」

鏡の前で挨拶の練習をする。

それは何も変わらない日常の一部だった。

 

けれど、休日が変わった。

 

それまでは日曜日になると二人でスーパーの特売に行ったり、寮の部屋でベトナムのドラマを見たりしていた。

それが楽しかった。

質素だけれど純粋な喜びがあった。

 

けれど今は違う。

 

「リンちゃん、日曜空いてる?」

ケンジからLINEが来る。

「空いてるよ」

「俺らと遊ぼう。ミンちゃんも連れてきて」

「うん」

 

そんな他愛のないやり取り。

最初はそれだけだった。

公園で一緒に酒を飲む。

コンビニの前でたむろする。

カラオケに行く。

ゲームセンターに行く。

 

ケンジやトモ、ユウたちは決して金持ちではなかった。

フリーター。

あるいは日雇いの仕事。

定まらない暮らし。

けれど彼らにはリンやミンにはないものがあった。

時間。

そして気軽さ。

 

「ねえ、今日バイト休んでカラオケ行かない?」

「でも仕事……」

「たまにはいいじゃん」

「……うん」

 

こうしてリンとミンの日曜日は少しずつ変質していった。

 

---

 

ある日、ケンジが言った。

 

「リンちゃんたちさ、お金って足りてるの?」

「え?」

「ベトナムに送金してるんだろ? 大変じゃない?」

「……うん。少し」」

 

リンは正直に答えた。

日本での給料は決して多くはなかった。

家賃。

食費。

交通費。

そしてベトナムへの送金。

残るお金はいつも少しだけだった。

 

「俺さ、知ってるんだけど」

ケンジが声を潛めた。

「いいバイトあるよ」

「バイト?」

「うん。リンちゃんたちみたいな子ならすぐ稼げる」

「どんなバイト?」

ミンが聞いた。

 

「紹介できる人居るんだ。俺の知り合いの……田中さんって人」

「田中さん?」

「サラリーマン。すごくまともな人だよ」

「まともな人が……なんでバイト?」

「あのさ……」

ケンジは少し言い淀んだ。

「大人の……お付き合いみたいな感じかな」

「大人の……お付き合い?」

 

リンにはピンとこなかった。

けれどミンには分かったのかもしれない。

ミンの表情が少し固まったから。

 

「お金いっぱいもらえるよ。一回で……十万くらい」

「十万!?」

リンの目が丸くなった。

それは工場の三日分の給料にあたる。

 

「でも……何するの?」

「ご飯行くだけ。話すだけ」

「それだけ?」

「それだけ。田中さんは優しい人だから」

「……」

 

リンは黙った。

十万円。

それがあれば母に化粧品を送れる。

弟に新しい靴を買ってやれる。

故郷の家の屋根の修繕もできる。

 

「一回だけ……会ってみる?」

ケンジが言った。

「嫌なら断ればいいし」

 

---

 

初めて会ったのは、駅前のホテルのロビーだった。

 

「田中さん」

ケンジが声をかける。

ロビーのソファに座っていた男が立ち上がった。

 

四十代半ばくらい。

紺のスーツ。

整えた髪。

清潔感のある顔。

どこにでもいそうなサラリーマンだった。

 

「ケンジ君の友達?はじめまして、田中です」

穏やかな声。

優しい目。

 

「リンです」

「ミンです」

 

「二人ともかわいいね。ケンジ君が言ってた通りだ」

田中は笑った。

その笑顔には不快感はなかった。

 

「今日はご飯でも食べながら話そうか」

「はい」

 

高級な焼肉店に連れて行かれた。

テーブルに次々と運ばれる肉。

タレの香り。

炭火の音。

 

「食べていいよ。遠慮しないで」

田中が肉を皿に取り分けてくれた。

 

リンは戸惑いながらも肉を口にした。

「おいしい……」

「ベトナムにも焼肉はある?」

「あります。でも……日本のほうがおいしいかも」

「そうか。よかった」

 

会話は自然だった。

ベトナムの話。

日本の話。

仕事の話。

家族の話。

田中は良く聞いてくれた。

 

「大変だね。日本で働くのは」

「……はい。でも家族のためだから」

「立派だよ」

 

食事の後、田中が言った。

 

「今日はこれで終わりにしようか」

「え? これで?」

「うん。次は……ホテルの部屋で話したいな」

「ホテル……」

 

田中はリンとミンの表情を見て微笑んだ。

「何もしないよ。ただ話すだけ。信じて」

「……」

 

ミンがリンを見た。

リンは迷っていた。

けれど田中の目は嘘をついていないように見えた。

 

「……わかりました」

リンが言った。

 

---

 

ホテルの部屋は広かった。

窓から見える夜景。

ふかふかのベッド。

バスルームにはアメニティが整然と並んでいる。

 

「座って」

田中がソファを指差す。

リンとミンは並んで座った。

 

「緊張してる?」

「……少し」

「無理もないよ。初めてだから」

 

田中は鞄から封筒を取り出した。

「これ、約束のお金」

封筒を開ける。

中には札束が入っていた。

 

「二人で二十万」

「二十万……」

 

リンの息が止まった。

二十万。

それは工場の一週間分の給料。

 

「ただ……」

田中の声が少し低くなった。

「少し……協力してほしいことがある」

「協力……」

「服を……脱いでほしいな」

「えっ」

 

リンの身体が強張った。

ミンの手がリンの手を握る。

 

「大丈夫。触らないよ。ただ見るだけ」

「見る……だけ?」

「うん。君たちの……綺麗な身体を見たいだけ」

 

田中の目は真剣だった。

変な色気はなかった。

ただ静かな欲求があった。

 

リンはミンを見た。

ミンも迷っていた。

けれどその目は少しずつ諦めのような色を帯びていた。

 

「……わかった」

 

ミンが立ち上がった。

そして浴衣の帯に手をかけた。

するすると帯が解ける。

浴衣が滑り落ちる。

ミンの下着姿が露わになる。

 

「ミン……」

リンは驚いた。

けれどミンの顔には不思議な決意があった。

 

「リンも……ほら」

ミンが言った。

 

リンも立ち上がった。

震える手で帯を解く。

浴衣が床に落ちる。

二人のベトナム人の少女の下着姿が部屋の明かりに照らされた。

 

「……綺麗だ」

田中が息を呑んだ。

「本当に綺麗だ。ベトナムの子って……こんなに細くて綺麗なんだね」

 

田中の視線が二人の身体を舐めるように這う。

けれど約束通り触れなかった。

ただ見ていた。

ただ息を荒くしていた。

 

「もう少し……ブラも取ってほしいな」

「……」

 

ミンがブラウスのホックを外した。

小さく形の良い乳房が揺れる。

リンも続いた。

 

「……すごい」

田中が息を吐いた。

 

その時だった。

田中が立ち上がり二人に近づいた。

「約束破るの?」

ミンが身を引いた。

 

「触らないよ」

田中は言った。

そして二人の間に立ち自身のズボンのベルトに手をかけた。

 

「俺も……見てほしいな」

「え……」

 

ズボンが下ろされる。

下着の中に屹立したものが浮き出ていた。

「田中さん……」

「見てほしいだけ……だから」

 

下着を下ろす。

男根が露わになる。

 

リンは目を逸らせなかった。

あの夜のケンジたちのものとは違う。

もっと太くもっと硬く見えた。

 

「触って……くれないかな」

「触る……?」

「うん。手で……」

 

ミンが手を伸ばした。

震える手で田中の男根に触れる。

「あ……熱いて……」

「ミンちゃん……」

田中が低く呻いた。

 

「リンちゃんも……」

リンも手を伸ばした。

二人の手が一つの男根を包む。

熱と脈動が掌に伝わる。

 

「動かして……」

二人の手が動く。

上下にしごく。

「ああ……いいよ……二人とも……」

 

田中の息が荒くなる。

先走りが溢れ二人の手を濡らす。

「んっ……あ…」

 

リンの手は次第に速くなった。

あの夜の感覚が蘇る。

男に奉仕する感覚。

それは嫌悪感ではなかった。

むしろ奇妙な昂ぶりだった。

 

「いく……二人とも……いくよ……」

「あっ」

 

白濁した液が二人の手の上に飛んだ。

温かい粘液が指の間を流れる。

 

「はぁ……はぁ……ありがとう」

田中が荒い息を吐いた。

 

「今日はこれでいいよ。服着て」

「……はい」

 

リンとミンは服を着た。

封筒のお金を受け取った。

 

「また会いたいな」

田中が微笑んだ。

「はい」

 

リンは答えた。

その声にはもう迷いはなかった。

 

---

 

寮に戻る電車の中。

リンは封筒をバッグの中に握りしめていた。

二十万。

これで母に化粧品を送れる。

弟に新しい靴を買ってやれる。

 

「リン……」

ミンが言った。

「大丈夫?」

「大丈夫」

「……本当?」

「本当。だって……ご飯食べただけだし」

「……うん」

 

ミンも頷いた。

けれど二人とも分かっていた。

これは始まりに過ぎないことを。

 

そしてそれは現実となった。

 

翌週、田中から連絡が来た。

「今度は……もう少し先のことをしたいな」

「先のこと?」

「ホテルで……一緒にいてほしい」

「一緒に……」

「わかるよね?」

 

リンには分かった。

身体を許すということ。

けれど迷わなかった。

 

「はい。いくら?」

「三十万」

「……わかりました」

 

---

 

二度目のホテル。

今度は服を脱ぐことから始まった。

田中の手がリンの身体を這う。

「あっ……」

乳首を弄られる。

太ももを撫でられる。

秘裂に指が触れる。

 

「濡れてる……」

「……はい」

「いいよ。リンちゃん」

 

田中の男根がリンの中に入ってきた。

「ああっ!」

ケンジとは違う感覚。

もっと太くもっと深い。

 

「ミンちゃんも……」

田中はミンも呼んだ。

三人の肉体が一つになる。

田中の指がミンの秘裂を愛撫する。

男根はリンの中で脈打つ。

 

「あっ! あっ! 田中さんっ!」

「リンちゃん……きつい……すごい……」

「ミンちゃんも……感じてる?」

「はっ! はいっ! ああっ!」

 

二人の嬌声が重なる。

サラリーマンの男に抱かれながら二人のベトナム人の少女は快楽の渕に沈んでいく。

 

「いくよ……」

「あっ! 中に! ダメっ!」

「大丈夫……つけてるから」

 

それは嘘だったか本当だったかリンには分からなかった。

けれどもうどうでもよかった。

ただ熱に身を委ねていた。

 

---

 

それからは日常になった。

 

田中だけでなかった。

田中の紹介で他のサラリーマンとも会うようになった。

鈴木さん。

五十代。太った男。

「ベトナムの子は……いいねえ」

 

高橋さん。

三十代。眼鏡の男。

「君たちのこと……もっと知りたいな」

 

伊藤さん。

四十代。無口な男。

「……こっちにおいで」

 

それぞれの男がいた。

それぞれの欲望があった。

けれど共通点は一つ。

金を払うということ。

 

リンのバッグの中にはいつも封筒が入っていた。

三十万。

五十万。

時には百万。

お金がお金を生む。

身体がお金を生む。

 

リンは毎月ベトナムに送金する額を増やしていった。

母は驚いた。

『リン、お金大丈夫なの?』

『大丈夫だよお母さん。残業手当が出たの』

『そう? 嘘言わないでね』

『言ってないよ』

 

嘘だった。

けれどリンは自分に言い聞かせた。

これは家族のため。

これは弟のため。

これは母のため。

だから悪くない。

だから大丈夫。

 

---

 

ミンも変わっていった。

 

以前のミンはいつも笑っていた。

仕事の後も寮でベトナムのドラマを見て笑っていた。

けれど今は違う。

 

「リン、今日も仕事?」

「うん。田中さんが呼んでる」

「そう……気をつけてね」

「ミンは?」

「私は……鈴木さんと」

「そっか」

 

会話は事務的だった。

以前のような温かさはなかった。

あるのは共犯者としての繋がりだけ。

 

ミンの目から光が消えていくのが分かった。

化粧が濃くなった。

服が派手になった。

言葉が少なくなった。

 

ある日リンはミンの腕に跡を見た。

「ミン……それ」

「……何でもない」

「嘘。何されたの?」

「……鈴木さんが……少し激しくて」

「やめればよかったじゃん」

「やめられないよ。お金……必要だし」

「……」

 

リンは何も言えなかった。

自分も同じだったから。

 

---

 

半年が過ぎた。

 

リンとミンは工場を辞めた。

「どうして?」

佐藤が驚いた顔をした。

「別の仕事を見つけたんです」

「そう……寂しくなるね」

「ありがとうございました。お世話になりました」

「うん。頑張ってね」

 

リンは深く頭を下げた。

佐藤の目には涙があった。

けれどリンの目にはなかった。

もう涙は出なかった。

 

工場を辞めてからリンとミンは都内のマンションに引っ越した。

田中が紹介してくれたマンションだった。

「ここなら便利だよ」

「家賃は?」

「俺が払うから。二人はここで……待ってて」

「待ってて?」

「うん。俺が連絡するから。客を」

「客……」

 

リンは理解した。

ここは待機場所。

客が来る場所。

仕事場。

 

---

 

マンションでの生活が始まった。

 

昼間は何もしない。

起きて化粧して。

服を選んで。

スマートフォンを待つ。

 

『今日の夜空いてる?』

『はい』

『八時にロビーで』

『わかりました』

 

夜になるとホテルへ行く。

あるいは客がマンションに来る。

いろんな男がいた。

優しい男。

乱暴な男。

無口な男。

饒舌な男。

変な性癖の男。

ただ抱きたいだけの男。

 

リンは全てを受け入れた。

身体を開き。

快楽に身を委ね。

そして金を受け取る。

 

「リン……」

ある夜ミンが言った。

「何?」

「私たち……どうなるんだろう」

「……」

「ベトナムに帰れるのかな」

「帰れるよ。お金溜まったら」

「本当?」

「本当」

 

リンは微笑んだ。

けれどその微笑みは作り物だった。

帰る場所なんてもうないのかもしれない。

自分はもうあの純粋なベトナムの少女ではないから。

 

---

 

一年が過ぎた。

 

リンの銀行口座にはかなりの額が溜まっていた。

けれど送金は減っていた。

母への連絡も減っていた。

 

『リン、元気? 連絡ないけど』

『元気だよ。仕事忙しくて』

『そう……無理しないでね』

『うん』

 

嘘だった。

仕事は忙しくなかった。

ただ連絡したくなかった。

母の声を聞くと自分が惨めになるから。

 

ミンも変わっていた。

薬を使うようになった。

「ミン……それ何?」

「睡眠薬。眠れないから」

「……」

「リンもいる? 楽になるよ」

「いらない」

「そっか」

 

ミンの目は完全に死んでいた。

黒いアイラインで覆われた目。

厚いファンデーションで覆われた顔。

かつての笑顔はもうなかった。

 

---

 

ある日田中が言った。

 

「リンちゃん、新しい客紹介するよ」

「はい」

「ちょっと……変わった人だけど。お金はいいよ」

「……はい」

 

その客は六代の男だった。

髪は白いが元気そうな男。

「君がリンちゃんか。かわいいね」

「ありがとうございます」

「今日は……特別なことをしたいな」

「特別な……」

「君の……全てを知りたい」

 

男の目は異様な光を帯びていた。

「全てって……」

「心も身体も……全て」

「……」

 

リンは覚悟を決めた。

もう何でも受け入れる。

それが今の自分の仕事だから。

 

その夜リンは男に全てを委ねた。

身体の奥まで。

心の奥まで。

最後の砦さえも。

 

男は満足そうに言った。

「君は……本物だね」

「本物……」

「うん。堕ちた天使って感じがする」

「……」

 

堕ちた天使。

リンはその言葉を反芻した。

確かにそうかもしれない。

かつては純粋なベトナムの少女だった。

日本へ来て働いて家族を支えるはずだった。

けれど今は違う。

ただの肉。

金を生む肉。

 

「ありがとう。これ受け取って」

男が封筒を渡した。

中には五百万入っていた。

「五百万……」

「君の価値だよ」

「私の……価値」

 

リンは封筒を握りしめた。

これで母に家を建ててやれる。

弟に大学に行かせてやれる。

けれど自分はどうなるのだろう。

 

---

 

寮に戻るとミンがいた。

「ミン……」

「リン……どうだった?」

「五百万」

「すごい……」

「ミンは?」

「私……もう無理かも」

「え?」

「お腹に……できたかも」

「えっ……」

「鈴木さんの……か田中さんの……かわからない」

「どうするの?」

「……産む」

「産むの?」

「うん。この子は……私の宝物」

「……」

 

ミンのお腹はまだ目立たなかった。

けれどその中には新しい命があった。

二人の堕ちた少女の一方は新たな命を宿していた。

 

「リン……」

「何?」

「私たち……戻れないよね」

「……」

「あの頃には」

「……うん」

 

リンは窓の外を見た。

東京の夜景。

高層ビルの光。

車のヘッドライト。

全てが遠く感じられた。

 

かつてリンは日本の夜空に花火を見上げた。

あの花火は綺麗だった。

母に写真を送った。

『元気そうで安心した』

母の言葉が蘇る。

 

元気。

自分は元気なのだろうか。

身体は元気だ。

けれど心はどうだろう。

 

リンはスマートフォンを取り出した。

母の番号が表示される。

指が通話ボタンの上で止まる。

けれど押せなかった。

 

代わりに田中に連絡した。

『明日空いてる?』

『空いてるよ』

『じゃあ六時に』

『わかった』

 

リンはスマートフォンを置いた。

そして鏡を見た。

そこには厚化粧の女がいた。

かつてのリンではなかった。

新しいリンでもなかった。

ただのリンだった。

 

窓の外からは車の音が聞こえる。

日本の夜はまだ長い。

リンの夜もまだ続く。

 

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