※この作品はR-18です。

ランスが女の世界で魔人アイゼルに転生〜洗脳能力と原作知識で魔王を目指す〜   作:斧池 数馬

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vsレッドアイ①

「何だと、バボラがやられただと!?あのデクの坊でも魔人のはずだぞ!!」

 

「は、はい。しかし、事実です。魔人バボラが消え、調子に乗った人間たちが攻勢に出てきています」

 

「そうか……。そういえばホーネット派の魔人アイゼルが人間どもを率いているという話があったな。なるほど、奴らはとうとう人間の力を借りなければならないほどに追い詰められているということか!!」

 

 ヘルマン方面の魔軍の本陣にて、魔物大将軍ルメイは配下から魔人バボラが討伐された報告を受けていた。

 

「我が方にも、かなりの被害が出ておりますが……」

 

「ふん、しょせん一時のことよ。魔人バボラのようなうどの大木が居なくなろうと我らの有利は変わぬわ。それよりも特別焼却師団が潰されたのが痛いな……」

 

「は、はあ」

 

「再編成を急げ!」

 

「はっ!」

 

 魔物大将軍ルメイにとっては人間どもを殺戮するための特別焼却師団の壊滅の方が重要度が高かった。

 

 人間を嫌悪し、蔑んでいる彼は人間の逆鱗を掻きむしるリスクなど一切考慮しない。

 無力な人間を殺し、ノコノコとやってきた人間の兵士たちも殺す。

 そんな単純で悪辣な戦略だが、単純で悪辣がゆえに魔物の軍勢には相性が良かった。

 

 人間を苦しめるのは魔物の存在理由であり本能だが、生かしたまま苦しめることを好む魔物も多い。そんな中でただひたすらに殺戮のみを楽しむエリートを中心に組織したのが特別焼却師団だった。

 

 ルメイの頭はもはやバボラのことより、殺戮のエリートの選抜のことでいっぱいになっていた。

 

「おや〜、魔人バボラ、キルされた?あのベリーベリージャイアントオーガが!?あははははははははっ!グッド、ベリーグ〜ッド。ザッツベリーストロングパワー。キルしたの誰、どこのヒューマン?あるいは魔人?あひゃひゃひゃひゃ!どっちでもグッド!ミーのおニューのボディになれば!テルミー!ルメイ!!」

 

 そこに新たな人影が現れた。ヘルマンに派遣された魔人、レッドアイだった。

 彼は魔人バボラを殺した強者の情報に歓喜に満ちていた。

 

 ルメイと魔人レッドアイ。人間の殺戮を好む両者だったが、その向き合い方は明確に異なっていた。

 人間は侮蔑の対象であるがゆえにその脅威を認められないルメイと、強者であれば躊躇なく自身のボディに選ぶレッドアイ。

 理知的なのはルメイであったが、ここでの正着を掴んだのは狂っているレッドアイだった。

 

「れ、レッドアイ様……!い、何処から……。それに闘神のボディはどうなされたのです!?」

 

「んー、ルメイ。そんなことどうでもいいよ。古いボディ、ウィーク。新しいボディ、ストロング。それだけのことよ。ミー、もっともっと強くなる。だからルメイ、早くテルしなさい。早く、早く!!!」

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 ハンティ・カラーがレッドアイに寄生された。バボラを倒したわたしたちにその知らせが入った。

 ハンティはドラゴンカラー最後の一人としてであり、最強の存在ドラゴンの力とレベル3の魔法力を併せ持った強力な存在だ。

 レッドアイがボディとして付け狙うのは納得の行く話だった。

 

 経緯としては闘神γをボディとしていたレッドアイを闘神Ωを操るフリーク含むパットンたちが迎撃。闘神Ωとほぼ相討つ形で闘神γのボディを破壊するも、レッドアイが新たにハンティをボディとして選び寄生したという次第だった。

 

 ハンティも負傷していたため、レッドアイはそのまま瞬間移動で逃走したとのことだった。

 

 先のヘルマン革命で作ったほとんどハリボテの闘神Ωでレッドアイが操る闘神γを破壊したのは賞賛に値する。

 そこは闘神同士の激突をサポートしていたパットンやハンティの手柄だろうが、その活躍がハンティが寄生されるという結果を招いてしまった。

 

 ハンティは人類側の強力な戦力の一つである以上、この状況を解決する必要があった。

 

「おおおおぉぉぉぉぉぉ!!武舞乱舞!!」

 

 パットンの必殺技の射撃が魔物将軍の投げつけた鉄球を弾き飛ばす。

 そのまま突進の踏み込みで徒手格闘の間合いに魔物将軍を捉えると、拳が、足が、頭が魔物将軍の身体に叩き込まれる。

 

 その戦いぶりには愛するハンティをむざむざと奪われた自身への怒りからくる自暴自棄が含まれていたが、それを咎めるつもりはなかった。

 多少の傷は法王の神魔法で回復させられるし、その勢いは使い方次第で武器としても利用できるからだ。

 実際にこうしてパットンを前衛として使い、今のも含めて三体の魔物将軍を屠ることに成功している。

 

 魔軍を撃退する上では多少の無茶を飲み込んででも魔物将軍を一体でも多く倒すことが肝要になる。

 その意味ではパットンの怒りのままの突撃は戦術として許容できる範疇だった。

 

「ちっ。あの元皇帝、前以上に馬鹿になってないかい?このままあれと心中なんてごめんだよ、アイゼルサマ」

 

「ええ、それだけ心の傷が深いのね。心配だわ……」

 

 元第三軍の将軍のミネバはパットンの暴走を危惧し、かつてヘルマンを魂の汚染によって満たそうとしたアムは純粋にその心情を心配していた。

 第二次魔人戦争には大罪人である二人も駆り出している。ミネバ同様にステッセルのもと甘い汁を吸っていた元第三軍の騎士や導く者のメンバーも加え、こうして手当たり次第に魔軍を襲撃し、魔物将軍を討伐していた。

 

「パットン皇子……、大丈夫でしょうか?」

 

「前線で戦っていた方が気が紛れるでしょう。それにこれはハンティを助けるための策の一部だということは理解しているはずです」

 

 ミネバの弟、マハもこの部隊に参加していた。

 ルーンの魂の盗難未遂や呪いによって暴走し革命軍を襲撃した咎があるとはいえ、闘神都市の戦いで活躍した彼は本来ならば正式なヘルマンの部隊に所属することもできた。

 しかし、彼は姉の身を案じてか、この罪人を含む部隊に志願していた。

 かつては姉に縋る弟と弟を利用する姉というすれ違った関係だった両者だったが、マハが呪いの置き土産ともいうべき力を手に入れたことで良好なものになっている。

 マハは自分自身に自信を身につけたことで姉への依存から解放され、ミネバは力と経験を積んだ弟を一人の強者として認めるようになっていた。

 

「パットン、お疲れ様です。あなた方の活躍のおかげでこちらは随分と助かっています」

 

「アリストレスか……。だが、レッドアイの野郎はぶち殺せなかった……。クソ!とっとと出てきやがれってんだ」

 

「……地道に魔軍の戦力を削っていくのが一番の近道です。ヘルマンを守る上でも、ハンティを取り戻す上でも」

 

「ああ、分かってるさ」

 

 結局その日は番裏の砦に退却した。

 アリストレスの指揮の元、番裏の砦はその役目を果たしている。

 魔軍の侵攻自体を押し留めることは叶わなかったものの、敵軍に重圧をかけることは出来ていた。

 他の小規模な砦も番裏の砦と連携を取ることでなんとか持ち堪えている。

 それから数日の間、わたしたちは周辺の砦を転々としながら魔軍の戦力を削ることに専念していた。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「あなたアイゼルね?バボラをキルした。オーケー?」

 

「ええ、わたしこそが魔人アイゼル。あなたの敵です。レッドアイ」

 

 そして、ついに魔人レッドアイと相見えることに成功した。

 元よりレッドアイは好戦的な魔人だ。前線で戦っていればそれを嗅ぎつけやってくるのは当然の展開だった。

 加えて彼には戦略的な視点が欠損している。あのハンティの肉体を得て瞬間移動という奇襲や暗殺にうってつけな能力を得ていながら、こうして誘き寄せることが出来ていた。

 

「グ〜〜〜ッド。ストロングなエネミー、サーチしてたのよ。このボディのパワーをテストするためにね。そんなわけでデストロ〜イ!!」

 

「ハンティ!!返してもらうぞ!このクソ野郎!」

 

「う〜ん、誰?ミーのメモリーにお前ナッシング!つまりウィークなエネミー!つまりいわゆる一つのキルあなた!!」

 

 パットンに目掛けてハンティの指先から雷が迸る。

 強靭な肉体の持ち主であるパットンだが、魔法に対しては耐性が低い。

 それでも生半可な魔法であれば持ち前のタフネスで堪えることも出来たが、ハンティの強大な魔力ではそうは持たないだろうことが予想出来た。

 

「おっと、そうはさせませんよ」

 

 長く伸びたわたしの手が雷とパットンの間を遮り、壁となっていた。

 当然魔法はわたしの手に直撃するが、手の中に抱えたものの力によってそれはあっけなく霧散していた。

 

「えっへん!ぼくには魔法なんか効かないぞ!!」

 

「うーん、聞いちゃいたけどやっぱりおかしなもんだよな……」

 

 ハンティの魔法を防いだのは猿の手によって展開した巨体な腕によって持ち上げられたハニーだった。

 ジェイコプスが見せていた複数の腕にそれぞれ異なる武器を携えての鬼神の如き戦闘形態。それをわたしも用いていた。

 ちなみにハニーにはアテンにメガネをかけさせることを条件に協力を依頼している。

 

「きぃぃぃぃぃぃ、ハニー!!ベリーベリー、アノイエネミー!!バーット、ならアイゼルからまずはキルあなた!!」

 

「へへっ、こんなのへっちゃらだもんね!!」

 

「ハニーが一体だけだといつ言いましたか?」

 

 今度はわたしの方に飛んできた雷撃をまた別のハニーで防ぐ。

 こちらのハニーは志津香とナギにメガネをかけさせることで協力を要請している。

 これについては本を読む時などにわりとメガネをかけている姿を見ることがあるアテンと異なり、わたしも見たいと感じているので利のある取引だといえた。

 

「くらえ!ハニワ空中殺法!」

 

「ハニーフラッシュ・インザエアー!」

 

 ハニーフラッシュがレッドアイに向けて放たれる。

 ただ無理やりに持ち上げて魔法への盾として使うのではなく、きちんと協力関係を結ぶことでこういう使い方も出来た。

 

「オーケー、じゃあマジックじゃなくてフィジカルでキルするよ」

 

 瞬間移動によってわたしの眼の前にいきなりハンティが現れる。

 その手には魔物隊長が使う、重さで敵を叩き割るタイプの大剣があった。

 ドラゴンカラーであるハンティはその身体能力も優れている。

 その一撃にはわたしに致命傷を負わせるには十分な威力が宿っていた。

 

「やらせねぇ!!」

 

 その一撃をパットンが防いでいた。分厚い鉄の手甲は大剣の一撃をしっかりと防いでいる。

 剣を振り直しての追撃はわたしが猿の手を振るって防いだ。

 

「さあさあ、あの馬鹿げた戦いに雑魚共を近寄らせるな!あたしらが生き残るにはあのイカれた目ん玉の魔人がぶち殺してもらわなきゃね。相討ちなってくれりゃあ、最高なんだが」

 

「行きます!ヤー・ワルキューレ!!」

 

 魔人レッドアイが味方への巻き込みを一切配慮しないことを良く知っているのだろう。魔軍は遠巻きに眺めるばかりでミネバたちで十分近寄らせないようにすることが出来ていた。

 レッドアイも、わたしたち以外は眼中にないのだろう。その赤い瞳にはわたしへの殺意以外は伺えなかった。

 

「食らえ!!」

 

「そんなスローリーなアタック、ドッジするのはベリーイージー!」

 

 わたしが現在猿の手で展開出来る腕は四本、うち二本はハニーを保持し、残る二本には血吸いベッタンと血吸いギーコを装備している。

 その二つで殴りつけるも、あっさりと避けられてしまう。

 

「うぉぉぉぉぉ!!!」

 

「アウチ!!あー、お前、むかつくな……。キル、キル、キル!!!」

 

「うるせえ!それはこっちのセリフだ。とっととハンティを返しやがれ、この目ん玉野郎!!」

 

 しかしその攻撃は回避されても鞭のような腕の軌道によって逃げ道を封じている。

 突進してくるパットンの拳を躱すことが出来ず、レッドアイの身体に炸裂する。

 無敵結界によってダメージこそないが、レッドアイは激怒し全身に魔力を迸らせていた。

 

「ふんっ!はっ!おらっ!せいっ!」

 

「ぐぐぐぐっ、ヒューマン!邪魔!よってキル!!」

 

 拳、蹴り、頭突き、手刀、肘、踏み込み、突進。

 鈍重な印象のあるパットンの巨体が、流れるような連撃を繰り出す。

 それをレッドアイは大剣で防いでいく。

 完全な肉弾戦の間合い、こうなってしまえば瞬間移動も魔法も使えるはずが無かった。

 

「炎の矢!!」

 

「ハニーフラッシュ!!」

 

 演武のような連撃であってもどうしても生じてしまう隙は、わたしとハニーの攻撃が埋まる。

 特にわたしの攻撃は無敵結界を貫通するためレッドアイは瞬時に張れるバリアーで対処する他無かった。

 

 レッドアイの無敵結界はあくまで本体にのみ効果を及ぼし、寄生した肉体を守ることはない。

 よってこのまま行けばハンティの肉体が戦闘不能になるまでのダメージを与えられることが出来るはずだった。

 そうすればレッドアイはハンティの肉体を捨てて逃走する。

 

 パットンはそのために愛する者を傷つける心の痛みを味わいながら、その拳を振るっていた。

 ハンティに情を持たないミネバや闘将にこの役目を担わせることも出来た。しかし、パットンは自分からその役目を引き受けている。

 その覚悟が、今、レッドアイを追い詰めていた。

 

「ぐぐぐぐ、ミーをテイクイットしなさーい!!」

 

「ぐがっ!」

 

 それは一瞬のことだった。まずレッドアイはいくら斬りつけてもパットンに致命傷を与えられない大剣を捨てた。それにより僅かにパットンの意識に隙が生まれる。

 大剣を相手に一瞬も魔法行使の間を与えずに攻撃を繋げ続ける。その極度の集中と緊張が、レッドアイの突拍子のない行動で狂ってしまったのだ。

 無論、魔法詠唱の隙を与えるほどではない。だがその隙にレッドアイが取ったのは更に思いもよらない行動だった。

 

 ハンティの腕に触手をまとわりつかせ、思い切り振り回させる。

 いわば自分自身をハンマーにするという捨て身の戦法であり、彼の宝石が本体の魔人であるという出自を思い起こさせるほどに硬質な音を立ててパットンの鉢金とぶつかり、少なくない衝撃を与える。

 

 わたしがパットンに回復魔法を使おうとしていたタイミングを狙われたことも重なり、レッドアイは瞬間移動の発動に成功していた。

 

「うひゃひゃひゃひゃひゃ!お前!キル!雷神雷光!!」

 

 大きく間合いを取ったレッドアイが魔力を高め、詠唱を完成させる。

 雷神雷光の魔法が発動し、雷の雨がわたしたちに降り注ぐ。わたしはハニーを頭上に構えて大部分を防ぐも、パットンはほとんどモロに食らってしまっていた。

 ハンティを相手にするということで持たせていた雷への耐性を向上させるマジックアイテムも気休めにしかなっていない。

 

「く、はぁ、はぁ、はぁ」

 

 強力な電撃を浴びてなお、パットンは生き延びていた。

 全身に火傷を負い、肉の焼けた匂いすら漂わせているというのに、二本の足で立って、確かに息をしていた。

 

「うーん、キル出来てない?なぜ、ミーが弱い?ノー!!このヒューマン!強い!イエス!だから!ミーのスペアのボディとしてコレクションする!!」

 

 それを見てレッドアイは笑った。レッドアイには強力な特性を持つものをスペアとして確保することがあった。

 破壊と殺戮を何より好む彼のこと、まともな管理などできる気がしないが、ともかくパットンはそのお眼鏡に適ったらしい。

 

 瞬間移動でレッドアイがパットンの目の前に現れる。

 瞬間移動のリスクなど無視してパットンを連れ去ろうとする、その瞬間だった。

 

「パットン!」

 

「やれやれ無茶をさせてくれる」

 

 上空からティーゲルの一撃が飛来する。それはパットンとレッドアイの間に炸裂し、両者を引き離す。

 そしてその一瞬でドラゴンがパットンを拾い上げていた。

 わたしも猿の手でドラゴンの尾を掴んで持ち上げてもらう。

 

「ううむ……。パットン、こっぴどくやられてしまったのう……」

 

「痛いの痛いのとんでけ……。フリーク、キャンテル、あなたたちが来たということは例の策は成りましたか?」

 

 援軍は魔鉄匠のフリークとドラゴンのキャンテルだった。

 パットンに回復魔法をかけながら、二人に確認する。

 

「うむ!万端じゃ」

 

「なるほどではこのまま向かうとしましょう。……魔人レッドアイを引き連れて」

 

「くけけけけー!!そのヒューマン!ミーのもの!」

 

 地上から飛来してきた電撃をバリアーで防ぐ。レッドアイの頭脳に捕獲のために手加減をするという発想はない。

 強力な魔法が何度も飛んでくることを覚悟しなければならないだろう。

 だが、こうして追いかけてきてくれたのは予定通りだ。

 

 来るがいいレッドアイ。これから向かう場所こそ、お前の墓場だ。




10ではアニスに寄生して大暴れしたレッドアイ。
こちらではハンティに寄生し、魔法だけでなく格闘戦も可能な点でまた違った脅威を見せています。

追記
今回の投稿で100話の大台に乗りました
ここまで来れたのは読者の皆様のおかげです
感想は折りに触れて読み返して喜んでいます
これからもどうぞよろしくお願いします
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