※この作品はR-18です。

ランスが女の世界で魔人アイゼルに転生〜洗脳能力と原作知識で魔王を目指す〜   作:斧池 数馬

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vsレッドアイ②

「くけけけけー!ウェイト!キルされるためにウェイトなさーい!!」

 

 空を行くドラゴンを二本の足で駆けて追いかける。

 普通なら不可能な所業を瞬間移動とレッドアイの狂気的な執念が実現する。

 突如として現れてメタルラインや火炎流石弾といった強力な魔法が襲い来る。

 それを防ぐためには地上のレッドアイの姿が消えた瞬間に、高出力のバリアーでキャンテルの全身を覆う他なかった。

 

「ぐうううう!儂の魔池の在庫はもうないぞ!」

 

「分かりました。次からはわたしがすべて受け止めます。猿の手に希う……」

 

 その魔力をフリークは第二次魔人戦争に備えて用意した魔池を、わたしはあらかじめ施しておいたリクチェルの呪いを用いてそれぞれ捻出していた。

 凶暴性の高まる呪いでは冷静さを失うが、そのデメリットはもう一つの魂に押し付けているために防御行動に支障を来たすことはなかった。

 

 しかしあまりの猛攻にフリークの魔池は使い果たされてしまった。

 目的地にはかなり近づいている。あと僅かを逃げ切るために悪魔の力を行使する。

 

「メタルライン!!」

 

「ぐううううううう!!!」

 

 顕現させた四本の腕を束ね、ハニーたちを盾にしながら最強の雷の魔法を受け止める。

 大部分はハニーによって散らされるとはいえ、極太の光条はハニーの身長よりも優に大きい。

 その分は猿の手自体の魔法防御力で受ける他なかった。

 体毛と肉が焼ける不快な匂いが漂う。猿の手から悪魔の力の代償と言わんばかりに激痛が伝わってくる。

 それらを堪えて渾身の力で剣の柄を握り、四本の腕に意思の力を込め続ける。

 

「着いたぞ!」

 

「大丈夫か、アイゼル!よくぞ耐え切った!」

 

 雷撃が度切れた瞬間、安堵と共に力が抜けてハニーたちを落としてしまいそうになる。

 次の攻撃が来る前に目的地の()()に到達したわたしたちは、ハニーたちを最後尾にしてその奥へと向かっていった。

 

「アイゼル様!」

 

「パットン兄様!」

 

 そこではランスとシーラが率いる別働隊が待ち受けていた。

 前線で罪人の部隊を使っていたのはこの場所を確保させるためだった。

 

 闘将たちが跋扈する危険な遺跡。そう、ここはかつての聖魔教団の遺跡だった。

 そしてそれは今、復活を遂げようとしていた。

 

「新しい魔人の反応を検知したよ!この闘神都市に侵入した!」

 

「閉じ込めなさい!シーラ!浮上させなさい!」

 

「はい!浮力の杖、起動!」

 

 突貫工事で作らせた簡易なカラクリが遺跡の出入り口を塞ぐ。

 瞬間移動に経由する異次元では何ものにも干渉が出来ないため、これで十分にレッドアイを閉じ込めることが出来る。

 

 そして魔鉄匠であるシーラの命令のもと、浮力の杖へと魔力が充填される。ここ、かつての闘神都市は今再び天高く浮かび上がろうとしていた。

 

 魔人レッドアイとまともに戦うのはこちらの被害が大きすぎる。魔法が一方向から飛んでくるだけならば、ハニーを並べて盾とすることも出来たが、その対策をハンティの瞬間移動が無意味と化した。

 ゆえにレッドアイを前線から引き剥がし、瞬間移動で逃れることの出来ない闘神都市で仕留めるという策を講じたのだ。

 レッドアイを相手に時間を稼ぎ、執着を抱かせたパットンの奮闘や、この短期間で闘神都市を復活させたフリークやシーラの苦労のお陰でここに策は成った。

 

「あとは任せて」

 

 あとはレッドアイを討つだけだ。そしてここは闘神都市。当然、そこに崇められ、祀られるべき鋼鉄の神もまた同時に復活を果たしている。

 

 ガーネット、サファイア、トパーズ。いつかのように使徒たちが乗り込み、その巨体を動かす魔力を供給する。

 

 闘神。魔人を討つべく作られた人類の叡智の結晶が、本懐を果たす時だった。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「ヒアイズ……闘神都市?イエス!それはベリーハッピー!!ここ闘神都市ならオフコース闘神のボディがある!!ミーがもっと強くなれる!とってもハッピーなことよ!!うけけけけけけけけー!!!!」

 

 元よりレッドアイに異常を恐れて退くという理知があるはずもなかったか。闘神都市にはレッドアイの耳障りな笑い声がこだましていた。

 レッドアイはパットンのことはすでに頭にないのか、再び闘神をボディと出来ることに歓喜していた。

 

 彼にとって重要なのは自分が最強の存在であること。例えこの場でハンティの肉体を殺されたとしても、それを殺すだけの存在の肉体を手に入れられるのならばそれで構わないのだ。

 

「行くぞ!魔人レッドアイ、喰らえ!!」

 

「けけけけけー!!!雷神雷光!!」

 

 強者を探り当てる本能か、あるいはかつての第一次魔人戦争の経験か、闘神都市を迷いなく進んだレッドアイは闘神の元に辿り着いた。

 襲い来る闘神の拳を雷神雷光で迎撃しようとするも、効果は薄く回避を強いられる。

 

 闘神Σを操作している聖櫃の中身はポピンズの魔法使いだ。

 ものづくりを得意とするポピンズらしく、彼は自身が操る闘神は自己改造の機能を有していた。

 

 そんな彼が第一次魔人戦争で戦ったのが強力な電光を誇る魔人レイだった。

 レイの力に対抗するべく改造を重ねた闘神Σのボディに生半可な雷は通じない。

 雷の魔法を得意とするハンティを操るレッドアイを相手取るのに不足のない戦力だといえた。

 

「粘着地面……。瞬間移動を封じるにはそもそも身動きを出来なくしてしまえばいい。これが道理よな。ゆけっ!カオスマスターよ!」

 

「はぁぁぁぁっ!」

 

 ミラクルがその絶大な魔力で闘神の間全体に粘着地面を敷き詰める。

 瞬間移動での回避を封じられたレッドアイのもとにランスが跳躍して魔剣カオスで切り付け、無敵結界を破壊した。

 

 これでわたしやアル・アジフの力を解放したミラクル以外の攻撃でもダメージを与えられるようになり、墜落のダメージを無敵結界で無効にして、闘神都市から墜落して逃れるという選択肢を封じることも出来た。

 

「あははははははハハハハハハハハ!!!ドラゴンのパワー、ルックするがいいね!!」

 

 しかし一筋縄で行かないのが魔人という相手だった。

 レッドアイとハンティの姿が一瞬で切り替わる。ドラゴン・カラーがその真の力を解放した姿、鱗体化だった。全身にドラゴンと同じ鱗が浮かび上がり、額の赤いクリスタルは第三の目と化している。

 レッドアイはハンティの胸の辺りに半ばめり込むように一体化している。ドラゴンの気配とレッドアイの強力な魔力が合わさった赤いオーラを全身から放っていた。

 

「やあああ!!!」

 

「ファイヤーレーザー。あひひひっ!ベリーベリースローリー!火炎流石弾!!!」

 

 粘着地面と化した地表を炎の魔法で焼き、一筋の道を作り出す。

 そこを駆け抜けたレッドアイはΣの一撃を悠々と躱していた。

 続いて放たれた魔法がΣに炸裂し、大きなダメージを与える。

 

「くううううう!」

 

「お前、いらない。このボディがあればミーはオールオッケー!!攻撃付与、加算衝撃、防御呪縛、装甲軟化!!アッハッハッハー!!」

 

 自身の攻撃力を高める魔法と相手の防御力を弱める魔法。

 それらの複合によってレッドアイはΣの右腕を切り落としていた。

 瞬間移動に加えてドラゴンじみた身体能力を人間サイズで発揮する機動力はとてつもなく、鈍重な闘神では捉えることが出来ない。

 

「ふふっ、元より闘神だけで勝てるとは思ってませんよ」

 

「さて、醜い殴り合いに付き合ってもらうとしましょう」

 

「きぃぃぃぃ!邪魔よ!お前ら!」

 

 風華の眷属ともいえる白蛇と悪魔の灰に育った黒植物。それらを編み込んで作ったぬへに我が魂を分け与えた分身たち。

 その肉体の頑強さゆえに簡単に切り捨てられず、むしろ自分から剣に飛びかかり武器を奪おうとする相手は、レッドアイに確かな苛立ちを与えていた。

 

「スーパーティーゲル!!」

 

 乱戦を避けて瞬間移動で距離を取れば、闘神の強力な聖魔法の良い的だった。

 逆に闘神に接近して攻撃しようとすれば分身たちから下級魔法の雨を降らせて詠唱の隙を与えない。

 

「ラーンスアターック!!」

 

「アウチ!……キル!あなた!」

 

「させません!」

 

「アンコク!」

 

 そして魔人の天敵たる魔剣の一撃が、レッドアイを仕留めるべく繰り出される。流石のレッドアイも迫り来る死には恐怖の色を浮かべて、バリアーでその攻撃を防ぐ。

 

 そして、レッドアイの反撃の一撃はシーラの投石、ミラクルの魔法が阻止する。

 わたし、闘神、ランス。三者が互いがフォローし、足りないところを後衛が補うことでレッドアイを追い詰めていく。

 

「キィィィィィィィィ!!雷!神!雷!光!」

 

「ブラックジェット解放!黒の炎!!」

 

 苛立つレッドアイが雷の雨を降らせる。それをわたしは黒の炎で迎撃する。

 両者の激突が爆風を生み、盛大な土煙を立ててお互いの姿を隠す。

 

「あひゃひゃひゃひゃひゃ!!雷神雷光!!」

 

 土煙の向こうから鏖殺を確信した狂気の笑い声伝わってくる。

 わたしの切り札が使い捨てなのを悟ってか、レッドアイは連続の大技でわたしたちを仕留める気だった。

 

「あひゃ?」

 

「あれだけの魔法を使って、ようやく魔力切れか。余ですら戦慄を覚えるぞ」

 

 しかしその魔法が放たれることはなかった。

 何度も高度な攻撃魔法を使わせた。追想劇においては瞬間移動の連続使用を強いている。そして強大な魔力のオーラを纏う鱗体化は明らかに常時魔力を消費している。

 いくらハンティとレッドアイが持つ魔力が膨大であろうとも、これだけの戦闘を繰り広げていれば底も見えようというものだった。

 

「けひひひひひひひ!!」

 

「さて、ここからは泥沼の殺し合いです」

 

 開き直りか、レッドアイは狂ったように笑う。

 彼の狂気がこの程度の不利で陰ることなどあり得ない。

 例え魔法力が切れたとしても、ハンティの戦闘能力は極めて高い。

 それがレッドアイによって如何なる損壊も恐れないで動き続けると思えば十分以上に恐ろしい。

 

「待てよ……。アイゼル、殺し合いってのはちと困るぜ」

 

「おっと、これは失言でした」

 

「パットン兄様!」

 

「ふははははは!スチール・ハートよ!貴様、それだけの傷を負ってなお、立ち上がるか!良いだろう!此度の戦、主役は貴様にくれてやる!!」

 

 だがあらゆる傷も、痛みも、恐れずに戦い続ける戦士ならばこちらにも居る。

 法王の回復魔法によって死を免れ、シーラの回復魔法によって傷を塞いだパットンが今立ち上がり、拳を構えていた。

 単純な戦力以上に、その尽きることのない闘志が周囲を奮い立たせる。

 

「換装完了!フリーク爺ちゃん、力を借りるよ!」

 

「行けい!」

 

「火爆破!……ワッツ!?」

 

 切り落とされた腕を闘神Ωのパーツに取り替えたΣの一撃がレッドアイを狙う。

 カラクリ仕掛けによって切り離された腕は後部から炎を吐きながら一直線にレッドアイ目掛けて飛んで行く。

 レッドアイは下級の魔法で起動を逸らし回避を試みるも、飛翔する右腕は爆炎を弾いて突き進んで行く。

 それはかつての戦いで闘神MMを討ち倒した武装、ミスリル銀製のドリルだった。

 

「ぐぎぎぎぎぎぎ!パリィィィィ!!」

 

 ハンティの剣才を遺憾無く発揮したレッドアイは、下から掬い上げるような剣撃で攻撃を弾くことに成功する。

 

「さあて、覚悟は済んだか?スチール・ハート」

 

「おうよ!やってくれ!」

 

「では行くぞ。飛べ!!誇り高き鋼の闘魂よ!!アル・アジフの叡智を求む!!」

 

 アル・アジフから解き放たれた墨のように濃密な黒い魔力が一体のイカマンを形作る。

 それはパットンを担ぎ上げると二本の腕を吸盤で地面に固定し、ジリジリと後退していく。

 それはパットンを弾丸としたパチンコだった。

 限界まで伸びた腕の張力が解放され、パットンがハンティの元へと猛烈な勢いで飛んで行く。

 

「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「ぎゃあっ!!」

 

「離れや、が、れぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 空を飛んだパットンはその勢いのままに拳を放ち、レッドアイを思い切り殴りつける。

 そのあまりの威力に目を回している隙にその巨大な手がレッドアイを掴み、握力と腕力にものを言わせて無理やりに引き剥がしにかかる。

 一本、二本とレッドアイの触腕が剥がれ、ついに本体もハンティの体から離れ始める。

 

「やっぱりユーは、ベリータフなボディ!ミーがいただく!!」

 

 ついにレッドアイを引き剥がすことに成功したパットンは勢い余ってその場に尻餅を付く。

 レッドアイはその行動原理に従って、パットンへと触腕を伸ばそうとする。

 

「させない」

 

 そこをパットンの巨大な手の隙間を通すような、精妙な軌道で繰り出されたランスの突きが命中し、その命運を絶った。

 レッドアイの体が霧散し、一回りか二回り小さい玉が転がり落ちた。

 狂気のままに暴れ続けた魔人、レッドアイの最期だった。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「いててて、パットン。馬鹿力でぶん殴りやがって……」

 

「うるせえ、魔人に乗っ取られて暴れておいて、命が助かっただけありがたく思えってんだ」

 

「はは、まあ、確かに。ありがとうね、パットン」

 

 正気を取り戻したハンティがそう言うと、力尽きたように大の字で倒れていたパットンは満足そうに目を閉じた。

 

「おい、パットン?ふざけんな!パットン!パットン!」

 

 魔人との激闘を戦い抜き、大切なものを取り戻した闘士は安らかに眠っていた。

 ハンティはその胸に縋り付いて叫ぶ。逝く者と取り残される者。その構図はハンティの心の傷を抉るものであり、彼女の嘆く姿は目を逸らしなくなるほどに悲痛なものだった。

 

「……あん?静かにしてくれよ」

 

「紛らわしいわ!」

 

「痛え!おいおい、俺、とんでもない怪我をしてるんだぜ……」

 

「くすくす、感動の再会のところ、申し訳ありませんが。続きは治療が済んでからということで」

 

 なんて事のないように目を開けたパットンにハンティのツッコミが炸裂する。

 魔人のわたしをして呆れるほどのタフさだった。

 わたしは苦笑いを浮かべながら、パットンの治療を始めるのだった。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 魔人バボラと魔人レッドアイ。立て続けの魔人の撃破は魔軍を大きく動揺させ、人類軍を大きく奮い立たせた。

 この機に乗じて人類軍は魔軍へ攻撃作戦を実行し、多大な戦果を上げた。

 特に強力な突撃力を持った帝謙信とロレックス・ガドラスの両者の部隊は、数体の魔物将軍を打ち倒すことに成功する。

 しかし、ヘルマン方面軍の指揮をとる魔物大将軍ルメイはいまだ健在。

 ほとんどケイブリス派の所領となっている魔物界の北部地域からの重圧もあり、油断出来ない状態が続いていた。

 




レッドアイは魔人たちの中でも上位に入るであろう強力な魔人。
しかしその暴れるしか能のない人格が命取りになりました。

アイゼルやパットンたちの奮戦を楽しんでいただけたのならば、感想・評価・お気に入りの登録をよろしくお願いします。
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