※この作品はR-18です。

ランスが女の世界で魔人アイゼルに転生〜洗脳能力と原作知識で魔王を目指す〜   作:斧池 数馬

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vsレキシントン①

 ヘルマンの魔人を撃退したわたしは、次にリーザスの魔人と戦うことにした。

 人間界で最も高い国力を誇るリーザス。ここを魔人の脅威から解放することが出来れば各国の支援を行わせることも出来る。

 

 リーザスにいる二体の魔人、レキシントンとワーグもわたしにとって魅力的な存在だ。

 魔人の力を持ちながらも、その内面は孤独を抱えた少女でしかない。そんな存在を誑かし、我が物にするのは容易いと思えた。

 

 そんなふうに甘い見込みがあったのは否めない。高い国力を持ったリーザス、ここを落とされることは人類軍が一気に瓦解するきっかけになりうる。それを思えばこの戦いは極めて重要だというのに。

 

 リーザスでは、強大な脅威がわたしたちを待ち受けていた。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「行くぞ!一番槍はわたしが貰う!!」

 

「待てよ、アギレダ。慎重に行こうぜ」

 

「うるさい、ヨシヒサ。わたしは今やアイゼル様の寵愛を受ける身なのだ。お前たちの言葉に惑わされたりしないんだからな!」

 

「だからこそだよ。あの方の寵姫に何かあったら申し開きが立たないってもんだろう。だから一緒に行くぜ。背中は俺が守ってやる」

 

「ううう〜!惑わされないからな!」

 

 リーザスにはJAPANからの援軍として島津家の軍が参戦していた。

 アフリカの部族長の娘であるアギレダ・コイサブッシ・ゾンナ・アボナがその槍をもって戦端を開こうとするのを、島津ヨシヒサが嗜める。

 二人は互いを庇い合う陣形で突撃し、そこに続いてJAPANの屈強な武士たちが魔軍とぶつかる。

 

 十文字槍の使い手、島津カズヒサの率いる部隊も加わって突破力を増した兵たちを、鉄砲隊を率いる島津トシヒサや軍師である島津イエヒサが率いる部隊が後方から支援していた。

 

「ふんっ!人間風情が調子に乗りおって……!側面から叩いて潰せ!!」

 

 長蛇の陣で突き進むJAPANの軍勢たちに対し、左右の魔物兵たちを動かして包囲を形成しようとする。

 その間、真正面の兵たちは突かれ、切られ、撃たれることになるが、時間さえ稼げればそれでいい。

 数で勝る魔軍の布陣は厚い。包囲が完成するまでに自身のもとにまで敵軍が辿り着く可能性は皆無と言って良かった。

 勝利を確信した魔物将軍がほくそ笑む。

 

「紫の軍、薙ぎ払いなさい!氷雪吹雪!!」

 

「チューリップ、発射!!」

 

 左右に広がろうとする魔軍をメルフェイス・プロムナードが率いる紫の軍の魔法と、カスミ・K・香澄が指揮するチューリップ砲兵たちの砲撃が襲う。

 呪いの力によって強化された魔法力と未知の科学の産物による破壊は魔軍に被害以上の混乱をもたらし、包囲の形成を遅らせる。

 

「さあ、JAPANの精強なるもののふたちよ!帝の命を見事成し遂げるが良い!!」

 

「うぉぉぉぉぉおおおおお!!!」

 

 最後の一押しとばかりにアギレダが演舞のように槍を振るいながら密林の秘薬を振り撒く。

 巫女たるアギレダの舞と、秘薬の効能、何より帝への忠誠心によって武士たちは体と心を奮い立たせ、魔軍の布陣を突破していく。

 

「見つけたぞ!魔物将軍!!その首もらった!!」

 

「舐めるなぁぁぁあああああっ!!」

 

 ついに魔物将軍の喉元に辿り着いたアギレダはその槍の一撃で魔物将軍の首を狙う。

 魔物将軍は手にした鎖を振るい、鉄球でアギレダを叩き潰さんとする。アギレダの矛先より先に、魔物将軍の鉄球が炸裂するかに見えた。

 

「ふんっ!!」

 

「奪ったぞ!!」

 

「ぐはっ!!」

 

 ヨシヒサが鉄球を弾く。魔物将軍が次なる一撃を放つよりも早く、真っ直ぐに敵だけを狙って駆けたアギレダの槍が魔物将軍の首を貫いていた。

 指揮官が倒れて狼狽える魔軍を、魔法とチューリップの爆発が襲う。

 

 ここにリーザスとJAPAN、カスタムからの砲兵部隊も含んだ混成部隊は魔軍相手に勝利を収めた。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「うらららららぁぁぁぁぁ!!!」

 

 赤の軍の将軍、リック・アディスンの剣、バイロードが鬼の首を刎ねる。

 鬼どもは多少の手傷では決して止めることなく突進してくるが、手練の騎士たちで構成された赤の軍も勢いにおいては引けを取らない。

 

「法王の名のもとに!人類がために戦う騎士たちに祝福を与える!回復の雨!」

 

「流石は法王様……。これならまだまだ戦える!」

 

 リーザス最強の剣士として最前線に切り込むリックに変わって、軍の指揮を取る副将、メナド・シセイが騎士たちの負傷が癒えていくのを見て感嘆する。

 相打ちを厭わない鬼どもが相手では負傷は避けられないが、法王であるわたしの回復魔法によって離脱を防ぐ。

 

「法王が兵を率いて赤の軍と共に突撃するとは、初めに聞いたときは耳を疑ったが……。なるほど、これならば負傷を気にせず戦える!」

 

「法王自ら剣を振るって鬼を切り倒す……。剛毅よな」

 

 猿の手の重量に任せた一撃で鬼の頭を叩き潰す。

 鬼と同じく死を厭わず戦うテンプルナイトたちを指揮して、赤の軍の突撃を支援する。

 共に強敵と戦うという一体感に、赤の軍の騎士たちから賛美の声が聞こえてくる。

 僅かな洗脳の魔力による後押しも相まって、友軍からの支持の高まりを感じたわたしは内心でほくそ笑む。

 一枚岩にまとまったリーザスとはいえ、実際に戦う兵からの信頼はあるに越したことはない。

 

「アイゼル!後方に魔人レキシントンが!今、アリオスさんが戦ってる!」

 

「そちらに現れましたか……」

 

 鬼をあしらいながら、かなみから報告に思考を巡らせる。

 

 魔人レキシントンの中身はただの少女ニミッツ・リークだ。

 いくら魔人の肉体であろうともそれを操るのが素人ではその戦闘力はほとんど発揮されない。

 すでに彼女は一度リーザス軍と交戦しており、魔人の膂力によって兵をある程度蹴散らしたところでリックと戦闘になり、撃退されている。

 

 無敵結界がなければ命を落としていた戦闘を経験した彼女は、鬼の肉壁で自分を囲んで身を守ろうとするだろうと予想して、それを無理やり突破できる戦力を用意したのだが、後方に奇襲を仕掛けるとは予想が外れた。

 

 恐らくは人間の姿でこちらの陣地に潜入したのだろう。

 本人にそのつもりはないのだろうが、なかなかにいやらしい手だといえた。

 

「ランス!サチコ!」

 

「はい!アイゼル様!」

 

「なんでしょうか!法王様!」

 

「わたしとあなたたちで救援に向かいます。テンプルナイトたちはこのまま鬼を殲滅せよ!!」

 

「はっ!!」

 

 テンプルナイト騎士団長であるバッティング・センターズが力強く頷くとテンプルナイトたちの指揮を引き継ぐ。

 法王の身を危険に晒す命令であっても躊躇なく従うのは、わたしの洗脳によるものだった。

 元より高い忠誠心を持つテンプルナイト。洗脳は命令に従うことへの優先度を僅かに上げる程度で済み、抵抗などもほとんど生じていない。

 ゆえにほとんど力を使わすに自由に操ることの出来る使い勝手のいい戦力だと言えた。

 そんな彼らと赤の軍に鬼たちの討伐を任せ、わたしはランスとサチコを連れて後方へと反転した。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 後方にも元勇者アリオスを始めそれなりの戦力が揃っている。

 今回はAL教の戦力を率いて動いているためクルックーを始め神魔法の使い手も揃っているため、レキシントンが使徒や鬼などの戦力を引き連れていたとしてもそう簡単には瓦解しないはずだ。

 

 そう予想していたわたしの目に映ったのは予想だにしていなかった光景だった。

 

 周囲には鬼たちの屍が転がっている。袈裟懸けに斬られたもの、首をへし折られたもの、矢で脳天を貫かれたもの。

 それを為した三人の戦士は、レキシントンの使徒ジュノーとアトランタと睨み合っている。

 

「はぁぁぁぁあああ!!」

 

「ひぃぃぃぃぃ!」

 

 そしてもう一人、黒い髪の剣士がその剣技のみでレキシントンを追い詰めていた。

 技も無く手足を振るうだけで脆弱な人間を容易に殺し得るレキシントンのパワー。特殊な武器や存在でなければ傷一つ付けることの出来ない無敵結界。

 

 たとえ中身がただの少女でも、その二つを備えた鬼の魔人を剣の技量だけで追い詰めるのは容易なことではない。

 そんな強者がいきなり現れたことを訝しみ、その顔を認めると戦慄が走った。

 

「法王様!どうか魔人に止めを!」

 

 黒い髪に丹精な顔立ちの十五か十六才くらいの少年。その正体は勇者ゲイマルクだった。

 魔王を倒すべく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()最悪の勇者。

 アリオスの次代である彼は今はまだ幼い子供のはず、と思ったところでこの状況を成しうる存在に思い至る。

 聖女の子モンスター、時のセラクロラス。その力によって肉体の時間を操作して、勇者としての力を最大限発揮できる年齢にまで成長した。

 

 その脅威のほどに戦いていたわたしは隙だらけだったのだろう。次の瞬間にはわたしの首にゲイマルクの剣がぶつかり、無敵結界によって弾かれていた。

 

「あれ?なんで刃が通らないんだろう?」

 

「バカなゲイマルク……。そいつ、魔人ですよ。無敵結界、魔人が持つどんな危害も無効にする力。説明したし、実際に目の当たりにしたじゃないですか」

 

「いや、法王が魔人って聞いてないよ。良い子にしてれば偉い人に近づけて、ぶっ殺せると思ったのに」

 

「え、え、なに?法王様?なんでこいつそんな人に剣を?頭おかしいんじゃない?」

 

 あまりにもあっさりと行われた凶行に、仮にも魔人の素体に選ばれるだけの心の闇を持っていたはずのニミッツが狼狽えていた。

 わたしも、原作知識が無ければ同じようなことになっていたかもしれない。

 

「お前ぇぇぇぇええええ!アイゼル様に手を出すな!!」

 

「法王様、わたしの後ろに!!」

 

 激昂したランスがゲイマルクに斬りかかる。盾を構えたサチコがわたしとゲイマルクの間に割り込むように突進する。

 高レベルの剣士と盾使い。その連携を運良く躱したゲイマルクはニタリと笑った。

 

「お姉さんたち、騙されないで!そいつは法王様の皮を被った魔人なんだ。法王様に成り代わって人類を滅ぼそうとしているんだ!!」

 

「そんな訳あるかぁ!」

 

「法王様は法王様……、ですよね?」

 

「サチコ、後でおしおきです」

 

「ほら、やっぱり!こんなスケベな魔人が他にいる訳ありませんよ」

 

「ちぇ、やっぱりこれ使い勝手が悪いな……。強い人にはあんまり効かないし」

 

 勇者特性の一つに異性に異様にモテるというものがある。

 それを意図的に用いようとするのは、彼がまだ色を知らない子供だからなのか、あるいは生まれついての異常者だからか。

 籠絡に失敗したゲイマルクは舌打ちをすると、エスクードソードを構えた。

 

「ゲイマルク……!なにをしているんだ!?勇者の力はそんな風に使うものじゃない!!」

 

「いや先輩。勇者の役目は魔王を倒すことでしょう?そのために必要なのはこいつの真の力を解放すること。そのためには人類には死んでもらわなきゃ」

 

 こともなさげに言うゲイマルクにアリオスは言葉を失っていた。

 エスクードソードに魔王殺しの力が宿るのは、人類死亡率が50%を越えてから。

 それだけの人類を死に至らしめると平然と言ってのける精神性には魔人のわたしすら驚愕せざるを得なかった。

 冷酷さと合理性の同居。あの魔王ジルにも通じる所業に恐怖すら抱く。

 

「そんなの、絶対に許さない!ラーンス、アターーーック!!」

 

「ちっ、こんなのが勇者だなんて、世も末ねぇ。やっちまえ、ランス!」

 

 魔剣カオスはゲイマルクへの怒りにその切れ味を研ぎ澄まし、ランスがそれを必殺技に載せて放つ。

 勇者特性によってランスの太刀筋を見切ったゲイマルクが回避と同時に反撃を狙うも、カオスの切先が地面に触れた瞬間に発生した衝撃波によって後退を余儀なくされる。

 

「え?え?ええ?なんで人間同士で殺し合ってるの?」

 

「レキシントン様、ここは一旦引きましょう」

 

 ゲイマルク一行との戦闘が幕を開ける。

 離脱しようとするレキシントンたちを追う余裕などどこにもなかった。

 

「イヌ、サル、キジ。殺せ!!」

 

「はぁぁぁぁああああっ!!」

 

「くっ!お前たちも、どうしてゲイマルクに従ってるんだ……!」

 

 ゲイマルクの号令のもと、三人の戦士が襲い来る。

 陰気な剣士と剣を交わすアリオスは思わずその動機を尋ねる。

 

「血と闘争がため」

 

「ゲイマルク、オレの友達。友達の敵、殺す!」

 

「ひゃひゃひゃひゃひゃ!ワタシは人を殺したいのですよぉ!!魔物や鬼相手なんてつまらない!」

 

 戦闘狂、愚鈍な男、殺人嗜好者。なるほどゲイマルクについていくのも納得の面子だった。

 陰気な剣士はアリオスと互角に渡り合い、大柄な男は巨岩を持ち上げて投げようと構える。細長い男は一度に複数の矢を番え、天に向かって放つ。

 

「させるかぁぁぁあああ!!」

 

「火爆破!!」

 

「援護します」

 

 岩が投げつけられるのをアルカネーゼが獲物の大鉈を投げつけて防ぎ、矢の雨はシィルの魔法が吹き飛ばした。

 無手でも恐れずにアルカネーゼは自身より横にも縦にも大きい男に殴りかかり、シィルは再び迎撃の魔法の準備をして細長い男と対峙していた。

 

 知られざる強者の存在に不安を感じるも、ここはアリオスたちに任せる他なかった。

 

「ほらほら、よそ見なんてしてていのか!?」

 

「くすっ、自称勇者よ。それが許されるのが魔人と人間の間にある力の壁です」

 

 太刀筋を学習させないため、あえて雑にゲイマルクと斬り合う。

 多少体に剣が当たるのは無視して、無敵結界で防いでも衝撃で体勢が崩れかねない力の乗った攻撃だけを剣で防ぐ。

 

「アイゼル様から離れろ!」

 

「うーん、やっぱり無敵結界が邪魔だな……。予定変更!先にこっちの人間のお姉さんからぶち殺す!!」

 

 無敵結界を相手に戦闘の無意味さを悟ったゲイマルクはランスに矛先を変えた。

 割り込んで来たランスの一撃を躱してその首に一撃を叩き込もうとする。

 

「ふんっ!させませんよ。……ランス、サチコ!わたしを盾にして立ち回りなさい!」

 

「……はい!アイゼル様」

 

「法王様の命なら仕方ないですねぇ」

 

 エスクードソードを手刀で弾く。剣の間合いよりさらに狭く、徒手空拳でゲイマルクに殴りかかる。

 その分小柄なランスたちがゲイマルクの視界から隠れ、隙の少ない突きや盾で身を守りながらの攻撃でゲイマルクを崩そうとする。

 

「アイゼル殿!鬼どもの討伐果たしました!」

 

「アイゼル様!ご無事ですか!今お助けします!」

 

「ちぇっ、これじゃ殺し切れないかな。いいやもう、イヌ!サル!キジ!撤退だ!!」

 

 互いにダメージを与えられない戦闘を続けていると、鬼たちを撃破した赤の軍とテンプルナイトたちが救援に駆けつけて来た。

 不利な状況にゲイマルクは撤退を判断した。

 勇者特性でほぼ不死身なゲイマルクは無視して、三人の戦士には追撃の魔法を放つが仕留めることは出来なかった。

 

 こうして勇者との最初の戦いは引き分けに終わった。

 人類死亡率を上げるために暗躍する勇者という災厄に等しい脅威。

 彼の目的を果たすためにはわたしやランスのような強力な戦力を苦労して殺す以外にもいくらでも方法がある。

 大至急でその対策を練らなければならなかった。




準備が全てを決すると言って過言でないほどに重要なのが戦争ですが、予想だにしていなかったことが起こるのもまた戦争なのです

というわけでまさかのゲイマルク、第二次魔人戦争に電撃参戦

あまりにもあんまりなタイトル詐欺ですが、(ゲイマルク)vsレキシントンということでどうか一つ

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