ランスが女の世界で魔人アイゼルに転生〜洗脳能力と原作知識で魔王を目指す〜 作:斧池 数馬
「ケイブリス様!朗報でございます!!」
「どうした、ストロガノフ。魔王の居場所が割れたか?アイゼルの野郎が死んだか?カミーラさんがどこに囚われてるか分かったのか!?」
「い、いえ……、に、人間どもの首魁!カオスマスター、ランスの居城が判明したのです!!自由都市の一つCITY!ここに我らの難敵が……」
「ちっ、そんな程度の情報で何喜んでるんだ……!」
「し、しかし、きゃつめの首を獲ることは戦略上重要な……」
「ガタガタうるせぇんだよぉぉぉ!!人間如きにここまで手こずる能無しがああああぁぁぁぁ!!」
「はっ!!ははぁぁぁぁ!!ここまでの苦戦、魔物大元帥として申し開きのしようもございません!!」
魔軍の首魁、ケイブリスが座す天幕に、喜色を浮かべたストロガノフが報告に現れる。
しかしその報告が望んだもので無かったことにケイブリスは激昂した。
繰り返される魔人の撃破や消息不明の報告、そして何より先ほど上げた三つの戦略目標、魔王リトルプリンセスの確保、魔人アイゼルの討伐、魔人カミーラの奪還が果たされないことに彼は不満を募らせていた。
「ケイブリス様……、カオスマスターが本拠とするCITYの攻略が叶えば、ケイブリス様の目的の達成に近づきまする。ゆえに、何卒、ここを落とせとご命じくださいませ……!」
「ちっ!自由都市だったなぁ……。パイアールを向かわせろ。俺様が分身を通して直率してやる。いいか、その街はムシ一匹残さず、皆殺しにするぞ……!」
「は、ははぁぁぁぁぁ!仰せの通りに……!」
主人の怒号に、ストロガノフは地に伏して謝罪し、癇癪が収まるのを待つ。
果たして、ケイブリスは冷静さを取り戻し、CITY攻略の沙汰を下した。
◆ ◆ ◆
魔軍がこのCITYを目指して進軍しているという情報が入った。
CITY決戦。第二次魔人戦争における趨勢を左右する一戦だが、こちらにはランス城とその周囲を闘神都市として逃走するという最後の手段がある。
バベルの塔に代わる、浮力の杖はすでに建造済みで、あとは闘神と魔鉄匠による承認さえあれば起動出来る状態だ。
つまりこの戦いはリスクを最小限にして、敵に犠牲の大きい無理攻めを強いることが出来るということだ。
勇者や悪魔といった不確定要素もあるが、それはどこの戦場でも同じことだ。
侵攻する魔軍にはパイアールに加えて、ケイブリスの姿もあるという情報もあった。
ケイブリスは恐らく分身体だろうが、パイアールを戦場に引っ張り出せているというのはかなりの好機といえる。
ここで討ち取り、自由都市から魔人の脅威を取り除くことにしよう。
◆ ◆ ◆
「オラァァァァァァァァッ!!」
アイゼルの軍門に降ったレイは、ランス城へと続く道の一つを防衛していた。
その電光の威容は健在で、魔軍からはこの道からの攻略を諦める気配すらあった。
消極的な攻撃にフラストレーションが溜まるが、持ち場を離れることは出来ない。
誇り高い彼にとって、一対一の殴り合いで敗れたことで交わされた契約は軽率に破れるものではなかった。
加えて、ランス城にはメアリーもいる。
彼女の介抱により、アイゼルとの決闘に臨むことが出来た恩は、彼にとって決して小さいものではなかった。
「やあ、レイ。元気そうだね」
そこに異様な集団が現れた。白いボディに赤いレンズの単眼を光らせるそれらの一体から声が発せられる。
「パイアールか。へえ、てめえが相手をしてくれるのかい?くだらねえ玩具だが、暇潰しにはなってくれよ」
「はは。そんな見え透いた挑発なんかして、本当に人間の側に付いたみたいだね。それじゃあ、レイ、殺させてもらうよ」
「はっ、やってみろよ。生っちょろいてめぇ如きにそんな真似が出来るってんならなぁ!!」
目の前の空間そのものを殴りつけるように、レイの拳が振るわれ、纏った電撃が放射される。
それはパイアールの機械軍団に向かって直進し、いくつもの筋に分かれて霧散した。
「うん、充電ありがとうね。やっぱり単体の生物とは思えない発電量だ。きみはやっぱり殺さないで、ぼくの研究のための動力源になってもらおうかな?」
「笑えねぇ冗談だな!」
電光を抑えたレイが吶喊してロボの一体を殴り倒す。
そこに控えていた人間の防衛部隊からも攻撃が開始される。
JAPANの陰陽師、北条早雲率いる部隊が撃つ式神たちは、レイを巻き込む無差別攻撃だが、無敵結界によりレイにはダメージはない。
魔人同士の激突が始まった。
◆ ◆ ◆
「ふんっ!」
進撃の詰み手のリーダーにして、元テンプルナイト騎士団長、ベグドランが魔物兵の頭を叩き潰す。
「神聖分解波」
そして前衛が敵の脚を止めているところに、後方からアム・イスエルの神聖分解波が炸裂し、敵陣に大きな被害をもたらす。
「アリス様に!アイゼル様に!勝利をお捧げするのだー!!」
「傷ついた方はこちらへ!回復します!!」
同陣営の味方の声に、ベグドランは内心で苦笑した。
彼らは今、AL教の信徒たちと共に魔物兵を相手に戦っていた。
首魁であるアムが、元法王である以上当然のことだが、進撃の詰み手たちが前線を固め、アムが後方から神魔法で支援と攻撃を行う陣形は、AL教の基本的な戦闘スタイルと言っていい。
そのためAL教のテンプルナイトやシスターたちとの連携は戦術面においては何ら齟齬がない。
しかし、それはあくまで戦術面の話であって、精神的には導く者とAL教は不倶戴天の敵対関係にある。
そんな両者の共闘を実現しているのが、信徒たちのアイゼルへの盲信だった。
使えるものは何でも使うというアイゼルの方針は、正規軍との間で齟齬を生じかねない。
それを無理矢理に抑え込むアイゼルの異能に、ベグドランは内心で戦慄していた。
「ベグドラン、あなた、怪我をしてるわ。治療を受けておきなさい」
「はっ、アム様」
ともすれば自身の正気すらも疑いかねないシチュエーションだったが、ベグドランはアムへの忠義によって、その疑念を跳ね除け、戦闘に意識を集中させていた。
◆ ◆ ◆
「ぶっ飛べぇぇぇぇ!!!」
ダイナマイトを撒き散らし、炎の矢によって着火する。
連鎖的な爆発によって生じた強烈な衝撃と音が敵陣に混乱をもたらす。
「腐り落ちなさい」
「藍色破壊光線!!」
そこに降り立った二人の使徒が、腐敗と石化によって被害をもたらす。
尋常な戦傷ではあり得ない様子は、魔物兵たちに忌避感を掻き立てる。
「ケイブリスに伝えよ!我が首が欲しければ貴様自身が戦場に来るがいいとな!!」
「ひ、ひぃぃぃぃ!!」
混乱と恐怖によって統率が失われた魔物兵たちは、もはや障害とはなり得なかった。
敵陣を駆け抜けたわたしは猿の手で魔物将軍の頭を粉砕し、切り取った首を掲げて叫ぶ。
指揮官を失った魔物兵たちは、魔人の恐怖に散り散りになっていく。
しばらくすれば他の魔物将軍に拾われて再び攻めて来る可能性もあるが、追いかけて一体一体を潰していくのはあまりにも時間がかかりすぎる。
ゆえに少しでも士気を下げるためにわたしへの畏怖という毒を仕込んでいく。
「お疲れ様です。アイゼル様。これで三体の魔物将軍を仕留めました。と言っても依然数は多いですが……」
「リラックスタイムでーす♡わたしのバスト、グッドですか〜♡」
「少し休まれた方がよろしいかと」
ガーネット、サファイア、トパーズの三人が魔法で周囲を哨戒しつつ、わたしに休息を進言してくれた。
それに甘えてわたしはその場に腰を下ろした。
悪魔の奇襲を警戒して、魂は白い状態を維持している。
それは怪我や疲労に対して誤魔化しが効かないということだ。
魔人の体力をもってしても、小まめな休息は不可欠だった。
背後からサファイアに抱きしめられて、頭をその豊かな乳房に挟み込まれる。
戦場の興奮で緊張した体が緩んでいくのを感じる。
「それにしても、サファイアのこれ、ずるいよね」
「はい、アイゼル様と頻繁に触れ合えるなんて、羨ましいです」
「ひゃんっ♡わ、わたしのバスト、グロープしないでくださーい♡」
「くすくす、二人とも胸を差し出しなさい。少し疲れましたから、手慰みが欲しいです」
「はい、アイゼル様っ♡」
「かしこまりました」
左右にガーネットとトパーズを侍らせて、両手で彼女たちの胸を弄ぶ。
ガーネットの胸は弾むような感触が楽しく、トパーズはふにふにと指先が僅かに沈む感触が心地いい。
リラックスバストの影響で性的な興奮とも無縁なまま、人肌の温もりと柔らかさに疲れが癒えていくのを感じる。
「一旦城まで引きましょう。そろそろ他の戦場で動きがあるかもしれません。指揮は軍師たちに任せていますが、わたしが必要な事態が起こっていないとも限りません」
ケイブリスが座する敵本陣は彼の性格を表すようにあまりにも敵陣の深くにある。
ゆえにこのまま真っ直ぐに攻め込んだとしても、彼を仕留められる可能性は皆無と言って良かった。
こうして魔物将軍の首を狩れば、その分だけ敵の秩序だった進軍を阻害出来るために無意味ではないが、目に見えての成果が得られない戦闘には辟易するものがあった。
◆ ◆ ◆
「さてと、忍び込むかな」
「頑張ってくださいね。ところで、アレは持っていかないんですか?」
ランス城の様子を伺う影があった。
勇者ゲイマルクだった。
彼が携えているのは、一振りの剣、エスクードソードのみであった。
「ああ、アレはなぁ。あくまで魔人も殺せるってだけだから。不意打ちの初見殺しにしかならないでしょ。だから一番の使い所まで隠しておく」
「なるほど、じゃいってらっしゃい」
「各国の首脳クラスが詰めてる。一人でも獲れるといいなぁ。というわけで行こうか」
「ひ、ひぃ……」
「はは、そんな怖がらないでよ。君には手を出してないでしょ?そりゃ、説得のために君の部隊の魔物をちょっと拷問したけどさ」
ゲイマルクは飛行魔物兵に乗り込むと静かにランス城に向かって飛んで行った。
「どこに何があるかな。適当に暴れてもいいけど、何か狙いがあって潜入したって思われた方が効果的だし」
ランス城の塔の一つに張り付くように着地したゲイマルクは、乗ってきた飛行魔物兵を始末してその死骸を適当に隠した。
常に剣を突きつけて脅しておかなければ魔物兵は使えない。
勝手に逃げ出すなりなんなりして、侵入がバレることを考えれば殺しておくのは彼にとって妥当な判断だった。
帰りは勇者の不死性に任せて強行突破すればいい。
ゲイマルクは「勇者は魔人を殺す手段を持っておらず、要人の暗殺や破壊工作によって人類の犠牲者を増やし、エスクードソードの解放を狙っている」と思い込ませるに足る材料を探して、気配を消して城の中の探索を始めた。
「申し訳ありませんが、主人の許可のないお客様はお断りしております」
「げっ」
しかし、彼の潜入はすぐにバレてしまった。
城の管理を任されたビスケッタはメイドとしての直感により、招かれざる客の存在を暴き、撃退に現れたのだった。
「ちぇ、予定変更。とりあえず殺せるだけ殺す」
警報が鳴り響き、城内が騒然となる。
迎撃に現れた兵たちを見て、破壊工作や暗殺の成功は難しいと判断したゲイマルクは、城に詰めている兵自体を標的に変えた。
「ふんっ!勇者如き、このサテラ様が撃破してやる!!」
「ハイ!サテラ様!」
そこに今の勇者では殺せない、魔人が現れる。
命持たぬ即席のガーディアンたちを率いた彼女は、勇者を包囲した。
◆ ◆ ◆
「お疲れ様です。アイゼル様」
ランス城に帰還したわたしたちを、ビスケッタは常と変わらぬ完璧な所作で迎え入れてくれた。
しかし、他のメイドたちにはあからさまに動揺が見られる。
「アイゼル様が不在な間に、勇者ゲイマルクの奇襲がありました。魔人サテラ様のご協力により、大きな被害なしに撃退に成功しましたが再度の襲撃があるかもしれません」
「そうですか」
サテラは戦闘力の高い方の魔人では無い。
しかし、彼女の作るガーディアンたちは即席といえども侮れない戦闘力を持つ。
聞いたところでは無敵結界によってサテラを攻めあぐねているうちに、ガーディアンやムシたちによって押し出すようにして城から追い出したとのことだった。
被害はガーディアンやムシのみに限定できたことで、動揺がありながらも大きな混乱に陥ることがなかったのは幸いだった。
他の戦場も拮抗状況を維持出来ている。
特にカラーと女戦士たちによって構成された部隊が、呪いによって多くの敵を葬っていることは朗報だった。
その報告を受けたわたしは、暫しの休息を取ることにした。