ランスが女の世界で魔人アイゼルに転生〜洗脳能力と原作知識で魔王を目指す〜 作:斧池 数馬
ホーネット派がアイゼルハーレムになるまで頑張って書きたい所存。
遅筆とランスシリーズそのもののボリュームのせいでかなり先の話になりますので気長にお待ちください。
感想評価をいただけると大変喜びます。
魔王城、先代魔王ガイが建てた城であり、現在はホーネット派の本拠地でもあるその城に私は訪れていた。
リーザスでの騒動の後、即座に帰還しなかったことについての申し開きと、魔人メディウサを討った報告をするためである。
「久しぶりね。アイゼル」
「シルキィ。お元気そうで何よりです」
そのかつての謁見の間に向かう途中で、魔人シルキィに声をかけられた。
小柄な体躯の女性。短い青い髪の、強い意志を感じさせる顔立ちの女性。
かつて魔王ガイの魔人となることと引き換えに、大陸の半分を人間界とさせた人類の英雄である。
「メディウサを倒したのよね。おかげで私もこうして楽が出来ているわ。……ありがとうね」
彼女にとって、人間を嬲り殺しにするメディウサの跳梁は、許せないものだったのだろう。
感謝の言葉は重かった。
「では礼として、私がホーネット様からご容赦いただけるように、助太刀してくださいませんか?」
「構わないわよ。まあ、ホーネット様がちょっと帰るのが遅れた程度で怒るとは思えないけど」
「ええ、そうですね。我らが主は心が広いですから」
そして二人で謁見の間に向かう。
「ホーネット様!魔人アイゼル。帰参しました!」
「……入りなさい」
長い緑の髪に、人形のような、感情を感じさせない
魔人筆頭ホーネットは謁見の間の玉座に座ることなく、その一歩手前で立っていた。
魔王ガイの意志を継ぐ、彼女らしい立ち位置である。
その気配はケイブリスの恐瘴気のように他者を威圧するものではない。
だが、その静かな佇まいに自然と緊張が走った。
「帰参が遅れたこと、深くお詫び申し上げます」
「魔王ジルが復活したことはサテラから聞いています」
「はい、私のかつての主である魔王ジルの復活により、恥ずかしながら、私は隠遁しようと考えました。魔剣カオスによって、討たれたことにして、行方を眩まそうとしたのです。ですが、魔王ジルは、異界に赴いたきり帰って来ませんでした」
「なるほど、魔王ジルは異界に消えたと。それはサテラの報告にはありませんでしたね」
「ええ、封印から目覚めた魔王ジルは、ひどく衰弱していました。恐らくゲートを開く力が尽きて異界から帰れなくなったのでしょう」
嘘は言っていない。ランスの存在は伏せているが。
「そして、その後貴方はどうしていましたか?」
「この危機を好機に変えようと思い動いていました。魔人ノスという強大な存在が消滅したのならばわたしのような小物は尚更だろうという思い込みを助長する噂を流して隠匿しつつ、裏で兵を集めました」
「そしてメディウサを討ったと。あなたの功績を認めましょう。何か望むものはありますか」
そう言う彼女の顔は常の鉄仮面で覆われている。敵の戦力が減ったことへの喜びも勝手な行動をしていたわたしへの警戒心のどちらも読み取れない。
彼女はケイブリスのような猜疑心とは無縁とはいえノスの裏切りにあってはわたしへの疑念を持たざるを得ないだろうに。
「しばし自由に動く許可を。ケイブリス派が人間界への侵攻を画策しているという情報を得ました。人間と魔軍が衝突している所に横槍を入れればさらに奴らの戦力を削ることが出来ます」
「人間界、ですか。我々魔人が積極的に関与するのはあまり好ましいとは思えませんが」
「ええ、特にわたしの場合は先日の人間界への侵攻で警戒される恐れもあります。ですが共闘は難しくとも挟み撃ちの形に持ち込むことは出来るでしょう」
実際のところ国が違うのだからわたしがゼスで動く支障はない。
それはつまりホーネットに気づかれずにさらに自身の戦力を増強することができるということだ。
「ホーネット様、わたしからもお願いするわ。メディウサが死んだとはいえまだまだあちらの戦力は多い。ジリ貧になる前に向こうの戦力を削れるに越したことはないわ」
暴虐を良しとする魔の気性からケイブリスの求心力は高い。
利害の一致や脅迫によるものを含むにしろ勢力はあちらの方がよほど大きい。
魔人の数もそうだが、魔物大将軍や突然変異のモンスターなどそれに準じる実力者も向こうの方が多い。
同じ魔人では元魔人四天王のノスとメディウサでは減じた戦力に釣り合いが取れないし、魔人メディウサの穴もケイブリスのもとで飼い殺しにしていたものたちを前線に出せば埋まることだろう。
とはいえ身内にすら向けられるケイブリスの猜疑心と魔人たちのやる気のなさもあって戦況は膠着している。
わたしが自由に動くだけの余裕はあった。
「いいでしょう。あなたに人間界で動く許可を与えます。メディウサを討った手腕を期待します。また魔王リトルプリンセス様の探索も忘れないように」
「ははっ、必ずやご期待に応えてみせます」
◆ ◆ ◆
「ふ、ふふっ、くくくはは」
魔王の娘にして魔人筆頭ホーネット。
魔人四天王の一人にして忘れられた英雄シルキィ。
気高く、美しい彼女たちへの尊敬の念はいまだに薄れることはない。
だが、それに倍にする強さで彼女たちの先代魔王ガイへの敬愛をわたしのものにしたいという思いが湧き上がっていた。
謁見の最中は必死にポーカーフェイスで隠していた感情が笑みとなって溢れ出す。
「うぉっ!?どうかしたのかアイゼル。変なものでも食べたのか!?」
それをホーネット派の魔人であるサテラに見られてしまっていた。
ああ、彼女もいい。ホーネットの遊び相手として連れてこられた彼女は魔人としての傲慢さと人間らしさが同居している。
その情緒の幼さから来る愚行も今のわたしにとっては愛でる対象だった。
「いえ、なんでもありません。ホーネット様より勅命をいただけた喜びに打ち震えていただけです」
「そ、そうか……。しかしお前も無事で帰ってこれて良かったな。ノスのやつに襲われなかったのか?」
「はい、危うく命を落とすところでしたが辛くも人間たちとの共闘で奴を打ち倒すことができました」
「ふんっ、人間の力を借りたとはいえあの裏切り者を倒したのは褒めてやるぞ。ついでにあの蛇を殺したこともな。サテラの手でぶっ殺してやりたがったが……。そういえば魔血魂はどうした?」
「ええ、残念ながらアレフガルドに確保され逃走されました。とはいえ彼ならば使徒として魔人メディウサの安全を優先することでしょう。幸い彼女はへびさんの魔人、復活したところで元の力からは何枚も落ちる。ケイブリスからの制裁を避けるため魔血魂を抱えたまま隠れ潜むことでしょう」
「そ、そうか。ならばもし見つけたらこのサテラが奪い取ってリトルプリンセス様に献上することにしよう」
あの邪悪が復活する可能性を告げられ少し声を震わせながらもサテラは気丈にもそう宣言した。
まったくその見栄を張るところがメディウサの関心を買ったのを分かっていないのだろうか?
同意を求めるように懐の中のメディウサの魔血魂を転がす。
ここで目の前の彼女を我がものとするのは愚行だ。格上の魔人であるホーネットやシルキィの怒りを買う。それに今後のことを思えばホーネット派という隠れ蓑は必要不可欠だ。
まずは力を付ける。来るゼスへの魔軍侵攻、そこに現れる魔人カミーラは格好の資金石だろう。
魔人四天王でありながら倦怠からその力はいくらか落ちている。
ゼスを襲うカミーラダーク。そこでの暗躍を思案して笑みを浮かべ、またサテラに怪訝な視線を向けられた。