※この作品はR-18です。

ランスが女の世界で魔人アイゼルに転生〜洗脳能力と原作知識で魔王を目指す〜   作:斧池 数馬

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王都陥落

「うしっ!ジーク様マジノライン機能停止に成功しました!」

 

「よくやりましたね。オーロラ」

 

「いやぁ、もう少し時間がかかると思っていたのですが。まあ早いに越したことはありませんね!」

 

「そうね。これ以上待たされたら勝手に動くところだったわ」

 

「ひひひ、サイゼル様には人間の要塞なんて関係ありませんもんね」

 

「機は熟した。全魔物に告ぐ。侵攻を開始せよ」

 

 整列した魔軍を睥睨する魔人と使徒たち。その中でも強力な力を持つ魔人四天王カミーラの号令の元魔軍たちは侵攻を開始した。

 彼らを阻むべく作られたマジノラインは機能を停止している。その行軍を止める術はなかった。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「よくもあんなに数を集めたものですね」

 

「イエス、さらに三人の魔人もアカンパニーしています……。すごいスレットです」

 

「ホーネット様との戦争の最中だというのにこれほどの戦力を割くとは……。愚かとしか言いようがありませんが、それだけ余裕があるということなのでしょうか」

 

「ええ、しかしだからこそケイブリス派の戦力を削ぐ好機でもあります」

 

 国境を越える魔軍をわたしたちは高台から見下ろしていた。ジェイコプスとの戦いで負った負傷は完治している。魔人と戦う用意は出来ていた。

 しかし魔軍の軍勢と真っ向から戦うことはできない。それだけ数の差というものは大きい。

 原作から人類の被害を減らして魔軍の被害を増やす。それが出来るかは人類の奮闘とわたしの用意がどれだけハマるかにかかっていた。

 

 まず最初の一手がわたしの意思でマジノラインを機能停止させるというもの。王者の塔と弾倉の塔と日曜の塔のマナバッテリーの機能を停止させた。

 これによりマナバッテリーの機能が停止したのだがゼスとペンタゴンの小競り合いによる消耗が少ないうちに魔軍とぶつけることができる。

 

 魔軍とゼスが衝突している最中に魔人を仕留める。それがわたしの計画だった。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「ガンジー王!センサー地蔵より魔軍の侵入が確認されました!」

 

「……遅かったか。いや、ペンタゴンの動きが早すぎるというべきか。とはいえ今考えることではないな。ゼスの住民の避難を開始する」

 

 ゼスの首都、ラグナロックアーク。ガンジー王がゼス四天王の山田千鶴子からの魔軍侵攻の報告を受けたのは四天王の塔のマナバッテリーを守るためガンジーが動き出そうとしたタイミングだった。

 遅きに失したことを悔やむ暇もなく、ゼスの国王は国民を守るための指示を出していく。

 

「はっ!避難民の受け入れ体制の整備を始めます!」

 

「いや、四天王の塔が落とされ首都結界は使えない以上ここは守りに向かない。ラグナロックアークは放棄し、アダムの砦まで脱出する」

 

「首都を放棄するのですか!?……いえ、かしこまりました。しかし、一部の高官や市民の反対が予想されますが……?」

 

「ああ、そうだな。だからわたしもここに残る。王都をむざむざ魔軍に渡すなど許せないというものは、わたしとともにここで殿になってもらおう。加えてわずかな兵を捻出しろ。決死隊となる。志願者だけでいい」

 

「お待ちください!ガンジー王が犠牲になる必要など!魔軍の脅威が分からないようなものたちなど放っておけばいいのです!」

 

「どちらにせよ魔軍の足止めは必要だ。首都結界がなくともここならば、自動防衛装置の類は比較的充実している。人格など関係なく魔法使いは戦力として期待できる」

 

「ガンジー王!」

 

「ゼスの国王はひとまずマジックに任せる。だがあの子はまだ未熟。貴様が支えてやってくれ」

 

「……かしこまりました。ご武運を」

 

 有無を言わせぬガンジー王の言葉に千鶴子は黙るしかなかった。いくら自動的に魔力を徴収し動く防衛装置の類とはいえ指示がなければただのカカシだ。

 それにいくら平和ボケした一級市民の魔法使いたちとはいえ尻に火が付けば危機に気づくだろう。

 それをさせずになんとかなるとまやかしの希望を見せるためには王の威光が必要だった。

 

「なに!必要な時間を稼げたと判断したら我々も逃げ出すさ。千鶴子、留守は任せたぞ」

 

「はっ、ガンジー王の帰還をお待ちしております!」

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「ネルソン様!魔軍の侵攻にゼス軍が動き始めました!」

 

「馬鹿な……。早すぎる。まだマナバッテリーは一つしか落としていないというのに」

 

「ふふっ、ペンタゴンの皆さん初めまして。わたしは魔人アイゼルといいます」

 

「なんだ!どうしてここにいる!」

 

 ペンタゴンの秘密基地の中、不可解なほど早い魔軍の侵攻にペンタゴン指導者のネルソン・サーバーが困惑する中、魔人アイゼルは突如として現れた。

 

「あなた方の計画は失敗に終わりました。幹部のポンパドールは魔人の使徒でありあなた方の動きを逐一報告していました。ですからマジノラインが落ちてすぐに魔軍が侵攻を始めたというわけです」

 

「貴様の指図か!?」

 

「いいえ?わたしはあなた方の様子を見に来たのです。ああ、ですからわたしのことは存在しないものとして扱ってください。さあ、どうしますか?」

 

「決まっている。祖国の解放作戦の続行を——」

 

「提督!あんたふざけてるのか!?この状況じゃあゼスを取ったところですぐに魔軍に破壊されて終わりだ!」

 

 自家製産の熱狂のまま破滅へと進もうとするネルソンの頬をペンタゴン幹部のフット・ロットが張った。

 強烈な痛みと衝撃にネルソンの頭が揺れる。ネルソンに心酔する幹部たちがフットに襲いかかろうとするもアイゼルに威圧され身を竦ませる。

 

「あ、ああ、そうだったな。ペンタゴン全軍に告ぐ。市民を守るため武器を取れ!いいか!魔法使いには手を出すな。奴らは奴らで勝手に魔軍と戦うはずだ。奴らに鉄槌を与えるのは魔軍を撃退してからだ……!依然として祖国の解放作戦は継続中!理想のゼスのために戦え!戦士たち!」

 

「はっ!ネルソン提督!」

 

「ちっ」

 

「わかった、提督、俺、戦う」

 

「提督……」

 

「「ペンタゴン!」」

 

 自分の理想に酔って現実を見失っていたネルソン。その熱狂は原作より一足早く冷め、革命家として覚醒した。

 

「ふふふ、さて、せっかく無駄死にせずに済んだのです。せいぜいその命を輝かせなさい」

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 そしてまたあるところでは心に傷を負った少女が再び立ち上がり、またあるところでは王女として庇護されてきた少女がゼスを守ることを決意した。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「さていよいよ始まりましたね」

 

「どうされます。アイゼル様?人間たち、二手に別れてしまいましたけど?」

 

「ステイするものとエスケープするもの。このままではイーチワンにディフィートされてしまうのでは?」

 

「王都に戦力を投入し魔軍を迎え撃ちますか?洗脳魔法を行使すればそれなりの戦力を確保できます」

 

「いいえ、ここでは最低限の介入しかしません。洗脳した学生は避難誘導に用います。遅延戦闘を支援し戦力の消耗を抑えましょう。殿には闘将を使います」

 

「了解!」

 

「イエスマイロード!」

 

「かしこまりました」

 

 そして戦端が開かれた。ガンジーは都市を守る結界にあえて穴を作り魔軍の侵入方向を限定した。都市に残った市民では穴熊をするには魔力が不足しているという理由もあるのだろう。

 ウォールガイを始めとする防衛用の魔法生物とペンタゴンが魔軍の吶喊を受け止め戦線を支えた。

 そしてそこにガンジーの指揮の元決死の覚悟で残ったゼスの軍人たちが統率された魔法で魔物を仕留めていく。

 

「かかれ!かかれ!敵は少数。数に任せて轢き殺してしまえ!」

 

 魔物将軍の檄が飛ぶ。だが彼は忘れていた。魔法は時に数の多寡をひっくり返す力を持つということを。

 

「「「黒色破壊光線!!」」」

 

 宝石三使徒による黒い光線が魔軍を貫く。その射線上に生存者はハニーを残して誰もいない。混乱の最中、都市から放たれた魔法が炸裂する。ガンジー王渾身の火属性魔法、ゼットンだった。

 

「いまだ!負傷者は交代せよ!医療班!」

 

「へへっ、医療品もかっぱらってきやした。むかつく魔法使いたちはみーんな逃げ出すかでかい建物にまとまって閉じこもってやがるからもぬけの殻でしたぜ」

 

「薬品もあるかい?毒薬の散布で敵を少しでも減らす。どうせこの辺はそろそろ支え切れなくなる。都市でのゲリラに移行する前に盛大にばら撒いてしまおう」

 

 魔軍の圧力が弱まった隙にペンタゴンの負傷者たちが治療を受ける。

 ネルソンの指示の元、ペンタゴンとは関係ない二級市民も協力してことに当たっていた。

 

「ええい!あちらにも敵がいたか!この状況で野戦を選ぶとは愚かなやつらだ!おい!そこの魔物隊長!適当に数を連れてあいつらをなぶり殺しにしてやれ!」

 

 この都市の周りに大軍を隠すことなど不可能。ならば敵は少数だと考え、魔物将軍は魔物隊長に指示を出す。仮に奴らが魔法でやられたとしてもその間、黒色破壊光線のような大魔法は放てまい。

 ならばその間に都市をおとしてしまえばいい。

 だが強力な魔法による攻撃は途絶えることはなかった。近くに砲撃が直撃し、魔物将軍に冷や汗をかかせる。

 

「くそっ!何をやっている!あんな小勢に何を手こずっている!!」

 

「そ、それが!あそこに向かった奴らがどこかに消えて!」

 

「何ぃ?転移魔法陣か!?だったら!!魔法部隊!あそこら一帯を焼き払え!!」

 

 魔素漢含むモンスターたちがお返しとばかりに魔法を放つ。それでようやく魔法攻撃が止まる。

 

「ようし!さっさと突っ込め!」

 

「将軍!」

 

「なんだ貴様ら!今更帰ってきおったか!この役立たずどもめ!お前らも最前線に突っ込め!!さもなくば処刑するぞ!!」

 

 恐ろしい魔法攻撃が止まったこと。恫喝混じりの将軍の指示がなされたこと。何より殺戮の欲求が高まったことが相まって今までにない勢いで魔軍が都市に突入していく。

 ここまでくればあとはすぐだろう。距離を詰められた魔法使いたちに魔軍に対抗する術はない。そう思っていると初めに指示を出した魔物隊長とその部下がやってきた。

 自分の指示であったことを棚に上げて、視線を向けることすらなく脅しかける。

 

「将軍!覚悟!」

 

 返答は黒金の刃だった。魔物隊長の持つ重く大きい剣が魔物将軍の喉に突き刺さる。他の魔物兵たちも同様に斧を魔物将軍の体に振り下ろす。

 

「ごはっ!なにを……!」

 

「てめぇら!何してやがる!!」

 

 下手人の魔物隊長はすぐさま他の魔物隊長たちに殺された。しかし魔物将軍はもはや事切れている。

 

「将軍が死んだ!ここは退却し他の軍勢に合流を……」

 

「何言ってやがるあと少しで落とせるんだ!さっさとかかりやがれ!」

 

「なんだと!なんでテメェに命令されなきゃならないんだ!!」

 

 指揮官である魔物将軍が殺され我の強い魔物隊長たちの間で諍いが起こる。魔物兵たちは魔物隊長の麾下にあるため総崩れになることはないが、協調性が失われて攻撃に精彩を欠いていく。

 

 その間に都市に侵入した魔物兵も各個撃破されラグナロックアークを落とせないまま夜を迎えることになる。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「やはり魔軍など恐るるに足りませんな!」

 

「あの忌々しいガンジー王も魔力だけは評価せざるを得ませんな」

 

「とはいえこれを機に威張られてしまっては困ります」

 

「なあにこたびの勝利は我らの力あってこそ!勇敢にも王都に残り戦った我らは英雄として讃えられるでしょう」

 

「逆に山田やガンジー王の娘マジックは四天王としてあるまじきことに王都を放棄して逃げ出した。そこを責めてやればでかい顔は出来ないでしょう」

 

 建物から一歩も出ずに、自動迎撃装置への魔力供給すらせずにいた高官たちが上機嫌で酒盛りをしていた。

 ゼスの愚かさを煮詰めたような醜さだった。

 

「ふむ、筋書きは潜入した魔軍に暗殺された。といったところでいいでしょうか」

 

 なので順番に首を刎ねてやった。

 魔物将軍を落とし散々黒色破壊光線を直撃させた。これだけ戦果を稼げれば十分だろう。それに魔人たちの率いる大軍勢が来られたらとても阻むことはできない。ならばここが撤退のタイミングなのだが、この愚者たちにごねられても困る。

 というわけで速やかな撤退のために死んでもらうことにした。

 他の市民も偉そうにしていた人間があっさり暗殺されているのを見ればここが安全ではないことを悟り逃げ出すのに何も言わなくなるはずだ。

 

 あとはペンタゴンと二級市民たちが行儀良く撤退してくれるかだが……。そこはネルソンが上手くやることだろう。

 

 適当なゼス軍の魔法使いを洗脳し、高官たちの死を報告させる。この状況ならガンジーもアダムの砦の避難民に合流することを選ぶだろう。

 もうすぐ夜だ。闇に乗じてしまえば魔軍の眼を掻い潜れる可能性は高い。あとはそれを闘将で支援してやるだけだ。

 

 こうしてゼスの王都ラグナロックアークは魔軍の手に落ちた。

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