※この作品はR-18です。

ランスが女の世界で魔人アイゼルに転生〜洗脳能力と原作知識で魔王を目指す〜   作:斧池 数馬

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解き放たれた脅威と集いし将

「えーと、こーしてあーして……。はー、ずいぶんセキュリティが硬くなってやがんな……。だが!俺の本体がある場所なんだ。直通のゲートを開くくらい余裕だぜ」

 

「きききき?ききき?」

 

 藤吉郎の小さい手指が印を結んで複雑な動きで術を組む。

 悪魔が異次元の悪魔界からこの世界に来るために使うゲートコネクトの魔法だ。

 使徒とはいえ藤吉郎にそんな高度な魔法を扱う素養はない。

 実際に魔法を発動させているのは小さな右手の六本目(・・・)の指だ。

 悪魔ジェイコプスの一部のそのまた一部とはいえ、分体である以上知識や魔法の素養は変わらない。魔力源や憑依出来る肉体さえ用意出来ればこのような芸当も可能だった。

 とはいえ無数の、長い腕を持つジェイコプスにとって、たった二本の短い腕で魔法を使うのはかなりの難儀だったが……。

 

「よし!ビンゴ!やっとこさ繋がったぜ!いくぜ、兄弟」

 

「うきー!」

 

 藤吉郎サイズの小さなゲートが開く。それを潜って悪魔と使徒は玄武城地下の封印の間に飛んだ。

 

「よーう、腐れひまわりどもめ。俺の体に巣食ってすくすく育ちやがって……。メスを苗床にするのは好きだが苗床にされる趣味はねえっての」

 

「きっ!?ききっ!?」

 

 ゲートを潜り抜けた先は暗黒ヒマワリが咲き誇っていた。魂を持たないが故に取り憑くことが出来ず、単純な暴力も頭に根を張って神経を侵食することで封じることが出来る。

 

 悪魔を拘束するのに最適な性質を持つこの植物ムシをアイゼルはジェイコプスの封印に用いていた。

 アイゼルの命令によって無数の蔓が藤吉郎の肉体も苗床にすべく襲いかかる。

 

「ファイヤー!!ひゃはっはっはー!!!」

 

 ジェイコプスの意思で藤吉郎の体が動く。小さな猿の体は触手のように襲いかかる蔓を掻い潜り、魔法の炎で暗黒ヒマワリを焼いていく。

 だが元より高い再生能力をゼスの生体改造と悪魔の肥料によって強化されている暗黒ヒマワリは炎を意に介さず蔓を伸ばしていく。

 豊富な水分によって生半可な魔法では燃やすことが出来ず、強力な魔法では吹き飛ばされて延焼を狙うことが出来ない。

 

「ちっ!一旦引くか。兄弟のご主人様に頼るとしよう」

 

「ききー!」

 

 ジェイコプスは内心で舌打ちする。

 本体の解放さえ済んだら城内の適当な人間に憑依して悪魔界に逃走しようと考えていたのだ。

 元より幽霊の藤吉郎はジェイコプスが他者に乗り移ればすぐさま現世にしがみつく力を失う。

 契約者が死んだのなら魂を回収しておさらばだ。

 だが思っていた以上に暗黒ヒマワリの拘束は強固であり、強力な魔人であるザビエルの力が必要になってしまった。

 

「うききき!ききっ!」

 

「へへっ!こっちはただ魔法で封印しているだけか。だったら余裕だぜ」

 

 魔人ザビエルは他の生命に憑依する形で復活することが出来る。

 そして魔人の復活はジェイコプスとは異なり魂を持たない存在も素体と出来る。それを警戒して魔法による封印のみとなっていたが、今回は裏目に出てしまった。

 

 悪魔であるジェイコプスは容易く封印を解除するとザビエルが封印されたひよこたん瓢箪を手にした。

 

「んぐっ!んぐっ!ぷはぁー!うげー、魔人ってやつは魂が真っ白だから困るぜ。だが!魔力はいただいたぜー!」

 

「ききー!!!」

 

「ひひひ、まあまあ落ち着けよ兄弟。全部飲んじゃいねーよ。すぅー、ガァァァァァ!!」

 

 ひよこたん瓢箪の中身を藤吉郎に飲み込ませる。

 元よりザビエルを封印した月餅は悪魔だ。瓢箪に封印した存在を魔力と魂を溶かした酒にして取り込むのはジェイコプスにとっては造作もないことだった。

 

 藤吉郎の抗議を無視して取り込んだ魔人ザビエルの魔力、つまり黒い炎をブレスのように吐き出す。

 さしもの暗黒ヒマワリも尋常ならざる魔人の炎には耐えられず、焼き尽くされた。

 

「よっしゃあ!!ふっ!かつ!!さーて、後は俺の腕を回収するだけだな」

 

「ききー!」

 

「うん?ああ兄弟。あんたのご主人様はちゃんと解放してやるさ。ここで暴れ回ってくれれば俺も自由に動けるしな!まあ復活ほやほやの魔人がよその魔人の縄張りで暴れたらどうなるかは知ったこっちゃないがな!!ははははは!!」

 

 悪魔が笑う。契約は円満終了。あとは悪魔界に帰って玄武城の大火事を高みの見物だ。

 そもそもJAPANは悪魔にとって貴重な魂の供給源なのだ。

 そういう意味で日本人を憎み、JAPANを滅ぼそうとする魔人ザビエルとは敵対関係にある。

 解放した後のアフターケアまでしてやる義理はなかった。

 

「おのれ……!悪魔め……!」

 

「ききっ!」

 

「ぎゃあああ!!」

 

 その瞬間、暗黒ヒマワリを燃やす炎が人型を作り、ジェイコプスに襲いかかった。ジェイコプスは黒の炎を操ろうとするが制御する指の形が藤吉郎の抵抗によって乱れる。

 

「JAPANに連れていけ!さもなくばこのまま焼き殺す!!」

 

「ひ、ひぃ!だ、旦那ぁ、まずは火を止めてくれよ!こんな状態で空間を繋げるなんて出来ると思うか?」

 

「ふん、その手には乗らんぞ。この玄武城は元より我が使徒の城、貴様が焼け死んだところで脱出に支障はないわ!」

 

「くそくそくそ!おらよ!」

 

 ゲートの向こうにJAPANの景色が見える。こうして荒れ狂う魔人ザビエルがJAPANへと解き放たれてしまった。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「やあああっ!」

 

「はぁっ!」

 

 一振りの刀の一撃を黒の炎が噴出する勢いで防ぐ。続く横薙ぎの一撃をバックステップで躱す。

 

 無敵結界を持つ魔人が防御を行う。つまりその刀が魔人を殺す力を持っている証だった。

 

「おのれ……。聖刀日光……!貴様、わざとここに飛ばしたな!!」

 

「へへへ、旦那ー。そんなことはありませんよ」

 

 魔人に傷を付けることの出来る武器の一振り、聖刀日光。その使い手、異世界人小川健太郎。

 魔人ザビエルが飛ばされたのは織田家の屋敷であり、そこには客将としてこの両名がいた。

 長きに渡る封印の鬱憤晴らしと復活の素体に相応しい猛者探しを兼ねて暴れ始めたザビエルの気配を日光が察知して健太郎がやってくるのは自然の流れだった。

 

「魔人、かこぐー」

 

 舌はもつれながらも、その斬撃はブレることなく真っ直ぐザビエルの急所に襲いくる。

 黒の炎を媒介にして辛うじて肉体を形成しているザビエルにとっては致命的な一撃。それをザビエルは片手に黒の炎で拘束しているジェイコプスで受けた。

 

「痛ってー!!!ひでぇよ!!」

 

「きー!」

 

「うわっ!何するんだ藤吉郎くん。さっきおやつをあげたじゃないか!」

 

「あれは使徒です。健太郎。藤吉郎とは別猿です!」

 

 そしてザビエルの肩に乗る藤吉郎の投石が健太郎の身をすくませる。

 健太郎と日光が知る藤吉郎はアイゼルが本物の藤吉郎を殺した後に用意したいわば替え玉なのだが、二人がそれを知る由はない。

 その会話に藤吉郎は激怒して投石を繰り返した。

 

「無事か!健太郎殿!」

 

「勝家さん!」

 

 騒ぎを聞きつけて織田家の将たちが集まってくる。三種の神器の捜索に手勢を割いてもなお本拠地を守るに足る兵が詰めている。

 

 それを見たザビエルは黒の炎を煙幕のように広範囲に広げる。

 

「逃げる気か!」

 

「否!聖刀の使い手はここで仕留める!!」

 

 日光が察知した気配をもとに健太郎が斬りかかる。だが予想に反してザビエルは背を向けることなく待ち構えていた。

 魔人殺しの刃が深々とザビエルの肉体に食い込む。だがそれと引き換えにザビエルは攻撃の好機を得た。

 槍のように収束した黒の炎が健太郎の腹を貫いた。

 

「健太郎くん!!」

 

「……なに?あれは……いや、あの方はまさか……!」

 

 直後、先ほどの黒の炎の爆発とは比べ物にならない威力の大爆発が起こった。

 

「むう!いかん!おいっ!ヒラミレモンの用意を!!」

 

 幸運にも爆発の被害はなかった。周囲の人間はすでに黒の炎を避けるべく距離を取っていたからだ。

 爆風消化の如く、黒の炎が消え去った破壊痕で少女の悲痛な声が響いた。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「織田家当主……。織田信長か。ふふ、なかなかの武才」

 

「……何者だ?」

 

 織田信長は生まれつきの病によって戦働きは不可能だが、僅かな時間であれば織田家最強とも言われる剣士である。

 床に伏していた彼は突如として現れたザビエルに斬撃を見舞う。

 一瞬のうちに傍らの刀を取り抜刀して切り付ける技量、魔人の重圧を受けながらも刀の間合いに入るまで病で動けないふりをする胆力。

 どちらも常人離れしてると言えるが当然無敵結界に阻まれ傷一つ付けられずに終わった。

 それどころかその一撃によって彼はザビエル復活の素体に選ばれてしまった。

 

「我こそは魔人ザビエル!貴様ら日本人を一人残らず殺し尽くすものよ!喜べ!貴様には同胞が殺されるのを特等席で見させてやる!その魂が消えるまでなっ!!」

 

 藤吉郎が瓢箪を砕き、ザビエルの本体が信長の体を奪うべく襲いかかる。

 

「がっ!ごほっ!ぐえっ!おぐっ!」

 

「ひひ、かわいそー。魔人ザビエルの復活!これで晴れて契約完了ってことで俺はおさらばさせて貰うぜ──」

 

 逃げようとしたジェイコプスの頭を魔人ザビエルが捕まえる。

 その手から漏れ出る黒い炎が悪魔の肉体を焼く。

 

「いでででででっ!」

 

「何故だっ!!」

 

 悪魔の悲鳴を無視してザビエルは叫ぶ。その姿は悪鬼の如き異形。

 魔人ザビエルの本性であり、織田信長を乗っ取った姿ではなかった。

 

「はぁっ、はぁっ。妹に……ランスちゃんたちに……、かっこ悪いところは見せたくないからね……」

 

 女のランスは信長の亡き妻、帰蝶に瓜二つだった。

 初めて会ったとき、彼は妻が生き返ったのかと狂喜した。すぐに別人だと分かったが、その感動は今も彼の胸に残っている。

 そして何より朧になりつつあった帰蝶の面影を思い出すことが出来た。

 

 それが魔人ザビエルの支配を拒む力となったのだ。

 

「我が支配を拒んだというのか!その精神力……口惜しいが我が物にならぬというのならば破壊するまでよ!!」

 

 信長の肉体を奪うことには失敗したが復活そのものは成功した。

 肉体を取り戻したザビエルの黒の炎はさらに危険な魔力を浴びてその手に収束する。

 いくら精神力があっても物理的な破壊には抗う術はない。

 魔人との精神内での闘争で精魂尽きた信長はなす術もなく燃やし尽くされるかに思えた。

 

「そこまでです!」

 

「ほう、知らぬ顔の魔人だ。我が封印されている間に生まれた魔人か」

 

 だがそこにアイゼルが間に合った。巫女機関の屋敷に居た彼は玄武城からの火災の知らせを受けて魔人ザビエルが解き放たれたことを悟り、織田家からの報告を受けてこの場所に現れたのだ。

 二人の魔人の視線が交錯する。

 

「よくもわたしの城に火を放ってくれましたね。ここはわたしの領地、これ以上の狼藉は許しません」

 

「ふんっ!小童に何が出来る!!それに元より玄武城は我がものだ!!貴様如きにとやかく言われる筋合いはないわ!!」

 

 ザビエルの怒りに呼応して、黒い炎が吹き荒れる。

 

「ならば……。あなたを討つ!」

 

「ふん!まあいい、ここは引いてやるとしよう。まずは日本人への復讐が先だ。おいっ!悪魔め!ゲートを開け!!」

 

「へいへい、なぁアイゼルの旦那ー、俺もこいつに契約と暴力で縛られて無理矢理言うことを聞かされてるんだ。こいつをぶっ殺してくれよ」

 

「どうせあなたが魔人ザビエルの封印を解いたのでしょう?」

 

「ひゃはははは!バレちまったか!だがまあJAPAN全部をまとめて滅ぼそうとしているこいつを止めないわけにはいかねえよなぁ!!オロチの穴で待ってるぜ。今度こそてめぇのその超レアな異世界の魂を狩ってやる!」

 

 そんな捨て台詞を吐いて、魔人ザビエルたちはゲートの向こうに消えた。

 

「はぁ……。これは困ったことになりましたね……。信長、無事で何よりです」

 

「ああ……。魔人ザビエル……。やつと戦うのかい?アイゼル殿」

 

「ええ、JAPANをすべて滅ぼされてしまったらわたしも困ります」

 

「俺も体が動けば、参戦したいところだが……。頼む、この国を救ってくれ……」

 

 アイゼルが戦う理由はあくまで自身の野望のためだ。

 だが、それでも、アイゼルはこの国をザビエルの魔の手から救うと決めた。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 ついに復活してしまった魔人ザビエル。そして彼が目覚めさせようとしているJAPANの地下にて眠る聖獣オロチ。

 その対策のため織田家を中心とした同盟国が巫女機関に集まっている。

 各国の主城には転移魔法陣を設置し、玄武城から妖怪を派遣してある。

 なので織田家の家老にして電波妖怪である3Gの妖怪同士のテレパシー能力を使うことですぐに各国の首脳陣を集めることができた。

 

「皆さん、よく集まってくれました。お呼びした理由は前もってお伝えした通り、魔人ザビエルが復活しました」

 

 JAPANの怨敵ともいえる魔人の名前に参加した面々がざわめく。

 

「魔人ザビエルは我らが領地に現れました。黒き炎で屋敷を焼き、我が兄信長の肉体を乗っ取ろうとしたのです。健太郎殿、アイゼル殿のおかげで被害は最小限に済み、我が兄も無事に済みました。しかし、魔人の脅威は健在です。この国を救うため皆さまのお力をお貸しください」

 

 織田家の代表として気力と体力の消耗が激しい信長に代わり香姫がこの場には出席している。

 その小さい身には余る重圧に懸命に耐えて、朗々と言葉を述べている。

 原作での悲劇を思うと魔人ザビエルが復活しながらもこの兄妹が無事なことは不幸中の幸いだった。

 

「アイゼルよ!貴様が封印を強化すると言ったからひよこたん瓢箪を託したのじゃぞ!どうしてむざむさ復活を許したでおじゃる!」

 

「復活した魔人ザビエルは悪魔と行動を共にしていました。彼の使徒、藤吉郎は悪魔の力によって蘇っていたことから自身の解放を条件に契約したものと思われます。かなり位の高い悪魔であり、ザビエルとほぼ同等の脅威といえます」

 

 激怒した足利超神だったが魔人と同等の脅威の悪魔の存在に言葉を失った。

 魔人も悪魔もどちらも封じていたのはわたしなのだから、彼の怒りももっともだったが、今はそれどころではない。

 

「その悪魔は僧兵や陰陽師、巫女の御技で鎮めることは出来ないのでしょうか?」

 

 浅井朝倉家当主、朝倉義景が言った。こちらは超神と違って冷静だ。

 

「あれは凶悪な悪魔ですから御することは難しいでしょうね。月餅の法も対魔人の封印術ですから効果は薄いものと考えられます。しかしながら天志教や北条家の協力も必要です。義景殿には両家への交渉にご協力いただきたい」

 

「そうですな。戦働きよりもそちらの方がよほどお役に立てるでしょう。しかし、各国に信徒を持つ天志教はともかく、北条家は巫女機関の方が縁故があるかと思いますが」

 

 そもそもJAPAN固有の魔法技術を教えたのは悪魔である月餅だ。

 自分たちに危険があるような技をわざわざ教えるとは考えられない。

 

「わたしたちはオロチの穴への案内をします。ザビエルたちはそこに向かいました」

 

「オロチ?」

 

 名取の言葉に謙信が疑問符を浮かべた。

 巫女機関が巫女を生贄に封じる聖獣は一般には知られていない。

 そんな巫女機関の使命にして秘中の秘が今JAPANの将たちに明かされる。

 

「オロチは巫女機関が封じるものの名です。このJAPANの地中深くに眠り、百年に一度大地震を起こします。それを抑えるべく巫女機関は巫女を生贄に捧げてきました」

 

「なんと……。わたしたちはあなたたちの犠牲の上に生きていたと言うのか」

 

 謙信は悲痛な表情を浮かべた。彼女だけではない、各国の領主は抱擁の儀によって男たちを味方に付けて中立を保っていた巫女機関の抱えていた重い事実に驚愕し、将たちは抱擁の儀にて抱いた巫女たちが生贄となっていたことに苦悶の声を漏らしていた。

 

「はい。ですが、アイゼル様が現れてからは件の悪魔の一部を巫女の代わりにオロチに喰らわせることで巫女の犠牲を無くすことが出来ました。そのことに感謝し、わたしたちはアイゼル様を新たな神として仰いでいたのです」

 

「悪魔、ジェイコプスの腕は自動的に再生します。たとえ不死身の悪魔といえど聖獣の臓腑の中で焼かれる腕を再生しながらでは全力を振るうことは出来ません。ゆえにオロチの腹の中から腕を取り戻すつもりでしょう。そしてそれはオロチが目覚め、大地震の発生を意味します」

 

「ではアイゼル殿!ザビエルたちがオロチを目覚めさせる前に討たなくては!急がなくてはなりませんぞ!」

 

「そうだな、魔人と悪魔だけでも手に負えないというのにこれにオロチとやらまで加わってはどうしようもない」

 

 原家の当主原昌示の言葉に伊賀家の伊賀忍頭領の犬飼が続く。

 昌示の言葉は臆病さからのものだが、忍者の犬飼の言葉は的確な戦力分析の上の判断だ。

 

「悪魔は空間と空間を繋げる門を開く魔法を使います。自身の分け身に飛ぶ程度容易でしょう。今頃はオロチの腹の中から自身の一部を引きずり出しているところでしょう」

 

「ならば、魔人と悪魔とオロチ。すべて討つ他あるまい」

 

 上杉謙信は闘志を燃やして立ち上がった。しかし軍神の威光を以てしても皆の顔に浮かぶ絶望を払い切ることは出来なかった。

 最悪の場合、洗脳で戦意を高めることは出来るが、それに力を割いては勝率は低くなることだろう。

 

「アイゼル様」

 

「どうしました。アテン」

 

 玄武城で大陸からの援軍の受け入れを行なっているアテンが軍議の場にやってきた。

 その顔には泣き腫らした跡がある。自身が預かる玄武城から魔人と悪魔が解き放たれてしまったことへの自責の念の結果だった。

 

「ランスから連絡が。帝ハチマキを発掘したそうです」

 

「間に合ってくれましたか……!」

 

 それは最後の希望だった。やはりランスは天運のようなものを持っている。

 

「日本人よ。このJAPANに生まれしものたちよ」

 

 そしてこの場に神が現れた。恐らくここにいない各国の強者たちの元にも。

 眩い後光が部屋に満ちた。

 

「三種の神器、帝リング、帝ソード、帝ハチマキがすべて発掘された。ここに帝レースの開催を宣言する。帝ノートに記された強者たちよ、三種の神器を揃え、もっとも早く100点を集めたものを、新たなる帝とする」

 

 第三級神はそれだけ告げると消え去った。

 日本人と妖怪への絶対の命令権を持つ存在、帝。その力があれば戦乱のJAPANの総力をもって決戦を行うことができる。

 

「急いで帝ノートを確認して!JAPANの強者たちの所在はあらかじめ調べてあります!将でない、在野のものたちから優先して点を獲得します!」

 

「愛?」

 

 直江愛が血相を変えて叫ぶ。訝しむ謙信を含む諸将にわたしは告げる。

 

「上杉謙信を帝にします。帝の号令のもと、JAPANの総力をもってすべての憂を打ち払いましょう。それまでの時間稼ぎは我らが」

 

「応!!」

 

「あい分かった!」

 

「軍神殿、JAPANを頼みます」

 

 最強の帝の誕生の予感に士気が高まる。

 強い意志の篭った肯定の言霊には先ほどまでの陰鬱な絶望感は微塵も感じられない。

 この場にいる誰もが知る猛者、上杉謙信。その威光はこの非常事態において誰もが彼女の強さこそが帝に相応しいと頷かせた。




 というわけで織田家兄妹救済ルートです。
 香ちゃんのアレはトラウマ。
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