※この作品はR-18です。

ランスが女の世界で魔人アイゼルに転生〜洗脳能力と原作知識で魔王を目指す〜   作:斧池 数馬

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 三話連続投稿です。
 お気をつけください。


決着

「はははははは!!」

 

 開戦からずっと戦い続けている戦姫が笑う。こんな戦は初めてだ。

 巫女たちを襲おうとするオロチの首に石を投げて注意を引きつけ、こちらに突進してくる首を、薙刀で切り付け、食い込んだ刃を支点に棒高飛びの要領で体を持ち上げて躱す。

 こんな綱渡りの曲芸をもう何度もやっている。

 

 オロチの首の一つにザビエルが宿って戦況は一変した。密集していれば黒い炎で一毛打尽。バラバラになって孤立したところをオロチが責め立てる。

 まるで狩りでもしてるかのように人間をオロチの眼前に追い立てるのが上手い。

 ザビエルの残虐さと冷酷さが伺えた。

 

「ぬううううゔゔゔうううう!!!こんな大戦!!途中で抜けるなど死んでも死にきれぬわ!!!」

 

 その巨体で一人でいくつものオロチの首の相手をしていた毛利元就がとうとう熱線の集中放火に倒れた、と思ったら幽霊になって再びオロチの首に切り掛かっていた。

 霊体になって物理攻撃が効きにくくなり、死ぬ前より健闘していた。

 

「流石は毛利殿。わたしも結構な戦狂いのつもりだったがあれには敵わない」

 

 僅かな休憩で呼吸だけを整え、戦姫は再びオロチへと向かって行った。

 

「出でよ!!蛇腹帷子!」

 

「くだらぬ小細工を……!!」

 

 黒の炎を受け止めて蛇腹帷子が魔血魂に姿を変えた。もう何度目かも分からない。すぐに回収して新しく召喚したヘビに食わせ復活させる。

 

 吐き捨てられた黒いわたしから魂を回収して、分けていた力を戻したものの疲労は大きい。

 ほとんど蛇腹帷子を使っての戦闘しか出来ていないと言っても良かった。

 そんなわたしでもザビエルにとって一番の警戒対象なようで注意を引きつけるタンク役は出来ていた。

 

 目の前で再び蛇腹帷子が魔血魂に還る。まるで蘇っては殺される地獄のような光景だった。ある意味ではメディウサに相応しい罰といえるかもしれない。

 もっともこの世界の地獄は魂の汚れを洗濯するための場所であり、メディウサのような邪悪で暴虐無人な存在には無縁なのだが。

 

「いくでござるよ!!」

 

「届け!!」

 

 熱線を吐き出そうとする首に鈴女たち忍者の手裏剣が雨のように降り注いだ。たまらずに首が伏せたところに武士隊が突撃する。

 

「食らいやがれ!!!撃てー!!」

 

 種子島重彦の号令のもと鉄砲隊の集中砲火がオロチを撃つ。その巨大さゆえにほとんど全弾が命中し、柚原柚実の箒星の弾丸は目にピンポイントで当たった。

 

 帝の号令がかかった以上、援軍はJAPAN全土から駆けつけて来る。

 アフリカの島津家、死国のタクガ、徳川家を支配していた妖怪徳川家康と配下のたぬーたちも一致団結して戦っている。

 コパンドンに傭兵団より優先してうし車を用意させた甲斐があった。

 

「父上……!今度こそ滅んでいただきます!」

 

「貴様……!また痛めつけられたいようだな!!」

 

 そしてアフリカからは島津四兄弟とともにザビエルの娘である黒姫まで来ていた。

 恐怖の象徴である父親を怯えながらも真っ直ぐに見つめている。

 黒姫は魔人の娘として常人以上の頑強な肉体を持つが戦闘の技能は持たない。そんな彼女を守るべく島津四兄弟は限界以上の力を発揮する。そして彼女もまた必要とあらばその頑強なだけの肉体をもって彼らの盾になる覚悟を持ってこの場に立っていた。

 

「ほぎゃあ!ほぎゃあ!」

 

 魔人の娘たる姫はオロチにとってもご馳走に見えたか、襲いかかったオロチの首の上に一体の妖怪が乗っかった。

 老人の姿をしたその妖怪が泣き喚くとオロチの首が地面に縫い止められた。禁妖怪石爺。黒姫の封印切りの異能によって解放された危険な妖怪の一体である。

 泣けば泣くほど重くなる特性から危険視された彼も今は帝の命令のもとJAPANの苦難を取り除くために泣いていた。

 

「おのれぇぇぇぇぇ!!!」

 

「忍びの方!誰ぞ忍びの方!!」

 

「どうしたでござる?」

 

「これを……」

 

 黒姫が鈴女にあるものを託した。それを受け取った鈴女は混戦の中に紛れて完全に気配を絶った。

 

「アイゼル様、そろそろ切り札を使うべきだと考えますが」

 

「そうですね、ガーネットたちの魔力も回復したようです。始めなさい」

 

 オロチもザビエルも多くの傷が積み重なっている。あとはこちらの戦力と向こうの体力、どちらが先に尽きるかの勝負。じっくりと腰を据えるよりも、一気に押し切ってしまった方が勝算が高い。そう考えてジークの進言を肯定した。

 

「車懸りの剣!!」

 

「ランス・アターーーック!!」

 

「ええい、鬱陶しい!!」

 

 謙信とランスの必殺技がオロチの頭に炸裂する。オロチの注意がそちらに向かい、黒の炎で二人を焼き殺そうとする。

 

「「「黒色破壊光線!!」」」

 

 そのザビエルの死角から最強の攻撃魔法がオロチに炸裂した。

 ミラクルと志津香の魔力を枯渇している今、こちら最後のレベル3の攻撃魔法。

 ガーネット、サファイア、トパーズが紅色破壊光線、藍色破壊光線、黄色破壊光線を重ね合わせて生み出された黒い魔力の奔流がオロチの首を貫き、ザビエルにも大ダメージを与える。

 

「魔王の力の再現、この肉体では一撃が限界でしょう。ならば!アイゼル様のため!この一撃で決めます!!」

 

 魔王ジルへの変身、以前のジークが変身した不完全なものから更に劣化した再現度だが、それでもなお極めて強力な一撃。

 魔力を帯びた爆風が、オロチとザビエルをまとめて巻き込んで炸裂した。

 

「今がチャンスでござるな」

 

 それでもなお、まだオロチとザビエルは生きていた。全身を黒焦げにして全身が傷だらけになりながらもその執念はまるで衰えることがない。

 

「死ぬでござる」

 

 その執念を断つ。禁妖怪、思い切りの刃が鈴女の手に握られている。鈴女はひょいひょいとオロチの首を登ると宙に漂うザビエルの霊体に切りつけた。

 

「ぎゃああああああ!!!!」

 

 その絶叫は断末魔だと思われた。だがしかし、ザビエルはまだ死んではいなかった。

 

「ま、まだだ……。ふははは!!その魔血魂、邪悪な気配が漏れているぞ!ふふふ、何度も何度も殺されて封が弛んだか?ああ、いい血と殺戮の匂いだ。魔人というのはこうでなくてはならない」

 

「しまった!!」

 

 蛇腹帷子の正体がザビエルにバレた。黒の炎で焼くのではなく丸呑みにすべくザビエルが大顎を開く。

 蛇腹帷子も抵抗するがサイズの違いでどうにもならない。目に毒牙を突き立ててもザビエルはまるで意に介さない。

 頭をまとめて噛みちぎられて蛇腹帷子が魔血魂に還る。回収しようとする蛇をザビエルが蹴散らす。

 そうしているとオロチの頭の一つが舌で魔血魂を拾い上げた。

 

「さぁ!蘇れ!!邪悪なる魔人よ!!」

 

 魔人メディウサがオロチの首を乗っ取って復活する。あの残酷な存在が聖獣の力を得て暴れ回る。絶望の二文字しか思い浮かばないシチュエーションだ。

 

 理性を持って暴れ回る首がザビエルの一本だけでここまでの苦戦を強いられているのだ。これが二本に増えたらどうなるかは火を見るより明らかだ。

 

 メディウサが鎌首をもたげ、熱線を吐くことだけに専念すればカオスや日光で無敵結界を破ることすら難しいかもしれない。

 この場に無敵結界の通じない遠距離攻撃手段を持つのはわたしとジークのみ。どちらもガス欠に近い。

 そうなれば魔法も矢も弾丸も効かない存在に、上から一方的に攻撃され続ける他ない。

 

 ザビエルとメディウサがその唯我独尊な性格から仲間割れをする。そんな楽観的でご都合主義な展開以外に勝算が思いつかない。

 

 魔血魂を拾い上げた舌が口内へと戻っていくのがやけにゆっくりに見える。何百年もの間、疑うことなくせっせと人間の悪意と業を孕んだ巫女たちを食らい続けた愚鈍な聖獣は、此度も悪意と業に満ちた存在を自分から食らった。

 

「待ちなさい!!オロチ!!」

 

 そこに一人の巫女、玉籤風華が飛び込んだ。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 正直に申し上げて、何か考えがあっての行動ではありませんでした。

 あのガラス玉のようなもの、あれがアイゼル様のものであるならば取り戻さなくてはならない。そう考え、遮二無二に動いたに過ぎませんでした。

 

 いつかと同じように自ら進んで大蛇の胃袋に飛び込んでいく。自分でも笑ってしまいます。

 

 真ん丸の玉はオロチの唾液でぬめり、何とか舌から奪い取ることが出来ました。

 

 さて、これからどうしましょう?記憶を失っていたときと同じ言葉が頭をよぎります。

 オロチっ子であることを忘れて地上を彷徨っていたわたし。そんなわたしにアイゼル様は手を差し伸べてくれました。女の喜びを教えてくれました。抱擁の儀よりも容易く魂の色を塗り替え、嫉妬や羞恥の感情、またそれを楽しむことを教えてくれました。

 そしてオロチを殺してくれると約束してくれました。

 

 だからその恩に、少しでも報いたいのです。

 

 オロチの口はすでに閉じており、出ていくことは出来ません。口が開くのを待とうにも今にもオロチに呑み込まれて胃の中に送られてしまいそうです。

 

 この状況で出来ることといえば……。このまま呑み込まれてしまえば、掌の中にぎゅっと握り締めているこの赤い玉は確実に落としてしまうでしょう。

 

 これを呑んだ蛇が強く、逞しく、たくさんになってアイゼル様をお守りするのを何度も見ました。あの力がオロチに奪われるのはあってはならないことです。

 

 そこでピンと思い付きました。わたしがこれを呑み込んでしまえばいいのです。そうすれば少なくともわたしが消化されるまでの時間は稼ぐことが出来るでしょう。

 

「ふーん、あんた馬鹿なの?」

 

「はぁ、あなたはどちら様でしょう?」

 

 赤い玉を呑み込むと目の前に蛇のような女が居ました。どこまでも冷たく恐ろしい目がわたしを睨め付けています。

 

「まあ、いいわ。復活のチャンスだもの。復活したらまずはアイゼルを八つ裂きにしてやる」

 

「今、なんとおっしゃいましたか?」

 

「なに、アイゼルを八つ裂きにするって言ったのよ。ああそしたらじっくりゆっくりあいつの使徒たちも殺してやりましょう。JAPANには巫女機関っていうのがあるんですって?ふふ、そこも血の海にしてやるわ」

 

「やめてください」

 

「はぁ?なんでわたしが人間ごときに指図を受けなきゃならないのよ。ここまで馬鹿だと復活の素体に使うのもおっかないわね。また脳なしの蛇に食われている時みたいにこっちまで馬鹿になりそう」

 

「やめてください!!」

 

 自分がこんな大きな声を出せることを、自分の中にこんな感情があることを初めて知りました。

 許せない。許せない。許せない。

 アイゼル様に、巫女の仲間たちに、害を為そうとするこいつはオロチと同じ、殺さなくてはならない害敵なんだ。

 

 許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない」

 

「これは……オロチっこたちが共鳴を起こしている?」

 

 今まで沈黙を保って戦況を見守ってきたオロチっ子たちが一斉に同じ言葉を繰り返して発している。

 すわメディウサが復活したのかと思ったが、そこに込められた憎悪や殺意はメディウサとは質が違う。

 

「アイゼル様を、巫女たちを傷つけるものを絶対に許さない」

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「許さない。許さない。許さない」

 

「壊れたのかしら?こいつ?はぁ残念、せっかく復活する前に肉体を乗っ取られる恐怖を存分に味合わせたかったのに。まあいいわ所詮は繋ぎの肉体、さっさと殺して死んでオロチってやつの肉体をいただきましょう」

 

 なんてことのないようなそぶりで鋭利な爪がわたしの首を切り落とした。行き掛けの駄賃とばかりに爪を何度も何度もわたしの体を切り裂く。

 

 その度に苦痛が走って自分がまだ生きていることに気づく。ああそうか、ここはわたしの頭の中だ。こいつはわたしの心を殺して、わたしの体を乗っ取ろうとしている。

 

「殺す」

 

 オロチの中にいるせいか、他のオロチっこたちの記憶が流れ込んでくる。抱擁の儀によってその魂に汚れを貯め込んだ巫女たち。

 オロチに食われるときには心がどこか壊れ、嬉しい、悲しい、楽しいと抱いた感情は様々だが、だから死にたいと強く思って進んでオロチに食われた。

 

 アイゼル様に抱かれているときのように自身の感情が千々に乱れて一つの感情に統一されていく。

 あのときは魂を染められ、理由も分からないけど何故か恥ずかしい。死にたいほどに恥ずかしい、だけど恥ずかしいのが気持ちいいからもっと恥ずかしくなりたい。そんな感情を抱いて、自分から醜態を晒す様をアイゼル様に楽しんでもらいました。

 

 今回も同じ、痛くて痛くて死にたいけれど、そんなことよりアイゼル様のためにこいつを殺したい。

 

「な、何よ、何なのよ、こいつら!!どうしてあんた一人の中にこんな大勢……!」

 

 わたしにオロチっこたちの記憶と感情が流れ込んでいるのと同じようにオロチっ子たちにもわたしの感情が流れ込んでいました。

 そして一番強い感情、わたしの殺意に染められたオロチっ子たちはこいつに群がります。

 

「や、やめなさい!死ね、死ね!い、痛い……!こ、こんなの絶対におかしい!!わ、わたしが殺されるなんてあり得ないぃぃぃぃ!!!」

 

 髪の毛を掴み、腕を掴み、足を掴み。身動きを封じて。

 髪の毛を引き抜き、腕を引き抜き、足を引き抜き。手作業でこの蛇を解体しました。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「風華!」

 

「羽曳野!」

 

 突如としてオロチっ子たちが風華を食らったオロチの頭に取り付き出した。爪を立て、歯を立て、少しずつ肉を削いでいくようにして切り開くと中から風華が現れた。

 全裸のまま、体の局所を隠すように蛇が巻き付いている。

 

「マジかよ?あの巫女さん、魔人になってるぞ!?あのメディウサに精神力で勝ったのか!?」

 

 魔人の気配を察してカオスが驚きの声を上げた。魔人は魔血魂を取り込んだものの肉体を奪い復活する。だが精神力で勝るものが相手だった場合、魔血魂を奪われ、消滅する。

 

「アイゼル様……。あなた様のものを取り戻して来ました……。わたしが……呑み込んでしまったけれど……この腹を割いてでも、お返しします」

 

「いいえ、それはもうあなたのものです」

 

「人間如きに負けるとは!魔人の面汚しめ!!!どいつもこいつも!やはり他の魔人とやらは信用できん!!この悪魔を拝む悍ましい国が今も残っているのがその証拠よ!!」

 

「アイゼル様……。あれもあなた様の敵ですよね?」

 

「ええ」

 

「では殺します」

 

 ぞっとするような冷たい声だった。情愛に満ちた言葉は紛れもなくわたしが思うがままに身も心も弄んだ風華のもの。だが、殺意と冷酷さだけはメディウサのものに取り変わってしまったかのようだった。

 

「ゆらゆら〜、ゆらゆら〜。ぐらぐら〜、ぐらぐら〜」

 

 風華とオロチっこたちが同時に掌を向けながら呪文を唱える。地面が大きく隆起して石爺を持ち上げた。

 

「ほぎゃあ!ほぎゃあ!ほぎゃあ!」

 

「な、まさか!おい!オロチ動け!逃げろ!!」

 

「オロチ、魔人、アイゼル様に歯向かうもの、皆滅びよ」

 

 隆起した地面が僅かに変形して石爺が転がり落ちる。その下には当然、オロチとザビエル。

 石爺の重量に重力が加わった流星のような一撃がオロチとザビエルに同時にトドメを刺した。

 

「ほぎゃああああ!!」

 

 石爺が悲鳴を上げてその場から転がるようにして移動する。決して壊れることのない、魔血魂の上に尻餅をついたことで、その重量が一点に集中してしまったせいだった。

 

「JAPANの民たちよ!!我々の勝利だ!!!」

 

 先に石爺の悲鳴が上がってしまったせいでタイミングを外してしまった感もあるが帝の号令のもと、すべての日本人と妖怪が勝鬨を上げた。

 それはJAPANの戦乱の終わりを告げるものでもあった。




 というわけでザビエル&ジェイコプス&オロチ&メディウサ戦勝利です!
 総力戦の描写はやっぱり難しいですね。自分ではかなり気合を入れて書いたのですがいかがだったでしょう?
 JAPANの強さを感じられたでしょうか?

 二転三転する展開を楽しんでいただけたでしょうか?帝謙信ちゃんが参戦して大逆転!は予め予告しておいたのですがトドメを刺したのは風華さんでした。
 巫女さんいいよね……。メディウサに精神戦で勝ったのは魂の黒化による精神の強化(狂化?)とオロチっこたちによる数の暴力という設定です。
 風華さん救済ルートを書くことができて満足です。
 次回はお馴染みの戦勝記念セックス。今から書くキャラの多さに戦々恐々していますが楽しみにお待ちください!!
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