ランスが女の世界で魔人アイゼルに転生〜洗脳能力と原作知識で魔王を目指す〜 作:斧池 数馬
プロローグ
「ごほっ、ごほっ、ごほっ」
「大丈夫ですか?エンロン様」
「あ、ああ、わたしももう、長くはないようだ……」
AL教団司教、ローレ・エンロンの屋敷はチリ一つ許されない病室のような様相を呈していた。
屋敷の主は夥しいまでの延命装置に繋がれ、枯木のような身体をベッドの上に横たえている。
回復の力を持つ女の子モンスター、イヤシンスの癒しの力を受けていながら、その言葉は力無い。
「何をおっしゃいますか。エンロン様は法王となるお方、こんな道半ばで亡くなるはずがありません。わたしも回復魔法の使い手として全力を尽くします」
「も、もう。いいのだ……。わたしは、法王となる器ではなかったのだ。いや、そもそも隣人に尽くすことを教えるアリス様の教えを忘れ、自身の、権力を増やすことばかり考えるような者は司教の地位すら分不相応だったのだろう……」
法王の座に執着し、100を大きく越える齢を重ねてきた男の命がとうとう尽きようとしていた。
死を間近にしたからか、悍ましいまでの執念は影を潜め、敬虔な信仰者として、穏やかな顔をしていた。
「さ、最期に、わたしに、一度だけ、司教に相応しいことをさせてくれ……。司教に、相応しい、ものに、地位を託す……。か、紙とペンを……」
「かしこまりました」
「ふふ、このようなものを、本当に使うことになるとはな……。前に書いたときは、相続人を利用するだけ利用して、向こうが先に死んでしまったがな……。いや、わたしが殺したのだったかな」
老い先短い権力者の後釜に座ろうとする者たちから、搾り取るだけ搾り取って、彼らより長生きするという単純な策略。
人の一生の二人分に近いだけの時を生きた彼には、そのような陰謀も可能だった。
政治的な手腕に長けたオズ・トータスとの対立候補となる権勢を築いたのはひょっとするとこれが所以なのかもしれない。
「あ、あ、ああぁぁ、これで、思い残すことなく、アリス様の元に召されることができる……。あとは、頼んだぞ、
ミミズののたくったような字で遺書に自身の名前を書き付けると、エンロンは力尽きたように台に突っ伏した。
誰よりもAL教団の法王の座に執着した男の最期だった。
「ふふ、ふふふ、汚染人間になって死なない苦しみも味わい続けるよりは、ずいぶんとマシな最期でしょう?」
わたし、魔人アイゼルは執着を奪われたことで同時に生きる気力も失った男の死体の前で一人ほくそ笑んだ。
彼が人としてあり得ない長い時間を生きてこれたのは、法王になるという執念の賜物だと見ていたが、まさか司教の地位を譲らせた瞬間に絶命するとは思わなかった。
彼は原作では、今回のムーラテストでも落選し、他の司教たちに行った大小様々な妨害の報復を恐れ逃亡、導く者に保護されたものの、魂を絶望に黒く染めるというAL教の信徒にあるまじき末路を迎えた。
しかしこの世界では、わたしに地位と権力のすべてを奪われながらも人としての最期を迎えることができた。どちらが良かったのかはわたしの知るところではないが、せっかく得たこの地位は存分に利用させてもらうとしよう。
◆ ◆ ◆
「そうですか、エンロン氏はお亡くなりになりましたか……」
「ええ、彼は最期にわたしに司教の務めを託されました。未熟な身ですが、エンロン様に代わって務めを果たしていきたいと思います」
法王が死去し不在の現在、AL教の最高幹部である司教による会合。その場にわたしはローレ・エンロンの代わりとして訪れていた。
「そうですか……。彼の冥福をアリス様に祈りましょう」
背の高い、禿頭の男が目を瞑って黙祷した。
彼の名はミ・ロードリング。女神アリスへの誰よりも厚い信仰心によって、司教の地位にまで登り詰めた男である。
他の司教たちが政治的手腕や世襲によって司教の座に就いていることを思うと、これは驚異的なことだろう。
「そうだね!ミーくん、エンロンさん、お休みなさい」
手に持った金髪の少女を模した人形で腹話術を行う奇行を差し引いてなお、ある種のオーラを感じさせる男だった。
「彼はわたしにとっても、尊敬すべき先達でした。そんな彼の代わりとは流石に荷が重くはないかね?アイゼルくん。司教の地位を継ぐのは、AL教の信徒としての研鑽を法王の麾下で積んでからにしなさい」
金髪の中年男、オズ・トータスは柔和な笑みを浮かべたまま、圧をかけて来た。彼の言葉はつまり、自分が法王になるまで法王候補の資格を持つ司教には成らせないという意味だ。
自身の地位を脅かしかねないものは必ず蹴落とすという酷薄さが透けて見えている。
「わたしはエンロン様のご意志を継がねばなりません。三度もムーラテストへと挑まれたあの方を思えば、どうして目の前の試練から逃れることができましょうか」
「ははっ、確かに。ムーラテストは法王を選ぶだけではなく、アリス様への信仰を証す機会でもある。ここで経験を積めば、もしかしたら次の法王になれるかもしれないね」
言葉とは裏腹に、トータスの目は笑っていない。どうやら彼の中でわたしは排除すべき存在として認定されたらしい。
無知ゆえの身の程知らずを笑うのは趣味が悪いと思いながらも、つい唇の端が釣り上がってしまう。
「クルックー・モフスです。よろしくお願いします。アイゼルさん」
そして、黒髪の少女がぺこり、と気のない会釈をする。
クルックー・モフス、この何も読み取れない無表情な少女こそが、わたしの未来を左右する鍵となる存在だった。
「では、会議を始めるとしましょう。まずは、JAPANへの布教についてですが──」
その後は退屈にまで恙なく、会議は進んでいくのだった。
◆ ◆ ◆
「じゅぷ、じゅぷ、アイゼルさん、いかがですか?」
「ええとてもいいですよ、セル。とても上達しましたね」
「ええ、女神ALICEは言いました。汝、隣人に尽くせ。フェラチオは信徒として当然の務めです」
エンロンから受け継いだAL教団本部の執務室、魔法によって結界が張られ、わたしの領域となっている空間で、淫靡な音がしている。当然、結界には防音の機能もあるため、外部に漏れることはない。
セル・カーチゴルフ。AL教の敬虔な信徒である彼女に、多くの信徒たちが行き交うすぐそこで淫靡な行為をさせるのはとても興奮する。
洗脳によって隣人への献身を性的な奉仕としているのだが、同時に快楽に溺れてはならないというAL教の教えから、その処女を奪うことはさせてくれなかった。
ペッティングで全身の性感を高めても、純潔を守り抜こうとするその意思には敬意を覚えた。
なのでこうして、口淫を仕込んだのだが、洗脳と性格の組み合わせが良かったのか、なかなかの仕上がりになっていた。
「アイゼル様、法王になられるんですか?」
「ハイエロファントなアイゼル様、ベリー素敵です」
「お望みであれば、わたくしたちが騒動を起こし、それをアイゼル様が解決することを繰り返せば容易にその地位に就けるかと」
この場にはガーネットら、三人の使徒もいた。セルが着ているようなシスター服を、腕や脚を出すように改造したものを着ている。
そんな破廉恥な格好を見ても、セルは何も言うことなく、口淫を再開した。
顔を見ると眉を顰めている。叱りつけたいのだが、隣人への奉仕の方が優先順位が高い、といったところか。
「いいえ、今回の目的は大っぴらにバランス・ブレイカーを収集できるようにすることです。それにここでしか得られない魔法の知識も」
それに司教の地位ならば導く者の情報も容易に得られるはずだ。神殺しを企む彼らとは、協力するにしろ、敵対するにしろ、早めに接点を得たかった。
「なんだ、ゼスとかJAPANのときと同じなんだ。まあ、アイゼル様のためならボク頑張るよ」
「ふふ、今回はあなたたち自身の強化も案じなさい。相性のいいバランス・ブレイカーがあれば戦闘力は飛躍的に上昇します」
「オー、禁じられたパワー、ベリー楽しみです」
「かしこまりました。更にアイゼル様のお役に立てるように精進いたします」
高い忠誠心を持つ彼女たちでも、自分のものになるとなればモチベーションが上がるのだろう。目を輝かせて、今あるバランス・ブレイカーの情報を話し合っていた。
そんな賑やかな光景と口淫による快感とは裏腹に、わたしの心中は暗くなっていた。
JAPANではわたしは、多くの悲劇を未然に防いだ。それは後の第二次魔人戦争のための戦力を確保するのが一番の目的だった。
しかし、今回は違う。国一つが滅びるような悲劇ではなく、防ぐには高すぎるリスクが伴っている。原作の通りになるように放置するのが堅実な選択だろう。
思い悩むのは良心の呵責ではなく、浅ましい欲望ゆえだ。そこまで考えて、わたしは結論を棚上げにしたまま、一旦思索を終えた。
今回みたいに短い中にもさらっとエロシーンが入ってるのが結構好きなんですが読者の皆さんはどうでしょう?
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